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東京心中24時50分

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  • 1:

    NN

    毎晩毎晩、その一瞬一瞬に新しいホストが生まれ、そして消えていく。彼らに行く末は何処にもないのかもしれない。それとも永遠にこの世界で生きていけるという道があるのかもしれない。
    どちらにせよ、消費されていくんだ、体も心も。そして新しいものが生まれていく。消耗品であることは間違いないみたいだ。いつ自分は消えていくのかな。

    2005-10-21 02:30:00
  • 2:

    NN

    そう思うのは怖い。だけど今はずっと先のことは見えない。いや、見たくないだけなのかな。

    2005-10-21 02:31:00
  • 3:

    NN

    夜に舞う蝶。何て例えがよすぎる気がするな。昼はひっそりしてる。夜になると点滅しだす。その答えはなんだ。派手に着飾ったホストが、深夜を前にぞろぞろ出現する。
    そんなホストの集団にまぎれながら、睦月彩人も、足早に店に急ぐ。

    2005-10-21 02:32:00
  • 4:

    NN

    「うっわぁ今の人見た?カッコイイ!!」「えっ知らないの?彩人だよ。カムプリのNo2の彩人!前TV出てなかったっけ」
    「今のが!?やっぱカムプリ、すごいわぁ〜!!!」水商売風の若い女の視線。こんなものは慣れっこだ。日常茶飯事。

    2005-10-21 02:33:00
  • 5:

    NN

    黒いスーツに、胸まではだけた白いシャツ。金髪の髪の毛。片手には携帯電話。首からぶら下がるsilverのネックレスは昨日、客にもらったばかり。昨日の記憶がうっすらよみがえる。
    「明日も行くからネックレス、付けと居てねっ。これ、彩人をつないでる首輪なの。主人はアタシだからねっ?」彩人がとなりに座ったとたんから、腕からくっついて離れないのは、週に三回現れ、その度に彩人を指名し毎回、20万近く彩人に落とすアンジュ。

    2005-10-21 02:33:00
  • 6:

    NN

    月300万の稼ぎがあるだけでなく、そのほかにも欲しいものはソープの客である「パパ」が何でも買ってくれるという。
    つまり、彩人の大事なエース客だ。機嫌をそこねるわけにはいかない。

    2005-10-21 02:35:00
  • 7:

    NN

    「ありがとう。大事にする」笑顔で礼を言うと「あたし、その笑顔見ると、いっくらでも彩人に使いたくなる!!」と、アンジュは彩人以上に微笑んだ。俺のこの笑顔はドンペリをおろしてもらったアンジュへの感謝。
    アンジュの持ってるヴィトンの財布の中からは、せがめばせがむ程に金が溢れ出しそうな気さえもする。

    2005-10-21 02:36:00
  • 8:

    NN

    暗い照明の店内で、アンジュはささやく。「ねぇ、彩人、今月はどぉなのっ?カオルに勝てそうなの??」唇のグロスだけがやたらに光る。
    「アンジュの頑張りしだい」「やぁだぁ彩人、それ、みんなに言ってるんでしょぉ?」またうまいこといってぇ、と、アンジュは加えたが、顔はずっと笑顔だ。

    2005-10-21 02:38:00
  • 9:

    NN

     「やっばぁあい彩人カッコイイ!!ねぇ、ドンペリ、も一本あけて!」
    ―またまた、毎度あり。 一本開けばもう一本。このテンションでどんどんアンジュに空けさせて、No1の夢舞台へ走りたい。もっと、もっと。もっともっと。飲みきった瞬間、視界がやたらにグラつく。体が悲鳴をあげた。

    2005-10-21 02:41:00
  • 10:

    NN

    「ちょっとトイレに行ってくるよ」「いいよーそのかわりっすぐ、帰ってきてねっ」
     店内の左端にある「関係者以外立ち入り禁止」のコーナーに入ってすぐ右。狭いトイレがある。従業員専用トイレだ。彩人は緊張がほぐれたように一気に嘔吐する。目からは涙がこぼれ落ちる。ホストになって一年が経つが、まだ体が酒に慣れてくれないようだ。

    2005-10-21 02:42:00
  • 11:

    NN

    「体質は変えられないからな」俺は、東吾が何を考えてるかわからないのに、東吾は俺の全て見透かしている気さえする。
    「体質なんて関係ねぇよ。No1になりたいのに酒に弱いだなんて。飲めなくたって詰めて詰めて、最後に出せばいいんだ。」「そう。」短く返事をして、相変わらず全く表情を変えない東吾。

    2005-10-21 02:44:00
  • 12:

    NN

    こいつはホストに向いてる気がする。酒が強くて、プライベートで何かあっても全く顔に出ない。
    「お前はさ、酒、強いだろ?俺の知ってる限りじゃ飲んでも全然変わらないし。お前も、No1になりたいって、ぶったおれたってかまわないから、とにかくカオルさんのポジションを奪いたいって気持ちない?」俺はそういった。

    2005-10-21 02:45:00
  • 13:

    NN

    「そういうのって、向上心とか闘争心っていうのか?」不思議そうな顔をしながら東吾がつぶやく。「多分、そう言うんじゃん?人間やってる限り、何か絶対譲れないってもんが、あるだろ。ずっと無気力ってわけにもいかないだろ。」俺は力強く答える。

    2005-10-21 02:46:00
  • 14:

    NN

    「向上心。闘争心。そういうのって邪魔。無気力でも人間はやってける。実際、俺は無気力で21年間生きてこれたわけだ。今の現状に満足だ。俺は向上したいとは思わない。争うのもめんどくさい。」そういい残すと、東吾は口にくわえたセブンスタ−に火をつけようと、右のポケットから金色のライターを取り出す。

    2005-10-21 02:48:00
  • 15:

    NN

    そうだよな。東吾はそういう奴だ。嫌味なんかじゃないけど、東吾が羨ましいよ。俺は火が付いたら止まらない。止まれない。No1になるまで、カオルさんのポジションを奪うまで、辞められない。

    2005-10-21 02:50:00
  • 16:

    NN

    あの後もアンジュが色々追加注文してくれたから、昨日はだいぶ飲んだ。その後にも指名客が来て飲んではいて、飲んで飲んで。、、はいて..。繁華街の片隅。5階立てのビルの中には、ラウンジ『華』やら色々、ごっちゃまぜに入っている。エレベーターのボタンを押す。3階で止まる。扉が開くと、青色の壁紙に『カムプリンセス』の文字が黒く光る。

    2005-10-21 02:51:00
  • 17:

    NN

    「このパネルさぁNo1ポジションっていうんじゃないよ、カオルポジションってゆうんだよ」なんて、店内のホストはもちろん客にも囁かれるほど、カオルさんは不動のNo1を、ここ何年もキープし続いている。

    2005-10-21 02:54:00
  • 18:

    NN

    カオルさんとの出会い以前は、まさか自分が「ホスト」になるだなんて思っても見なかった。一年前、フリーターだった俺はたまたまコンビニで見たホスト雑誌に人生を変えられた。
    表紙は、スーツ姿で微笑むカオルさんだった。「すげぇ男前..」俺は同性にも関らず、写真の中で微笑むカオルさんにド肝を抜かれた。

    2005-10-21 02:56:00
  • 19:

    NN

    関東地区人気ホスト特集、というタイトルでカオルさんが特集されていた。表紙はもちろん、グラビアの写真もインタビューも、俺に衝撃を与えた。

    2005-10-21 02:58:00
  • 20:

    NN

    。「一生の仕事やなんて思ってへんけど、ホストの仕事は、今はこれだって思ってることやから。目の前にある目標を全部達成して、次のステップに行きたいんですよ。だから、今、ホストって仕事で自分を試してるんです。」
    かっこいい。当時18歳だった俺の体に電流が流れたかのように、しびれた。

    2005-10-21 02:59:00
  • 21:

    NN

    気がつけば求人情報に電話をしていて、憧れのカオルさんと同じ「カム・プリンセス」にいた。そして一年が過ぎた。俺はNo2にまで踊り出たが、憧れでありライバルのカオルさんには、差をつけられっぱなしだ。追えば追うほど、カオルさんはどんどん先を走っていって、全く手が届かない。
    いつになったら、この差はつまるんだろうか。

    2005-10-21 03:00:00
  • 22:

    NN

    店の扉を開くと、カウンターに並ぶのは数百万のボトルワイン。これが毎日、ものすごいスピードでどんどん、開いていく。一晩で何百万の札がこのフロア内で落ちては消えてゆく。異常な光景だ。なのにその光景は見慣れてしまった。

    2005-10-21 03:02:00
  • 23:

    NN

    店内では開店前のミーティングが行われていた。30人近いホストが、店内の中央に集まる。異様な雰囲気が流れている。「おう、彩人!遅いぞ、始まる」「ああ、雷さん。おはようございます」遠くから手招きするのは、雷さんだ。最上雷はホスト暦4年。この店のNo3だ。

    2005-10-21 03:04:00
  • 24:

    NN

    それであり、カムプリの店長、という役職までついている。つまり、「ヒラ社員ホスト」ではないわけだ。ルックスにはホストらしい派手さはないが、万人受けするスタンダードな男前顔で、根強いファンは多い。

    2005-10-21 03:05:00
  • 25:

    NN

    常に後輩を気にする根っからの兄貴肌で雷さんがいるからこそ、カムプリは新人も働きやすい環境なのだろう、と、俺は思う。実際に新人だった頃面倒をよく見てくれたのは、雷さんだった。しかも雷さんはあのNo1のカオルさんが絶対の信頼を置いている、というのもあって、店内でも、カオルさんとは違う意味で特別な人だ。

    2005-10-21 03:06:00
  • 26:

    名無しさん

    おもしろそう!!

    2005-10-21 05:34:00
  • 27:

    名無しさん

    おもしろい?

    2005-10-24 17:52:00
  • 28:

    アユカ

    更新楽しみにしてます☆☆

    2005-10-24 18:56:00
  • 29:

    NN

    読んでくれてありがとうございます☆★がんばります!!!

    2005-10-25 00:03:00
  • 30:

    NN

    「えー今日は、まず、新人が入りました。挨拶して」オーナーの声が響く。新人か。どれだけ続くかかけてみる?と、何処からか笑い声が聞こえてくる。
    弱肉強食の世界。確かに、どれだけ続くか見ものだ。

    2005-10-25 00:11:00
  • 31:

    NN

    「アリス、あいさつして。」「源氏名、アリスかよ..」俺の隣に座っている雷さんの言葉が漏れる。オーナーの後ろからヒョコっと、金髪の男が顔を出した。「岩堀アリスです。今日からお世話になります。18歳です!新人だけど、新人ポジションで満足するつもりはないですから。新人同士で争うなんてバカみたい。僕はそういうのとは違いまーす。さいしょっからNo1目指す気持ちでやるので、どうぞヨロシク!」

    2005-10-25 00:15:00
  • 32:

    NN

    ニッコリ笑うアリスとは真逆に店内は一瞬静まった。新人の初々しさが全くない新人は、初めてだった。「はい、拍手して。」
    オーナーの言葉にホスト軍団はいっせいに、パチパチ、と、リズムのない拍手を送る。

    2005-10-25 00:16:00
  • 33:

    NN

    ミーティングは20分弱で終わり、オープン一時間前だ。いつもならまだ寝てる時間。
    「おいアリス!!来い!!」たいてい、新人ホストのお世話役をかってでるのは雷さんで、アリスの教育係にも、雷さんが就任した。

    2005-10-25 00:33:00
  • 34:

    NN

    「新人は先輩ホスト客の席へ一緒に座りヘルプをしたり、指名が決まっていない新規のお客さんに気に入ってもらって指名を確保したり、街頭キャッチで、外から店まで客を引きずりこんで、自分の客にしなくてはいけない。そうしてどんどん固定客を増やしていくのだ。さ、お前もわかったらとっとと街頭キャッチにいってこいよ。」
    雷さんはアリスに、そんな話を真剣にしていたが、アリスは大きなあくびをしていた。

    2005-10-25 00:35:00
  • 35:

    NN

    「そんな地味な新人まがいのこと、やりたくありません」まるで幼い子供のように、アリスは口をとがらせた。「何いってんだお前は立派な新人だろが」
    その子供を怒るように雷さんは声を上げる。「だって僕、新人なんて思わないもん。」

    2005-10-25 00:36:00
  • 36:

    NN

    「お前なぁ..何か勘違いして入店してきたのかよ?ホストっーのは貢がれて金ガッバガバなんて奴、ほんの一握りだぜ。新人は街頭で必死に客引き。罰金とかなんやら引かれたらマイナスになる月だってあるんだぜ。」「何それ、自分の経験??」
    馬鹿にしたように、アリスは雷さんを見て笑う。もちろん、雷さんが黙っているはずがない。

    2005-10-25 00:38:00
  • 37:

    NN

    「このクソガキ!!お前、調子のりすぎだぞ!!何がアリスだ!!ガキ!!」「僕の言うことがあたってるからってムキにならないでよ。あっ、もしかして、彩人さんですか?No2の、睦月彩人さんですよねっ。雑誌でよく見たことありますっ」
    怒る雷さんを尻目に、横で携帯をいじっていた俺の元に、アリスが顔を出す。

    2005-10-25 00:44:00
  • 38:

    NN

    アリスにNo2と言われると、なぜだかとてつもなく嫌味に聞こえるのは、気のせいか。「うっわぁーやっぱり実物もかっこいいやぁ。顔小さい〜わぁ〜肌キレイ!!化粧水とか使ってるんですか!!??」
    アリスは彩人に顔を近づける。「ごらガキ!!話を聞け!!」雷さんの声が響き渡る。アリスはまるで聞いていないかのようなそぶりで、「さぁ、仕事、ガンバろぉ!」と、微笑むと店を出て行った。

    2005-10-25 00:45:00
  • 39:

    NN

    何だかんだで雷さんの言われた通り、客引きにいったのだろう。「あいつはダメだな!今日限りでクビで!店長としてあいつだけは許せないな!」と、雷さんが何度も彩人呼している姿が、少しおもしろかった。

    2005-10-25 00:46:00
  • 40:

    NN

     雷さんのモットーは誠心誠意。「俺の事指名するなら金出せ出せってやり方、好きじゃないんだ。誠心誠意、一瞬一瞬、自分を選んでくれたお客さんのために尽くす。それが、接客業ってもんだと思うんだな。ホストだって立派な接客業だから」俺が新人だったころに、何度も雷さんが繰り返して言ってた言葉だ。

    2005-10-25 00:47:00
  • 41:

    NN

    雷さんみたいに、ホストになってから、今までずっと、心をこめて裏表のない平等な接客をしてるホストって、なかなかいない。
    気がつけば、汚い方に、汚い方に、どうしたらこの客はどれだけ自分に使ってくれるか、と、考えるようになってしまう。俺もそうだ。

    2005-10-25 00:48:00
  • 42:

    NN

    No1になりたいのに..この頃商売衣装であるスーツでいる自分がやたらに息苦しい。

    2005-10-25 00:50:00
  • 43:

    NN

    その日も、相変わらず無意識のまま花をしょって、カオルさんは店に登場した。オープン時間は一時間過ぎている。「よっ彩人、おはよー」
    店内の隅に立つ俺を見つけると、カオルさんは軽く手を振った。男から見ても完璧な顔立ちだ。

    2005-10-25 00:51:00
  • 44:

    NN

    それでかつ、酒に強くて、会話上手。入店して3年。一気にNo1に上り詰めた氷咲カオル。一日の指名の数は十数回で、もちろんダントツ。
    カオルさん見たさに観光客までも来るくらいだ。

    2005-10-25 00:56:00
  • 45:

    NN

    客とカオルさんの撮影会、っていうのも、店内でも見慣れた光景で、カオルさんの固定客から「カオル、カオル、カオルで、彩人って感じだよね。彩人もカッコイイっちゃカッコイイしオーラもあるけど、やっぱカオルでしょ。」なんて影口ももちろん日常茶飯事。
    その度、毎度のことだなんて思いながらも、カオルさんへの闘争心は燃え上がる。

    2005-10-25 01:02:00
  • 46:

    NN

    アンジュはもちろん、俺の顧客のほぼ全員が口をそろえて「カオルを倒してNo1になってね!」って言葉をかける。そしてシャンパンやボトルを「激励」と言いながら、開け出す。
    俺はカオルさんとNo1争いのライバル、みたいな設定で売り出してるけど、カオルさんからしたら、全然、そんなつもりないんだろうな。

    2005-10-25 01:05:00
  • 47:

    るぃ??

    楽しみに待ってマス!
    マタ書いて下さいね♪♪

    2005-10-26 18:07:00
  • 48:

    名無しさん

    あげ

    2005-10-29 05:44:00
  • 49:

    名無しさん

    書いて下さい

    2005-11-01 16:15:00
  • 50:

    名無しさん

    2005-11-01 21:36:00
  • 51:

    NN

    ありがとうございます。

    2005-11-01 23:57:00
  • 52:

    NN

    カオルさんの眼中にすら、俺ははいっていないと思う。あの余裕のある「おはよー」の挨拶からも、そうわかる。それがわかるから、悔しい。「おはようございます」
    小さくうなずくと、カオルさんは顔を近づける。「お前、ちょっと顔色悪いで。大丈夫?」「はい。」大丈夫?っていう、余裕がある。

    2005-11-01 23:58:00
  • 53:

    NN

    カオルさんの前職はフリーター。多分、職探しか何かで関東に出てきたのだと思う。「関東のホストNo1が関西弁を話す氷咲カオルなんておかしいよな。あれ、絶対関西弁効果も聞いてるだろ」、と、カオルさんのことをよく思わない他店のホストが話しているのを聞いたことがあった。

    2005-11-01 23:59:00
  • 54:

    NN

    カオルさんは、俺がホストになるきっかけになった雑誌のカバーインタビューで、「夢を叶える途中でホストという仕事に出会った。ホストは通過点にしかすぎない」と話していた。
    何か叶えたい夢があるようだけど、それを知ってるのは雷さんくらいなんじゃないかな。

    2005-11-02 00:00:00
  • 55:

    NN

    ―やばい。カオルさんに今月も差をつけられる。少しでも差を縮めたいのに。
    カオルさんは以前、ホスト雑誌で「やっぱりライバルは彩人クン?」と記者に聞かれたのに対し「彩人君はまぁ若いから。頑張ったら、いいと思いますよ。そしたら、いずれかNo1になれるんちゃうかな。まぁ、俺がいるうちは無理ですけどね」と、サラっと答えていた。

    2005-11-02 00:06:00
  • 56:

    NN

    眼中にないだなんてわかっていたはずだ。だけど、ここまで格下に扱われるとは思っていなかった。
    だから、今月は、今月こそは…今月は。何度も何度も、俺はカオルさんの背中を見るたび、胸の中で「今月こそは」と繰り返す。

    2005-11-02 00:07:00
  • 57:

    NN

    「彩人、指名だ」雷さんの声に振り返る。「いやーん彩人ッ、会いたかったぞぉ〜!!」真っ黒のドレスを着込み、茶色の髪の毛をグリグリに巻いたキャバ嬢のシュナが、彩人に抱きつく。最近「カムプリンセス」に現れ始めた彩人の固定客だ。
    今日はどうやら仕事を早退したらしい。キャバ嬢としては結構有名で、雑誌なんかで時々見かける。

    2005-11-02 00:08:00
  • 58:

    NN

    ねぇ雷さん。誠心誠意で一瞬一瞬、お客さんに尽くす。敵な言葉だと思うよ。
    だけど雷さんと俺の「誠心誠意」の意味はちょっと違うみたいだな。俺はNo1に誠心誠意をかけるんだ。

    2005-11-02 00:11:00
  • 59:

    NN

    大学生での東吾の顔は知らないけど、多分、学校でも店と同じ、無表情で何を考えているかわからないやつなんだろう。

    俺たちは店の外では友達だとしても、同じ店にいる時間からはライバルになるんだ。

    2005-11-02 00:13:00
  • 60:

    NN

    「シュナ、俺には夢があるんだよ。」俺は、シュナに顔を近づける。「なになに??」「聞いてくれる?」
    シュナは目をみひらき、ウン、と、うなずく。シュナが手に持っているタバコからは、淡々と煙が流れ出す。シュナの性格は大体、わかってる。 半年前、大学進学のため田舎から出てきて、キャバ嬢を始めたが、夜の世界にハマりすぎて、大学は休学状態。

    2005-11-02 00:14:00
  • 61:

    NN

    今はホストクラブ通いやブランド品買いのために、キャバで稼ぎ続ける毎日だ。  
    まだ上京して半年だからか、それともシュナの性格か、いい意味で騙しやすい。涙もろく、「絶対アタシが彩人を一番にしてあげるからっ」と、何かにインプットされたかのように繰り返す。

    2005-11-02 00:16:00
  • 62:

    NN

    「いずれかはホストやめたいんだ。」「えっ?」チカチカと点滅するライトが頭上を回転する。シャカシャカシャカと機械音みたいに聞こえるテクノサウンドは、店内を盛り上げる。
    まるで嘘を隠すかのように。

    2005-11-02 00:17:00
  • 63:

    NN

    「今は、こうやってみんな俺のこと指名してくれたりするけど、それは俺がホストだからだろ?多分、ホストやめたら一人になると思う。その時、俺を好きだっていってくれる子、すごく魅力的に思う。」「彩人…」
    シュナは彩人を見つめながら、力強くうなずいた。「シュナはっ彩人がホスト辞めても大好きだよっ?もうシュナ、彩人のためにお仕事がんばっちゃーうから!!」

    2005-11-02 00:18:00
  • 64:

    NN

    そういうと、シュナは「絶対彩人がやめるまでに、シュナが彩人をNo1にもさしてあげるっ!」と叫び、20万円のシャンパンを2本頼んだ。サンキュー、シュナ。ホスト辞めたらひとりになる?関係ない。
    だってホストやってる今だって、ひとりはひとりに違いねぇから。シュナの一声で、待ってました、と言わんばかりに、シャンパンコールがかかる。

    2005-11-02 00:21:00
  • 65:

    NN

    「シャンパン、いただきましたー!!」俺の声でさらに、店内は活気ずく。彩人はお酒に弱いから..なんて客に言われて何も飲まないなんて、廃業寸前のホストかよ。
    俺は体に逆らったって飲み続けるよ。寿命との戦いだなんて関係ない。

    2005-11-02 00:22:00
  • 66:

    NN

    No1になるなら、飲めない酒だって体が悲鳴あげたって関係ない。
    そう全てどうでもいいんだ。関係のないことなんだ。全てはNo1のためなんだから。

    2005-11-02 00:25:00
  • 67:

    NN

    「彩人、お前二本一気にいくのか?無茶だぞ」雷さんの声が耳に入る。いっちまいますとも、やっちまいますとも、限界への挑戦。
    閉め日まであと少し、カオルさんの売り上げを超えるチャンスはもう少ない。俺はパン!と派手な音を立ててあいたシャンパンに口をつける。 飲んで、飲んで、飲んで、ホストの声が踊る。
    視界はどんどん遠のく。

    2005-11-02 00:26:00
  • 68:

    NN

    「ありがとーございました!」5分も立たないうちに、カラになった二本のビンが転がる。
    足元がクラクラする。No1になりたい。その気力だけで今、ここに立っている気がする。
    「やん、彩人カッコイ!もう2本!」シュナの声に押されるようにして、20万円のシャンパンが二本追加する。

    2005-11-02 00:27:00
  • 69:

    NN

    シャンパンコールはまた、音が大きくなった気がする。この声に負けじと俺はまた、口にビンをつけるが、「これ以上はお前ヤバイだろ。」と、雷さんの声で現実に戻る。残りの二本は、雷さんをはじめ、他の仲間が回し飲みを始めた。
    「シュナ、もっと、興奮したくない?」

    2005-11-02 00:28:00
  • 70:

    NN

    彩人が微笑むと、シュナは顔を赤らませ、何度もうなずいた。「俺のもうひとつの夢、かなえてよ。」
    カウンターにある100万円のボトルを指差す。シュナに話した、もうひとつの夢。あの100万のリシャールをシュナと飲みたい。
    そう話したとき、シュナは絶対それを叶えてあげる、と、彩人に約束していた。

    2005-11-02 00:30:00
  • 71:

    NN

    「いいよっ。ねぇ、あれ、開けて?ねっ彩人、一緒に飲もう」店内がざわめき出す。 夜はまだまだ、これからだ。店内はさらに盛り上がりを見せた。
    「彩人!彩人!彩人!」彩人コールに押され、彩人は最初の半分を一気に口に含んだ。
    そして、シュナにキスをするように口の中に酒を押し込む。

    2005-11-02 00:31:00
  • 72:

    NN

    キスだろうがなんだろうがなんだっていい。これはシュナに毎度ありのサインだ。
    シュナは感激のあまり、涙目になっていた。「もう彩人、あたし、彩人のためならほんっとになんだってするっ!!」
    そういうとシュナはさらに20万円のボトルを注文した。視界にカオルさんの顔が入る。さすがに少し、こっちを気にしている。

    2005-11-02 00:33:00
  • 73:

    NN

    やった、少し振り返った。俺は心の中でガッツポーズを決めた。まだまだ、これからのところだった。なのに、体が弱音を吐いたその一瞬で、全ては崩れる。
    俺はシャンパンコールが鳴り止まない店内を走り出て、従業員専用トイレの下、嘔吐していた。昨日と、同じ光景だ。

    2005-11-02 00:34:00
  • 74:

    NN

    どれくらい、体を痛みつけているんだろう?痛みつけるほど、No1の栄光って価値あるものなんだろうか。最初はそんなことを考えた。だけど、体が痛みつくよりもNo1になれずNo2のままただずんでいる今の方がよっぽど体に悪いよ。
    俺はそう思う。だから明日も明後日も、一年後でもなんだっていいけど、ずっと飲み続ける。

    2005-11-02 00:35:00
  • 75:

    NN

    彩人がいなくなった店内では、相変わらずホストがシュナのオーダーした酒を飲み、シュナは満足げに笑顔で拍手しながら大声で笑っている。「彩人さんすげぇな..これがNo2の実力かぁ..。」
    新人ホストの言葉が全てを物語っていた。彩人はたった10分の間に、19歳のシュナに、何百万もの大金を使わせた。

    2005-11-02 00:36:00
  • 76:

    NN

    時計は深夜3時を回っていた。営業時間は8時まで。まだまだ、前半戦。『お客様のお送り』は『お客様の出迎え』より大事だ。
    アフターケアはしっかり、がルール。「ありがとうシュナ。お前が俺の夢、叶えてくれたよ。がんばってくれた。」

    2005-11-02 00:39:00
  • 77:

    NN

    彩人はシュナの頭をなでる。その瞬間シュナは笑顔になり、彩人に小さくもたれかかる。
    「シュナ、彩人がスゴイ好きなのっ。彼女にして?」正直、きたか、と思った自分がいた。
    客からの『愛の告白』はよくあること。

    2005-11-02 00:41:00
  • 78:

    NN

    彼女にして。この質問にNoなんて答えた日には逆ギレして店に来なくなる。YESなんて答えた日には「ホスト辞めて」だのなんだのわめきだす。
    正しい答え方はこれだ。

    2005-11-02 00:42:00
  • 79:

    NN

    「お前は客の中で一番好きだよ。客なんて思ってない。ただ俺はNo1になりたいからホストは辞められないんだ。だから、お前にも応援して欲しいんだよ。No1になるまで..応援してくれるな」
    俺は煙草に火をつける。俺の言葉の要約はこれだ。客の中では一番好き、だけどNo1になりたいからホストは辞められない、No1になったらホストをあがる、その時はお前のところへいく、だから今はお金を使って俺を応援してくれ と、なるわけだ。

    2005-11-02 00:43:00
  • 80:

    NN

    ホストをあがったらどうするかなんて決めてはいないけど、客がある程度の「妄想」ができる風に設定した言葉を吐く。それがホスト。「No1になってホスト辞めたらシュナと2人で住もうね。シュナ、それまで応援する!!」
    シュナの答えはまさに「模範解答」だった。

    2005-11-02 00:44:00
  • 81:

    NN

    「ありがとう。気つけて。家帰ったらメールしてな。気をつけてな」俺はタクシーに乗り込んだシュナを笑顔で見送る。
    「うん、ありがと彩人」タクシーの中から手を振るシュナに答えるように、手を振り返す彩人。

    2005-11-02 00:45:00
  • 82:

    NN

    まるで恋人同士の別れのワンシーン。ただ決定的に違うことがあるのだけれど。
    タクシーが去ると同時に俺は店へと急いで戻った。

    2005-11-02 00:46:00
  • 83:

    NN

    負けられない。そう思った瞬間、雷さんの声が俺で我に戻った。「彩人、アンジュさん来てるから早く席つけ」
    「あ」そうだ、アンジュは今日3時過ぎに来ると行っていた。とっさに携帯電話を見るとアンジュから着信が3件。今から行くから、の電話だったのだと思う。俺は急いでアンジュの席へ走る。アンジュは案の定、不機嫌だった。

    2005-11-02 00:50:00
  • 84:

    NN

    負けられない。そう思った瞬間、雷さんの声が俺を我に戻した。「彩人、アンジュさん来てるから早く席つけ」
    「あ」そうだ、アンジュは今日3時過ぎに来ると行っていた。とっさに携帯電話を見るとアンジュから着信が3件。今から行くから、の電話だったのだと思う。俺は急いでアンジュの席へ走る。アンジュは案の定、不機嫌だった。

    2005-11-02 00:53:00
  • 85:

    NN

    「電話したのにっ!!」「ごめんごめん」「キャバクラ女ばっかの席ついてさぁ〜あたしは無視なわけ?」
    キャバクラ女、とは、シュナの事だろう。なんとか機嫌を取り戻して、俺はアンジュに小さくつぶやく。

    2005-11-02 00:54:00
  • 86:

    NN

    「俺のもうひとつの夢、叶えてくれる?」昨日同様、やってきたアンジュに、彩人は「使い古した夢」をまた吹きかける。
    アンジュは「彩人のためなら!」とうなずく。また、店内に75万のシャンパンが音をたてる。彩人は結局アンジュにも、合計90万近くを支払わせた。

    2005-11-02 00:55:00
  • 87:

    NN

    今日だけの稼ぎなら、カオルさんに負けてない。いい波がやってきた。このノリで明後日まで持ち越せば、もしかするとカオルさんに勝てるかもしれない。朝8時。店がクローズし、店内ではホストがあちらこちらでつぶれかえっている。「今日、ちょっと悪ノリしすぎじゃねぇか。」
    雷さんに声をかけられる。眉間にシワがよっている。どうやら、お説教モード突入のようだ。

    2005-11-02 00:56:00
  • 88:

    NN

    「特にシュナちゃん。お前にハマって、キャバクラやめて、今はソープやってるらしい」
    シュナがソープ?特におどろきはしなかった。シュナは以前からキャバじゃお金が足らなくなってきた、と、話していたし、いつかはソープまで行くと思っていた。

    2005-11-02 00:58:00
  • 89:

    NN

    あれだけホストクラブで豪遊してブランド品も買って、じゃ、金なんかいくらあっても足りなくなる。と、言いたかったが、相手が雷さんじゃ、そんなことも言えるはずがない。
    「いーやんか、今日、おもろかったで、彩人」雷さんの肩をなだめるようにたたき、カオルさんは微笑んだ。

    2005-11-02 00:59:00
  • 90:

    NN

    俺はあんなに死ぬほど飲み続けたのに、カオルさんにはまだ笑う余裕がある。
    ―全然、まだ、追いついていない。心から、そう思わされた瞬間だった。カオルさんは微笑みながら、店を後にしていった。

    2005-11-02 01:01:00
  • 91:

    NN

    「彩人さん、やっぱりカッコイイなぁー僕もまぁ、すぐ負けてないけど」「うわっお前アリス!!客引きはどうしてたんだ!もう店はクローズだっ!!」雷さんは、突如として現れたアリスに驚きながらも声を張り上げる。

    2005-11-02 01:05:00
  • 92:

    NN

    アリスはハイハイ、と、めんどくさそうにつぶやくと、「店まで連れてくるのメンドーなんだもん。番号は聞いたから、今晩から店に呼ぶんだー」と、携帯電話をいじりながら、ソファに座る。「呼ぶんだーってお前、そんな簡単なことかよ!」「うっるさいなぁあんま叫ばないでくれる?鼓膜がやぶれるー」
    舌を出し馬鹿にしたかのようにアリスは雷さんを見る。

    2005-11-02 01:07:00
  • 93:

    NN

    ほんとに大物というのかただの無神経で失礼な奴というのか、アリスは新人としては全てが異様だ。「なんだと?俺は先輩だぞ。お前は第一先輩に対しての言葉使いが」「こーまーくがーやぁーぶぅーれぇーるぅー!!!!!!」雷さんとアリスの乱闘が始まったので、俺は逃げるようにして店内を出た。

    2005-11-02 01:08:00
  • 94:

    NN

    朝を迎えた歌舞伎町に、夜のようなパワーはなく、ひっそりとしている。すれ違ったホストは大きなあくびをしている。「東吾!」目先には東吾が歩いていた。真っ黒なスーツに耳元に光るたくさんのピアス。軟骨にまで数多く刺さっている。東吾は振り返ると、ああ、彩人、とつぶやいた。

    2005-11-02 01:09:00
  • 95:

    NN

    「お前、今から家帰ってシャワーして大学?」「ああ。眠いな」話の返事になっていないって。東吾はやっぱり、どこかズレている。
    これで超有名大学の優等生だもんな。確かに東吾の言うこともあたっている気がする。

    2005-11-02 01:11:00
  • 96:

    NN

    アリスを見た時東吾が言ったんだ。「世の中おもしろい奴勝ちだ。なぜなら世の中おかしいからな。」っていうの。俺は東吾にまた今晩な、と声をかけ、タクシーをつかまえ家に戻った。

    2005-11-02 01:12:00
  • 97:

    NN

    騙し騙され生きている 言葉の響きはかっこいいけど、実際は騙す方も騙されるほうにも、暗黙の了解があるようにさえ見えるよ。店内ならなんでもできそうな自分が恐い。
    のに、止められない。それはきっと歌舞伎町マジックだな。 

    2005-11-02 01:13:00
  • 98:

    名無しさん

    久々の更新まってました☆

    2005-11-02 04:03:00
  • 99:

    名無しさん

    おもしろい?

    2005-11-02 10:12:00
  • 100:

    NN

    116さん 117さんありがとうございます!!読んでくれてる方がいるのか..と不安やったので、すごく嬉しかったです!!

    2005-11-02 23:15:00
  • 101:

    NN

    “最近彩人の勢いスゴイよね。前店行った時、客に信じられないくらい色々あけさしてたもん。かなりNo1になりたいって感じ。カオルは焦ったりしてないのかな。”“あの顔が何か誘ってくるんだよねーあたしもきっと騙されるわ笑。彩人ってカムプリはいって一年くらいだよね?で速攻No2になってそのまま一年経ち..みたいな?”

    2005-11-02 23:16:00
  • 102:

    NN

    “彩人口座の子はみんな「彩人No1にしてあげたい!」って言ってて、前に「ディテ●ール」ってキャバで人気あったシュ●って子、彩人に貢ぎまくって金ヤバくなって、今は売れっ子のソープやってるよ。もちろんその金も全部彩人につぎ込んでるけど”“今、カオルより勢いない!?もしかしたらNo1、マジでなるかもよ。来月あたり”“ありえる!彩人って、誘うオーラ、めっちゃうまいしねぇ!”

    2005-11-02 23:17:00
  • 103:

    NN

    「こんなもん、見るもんじゃないぞ。」店内でアリスが広げていたノートパソコンの画面は、ホストの情報や裏話、デマなどが大量にあふれ出している掲示板が映し出されていた。雷は不機嫌そうにアリスをにらむ。

    2005-11-02 23:18:00
  • 104:

    NN

    「すごいねーデカムの意見掲示板、ほとんど彩人さんのことばっかだ!カオルさんの話題、少ないよ。」アリスは画面に釘付け状態で、雷の顔を見ようともしない。金色に光るジッポをポケットから取り出し、雷はタバコに火をつける。「すごいもんか、最近の彩人はどうかしてる。あいつはNo2というよりスキャンダルNo1だな。」

    2005-11-02 23:19:00
  • 105:

    NN

    「ホストなんだから、何にでも二番より、どっか一番がある方がいいと思うけど!」マウスを慣れない手つきでカチカチと動かし、アリスは大きなあくびをした。「またお前は知ったかぶって..。ああいうやり方、俺は好きじゃないんだよ。シュナちゃんをソープにまでいかして..。」フっと息から煙を吐き出すと、アリスは臭いー!と叫んだ。

    2005-11-02 23:21:00
  • 106:

    NN

    店内にはまだ、夜の熱気が残ったままで、体が少しほてる。「ホストに貢ぐ限度を知らないシュナさんって人がバカなんじゃない?ホストなんか騙して客は騙されてなんぼ、なんてわかってるでしょ?あーインターネット飽きちゃった。電源きっといてー」そういうとアリスはノートパソコンを乱暴に雷の方へと寄せる。

    2005-11-02 23:22:00
  • 107:

    NN

    「最近、この店の風紀が乱れてる気がする。デカムはさ、純粋にお客さんがホストと酒を飲みながら話をしに来て、笑顔で帰って行ける店だったんだよ。なのに、カオルNo1、彩人No2、っていうのができてから、変わった。お客さんもホストも競いすぎてそれが表面にでてくる。これじゃあオラオラ、お前いくら俺に金使えるんだよ、って、のっけから脅してるみたいじゃねぇか。」と、雷がつぶやく。

    2005-11-02 23:23:00
  • 108:

    NN

    「風紀もクソもないでしょ?最近のホストクラブってのはそもそもそうなんじゃん。雷ってホスト向いてないんじゃない?とっとと居酒屋経営か何かにでも転職すれば?」本当にクソムカつくガキだ。雷は腹のそこからそう思った。しかし、アリスの言う言葉は全て正論だと、わかっている自分もいる俺は理想論ばっかり言ってる気がする。「だけど、彩人はフェアじゃないっていってるんだよ。第一シュナちゃんもなぁ。」そう雷がつぶやくと、アリスはフフん、と鼻で笑った。

    2005-11-02 23:24:00
  • 109:

    NN

    同時にアリスのポケットから、携帯の着信音がドでかい音を出し店内に響く。あ、じゃあ僕もう帰るね、とつぶやくと、アリスは雷に背を向けた。そして、一度振り返り、またフフんと鼻で笑った。「なーんか雷さんってすんごい正義感溢れるキャラだね。でもさぁ、そういうキャラって損だよ!いい人で終わるからねっ!」

    2005-11-02 23:25:00
  • 110:

    NN

    「なっ・・何だお前!何だよ損で終わるって!!」動揺する雷を横目にアリスは笑顔で手を振った。「シュナちゃん♪」
    「お前、なっなにを勘違いして、おっおれはそっそんなべっべつに好きとかじゃ」

    2005-11-02 23:26:00
  • 111:

    NN

    無我夢中に生きていた 明日のことはよくわからなかったけれど ただ夢だけはいつもそこにあった No1になること たったひとつの夢
    今は何も見えなくなってしまったけれど あの日 カオルさんに勝ち逃げされたまんまで 俺はこの店を去ることになるんだ

    2005-11-02 23:28:00
  • 112:

    NN

    ホストにプライベートはない。と、思う。家に帰って起きるのが夕方。たまった客からの着信とメールに目を通して返事。「今日これる?」と、確実な指名数を得るため客を呼び出す。23時半、俺はいつものように制服であるスーツに身をまとった。
    そろそろ仕事の時間だ。店に行かないと。

    2005-11-02 23:29:00
  • 113:

    NN

    携帯を開くと新着メールが一件。さっき全部目を通したはずなんだけどな..受信ボックスを開くと知らないアドレスだった。店のHPにも自分が紹介された雑誌にも、ホストの携帯番号とメールアドレスは記載される。だから知らないメールアドレスや番号から来たとしても、客になる可能性があるので、一応目を通すし電話にも出るのだ。

    2005-11-02 23:30:00
  • 114:

    NN

    *タイトル・無題*あんたが貢がせてるシュナ。キャバからソープで、今はAVもやってるよ。AVのタイトルは「真夜中のコール24回」っての。AVの内容はシュナちゃんが看護婦さんで 夜勤のときナースコールがなるんだよね。で、24人の奴とヤっちゃうって わけ。
    AV出演料に300万もらったってさ。これ、新人AVアイドルにしたら破格の値段だよ。+ヘルスで、今月の月給は400万越え。あんたのために飲まず食わずで、ソープ→AV→ソープ、の生活続けてるからねあんたすごいわ。さすがホスト。さすがデカムのNo2だね笑
    女にAVまでやらせて金欲しいってか笑笑馬鹿なホストにAVやってまで貢ぐ女も馬鹿馬鹿で、まぁ、いいんぢゃねぇ?笑

    2005-11-02 23:31:00
  • 115:

    NN

    「シュナがAV..?」メールを見て呆然とする。確か昨日雷さんがヘルスを始めた、とは言っていたけど、まさかAVにまで。一瞬、心臓の音が早くなったのが自分でもわかった。

    2005-11-02 23:33:00
  • 116:

    NN

    気がつけば「AV新作リリースNo1」をかかげて誇らしげに営業する、ドでかいAVレンタル屋の前に立っていた。店は異様な雰囲気を漂わせていて、入るのに少しためらった。
    彩人のためらう体を押せ押せといわんばかりに、ひとりの男性がビデオ屋にためらいもなく、入っていく。

    2005-11-02 23:34:00
  • 117:

    NN

    それについて行くかのように、彩人もビデオ屋に入る。ドアを開けると、そこには無愛想な中年の男性がレジにひとりいるだけで、店内はガラガラだった。彩人はすぐにレジに向かう。確認しなくちゃいけない こんなメールはデマかもしれない
    そう頭の中で何度も何度も繰り返しながら、レジに座る中年男性に「すみません」と声をかける。

    2005-11-02 23:35:00
  • 118:

    NN

    「はい」店員は無愛想な顔で短い返事をする。彩人は小さな声でつぶやく「AVについて聞きたいんですけど。『真夜中のコール24回』・・・っていうAV、おかれてますか」レジの横にあるパソコンで店員がビデオの検索でもしてくれるだろう、と、彩人は考えていたが、予想を裏切るかのように、店員はニッコリ微笑んだ。

    2005-11-02 23:36:00
  • 119:

    NN

    「ああ、そのAV。今日だけで電話問い合わせ、5回あった超人気新作AV。悪いけど、全部貸し出しちゃってるよ。」「そのAV..主演女優の名前ってわかりますか」「ああ、わかるよ。シュナだろ、有沢シュナ。」
     ―有沢シュナ 「真夜中の24回コール」 Avは実存してる。「そうですか」と、つぶやくのが精一杯だった。

    2005-11-02 23:37:00
  • 120:

    NN

    店員は彩人の顔をのぞきこみ、話を続けた。
    「お兄さんも、シュナちゃんのファンなの?あのAVの完成度はすごいねぇ。AV初出演作には思えないよ、シュナ、多分、AV界のアイドルくらいになると思うよ。お兄さん知ってる?有沢シュナって、元キャバ嬢で今はAVしつつソープ..何ていったかな、ああ、『光』って店でソープまでしてるんだろ。」

    2005-11-02 23:38:00
  • 121:

    NN

    「そのソープ、僕も一回、お世話になりにいこうと思ってるんだけどね。土台がキャバ嬢だけあって顔もめちゃ可愛いしさぁ、AVにまで出ててソープまでって、もう、たまんないね。」「そうですか」「あ、ビデオ予約入れる?今なら多分、二週間待ちくらいだよ。」いいえ結構です、そう言うと俺は逃げるようにして店内から出た。

    2005-11-02 23:40:00
  • 122:

    NN

    シュナがAV女優になった、というメールは、俺以外にも雷さん、カオルさんのところにまで同じ内容で送られていた、と、すぐ気がついた。雷さんからのメール。「今日、ちょっと早く店に来い。」それが、シュナのAVのことを知っている、と雷さんが物語っているようだった。

    2005-11-02 23:41:00
  • 123:

    NN

    雷さんは何気なく、俺の側に歩みよってくる。真っ黒なスーツの中に赤いネクタイ。何だか目がチカチカする。俺の胸にはアンジュにもらったsilverのネックレス。いつも暗い店内の、小さなスポットの光でキラキラ輝くこのネックレス。

    2005-11-02 23:42:00
  • 124:

    NN

    今日はこのネックレスが重く感じる。アンジュもAVに手を出したりし始めるのだろうか。ネックレスはますます重くなっていく感じがした。

    2005-11-02 23:43:00
  • 125:

    NN

    「彩人、今日からお前、無理にシュナちゃんにボトルをあけさせるのをやめろ。お前がカオルを抜いてNo1になりたいっていう気持ちはわかる。だけど、シュナちゃんがAVにまで出るようになったのは、お前のNo1になりたいってエゴに、シュナちゃんがつき合わされた結果だ」

    2005-11-02 23:44:00
  • 126:

    NN

    No1になりたくて。ただNo1になりたくて。雷さんの話を聞いている時の俺自身が怖かった。これは、シュナへの罪悪感じゃない。AV女優になったもんは、もうしょうがない。シュナに開けさせないとNo1になれない。そう思い続けている自分が恐かった。これは歌舞伎町マジックなんかじゃない。
    もう、自分は歌舞伎町という舞台から引くことができないのだ。

    2005-11-02 23:45:00
  • 127:

    NN

    「雷ちゃん雷ちゃん、エゴに付き合わされた結果っー言い方はおかしいで」「カオル!」腕を組み、壁に持たれながら、カオルさんは片手に火の付いたタバコを持ち眠そうな顔をして、つぶやいた。

    2005-11-02 23:46:00
  • 128:

    NN

    「No1にしたげたいって思ってシュナちゃんが勝手に働き始めたんも悪いやろ。別に彩人が女優なれ!て強制したわけちゃうねんから。シュナちゃんに限らずこういうことはよくあったやろ。過去にも。とまらへんくなってしまった一般のお客さんがソープなったりとか。ホストクラブにはつきもんみたいなもんや」お前なぁ・・・、と、雷さんはため息をついた。

    2005-11-02 23:47:00
  • 129:

    NN

    そしてカオルさんは俺の方を見ると「そうやんな」と同意を求める。「はい」と答えてしまう自分が悲しい。こんな時にでもNo1とNo2の差は一目瞭然だ。「雷ちゃん、妙に最近シュナちゃん関係の話で、彩人につっかかるやんなぁ」

    2005-11-02 23:48:00
  • 130:

    NN

    雷さんはあせると早口になる。と、店の誰かが言っていたけど、まさにその通りだと思った。早口になったら雷さんをまぁまぁそうカッカせんと、と、カオルさんは幼い子供をなだめるかのように、耳元でボソッとつぶやくようにささやく。「まぁ頑張りやー」「だっだから違うっていってるだろ!!!!」カオルさんと雷さんのやりとりを前に俺は店内をボーっと見渡していた。

    2005-11-02 23:49:00
  • 131:

    NN

    俺にそのボトルの価値があったのか。そんなことを考えだしたらキリがない。だけど譲れないものがあった。 誰を傷つけてもいいから。たとえ自分のためにソープになろうがAV女優になろうが、それは俺にとっての「毎度あり」だ。

    2005-11-02 23:52:00
  • 132:

    NN

    金さえかけてくれれば何だって綺麗に出来上がるさ。「本物」じゃなくても、金さえかけてくれれば、本物のそぶりくらいできるさ。あけてくれるなら、愛だって囁く、愛だって注ぐよ。
    俺がそうさ。本物のフリをした偽物。

    2005-11-02 23:54:00
  • 133:

    NN

    そんな偽物を手に取り 本物だと疑わない客。
    悪いのはどっちなんだろう?

    2005-11-02 23:54:00
  • 134:

    名無しさん

    ぉもろ?

    2005-11-03 00:06:00
  • 135:

    アユカ

    めちゃおもろぃです!!頑張ってくださぃ☆☆

    2005-11-03 00:15:00
  • 136:

    NN

    アユカさん 155さん 読んでくれてありがとございます!!めっちゃ嬉しいです。更新は続けるのでよかったらまた読んでください!!

    2005-11-03 00:52:00
  • 137:

    NN

    ホストという仕事は 世間一般でいうと 女を騙して金を巻き上げて 最低な仕事だっていう。
    だけどホストほど 勝ち負けがはっきりする仕事は そうそうないんじゃないか ここで勝ち上がるということは ここで勝ち続けるということは すごいことなんだ。ホストは戦ってるんだよ。自分と、そして残された体力と。

    2005-11-03 00:55:00
  • 138:

    NN

    シュナは今日来るだろうか..そう思った瞬間携帯が音を立てる。着信だ。画面を見るとシュナの文字。俺は雷さんから隠れるようにしてバックヤードに走り電話を取る。「もしもし?」平常心。心の中でそう繰り返していた。「もしもし彩人?今から行くねっ今タクシー乗ったところだから!」シュナはいつものように元気な声だった。

    2005-11-03 00:57:00
  • 139:

    NN

    「ああ、待ってる。近くまで来たら電話して。迎えに行くよ」俺はそう答えて電話を切った。切った瞬間、やるせない気持ちと、これでいいんだと言い聞かせている自分と、2人の自分が存在した。俺はホストだ。これは仕事だ。そう何度も何度も思った。「お客さんが自分のためにソープ行ってAVでる。そんなことよくある話だ、気にすることなんかないんだよ。」そう言ってオーナーは俺の肩を叩いた。

    2005-11-03 00:59:00
  • 140:

    NN

    そうだ、カオルさんだってそう言っていたじゃないか。俺は間違ってない。No1になるんだ、なるんだ。「彩人はまだ人間なんやな。」振り向けばカオルさんが立っていた。「どういう意味ですか?」俺は携帯を片手に握り締めカオルさんを見る。「俺なんてもうホストサイボーグやねん。もう、客がどうだこうだっていうよりも、自分のことしか考えてへん。彩人、客に罪悪感覚えてたらいつまでたってもNo1にはなれんで。」

    2005-11-03 01:02:00
  • 141:

    NN

    心臓を突き刺された気がした。カオルさんは今まで見たことのないぐらい、冷酷な顔をしてそうつぶやいた。「ホストに客への感情移入はいらんで。ナンバー入るようなホストならそんぐらいわかるやろ。」「すいません」俺は小さな声でカオルさんに謝り、頭を下げる。

    2005-11-03 01:05:00
  • 142:

    NN

    「彩人見てるとまぶしいわ。一生懸命すぎるからお前は。」「そんなことないですよ。カオルさんの..言うとおりだし、全部」素直にそう思った。シュナのことを心配してるなんて口ばっかりだ俺、心の中では金ズルがでかくなったと喜んでいる気がする。
    落ち込んだ顔で俺が床に座りこむと、カオルさんは悲しそうな顔をしてつぶやいた。

    2005-11-03 01:07:00
  • 143:

    NN

    「俺は、いつからこんなホストになってしまったんやろ。」

    2005-11-03 01:08:00
  • 144:

    NN

    カオルさんが 俺から勝ち逃げしたあの日 やっと その意味が 少し わかったんだ

    2005-11-03 01:12:00
  • 145:

    116

    頑張って完結して下さいね。最後までよませてもらうんで…。

    2005-11-03 01:45:00
  • 146:

    タィトル通り

    ァャトが客と心中?

    2005-11-03 01:54:00
  • 147:

    名無しさん

    2005-11-03 03:13:00
  • 148:

    なきほ

    ずっと読んでます。頑張ってくださぃ!絶対完結してくださぃね!

    2005-11-04 15:08:00
  • 149:

    NN

    読んでくれてありがとうございます!!絶対完結させます。

    2005-11-04 23:33:00
  • 150:

    NN

    シュナはその日、1時過ぎに店に現れた。いつもと変わらない笑顔で「彩人っ!」と手を振っていた。最近シュナは少しやせた気がする。今、そんなことに気がついたんだけど。
    「もう彩人ぉ会いたかったぁ」そういっていつものように俺に抱きつこうとした瞬間、雷さんがシュナの腕をつかんだ。

    2005-11-04 23:35:00
  • 151:

    NN

    「シュナちゃん、ちょっといいかな。」「え?」そういうと、あっけにとられたまま、シュナは雷さんにひっぱられ、店から消えた。
    何かのドラマのワンシーンを見ているようだった。

    2005-11-04 23:36:00
  • 152:

    NN

    「王子様がお姫様を、悪魔から救いにきたんやね」カオルさんは微笑んだ。「俺、悪魔ですか。」俺が渋い顔でつぶやくと、カオルさんはケケケと笑う。「あんな、正義のヒーローよか悪役の濃ゆいキャラのが、以外にファンがつくもんやねんで。」

    2005-11-04 23:37:00
  • 153:

    NN

    じゃあ仮に雷さんが正義のヒーローで悪役の濃いキャラが俺だとしたら。カオルさんは一体何だろう。どのポジションだ。どんな魔法も使える魔法使い。そんなところだろうな。魔法使いの言葉はいつも妙に説得力がある。

    2005-11-04 23:38:00
  • 154:

    NN

    さすが、魔法使い。悔しい。まだ、全然、この人には歯がたたない。 

    2005-11-04 23:39:00
  • 155:

    NN

    彼女の腕をつかんで、俺は店の裏までやってきた。賑やかな表向きとはちがい、裏は静かだ。たまに人がパラパラと歩いてくるだけ。まるで別世界だ。「何ですか、雷さん。」
    彼女は驚いた表情のまま、顔をかしげながら俺にたずねる。

    2005-11-04 23:40:00
  • 156:

    NN

    ドクン、と心臓が音をたてる。腕をつかんでやってきただけで、実は何も考えていなかった。「..これ以上、お金、使わないでほしいんだ。」「え?」
    自分でも何を言っているかわからなかった。だけど、そう伝えるしかなかった。右手をグッとこぶしにすると、汗が出ているのがわかった。

    2005-11-04 23:41:00
  • 157:

    NN

    「もしかして、心配してくれてるんですか。あたしが..AVに出てるの。」「えっ」「さっきね、デカムに入ろうとしたら、綾人口座の子に言われたの。あんたAVまでやって彩人に貢いでるんでしょって。デカムのホストの中でも噂になってるよ、って。」 噂になってる..
    と、まではいかないが、俺と彩人とカオルはシュナちゃんがAVに出ていることを知っている。

    2005-11-04 23:42:00
  • 158:

    NN

    だけどシュナちゃんが、まだこれからもAVを続けていくと話題は拡大するだろう。「でね、その子に言われたの。彩人は誰もスキじゃないよ、ただ愛を囁いてくれるのはあたし達が金を使うからだよ、彩人に踊らされてAVに出る、あんたの度胸は尊敬するけどねって。」「誰がそんなこと」雷の言葉をさえぎるように、シュナは続ける。「ねぇ雷さん。彩人、あたしの事スキになってくれないのかな?AVに出てお金、いっぱいもらったの。このお金で、彩人、あたしのこと、本気で好きになってくれないのかな?」
    何で君はそんな悲しそうな顔をするんだ。AV女優になったって噂が充満していることより、シュナちゃんは彩人に愛されないでいる方が悲しいみたいだ。そんなのおかしいじゃないか。

    2005-11-04 23:43:00
  • 159:

    NN

    「もう..シュナちゃんやめよう?もう、お金、稼がなくったっていいから..一度、彩人から、うちの店から、離れた方がいい。」「どうしてそんなことを言うの?絶対いやよ、彩人と会えなくなるなんて、絶対に嫌、耐えられない。あたしは彩人がいなくなったら何もかもなくなる気がするの。彩人はいつか絶対、あたしのこと、好きになってくれる。雷さんだって店のホストじゃない、店に来るななんて、そんなこと客に言うのはおかしいわ。」

    2005-11-04 23:44:00
  • 160:

    NN

    わかってる。俺だって店のホストだよ。だけど、その前に男なんだ。プロ失格。自分の勝手な想いだけで、こんな行動をとってる。プロ失格。だけど、誰だって譲れないものがある。それが、これなんだよ。今、そう気がついたんだよ。夜風がなんだかすごく冷たく感じた。

    2005-11-04 23:45:00
  • 161:

    NN

    彩人がシュナさんを好きになる確率はほぼゼロだろう。彩人にとってシュナさんはNo1になる道具でしかない。AV女優になったとしてでも、何でも、自分に金を落としてくれればきっと満足だろう。彩人には才能がある。ホストとしての、才能は全て備わってる。だけど、違うだろ。ホストとしての才能より、人間としての本質があいつにはかけてる。
    だからこうして、シュナさんの人生を狂わせようとしてる。その瞬間を、俺は黙ってみてられない。正義感でも偽善でも何でもない。ただ、

    2005-11-04 23:46:00
  • 162:

    NN

    「どうして?今日の雷さんおかしいわ」ただ「好きなんだ。シュナちゃんのことが」「好き?」

    2005-11-04 23:47:00
  • 163:

    NN

    一世一代の言葉に、シュナちゃんはフっと笑った。「..そうなんだ。雷さん、あたしがAV女優だからでしょ?すぐヤらせてもらえるって思ってるんだ。ヤりたいの?」その言葉は、俺の心臓を突き刺した。そして、俺は叫んだ。大声で、叫んだ。

    2005-11-04 23:48:00
  • 164:

    NN

    「俺はヤりたいんじゃない!!抱きしめたいんだ!!」何かを言おうと君は唇を動かした。だけど君の口からもう何も聞きたくなかった。君の唇からこれ以上、「彩人」なんて聞きたくなくって、臆病な俺はキスで言葉をさえぎった。

    2005-11-04 23:49:00
  • 165:

    NN

    彼女はびっくりしていたけど、涙目になって俺を見つめるその目を見て、初めて離したくないと思った。一瞬、時間が止まったのかと思った。
    無表情にすれちがう人、車のクラクション、噂話、肌寒さ、何も感じなかった。ただ抱きしめた彼女の心臓の音が小さく聞こえた。

    2005-11-04 23:51:00
  • 166:

    NN

    一瞬驚いた彼女だったが、すぐに俺の腕を振りきって、走っていった。「嫌われたってかまわないから!俺、しつこいから!ずっと、ずっと、シュナちゃんのこと好きだから!!」何ふりかまわず俺は叫んだ。去っていく彼女がどんどん小さくなるなか、叫び続けた。「好きだ!!!!!」

    2005-11-04 23:52:00
  • 167:

    NN

    ここは歌舞伎町。性と欲望と金だけじゃなくて 愛だって この場所のどこかで 存在しているはずだ。 世界の中心で なんて大げさだ 
    この歌舞伎町の片隅で 確かに俺は君に愛を叫んだ 確かに 愛を 叫んだ

    2005-11-04 23:55:00
  • 168:

    ?

    泣ける

    2005-11-05 01:39:00
  • 169:

    名無しさん

    2005-11-05 01:57:00
  • 170:

    名無しさん

    すごい!

    2005-11-05 12:38:00
  • 171:

    なきほ

    更新されてたぁ!ありがとぅ!なんか胸がキュンってなった…頑張ってな!また待ってます

    2005-11-05 14:28:00
  • 172:

    191デス

    シュナの気持ちが地味にヮカルょッ??ゥチもホスはまってやるせん時ぁったァ…シュナの話書いてッ???雷チャン萌バクワラ?メタメタ切ナィ?

    2005-11-05 17:42:00
  • 173:

    NN

    192さんまとめてくれてありがとうございます。なきほさん、ずっと読んでくれてありがとうございます!!めっちゃ嬉しいです。195さんシュナの話はまだちょっと続くんで、読んでやってください。
    みなさんの感想めっちゃ嬉しかったです!!ありがとうございます!!

    2005-11-05 18:05:00
  • 174:

    NN

    店内に戻ると店はいつも通り、にぎやかだった。テクノサウンドが頭の中を刺激する。暗い照明の店内で、カオルは俺を待ち構えていたかのように、「ほんまに根っからのヒーロー体質やね、雷は」と、つぶやいて微笑んだ。「お前、見てたのかよ」
    「企業秘密ってことにしとくわ」カオルは、全く食えない奴だ。

    2005-11-05 18:08:00
  • 175:

    NN

    彩人は、いつもの顔で客を接客している。今日はなんだか彩人の笑顔が無性に目に付いた。わかってる。彩人への嫉妬だと。
    わかってるのに止められない。

    2005-11-05 18:09:00
  • 176:

    NN

    「人を好きになるってのは一種のドラック現象。止まらない、止まらない、気がついた頃には骨までボロボロ..なんてならんようにね。」 カオルの”忠告”がやたらに胸に響いた。
    俺、最低だな。後輩に嫉妬してイライラするなんて。シュナちゃんに会いたいけど きっと会ってはくれないだろう。だけど彼女は彩人に会いたくなるから またこの店に来るだろう

    2005-11-05 18:09:00
  • 177:

    NN

    「彩人さぁ何か今日、疲れてる?顔がなんかそんな感じ。」客に言われてハッとした。まさか顔にまで出ているなんて。「いや、何もないよ」笑顔でそう言うと、客は「ならいいけど」と微笑んだ。 -雷さんに余計なことをされた。
    正直、そう思っている自分がいた。

    2005-11-05 18:10:00
  • 178:

    NN

    雷さんがシュナをつついたせいで、シュナは今日、店にやってこない。シュナがいないと、NO1とNO2の差は開いていく。新しいエース客を見つけないと。頭の中でグルグル回る言葉はひたすら、それだけだった。

    2005-11-05 18:11:00
  • 179:

    NN

    まるで客を消耗品扱いしてる。いつからこんな人間になったんだろう。
    この仕事をしているゆえかな。それともそれはただのいいわけであって、俺はずっとこんな人間だったのかな。

    2005-11-05 18:12:00
  • 180:

    NN

    とてもじゃないけど、世界の中心で愛なんて叫べたもんじゃない。たった一人を純粋に愛せるわけもない。
    人間としては失格だ。ホストとしても、こんなやり方は失格かもしれない。
    だけど止まらない。もう、止まれない。

    2005-11-05 18:13:00
  • 181:

    NN

    だけど夢を手に入れることがこんなに窮屈なことだとは思わなかった。
    こんなにも他人を犠牲にするんだな。人ひとりとして傷つけず 夢を叶えるなんて無理だ
    俺はNo1になりたい その夢がある限りずっと 人を傷つける

    2005-11-05 18:15:00
  • 182:

    NN

    従業員トイレに足を踏み込むと、東吾がタバコを吸っていた。セブンスターの匂いが狭い空間の中で充満している。
    俺が入ってくるのを見ると、東吾は「ゲロ?」と訪ねる。「ちげぇよ。」短い返事をすると、「そうか」と、もっと短い返事が返ってくる。

    2005-11-05 18:16:00
  • 183:

    NN

    スーツの内ポケットから、俺もタバコを取り出す。そしてその手で火をつける。 無表情でタバコの煙をフっと、口から東吾が吐き出す。 そしてトイレの水の中に、セブンスターの吸殻を落とした。ポチャン、と音を立てる。
    セブンスターの香りが妙に鼻につく。その香りが、俺の香水と微妙に混じって、身動きが取れなくなるみたいに。

    2005-11-05 18:18:00
  • 184:

    NN

    譲れないもの。No1になること。それだけあれば十分。その気力だけで俺は生きてるってわけだ。何もなかった俺に生きる気力を与えてくれたのがこの仕事。
    誰にも譲れないんだ。譲れない。だから..。

    2005-11-05 18:19:00
  • 185:

    NN

    だとしたら、必要ない。この体、ブっつぶれるまでやってやる。それで死ねるなら本能だ。これ以上幸福な死はない。
     夢のためなら 死ぬことさえ 恐れない それがあの頃の俺の最大の強みだった。

    2005-11-05 18:21:00
  • 186:

    ???

    頑張って?

    2005-11-06 01:17:00
  • 187:

    ?

    この話の元になってるホス君トカいるんですか??

    2005-11-06 01:28:00
  • 188:

    ?

    ァャト??コレゎ元ゎァ○ァなんで素かッ??

    2005-11-08 05:17:00
  • 189:

    名無しさん

    2005-11-08 07:17:00
  • 190:

    ????????????????????????

    2005-11-08 14:49:00
  • 191:

    NN

    読んでくれてありがとうございます。モデルは特にいませんし元ネタもないですよ〜

    2005-11-08 22:35:00
  • 192:

    NN

    シュナの事件から1週間がたった。ナンバーは相変わらず、カオルさん、俺、雷さんという順番だった。

    2005-11-08 22:37:00
  • 193:

    NN

    シュナは雷さんとの事件以来全く姿を現さなくなってしまった。
    一度こっちから連絡してみたものの、電話に出ることはなく、メールを送ってみるとエラーで返ってきた。
    どうやら店からも姿をくらませているらしく、「伝説のAV女優」としてその名前が1人歩きしているだけだ。シュナのあけた穴をどう埋めるか。俺の頭の中はそれだけだった。

    2005-11-08 22:40:00
  • 194:

    NN

    3日前の出来事だ。「女1人つぶしといてあんたは何様なの。シュナは本気であんたが好きだったんだよ!!」
    シュナが以前勤めていたキャバクラの女に言われた。どうやら女はシュナの親友らしかった。店内まで乗り込んできた女は俺を散々罵倒した。
    俺は何も言わなかった。ここで吠えたって意味がないことはよくわかってる。黙っていた。

    2005-11-08 22:41:00
  • 195:

    NN

    最後は痛烈にビンタを一発食らったけれど、これくらいで済んだらまだマシだなと思った。
    そして俺はこれまで以上に新規客、つまりまだ指名が決まっていない客の接客には神経質になった。短い時間でどうやって自分をアピールするか。どうやってデカイ客を捕まえるか。頭の中はただただそれだけだった。

    2005-11-08 22:42:00
  • 196:

    コレ

    スゴイリァルだ

    2005-11-10 04:28:00
  • 197:

    なきほ

    あげとく☆頑張って

    2005-11-10 09:12:00
  • 198:

    名無しさん

    221さん、ありがとうございます。なきほさん、毎回読んでくれてありがとうございます!!すごく嬉しいです。

    2005-11-10 23:42:00
  • 199:

    NN

    「これ見てな。これ。昨日、金ためて買ってもった!」朝7時。クローズした店内で、カオルさんは手のひらサイズのデジカメを満足げに手にとり、店内をパシャパシャ撮影していた。カオルさんの給料じゃデジカメなんて金ためて買うまでもないだろ、と、俺は思ったけど、そうですか、と返事をしておいた。
    雷さんとはあれから口を聞いていない。店内の真ん中で、パソコンを無表情で触っている。何だか東吾みたいな顔をしている。その東吾はソファで夢の中。

    2005-11-10 23:44:00
  • 200:

    NN

    「カオルさん。」「何や。」俺の声に返事をしながらも、パチ、パチ、というカオルさんのデジカメ撮影は止まらない。そして俺にカメラを向けて、パチっと一枚撮った。
    「おお、男前に撮れたでー」そう言って微笑んだ。微笑む口元からは八重歯がチラっと見える。

    2005-11-10 23:45:00
  • 201:

    NN

    何でカオルさん、ホストになったんですか。 その言葉で一瞬記憶がよみがえった。今、こうして歌舞伎町のネオン街で、そしてこの店でNo1になったとゆうこと。
    時々全て夢物語に思える。仕事が終わって夕方にふと目が冷めると、まだ、時々地元の友達の顔が浮かんでくる。あの街を離れてもう何年も経っているのに。まだ、あの時の記憶は明確に残っている。

    2005-11-10 23:46:00
  • 202:

    ????????????????????????

    2005-11-10 23:47:00
  • 203:

    NN

    一体何をそれだけ話すことがある?そう聞かれることもしばしばだったけど、俺達には聞かれても答えなんてスグ言い出せない程、本当にたくさんの話があり、そこには夢もあった。
    田舎でも都会でもない、だからといって何もこの街に不満はなかったはずだ。

    2005-11-10 23:49:00
  • 204:

    NN

    なのにひとつひとつ、毎年毎年、年をとっていくうちに、この街を出なくちゃいけないのかもしれない、と誰しもが考え出す。新しい土地での就職、夢を追いかけ上京。
    事情は人それぞれだが、制服を脱ぎ捨てた瞬間、街は僕らに「大人になって」と語りかけてくるんやな。

    2005-11-10 23:50:00
  • 205:

    NN

    コンビニでバカ騒ぎした仲間は今どうしているんやろう。あの街には、もういないやろうな。
    新井に柴田に、勝又に、野村に..。すれ違ってももう気がつかないやろおうな。もう立派な大人の顔になってたり、大学生になってたり、みんな新しい環境で一から全てを立ち上げてるんやから。そう、俺もそうやから。

    2005-11-10 23:51:00
  • 206:

    NN

    228さん読んでくれてありがとうございます!!

    2005-11-10 23:52:00
  • 207:

    NN

    金髪の髪の毛を何とかしろ、と毎朝怒りに教室までやってきた、毎日上下青ジャージの生徒指導の飯島、だけど何だか憎めない奴だったな。
    2年間付き合った彼女の名前は下田百合。あの日見えなかったものは何なのかな。今になってうっすらそれがわかってきた気がするのに。

    2005-11-10 23:56:00
  • 208:

    ???

    頑張って?

    2005-11-10 23:57:00
  • 209:

    NN

    卒業後すぐに百合とは上京することが原因で別れた。俺たちの2年は、そこで終わった。
    夢があった。東京に行かないと、叶わない夢。って言い聞かせてただけで、東京じゃなくてもよかったのかもしれない。

    2005-11-10 23:59:00
  • 210:

    NN

    だけど今出ないと 今走り出さないと 俺は自分を焦らせていた。でっかいスポーツバックと、でっかいカメラを首にぶらさげて、大阪を走り出た。お金なんかほとんどなかった。渋谷を歩いていると、「キミキミ」と呼び止められた。
    キミ、なんて言葉を生で聞いたのが初めてで、好奇心で振り向いてしまった俺は、気がつけばホストクラブっていう舞台に立った。

    2005-11-11 00:00:00
  • 211:

    NN

    上京後、一度実家に帰ったけど、ホストやってる、と、正直に言うと、親父に案の定勘当されてしまった。第一声は「二度帰ってくるな!!」だった。それから一回も実家には帰っていないけど、最近、親父から「雑誌見た。お前も頑張ってるんだな。」と、短い言葉が留守番電話のメッセージに残っていた。俺はそのメッセージを何度も何度も再生して、不器用な親父らしい、と、ひとり笑ってしまった。
    また時間が会ったら 帰るで その言葉、伝えたかったんやけど、伝える暇も時間もなく、何ヶ月も経ってしまった。

    2005-11-11 00:01:00
  • 212:

    NN

    季節は何度もめぐってその度、どんどんこの世界に染まりきって、抜け出せないでいる自分が居ることも確かだ。気がつけばカオルさんに憧れてホストになりました、なんて、言われるまで古株になってしまった。

    2005-11-11 00:03:00
  • 213:

    NN

    俺は一人、電話を片手に笑顔になる。夢はある。ホストはその途中で見つけた「拾い物」。まだ時々不安になるんや、俺も消耗品。いつか消えてしまうんかなって。やけど、たとえ俺自身が、ホストという仕事が、消耗されていくものだとしても、俺はなんぼでなんぼのナニワ大阪人。
    無駄な使い方はしぃひん。今はホストの世界で真剣勝負。夢に近づくのは、この仕事を終えてから。

    2005-11-11 00:05:00
  • 214:

    NN

    上京して失ったもんもあったかな やけど こうして 失ったと思っても よみがえってくるもんかて あるんやね。俺には守るものがある。夢もある。だから..

    大切に 記憶の中で あの頃を守ってゆけるように

    2005-11-11 00:06:00
  • 215:

    名無しさん

    続き待ってます。

    2005-11-11 02:38:00
  • 216:

    ????????????????????????

    2005-11-11 09:50:00
  • 217:

    なきほ

    ぃつも更新してくれるから大好きデス☆頑張って

    2005-11-11 10:32:00
  • 218:

    名無しさん

    2005-11-11 13:00:00
  • 219:

    名無しさん

    すごくジーンとくるとゆぅか胸が苦しく、切なくなるお話ですね?更新待ってます?

    2005-11-12 04:46:00
  • 220:

    名無しさん

    今一気に読みました♪気になったんゃけど、途中でホスクラの名前変わりました?カムプリ→デカムになったんですか?

    2005-11-12 14:07:00
  • 221:

    ゅりん

    ぁげ↑↑
    主ゎ女ですか?男ですか?めっちゃリァルなので聞ぃて見ました☆更新待ってまぁす(*^_^*)

    2005-11-13 13:31:00
  • 222:

    ???

    頑張ってね?

    2005-11-13 13:41:00
  • 223:

    NN

    246さん247さん、読んでくれてありがとうございます。なきほさん、毎回チェックしてくれててすごく嬉しいです。頑張りますので、ぜひ最後まで読んでください。249さん、まとめてくれてありがとうございます。
    250さん、切ないってゆってもらって嬉しいです。251さん、指摘ありがとうございました。ミスです..すみません!!店の名前の候補が2つあって気がつけば変わってました..正しくはカムプリのままで..すみません。ありがとうございました。

    2005-11-13 23:19:00
  • 224:

    NN

    ゅりんさん、ありがとうございます。これからもちょくちょく更新続けます。さてさて性別ですか??それは秘密です(笑)
    ???さん、ありがとうございます!!頑張ります。 感想を書いてくれた方、ありがとうございました。めっちゃ嬉しかったです。

    2005-11-13 23:21:00
  • 225:

    NN

    別に偉そうなことを言うわけじゃなけれど努力すれば願いは叶う だなんて笑ってしまった。生きてこのかた何かに必死になる、死に物狂いになるなんてことなかった気がする。
    別にそこまでっていうものがなかったのかな、今まで生きてきた世界は 息もできなかった。だけど今の仕事と出会えて 生まれ変わるって言葉を実感した

    2005-11-13 23:25:00
  • 226:

    NN

    この仕事は俺に命をくれた、そして この仕事を失うと言うことは 俺が命を失うということだ。いっそ殺してくれたってかまわないよ
    努力すれば願いは叶う 今なら信じられそうだ

    2005-11-13 23:27:00
  • 227:

    NN

    俺はカオルさんに火をつけられて、それでいつも東吾の言葉に目を覚めさせられる。東吾の言葉は覚醒という名のドラッグだな。
    2人でタバコを吸っている時が一番落ち着く。東吾と出会ってまだ2年位しか経っていないけど、ずっと一緒にいるような感覚にさえおちいってる。本当に不思議な奴だ。

    2005-11-13 23:28:00
  • 228:

    NN

    「あの人たちって雑誌に載ってたホストじゃない?」「カムプリのNo2でしょヤバイねぇやっぱかっこいい」「うんうんめっちゃカッコイイ..。」「何あれすげぇキモイんだけど」「うわぁナルシストくさっあんな男が一番いやぁ」

    2005-11-13 23:31:00
  • 229:

    NN

    色々な言葉が交差してどれも耳に入ってくるけど、中傷されたり冷やかされたりもあるわけだ。だけどそんなものは気にしない。何かしようとすれば、必ずそういうモノも背負わなくちゃいけない。目立ってこそのこの世界だ。
    それすらできないなら何もできないじゃないか。中傷になんか怯えてられない。

    2005-11-13 23:32:00
  • 230:

    NN

    「彩人ぉ!東吾ぉ!」客に会うことも珍しくない。今日も、でっかいシャネルのロゴが入ったかばんを片手に、フランス人形みたいな髪型をした女が俺に手を振る。今から仕事だそうだ。ユリ、彼女の職業はキャバクラ穣。俺の客の1人でもある。
    「おー今から仕事?」「うんっ今日、帰りカムプリ行くから」「おお、待ってる。」 短い会話。その中でいかに恋人気分にさせるか。
    それが営業。微笑む俺の横で東吾は相変わらずの無表情だった。

    2005-11-13 23:34:00
  • 231:

    NN

    彩人の仕事への熱意は、話していると時々、何かビリっと痺れるような感覚を覚える。彩人が、もし、今、仕事を失ったとしたら、本当にこいつは死ぬだろうなと本気で思う。
    死ぬ、なんて言葉は生きている立場からすればすごく非現実的なものに聞こえるが、彩人の口にする「死」は何だかすごく身近に感じて、この俺ですら恐くなるのだ。

    2005-11-13 23:38:00
  • 232:

    NN

    東吾は彩人に視線を向ける。彩人はメールを必死に打っている。−誰にだって譲れないものがあるだろ?−前にもアヤは俺に同じ言葉を投げかけた。
    彩人のその言葉に対して無気力で19年間生きてきた、と答えたような気がする。意識して無気力だなんて思ったことはない。

    2005-11-13 23:39:00
  • 233:

    NN

    周りにやる気がなさそう、とか、ダルそう、とか、人間離れしてる、と、言われることが多いのだ。ホストの仕事を始めたきっかけは、深夜ボケッと歩いていたら、スーツを着た実に胡散臭い男に話しかけられた。
    男は俺の肩をたたいて、「ねぇ君ホストとか興味ない?」と言った気がする。その胡散臭い男って奴は、この店のオーナーである原田さんなのだが。

    2005-11-13 23:40:00
  • 234:

    NN

    原田さんは「氷咲カオルって知ってる?有名なホスト。うちの店の子でね。君、なかなかホストにいけると思うよ、第二のカオル、なんて目指してみない?」と続けた。氷咲カオルなんて人間は全く知らなかったし、自分のどこがどうホストにいけるのか、だとか、疑問だらけだったが、原田さんは偉く熱心にずっと「ホスト」「ホスト」と連呼した。そして俺はyes も Noもなしに、気がつけばホストになっていた。

    2005-11-13 23:41:00
  • 235:

    NN

    店内に初めて連れて行かれた時、彩人とも初めて会った。彩人もその日が、初出勤だったのだ。つまり俺とやつは、同期というわけだ。ヤツは確か..黒いスーツを着て新人とは思えない位堂々としていたっけ。
    「東吾は初対面の時めっちゃ恐かったな。だって舌ピアスに耳にも数え切れないくらいピアスしててさ、しかも無表情でボサっと立ってるの。迫力に圧倒されたって。しかも同い年に見えなかったし。」昔話をすると、彩人は必ず俺にそう言う。俺から見た彩人の第一印象は..忘れた。

    2005-11-13 23:42:00
  • 236:

    NN

    ああ、やたらに香水くさくてホストっぽい男だなって思った。というか、ホストなんだな。金髪の髪の毛を一生懸命逆立ててるな とも思ったな。いまだに気が合うとは全然思えないが、同期だしなんとなく一緒に行動するようになっていた。
    彩人は自分では気がついてはいないと思うが、かなりの熱血男だと思うのだ。最近は「No1になりたい」しか言わなくなった。燃える精神というか。誰かこの炎を消火してやってほしい。

    2005-11-13 23:44:00
  • 237:

    NN

    って、誰にも消せるわけがないか。彩人がNo1にならない限り、この炎はどんどんどんどんデカくなるだろう。そしてもっと気がつけば自分もホストになって一年が経っていた。
    最初は、俺をスキだと言ってくれる客が奇妙に見えた。

    2005-11-13 23:47:00
  • 238:

    NN

    ホストの世界が奇妙だから、客も奇妙なわけだろうが、という結論に辿り着いた。流されるまま、毎晩酒を飲みながらそう思っていたが、一年経った今、あの頃と少し変わったことがある。タバコの銘柄。も、そうだが、もっと大事なことだ。
    スキだと言ってくれる客が今はありがたいということ。俺は彩人の憧れ?の、氷咲カオルのような客を盛り上げるような楽しい会話ができるわけでもなく、彩人みたいに派手なパフォーマンスもできない。
    なのに新人時代から今までずっと一年間俺に会いに来てくれる客が気がつけば増えていた。

    2005-11-13 23:49:00
  • 239:

    NN

    ある客に「俺と話していて何か楽しい?」と聞くと「楽しいよ。何で?」と逆に聞かれ「気になった」というと、「楽しいじゃない?あたし、東吾はすごい魅力あると思うよ」と笑いながらも答えてくれた。そのホストを初めて遅すぎるのかもしれないが、「やっててよかった」という気持ちが自分の中にうまれた。その後も、新しく自分を指名してくれる客に会うたび、その気持ちは大きくなっていく一方だ。彩人と違ってNo1になってやる!!って気持ちはないし、今の現状に満足だ。
    選んでくれる人がいる間はこの仕事を続けようと、俺は思うようになった。

    2005-11-13 23:50:00
  • 240:

    NN

    「東吾、どうしたんだよボケッとして。」「ああ、立ちながら寝てた」何だそれ、と、彩人はつぶやいた。「彩人、もしかしてホストって本当はすごく自分を好きになれる仕事かもしれないな。」
    「は?東吾、いきなりどうしたんだよ」あっけらかんとする彩人の横で俺は小さくうなずいた。

    2005-11-13 23:52:00
  • 241:

    NN

    ■■
    新人時代、もう毎日クタクタになるまで話し続けた。どんな客に対しても諦めるなんてことはしなかった。「何それ。おかしいじゃん。それはあなたが悪いっしょ。」アリスの一言で、一瞬世界が凍った。
    雷の指名客にアリスがヘルプで入った時の出来事だった。彼氏の愚痴を話していた客・エリコに向かってのアリスの『失言』。

    2005-11-13 23:53:00
  • 242:

    NN

    「何この子..」と、客のオンナは眉をひそめる。焦った雷はすぐに「ごめん!こいつ新人だから!」とフォローを入れる。オンナは、「いくら新人でもさぁ」と、つぶやくとアリスをにらみつける。
    「この子やだ、ヘルプさぁ他の子にチェンジして?」険悪な雰囲気は断ち切れなかった。アリスをはずし、他のホストをヘルプにつけたが、オンナはムスっとした顔のままだ。雷は体全身から冷や水が流れ出ていることに自分で気がついた。その時、背後からカオルが顔をのぞかせる。

    2005-11-13 23:55:00
  • 243:

    NN

    アリスのホストデビュー戦、初ヘルプは、エリコの機嫌をそこね、一瞬にして終了。雷は、店内にいたアリスを従業員トイレの前に呼び出し怒鳴りつけた。「お前さっきの接客はなーんだ!!あんなこと続けてると指名とれるどころかクビだぞ!!お客さんに対してなんだあの言い方は!!!!」
    静かなバックルームに雷の声が響く。「うっるさいなぁ」そして、小さな声でうっとおしいな、と付け足した。

    2005-11-13 23:58:00
  • 244:

    NN

    「うるさい!?うっとおしい!?大体お前、その態度がな」「もぉーいいじゃんっカオルちゃんのおかげでどうにかなったんだからさぁ」「いいってお前カオルちゃんってお前..」どこから注意したらいいのかもわからなくなってくる。大先輩でNo1のカオルに向かって新人ホストがカオルちゃん呼ばわり。助けてもらったというのに感謝の一言もない。注意する言葉にも詰まってしまう。「だーから次から気をつけるよー。」アリスは怒り心頭する雷に舌を出し、スキップしながらバックルームを去る。

    2005-11-14 00:00:00
  • 245:

    NN

    怒りを通り越してあきれてきた。新人教育を何人もしてきたが、あそこまで..何というか、神経がずぶといというか無神経というか礼儀がないというか、そんな奴は初めてだ。大体あいつはホストって仕事を何だと思っているのだろう?部活の延長だなんて思っていないだろうな。
    毎晩嘔吐する彩人はNo1に上り詰めたいがためだけに生きてるっていったって過言じゃない。カオルはいつも笑顔ではぐらかすけど、あいつにも何か大きな夢だとか目標があるからこの世界にいるからで。

    2005-11-14 00:01:00
  • 246:

    NN

    そんな二人のパワーで今店自体もどんどん有名になってきてる。本気になった奴が一番強いんだ。楽に稼げるからホスト、女にチヤホヤされたいからホスト。そういう目標で入店するのありだろう。新人の半分以上がそんな奴だ。だけど、実際入店したからにはがんばってもらわないことには困る。限界まで、がんばってもらわなくちゃ、困る。
    俺たちはプロなんだから。アリスはそれをわかっているのだろうか

    2005-11-14 00:03:00
  • 247:

    NN

    ?「雷は毎回、深刻に考えすぎるじゃねぇ?新人を教えたってどぉせやめんだし。時間のムダ、ムダ。アリスだってどうせすぐやめるだろ。適当に教えときゃいいんだよ。そんな事よか自分の客、増やすこと考えた方がよっぽど自分のためになるよ。」 2日前くらいに、同僚ホストにそういわれた。その言葉が何だか無性にやるせなかった。
    季節が変わって、散り遅れた花みたいに。今まで何人の新人を教えてきただろう。そして何人辞めていっただろう。多分、数え切れない。

    2005-11-14 00:04:00
  • 248:

    NN

    全て時間の無駄だったのか?適当に教えておけばよかったのか?そんなのいくらだって手を抜いて教えられるけど、そんなことしたって何の特になるのだろう。何だか自分のホストとしての価値を落とす気がするよ。教えることは自己満足なのか?
    人に教えるってことは少しだけだけど、教えた!っていう、自分の自己満足だって関わってくるんじゃないかなって、俺は思うんだ。新人と一緒に、俺も少しでいいから成長していきたいんだよ。

    2005-11-14 00:05:00
  • 249:

    NN

    「そういえば、俺を教えてくれたの、雷さんでしたよね。」顔を上げると、彩人が立っていた。アリスとのやりとりを見ていたのだろうか?バックヤードに一人座りこむ俺の横に、彩人も腰を下ろす。
    彩人は多分、吐いた後だろう。顔色がよくない。それでも、こいつは、この後、また飲むのだ。飲んで飲んで、もどしてもどしてまた飲んで。

    2005-11-14 00:06:00
  • 250:

    NN

    「そうだったな。俺としてはありがたい。お前は俺が教えた中で一番の成長株だ、悔しいけどな。あと、東吾もかな。あいつも、あそこまで売れるとは、思ってなかったからな」そう笑うと、彩人はいやいや、と少し微笑む。「俺ね、新人の頃、雷さんに教えてもらって、ほんとによかったと思ってますよ。」「何いってんだ、いきなり。」驚く俺を見ながら、彩人は、いや真剣な話で、とつぶやく。

    2005-11-14 00:07:00
  • 251:

    NN

    「今思えば、何もわかんなくって不安で、ただカオルさんになりたいってそれだけで入店して,,酒の知識もないし、酒も駄目、人と会話もうまくできないし。色々、助けてくれたの、雷さんでしたよね。俺、きっと雷さんじゃなかったら辞めてた。雷さんが、俺の、この何だろう、ホストとしての根っこ、作ってくれたんですよね。アリスも、そういう気持ち、いつかわかりますよ。きっと、俺みたいにちょっと年くってからだろうけど。雷さんは寛大な人だっなって。だって俺、もう、教える立場なのに自分のことでいっぱいいっぱいで。教えようなんて気持ち、なれないですよ。」

    2005-11-14 00:09:00
  • 252:

    NN

    彩人の言葉に、体中が熱くなる。俺だっていっぱいいっぱいだよ、だけど、いっぱいいっぱいになりながらも教えるんだよ。すごく嬉しかった。彩人の言葉が。不器用な口調で必死に、俺に元気を与えようとしてくれる。俺は間違ってなかったのかな。こうして教えた後輩ホストが今、逆にこうして教えてくれてるんじゃないか。人のために教えるんじゃない 自分が教えたいから教える それは自己満足かもしれないけど
    それで感謝されたら それはきっと それはすごく..

    2005-11-14 00:10:00
  • 253:

    NN

    「おい、アリス!」俺は店内に戻るとすぐにアリスをつかまえる。「また説教?」うんざりしたような顔でアリスは雷を見る。「そうだよ。お前には一流のホストになってもらわなきゃ、困るからな。」
    「何それ」「とーにかくキャッチ、行くぞ!!キャッチの基礎を教えてやるよ」

    2005-11-14 00:11:00
  • 254:

    NN

    一応、この年になってもホストとしての夢はたくさんある。例えばもっとたくさんのお客さんと触れ合いたいだとか、自分の店を持ちたいだとか。夢を語り出したらきっと一晩じゃおさまらないよ。だけど一番の夢は、ひとつなのかもしれない。

    2005-11-14 00:13:00
  • 255:

    NN

    今、この店で。彩人や東吾に続く新人ホストを教育して、プロにするんだ。それで、一緒に。

    一緒に、この店で働いていきたいって。

    2005-11-14 00:14:00
  • 256:

    名無しさん

    読んでると勝手に妄想しちゃいマス??ゥチは雷クン口座にするでしょゥッ…(笑)?

    2005-11-14 02:43:00
  • 257:

    なんか、ありえないほどクサイ話って思ったけど、きっとホンマはこんな人間臭い部分を誰しも持っていて、夜の世界はそれを出さないではぐらかして皆生きてんだよなぁ、結構現実に近い、皆隠しながら思ってることを書いてるなぁって思ったら泣けてきた。

    2005-11-14 08:50:00
  • 258:

    ????????????????????????

    2005-11-14 10:22:00
  • 259:

    ???

    頑張ってね?

    2005-11-14 12:21:00
  • 260:

    名無しさん

    2005-11-14 12:46:00
  • 261:

    マリナ

    250です?
    この小説今1番スキです?頑張って下さぃ??

    2005-11-14 16:44:00
  • 262:

    NN

    291さんありがとうございます。こんな小説でよかったら妄想しちゃってください。292さん、ありがとうございます。風俗、キャバクラ、ホスト。職種関係なく夜の世界にいる人達はどこか本当自分を偽って仕事をしますよね。時々本当の自分はどんな人間だったのだろう?と思ってしまうことがあります。感想とても嬉しかったです。293さんありがとうございます。294さん、ありがとうございます。頑張ります。マリナさん、感想ありがとうございます。好きっていってもらえてすごく嬉しいです。更新続けるので、また見てやって下さい。
    感想をくれた方、ありがとうございました。

    2005-11-14 17:43:00
  • 263:

    NN

    「勝ち続けること」それがNo1。「必ず追い抜くこと」それがNo2。カオルさんは相変わらず他者を寄せ付けない人気だった。カオルさんのバースディがあった先日の2日間で、まだ今月も半ばだというのに俺との売り上げの差は、三百以上開いた。店の周りはカオルさんへと書かれたドでかい胡蝶蘭が並び、見るところすべて花だらけ。カオルさんの人気を物語っていた。OPENと同時に洪水のように流れだす客で、あっという間に満席。シャンパンコールがエンドレスに響き、店の中央に置かれたシャンパンタワーは溢れんばかりに重なりあい、雑誌・TVなどの取材のカメラがカオルさんをフィルター越しにうつす。

    2005-11-14 17:44:00
  • 264:

    NN

    顔、喋り、飲み、そして天性の素質。ホストがうらやむような素質を全部持ち合わせた氷咲カオルっていう人間にはきっと今に不満なんてない、みんなそう思っていたんだと思う。もちろん、俺も、そう思った。

    2005-11-14 17:45:00
  • 265:

    NN

    「来 年 も よ ろ し く な」の言葉。

    2005-11-14 17:47:00
  • 266:

    NN

    その出なかった言葉の意味。もしかしてあの時もうカオルさんは決意してたのかもしれないね。
    だとしたら俺たちは夜の世界で輝く「氷咲カオル」というホストを知っていても、本当の「かおる」さんは誰も知らなかったんだ。いや、きっと誰にもみせなかったんだ。

    2005-11-14 17:48:00
  • 267:

    NN

    あの日カオルさんが突然店から消えてしまったとき。きっとあの時、俺のホスト人生が終幕を迎えたんだ。これでよかったんだ。カオルさんはいつも手品師みたいなマジックつかってみんなを驚かせるんだ。だけど決してタネアカシをしないんだよ。そのまま「なんで?なんで?」ってみんなが聞くのをふりほどいてどこかに消えてしまうんだよね。

    2005-11-14 17:49:00
  • 268:

    NN

    もう限界って思ったことはないんやけど もうここにいたらあかんのちゃうって思うことは何度もあるカオルさんが、そんな言葉を雷さんにもらしていたことを知るのは、まだ少し先の話だ。
    −あの日 何がカオルさんをそうさせたのか 今だに 俺は わからないでいる−

    2005-11-14 17:50:00
  • 269:

    マリナ

    主さんいつも返事ありがとう??
    話が気になるゥゥ????
    続き楽しみにしてまぁす?

    2005-11-15 01:51:00
  • 270:

    名無しさん

    2005-11-15 17:00:00
  • 271:

    これは

    ミカエル?

    2005-11-15 17:11:00
  • 272:

    NN

    マリナさん、こちらこそいつも読んでくださってしかも感想までありがとうございます。とっても嬉しいです(^^)これからも書き続けますので、のぞいてやってください。307さん、読んでくださりありがとうございます(^^)ミカエル?ではないです。

    2005-11-16 00:10:00
  • 273:

    NN

    ■■
     あれは一年前の出来事だった。狭い控え室の中、一枚の履歴書を広げ、中年の男はタバコに火をつけた。カム・プリンセスの経営者である原田は、眉をひそめる。ここ一週間で自薦20人目の面接者。だいたい、面接で断る、ということはあまりしないが、今回ばかりは慎重になる。カム・プリンセスにここまで自らホスト志願者が来るとは、完全なカオル効果だ。
    カオルとは、氷咲カオルのことだ。このカム・プリンセスにおいて不動のNo1を誇る超人気ホスト。先日、カオルのドキュメンタリーが、全国区で放送された。

    2005-11-16 00:13:00
  • 274:

    NN

    と、いっても深夜に一時間だが、深夜、テレビの中に写る「王子様」に、何十万人の女性が心を奪われたことか。あの日以来、またカオルの指名客は倍増する一方だ。TVのタイトルは「TV!!24!!〜超人気ホスト・月収700万円の氷咲カオルに密着」TV放送の効果は、カオル指名客倍増だけにとどまらず、「カオルのようになりたい」と、どんどんホスト志願者が面接にあらわれるようになった。

    2005-11-16 00:14:00
  • 275:

    NN

    放送内容は、カオルがホストになるまでの半生と現在の生活を混合させたドキュメンタリーもので、家賃75万円のマンションに住むカオルの姿に、視聴者やホスト志願者はド肝を抜かれたという。

    2005-11-16 00:15:00
  • 276:

    NN

    「ドラマちっくに仕上げた方が視聴者は食いつくし」、と俺が言うと、カオルは「そやけどやりすぎっしょ、俺と違って全然違う人の人生みたいやないですか」と笑った。「ドラマちっくに仕上げた方が視聴者は食いつくし」、と俺が言うと、カオルは「そやけどやりすぎっしょ、俺と違って全然違う人の人生みたいやないですか」と笑った。「俺、オヤジとはごっつ仲いい。最初はケンカばっかやったけど。むしろ、今、応援してくれてるしなぁ。貧乏生活。そんなことないと思うわ。別に、普通の父子家庭ってゆうか。愛をすべて失ったって。ちょっとひどい言い方やわ。俺はみんなの愛あってこそのカオルやのにさ。」と、続けた。

    2005-11-16 00:17:00
  • 277:

    NN

    カオルの言葉に間違いはなかった。すべての愛を失っていたら、カオルはこんなにいい笑顔ができるわけがない。むしろ彼は全ての愛に恵まれて育ったのではないかな。「あ、でもそうかも。俺と違って全然違う人の人生。そうやね、これは『氷咲カオル』であって、俺ちゃうもんね。」
     そう言うとカオルは笑った。

    2005-11-16 00:18:00
  • 278:

    NN

    人材はいつだって欲しいが、どの新人も一ヶ月と続かない。ホストの世界は厳しいのだ。放送以来地方から大量に送られてくる履歴書の山と鳴り止むことのない問い合わせの電話を前にそう思う。夢のような生活ができるホストなんて、ほんの一握りだというのに。
    ふと腕時計を見ると時間は22時。今日だけで面接が4回。当然だが次から次にヤローばかりで嫌気がさす。「カオル、お前のおかげで求人がたくさん来るようになった、ありがたい、ありがたい。」原田は控え室でジュースを飲んでいたカオルに声をかける。

    2005-11-16 00:19:00
  • 279:

    NN

    氷咲カオルは2年前「カムプリンセス」に入店するやいなや、その端麗なルックスと軽快なトークで、あっという間にNo1に躍り出た天才ホストだ。まだたった2年しかたっていないというのに、カオルの存在は異様だった。今やホスト雑誌の表紙を何度も飾り、TVで特集されることもしばしば。カオルは完全にカムプリンセスのドル箱アイドルだ。「なーんや原田さん、ありがたい言うてるわりには顔が怖いねんけど」
    カオルが笑う。

    2005-11-16 00:20:00
  • 280:

    NN

    すると、原田はいやいや、と手を横に振る。「いや、ありがたいよ。新宿駅でお前を見た時、こいつは使える!と思って俺がスカウトしたけど、まぁさかここまで売れるなんてな。だてに俺も現役時代No1やってたわけじゃないなと。」「まだホストの世界、未練あるん?」
    カオルの瞳が動く。「いや、経営の方が楽しいね。この年になると。まぁもう一回モテてみたいっていうのも、あるけどな。」笑いながら原田は控え室の椅子に腰を下ろす。カオルもそれにつられるように笑う。

    2005-11-16 00:21:00
  • 281:

    NN

    気がつけば原田はカオルの肩をたたいていた。「君さぁボケっとして何してるの?その大きな荷物は?もしかして、上京したばっかりなの?それとも家出?」派手なネクタイに茶色の髪の毛、腕には金の時計。原田さん、第一印象怖すぎた、だって普通のサラリーマンにはどうみたって見えなかったから、これが、東京のオヤジなんかって!めっちゃビビったわ、大阪のオヤジはもっと人がよさそうやねんで、と、後になってカオルから聞いた。

    2005-11-16 00:24:00
  • 282:

    NN

    確かに、話しかけた時カオルの顔は強張っていた気がする。大阪から上京したてで、金もないし土地勘もないし行き場に困っている、って話をカオルはしたかな。 整った目鼻に加え、クニュっとあがる口角が印象的だった。カオルのルックスに関西弁が妙なくらいマッチしていて、俺は久々の「大物」を前に興奮を抑えられなかった。
    こいつはいい!ホストとして使える!そう確信したのだ。

    2005-11-16 00:25:00
  • 283:

    NN

    どうして上京したの?と聞くと、カオルは確か、そう、この瞬間だけは何にも動じず、はっきりと前を見て答えた。「夢があって。東京に来ないとかなえられない夢があるんです」
    と言った。だけど金がないのを忘れてたんですけどね、と付け足して言っていた。つまり後先を何も考えずに東京にきた、というわけだ。

    2005-11-16 00:26:00
  • 284:

    NN

    俺が「ホストなんか興味ない?寮もあるし住むところはあるし。」と、カオルを誘うと、「やります!やらしてください!」と、即答した。あまりの答えの速さに、驚いたが、カオルはきっとのたれ死にする寸前だったのだろう、「救われた〜やっぱ東京にも優しい人っておるんやなぁ〜」と、つぶやいていた。あれから2年。のたれ死にそうになっていた男は、今やこの店の看板ホスト。
    この店を支えているのは、完全に氷咲カオルだ。

    2005-11-16 00:27:00
  • 285:

    NN

    「カオル、悪いな。」「なにが?」「お前、夢があるっていってたよな。夢の為の資金集めだろ。毎月500あれば資金もクソもないだろ。お前やりたいことがあるだろうに、店の為に、いてくれてるんだろ」俺が真剣な顔をしてそういうと、カオルはプっと吹き出すように笑った。そして、テーブルの上に置いてあったタバコの箱から、一本、取り出す。

    2005-11-16 00:28:00
  • 286:

    NN

    「やめてくださいよ。そーゆうの。そういうつもり、ちゃいますから。」カオルはタバコに火をつけると、うつむき気味に携帯電話をいじり始める。

    2005-11-16 00:30:00
  • 287:

    NN

    「今日、面接はもうないんですか」「ああ。22時20分に一人、いるよ。18歳の子だけど」大して興味はなかった。またどうせカオルくずれみたいな者がくる。とりあえすカオルくずれの中から5,6人採用して..続くのが1人いるかどうか。その1人だって売れっ子になる、なんて保証はない。カオルと談笑を続けていると、控え室の扉が3回ノックされる。
    あ、面接か。腕時計を確認すると面接時間の5分前だ。

    2005-11-16 00:31:00
  • 288:

    NN

    「どうぞ」そう言うと「失礼します」と同時に男が部屋に入ってくる。その瞬間、俺は久々に息を飲んだ。男は顔が小さく、足が長い、長身でほっそりとしたモデル体系。少し辛口の顔立ちとのバランスがいい。特に目元だ。目じりがグッと上がっていて、それでかつ秘めた瞳が何かを物語っている。ホストはルックスじゃない。だけど、面接の第一難関はルックスでもあるのだ。

    2005-11-16 00:32:00
  • 289:

    NN

    「そこに、かけて。」原田がそう言うと男ははい、とつぶやく椅子に座る。男の正面にはカオルが座っている。手に汗が流れる。この衝撃はカオル以来かもしれない。俺は震える手を落ち着かせるかのように、こぶしを握り締めた。カオルの正面に座った男はすぐに声を出した。「氷咲カオルさんですよね?」「そうやでー。」カオルは笑顔で返事をする。

    2005-11-16 00:33:00
  • 290:

    NN

    男は「雑誌で見たまんまだ」と少しだけ感動していたが、すぐにカオルの方をまっすぐに向いた。その視線に迷いはなかった。「俺はカオルさんに憧れて面接に来ました。ホストになりたくって来たと同時に、No1になるために、来ました。目標はNo1。それだけです。カオルさんと並ぶ、じゃなくて、抜くのが夢です」本人を前に堂々の宣戦布告。

    2005-11-16 00:34:00
  • 291:

    NN

    「夢があって。東京に来ないとかなえられない夢があるんです」俺は当時のカオルの姿に、男を重ねた。ソックリだったのだ。揺るがない信念、そしてその奥にある強い意志、あきらめることを知らない強さ。カオルは男の言葉に「おおっ」とつぶやき、「何かはずいなぁ」と少し笑った。「君、今日から働ける?」「はい!」何だかだいぶ前の話みたいに聞こえるけど、あれから、まだたった一年しか経っていないんだよな。
    カオルと彩人の出会いはお互いにとって必然だったのだと俺は思うよ。

    2005-11-16 00:35:00
  • 292:

    NN

    彩人、お前には話していないことがあるんだ。お前の面接が終わった後、いつもおちゃらけしてるカオルが、今まで見たことないくらい真剣な顔で、俺に言ったんだ。「あれは怖いね。俺もウカウカしてられへんわ。店入って始めてやね。こーゆ−気持ちになったんわ。」ってね。今じゃNo1 と No2対決は店の見世物状態。TVで報道されることもしばしば。酒も飲めてトークも軽快いつもニコニコ顔のサービス満点な天才肌のカオルと、酒が苦手で毎晩嘔吐の繰り返し、駄目だと思えば顔に一瞬顔に出てしまうけど、勢いのある努力家の彩人と。

    2005-11-16 00:36:00
  • 293:

    NN

    対照的で楽しいよ。だけどどこか似ているんだろうな。この店はおもしろい店になったのかもしれないね。経営者としては非常に、ありがたいことだけれど。だけど お前はまだ気がついてないのかもしれないね

    2005-11-16 00:37:00
  • 294:

    NN

    彩人 お前の才能は 誰よりもカオルが最初にわかっていたんだ。
    そういうことを

    2005-11-16 00:38:00
  • 295:

    ????????????????????????

    2005-11-16 02:07:00
  • 296:

    名無しさん

    2005-11-16 04:06:00
  • 297:

    名無しさん

    ?

    2005-11-16 06:03:00
  • 298:

    名無しさん

    2005-11-16 08:25:00
  • 299:

    名無しさん

    2005-11-16 08:48:00
  • 300:

    名無しさん

    2005-11-16 09:48:00
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