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1:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺には恋愛というモノがよく解らなかった。
「好き」という感情も。
女に対して全くってくらい興味がなかった。
俺が16の時ホストの世界に足を踏み入れたのは
別にそこまで深い意味はなかった。
ただ酒が好きで、飲んで金がもらえる。
それでよかった。自分次第で収入も膨らむ。2005-10-28 13:36:00 -
56:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里と絵梨佳を席に案内する。
「キレイなお店だね^^準備とかホント大変だったでしょ?お疲れ様。代表なんだからいろいろ苦労すると思うけど頑張ってね??」
由里にそう言われて思わず
「ありがとう」と俺は笑顔になった。2005-11-21 09:39:00 -
57:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺の店WISHのオープン時の従業員はみんな俺がスカウトで集めた奴ばかりだった。
もちろんホストという仕事が初めてな奴も居た。
俺は当時一緒に同居していた親友の優也もスカウトをした。
優也は迷わずにオッケーしてくれた。
そんな優也と由里は今日が初対面だった。2005-11-21 09:45:00 -
58:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「由里ちゃん。紹介する。こいつ今俺と一緒に住んでる親友の優也。」
「初めまして^^由里です。優也くん?よろしくね。」
俺は何故か解らないけど、由里にも優也と仲良くなって欲しかった。
由里が愛想よく挨拶したにも関わらず、優也は無言で真顔のままだった。
由里の事を真っ直ぐに見ている。2005-11-21 09:48:00 -
59:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は少し驚いて
「おい!優也…?何ボーっとしてんだよ!」とつっこんでいた。
優也は我に返って
「あ!優也です…よろしく…」
と小さな声で言った。2005-11-21 09:50:00 -
60:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優也は言っちゃ悪いが女癖が悪い方で、軽い男だ。
女好きだし、人見知りもしない。誰とでもすぐに仲良くなれる。
なのにその優也が恥ずかしそうにしている…
すごく驚いた。由里と絵梨佳は不思議そうに俺達を見て首を傾げていた。
「なんかテンション低いよー?!せっかく来たんだから楽しませてよー?」2005-11-21 09:53:00 -
62:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
絵梨佳にそう言われて
「そうだよ楽しもうね♪あたしドンペリ飲みたいー!お祝いもしたいし^^」
由里が俺達に向かって笑顔で言う。
(え…?!いきなりドンペリ?!マジで言ってんの…?)
俺は驚きの連続でなんだか戸惑うばかりだった。2005-11-21 09:56:00 -
63:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
とりあえず「じゃぁドンペリ何色がいい…?」と
恐る恐る聞いてみる。
「もちろんゴールドで!!」
由里が目を大きく見開いて笑顔で言う。
(は?!マジで…?!由里そんな金あんのか?!こないだ俺に財布買ってくれたばっかなのに…)2005-11-21 09:59:00 -
64:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「いやそんな無理しなくていーって!!」
俺は何故か焦っていた。普段の俺なら喜んで笑顔で「ありがとうございます」って言うけど…
由里に無理をして欲しくないって思っていた。
この時点でもう俺は既に由里に惹かれていたんだろう。
「全然無理なんてしてないから!!ゴールド飲んでみたいだけだもん♪」2005-11-21 10:02:00 -
65:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里は半ば強制的だった。俺はすごく嬉しかったけれど同時に複雑だった。
その時は(由里ちゃんと金払えんのかな…?)っていう不安もあった。
「3番テーブル!由里ちゃん&絵梨佳ちゃんからドンペリゴールド頂きましたあああ!」
「あざーす!!!」
従業員全員の元気な声が店に響く。2005-11-21 10:09:00 -
66:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺はとりあえず焦りを隠して代表としての威厳を保とうと必死だった。
従業員全員でのシャンパンコール。
由里と絵梨佳は初めてシャンパンコールを聞いたみたいで
とても楽しそうに満面の笑顔だった。
優也は相変わらずなんだか様子がおかしかった。2005-11-21 10:14:00 -
67:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
シャンパンコールが終わって従業員達は俺が仕込んだ得意のおねだり。
「姫様方、俺シャンパンが飲み足りないっすー♪」
俺は内心イライラしていた。(由里に営業かけんな)って心の中で従業員に叫んでいた。
でも俺が教えた事だ…そんな事口にすれば変に思われるのは解っている。
由里は素直というか純粋というか…2005-11-23 12:04:00 -
68:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「え?まだ飲みたいの??じゃぁもう1本いっとく?^^」
従業員に向かって笑顔で言う。
もう俺は唖然とするしかなかった。
1本30万のシャンパンを「もう1本」とサラッと言ってのけた由里に。
由里は今、ただのホステスに過ぎない。普通のラウンジで働いている。2005-11-23 12:06:00 -
69:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
ましてやこの間まで普通の昼職だったのに。
30万とかきっとホステスの1か月分の給料くらいだ。
1か月毎日夜働いてやっと稼げる額だろう。
結局由里はこの日ドンペリのゴールドを3本も卸した。
俺はただただ圧倒されていた。会計102万円。2005-11-23 12:12:00 -
71:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
会計は全額由里が支払っていた。
(ほんとに払えるのか…?)そんな俺の不安が吹き飛ぶほど
由里のバッグの中からは数え切れない程の札束が出て来た。
俺の見えた限りでは100万の束があと6束ほどはあった。
(なんでそんなに金持ってんだよ…?!)2005-11-23 12:16:00 -
72:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
不思議で不思議で仕方がなかった。
(そんだけ金あるなら働く必要ないじゃん…贅沢しなければ暫く遊んで暮らせるのに…)
俺らしくないけど理由が気になって仕方なかった。
他人に滅多に興味を抱かない筈の俺は見事に由里に興味を抱いていた。
由里と絵梨佳を見送りに出した後、優也を店の裏に呼んだ。2005-11-23 12:19:00 -
73:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「お前なんか可笑しいぞ?!ずっと上の空でボーっとしててお前らしくない。仕事中なんだからもっとケジメ付けろ!」
思わず優也に怒鳴った。…にも関わらず未だ優也は上の空だ。
「おい…!いい加減にしろ!しっかりしろよ!」
「惚れた…」
「は?!」2005-11-23 12:23:00 -
74:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「俺由里ちゃんに一目惚れしたっぽい…やべーこんなん初めてや…」
(は?!あの優也が一目惚れ?!女なんて穴があれば誰でもいいみたいな優也が…?)
絶句した。というより何故かすごく焦ってきた。
「アイツは俺のだから手出すな!!」
俺は咄嗟に優也の胸ぐらを掴んで怒鳴っていた。2005-11-23 12:26:00 -
75:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優「は?!お前由里ちゃんの事好きなの?!」
俺「…いや…そんなんじゃねーよ…」
優「じゃぁ俺に協力してくれや!太い客だしお前が手放したくねーのも解るけどさ。俺本気やから。」
俺「いやとにかく由里は諦めてくれ!」
優「なんでだよ?!別にお前の女じゃねーだろ!?」2005-11-23 12:31:00 -
76:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
止まらない言い争い。今にも殴り合いになりそうな雰囲気に慌てて従業員達が止めに入る。
(仕事中なのに俺なんでこんなに取り乱してんだ…かっこわりぃ…)
我に返って気を取り直して仕事を続けた。
優也とはその日気まずいままだった。
なんだか由里と知り合ってから調子を狂わされてばかりだ…。2005-11-23 12:35:00 -
77:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
仕事が終わっていつもは一緒に住んでいる優也と一緒にタクシーで帰るが
この日は別々に帰った。優也と喧嘩なんていつぶりだろう。
優也とは幼稚園から一緒だった。幼なじみでもあり一番の親友。
(めんどくせぇな…でも謝る気はしねぇ…)
イライラしながら家に着いた。2005-11-30 17:02:00 -
78:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
未だ優也は帰ってないみたいだった。
俺は少し安心した後、思い出した様に由里にメールを送った。
「今日は来てくれてほんとにありがとう!かなり楽しかった!!」
…由里からの返信は一向に来ない。
(もう寝てんのかな…それともメール無視されたのかな…)2005-11-30 17:06:00 -
79:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
ますますイライラする。
こんな些細な事で不安になるなんて今まで一度もなかった。
気付けば由里に電話をかけていた。
由里は眠そうな声で電話に出た。
「あーごめん寝てたぁ…仕事おつかれさまっ♪」2005-11-30 17:08:00 -
80:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(なんでこいつはこんな可愛い声してんだー)
思わず俺の顔が緩んだ。
「いーよ^^でもほんと今日は嬉しかった!!」
そんな話をしていると玄関のドアが開く音がする。
(優也が帰ってきた…!気まずい…)2005-11-30 17:10:00 -
81:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優也の足音が俺の部屋まで近付いてくる。
コンコンッ 「貴晃、ちょっといーか?」
ドアをノックされて俺は慌てて由里との電話を切った。
「何?」ふてくされた顔で俺はドアを開いた。
「さっきの話の続きなんだけど。」2005-11-30 17:13:00 -
82:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「あー何?」
「俺には正直に言えよ?お前は由里ちゃんの事好きなんじゃねーの?」
「…」
優也に改めてそう聞かれて何も答えられずに俺黙ってしまった。
好きとかそういう感情がよく解らなかった俺にとって「好きだ」なんて口にした事もない言葉。2005-11-30 17:15:00 -
83:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「好き…ではない。でもなんか他の女と違う。気になるっつーか…」
そう答えるのが精一杯だった。
「お前そういうのを好きっつーんだよ!」
優也は呆れたように苦笑い。
「俺もさ、一目惚れとか初めてだし、そりゃ由里ちゃんの内面はまだよく知らねーけど、本気で頑張ってみようって思ってんだ。」2005-11-30 17:18:00 -
84:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「うん…そっか。悪かったな店で思わず怒鳴っちまって。」
「俺は諦めないから。でもお前がライバルじゃちょっとキツイなー笑」
(ライバル…?俺と優也が…?)
なんだかよく状況が把握出来ていない俺は
「いや俺はお前と競う気ねーから!」と言った。2005-11-30 17:21:00 -
85:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「いやいやちゃんと話聞いてる?貴晃はさっき店で俺に「アイツは俺のだから手出すな」って怒鳴ったんだぞ?それって完璧惚れてるって事じゃん。そして俺も由里ちゃんに惚れてる。お互い引く気ねーならライバルじゃん!笑」
優也に笑いながらそう言われて
俺はまだ腑に落ちなかったが「そっか…」とだけ言った。
「お互い容赦なしな!そうと決まったら俺に由里ちゃんの番号教えてくれよ♪」2005-11-30 17:25:00 -
86:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「は…?!それは嫌や。そんなん直接聞け!」
「それもそーか…。わりーわりー^^」
いつの間には優也とは仲直り出来ていた。
でも複雑だ。これから優也と由里を巡ってのライバルになる…?
俺は本当に由里に惚れてんのか…?まだハッキリ好きだと言える程ではないのに。2005-11-30 17:29:00 -
87:
名無しさん
続きめっちゃ気になる?
2005-11-30 17:45:00 -
89:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
それから由里は週に1〜2回ペースで俺の店へ来るようになった。
でも酒はたまにしか飲まずにソフトドリンクだけ飲んでいた。
いつしか由里は俺の休憩席になっていた。
優也は由里が来る度に俺のヘルプに着こうとする。
自分の口座の客が来ても由里の席に着きたがる。2005-12-03 14:33:00 -
90:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は我慢の限界が来てまた優也と喧嘩になった。
俺が他の客に着いている間に優也は由里の番号を聞き出せたらしく
有頂天になっていた。
それもなんだか俺の勘に触った。2005-12-03 14:37:00 -
91:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
9月初旬のある日。
由里が仕事帰りに店に来た日に喧嘩が起こった。
俺が他の客の席へ着こうとして誰かにヘルプを頼もうとしていた時。
由里はその頃には俺の店の従業員達の間ではちょっとしたアイドル的存在だった。
みんないつも由里が来るのを待ちわびていた。2005-12-03 14:42:00 -
92:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
可愛い、優しい、話しやすい、ソフトドリンクを飲ませてもらえる。
従業員みんながヘルプに着きたがる。
そんな時優也がすかさず由里の席に座った。
優也口座の客が何組も被っていたのに。
さすがに俺はキレた。2005-12-03 14:45:00 -
93:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優也を店の外に呼び出して怒鳴った。
「お前ええ加減にせぇや!仕事とお前の恋愛は別だろ!指名入ってんだからヘルプになんて着かんでええわ!」
優也はビックリした顔で俺を見る。
「だって…由里ちゃんと話せる機会少ないねん…電話掛けてもたまにしか出てくれへんし…」
「そんなの今関係ねーだろ!仕事とプライベートを混ぜんな!」2005-12-03 14:51:00 -
94:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「お前はどうなんだよ!?明らかに他の席と由里ちゃんの席とで態度違うじゃねーか!」
優也との口論が激しくなる。やがて取っ組み合いの喧嘩になった。
優也とこんな大喧嘩をしたのは初めてだった。
喧嘩中にタイミング悪く由里が電話で話ながら店の外へ出て来た。
それに俺は気付かずに喧嘩を続ける。2005-12-03 14:54:00 -
95:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里は俺達の喧嘩に気付いて割り込んで止めようとした。
その瞬間、優也が俺に振りかざした拳が由里の頬に思いっきり当たった。
由里は少しよろめいていた。
俺達はやっと我に返った。2005-12-10 15:02:00 -
96:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺達は一瞬何が起こったのか解らず呆然としていた。
由里の口からは血が流れていた。
事態を飲み込み仰天というかとにかく焦った。
優也はすごく慌てて半泣きで由里に謝った。土下座までしていた。2005-12-10 15:05:00 -
97:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「由里ちゃんホンマにごめん!!!由里ちゃんが居るの気付かんかってん…」
由里はそれでも笑顔だった。でも少し冷めた様な愛想笑い。
「そんな謝らないで。何があったのか分かんないけど喧嘩は辞めてよ。ね?^^」
(由里ちょっと怒ってる…?そりゃ怒るよなぁ…いてぇよな…あんな思いっきり殴られちゃ…)2005-12-10 16:25:00 -
98:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は傍観者みたいにボーっと突っ立てるだけだった。
でもあまりの気まずさと由里の怪我を考慮して
「ほんまにごめんな由里ちゃん…喧嘩して巻き込んじゃって…とりあえず店の中入って手当しよ…?」
とだけ言って由里の背中を押して店の中へ入った。
2005-12-10 16:27:00 -
100:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
慌てて優也も俺と由里の元へ追いかけてくる。
店内に入るとみんながビックリしてざわついていた。
従業員達が「由里ちゃんどしたん?!その怪我…!」
と口を揃えて聞いてくる。
俺はイライラが止まらなかった。2005-12-12 17:00:00 -
101:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
由里が「なんでもないから気にしないで^^」と従業員達に笑顔で答えている傍らで
「お前らさっさと仕事戻れ!」と俺は怒鳴り散らした。
客達が感情的になっている俺を見て驚いて珍しそうにこっちを凝視してくる。
(マジなんかもう何もかもうぜーな…)
自分に一番苛立っていた。2005-12-12 17:03:00 -
102:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優也にはとりあえず指名客の席へ着かせて
俺は由里の怪我の手当をしていた。
口の中が切れていてすごく痛そうだった。なかなか血が止まらない。
それでも由里は笑顔で俺の心配をしていた。2005-12-12 17:06:00 -
103:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「貴晃くんは怪我してない?ほんと貴晃くんらしくないよ…喧嘩なんて。」
眉間に皺を寄せて真剣な顔で少し淋しそうに由里に言われた。
(俺らしくない…?一体誰の所為だよ。)
イライラしっぱなしの俺はこんな事を心の中で思っていた。
俺は何も答えずに由里の止血を黙々としていた。
由里の手当が終わると次第に由里の口が腫れてきた。2005-12-12 17:11:00 -
104:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
本当に痛そうだ。よく見ると由里の歯が少し欠けていた。
俺が慌てて「病院行く?!結構な怪我やし素人の手当じゃあかん気がするわ…」
と言うと
「ううん。大丈夫だよ。そんなに痛くないから。ありがとう。でもごめんそろそろ帰るね。」
と由里はチェックを済ませた。2005-12-12 17:15:00 -
106:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
読みやすくしてくれてありがとうございます^^
少しずつですが頑張って更新していくのでよかったらこれからも読んでください。m(_ _)m2005-12-13 01:02:00 -
107:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は店に居たくないのもあって由里を家まで送る事にした。
こんなんじゃ代表失格かもしれない。それでもよかった。由里が心配だった。
タクシーを捕まえて由里と一緒に乗り込む。
由里がタクシーの運転手に自分の家の住所を言っていた。
その後はタクシーの中で特に何も話す事なく15分ほどで由里の家へ着く。2005-12-13 01:05:00 -
108:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(つくづく不思議な女…謎すぎる…)
こんなにも他人に興味を持った事などなかった。
だけどどう考えても普通の庶民が借りれるようなマンションではない。
あの時の大金と言い一体由里は何者なのだろうか。
時給5千円弱のラウンジで働いているはずなのに。2005-12-13 01:18:00 -
109:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なんだか腑に落ちないまま俺は店に戻った。
客達がヒソヒソと噂しているのが嫌でも耳に付く。
「あの女何者なん?!わざと怪我して貴晃の気を引こうとしてるの丸解りやし!」
俺はまたキレそうになった。
でも客を相手にキレるわけにはいかない。2005-12-13 01:22:00 -
111:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なんとか客達をなだめて何事もなかったかの様に振る舞う。
俺は得意なはずだ。感情を全く表に出さないのは。
だけど由里が絡むといつもの調子が狂うのは何故だろう。
俺らしくない。だけど俺らしさって一体なんだろう。
あの頃の俺はただ困惑していた。2005-12-13 01:25:00 -
112:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
今までの俺と由里と出逢ってからの俺が
なんだか別人へなっていく気がして怖かったりもした。
由里は一体何者なんだ… そんなの俺が知りたい。笑
その日もなんとか閉店時間までは仕事をこなした。
優也とはやっぱりまた気まずいまま。2005-12-13 01:28:00 -
113:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その日独りでタクシーに乗って帰る時、由里に電話をかけた。
怪我が心配だったからだ。
由里は電話に出なかった。ますます心配が募る。
由里に聞きたい事もたくさんあった。
だけどなんだかあまり聞いちゃいけない気もした。2005-12-13 01:55:00 -
114:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
モヤモヤした気持ちのまま家に着いた。
優也は既に帰っていたけど気付かないフリをして自分の部屋に入った。
ベットに倒れ込むとコンコンッとノックの音がする。
どうせ優也が謝りに来たんだろう。俺は寝たフリをして無視していた。2005-12-13 01:57:00 -
115:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「貴晃…寝てんのか…?」
優也の声にビックリした。泣き声だったからだ。
俺は優也が泣いたのを今まで見た事がない。もう10年以上の付き合いなのに。
「起きてるから入れ」
そう言ってドアを開けた。2005-12-13 02:00:00 -
116:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
優也は泣き腫らしたような目をして暗い表情だった。
(そんなに由里を殴っちまった事が堪えたのか…)
俺は慰めるように「そんなに気にするなよ。事故だったんだし…」
と言うと
「いや…違うんだ…」と言いにくそうに優也が答えた。2005-12-13 02:02:00 -
117:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺はビックリして「何かあったんか?」と聞いた。
優也の答えは驚くべきものだった。
「俺さ、ショックな事聞いたんだ…」
(ショックな事…?)
優也は勿体ぶってなかなか言い出そうとしない。2005-12-13 05:32:00 -
118:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「何聞いたんだよ?!言わねーとわかんねーだろ!」
落ち込んでる優也に思わずまた怒鳴ってしまった。
優也は必死に涙を堪える様子で口を開いた。
「由里ちゃんさぁ…彼氏おるらしいねん…」2005-12-13 05:35:00 -
119:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「はぁっ?!マジで?!誰からそんなの聞いたんだよ!」
「今日来てた俺のお客さんで由里ちゃんと昔仲良かったって言う子が居てさぁ…その子が言ってた…」
俺も優也のその言葉になんだか隠しようのないショックを受けた。
目の前が真っ暗になるってこういう事を言うんだろうか…2005-12-13 05:37:00 -
120:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「でもそんなのホントがどうかわかんねーじゃん!本人から聞いた訳じゃねーし!」
自分に言い聞かせる様に優也にそう言った。
「でもさ…」
言いにくそうにまた優也が口を開く。
「何?!」2005-12-13 05:40:00 -
121:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「俺、家に帰ってすぐに由里ちゃんに電話したねん。とりあえず謝りたかったし。そしたら由里ちゃんに「なんで喧嘩なんてしたの?」って聞かれてさ…」
(由里、俺の電話は取らねーで優也の電話は取ったのか…?)
一瞬そんな事が頭を過ぎった。
「それでお前は何って答えたん?」2005-12-13 05:43:00 -
122:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「俺、一瞬なんて答えていいか分かんなかったけど、その時告るチャンスだと思ってん。」
(はぁ?!いやいや全然チャンスじゃねーし!絶対バカだろ優也…)
「…」
「それで話したんだ。俺が由里ちゃんの事好きだから自分の客そっちのけで由里ちゃんの席着こうとするから貴晃にキレられて喧嘩になった…って。」2005-12-13 05:47:00 -
123:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「それで由里は何って?」
俺の鼓動が早くなるのが自分でも解った。
優也はこの調子だからフラれたのは悟っていたが
なんだか言いようのない緊張が俺の中に走る。2005-12-13 05:50:00 -
124:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「由里ちゃんは「冗談やめてよー」って笑ってた。だから「冗談じゃない」って真剣な声で言ったらしばらく沈黙が続いて…」
「…それで?」
「「優也くんの気持ちは嬉しいし、知り合って間もないけどいい人だって事は解るよ。でもあたしすごく大切な人が居るから気持ちに応える事は出来ない…ごめんね。」って言われた。」
優也は堪えきれなくなったのかまた涙を流す。2005-12-13 05:53:00 -
125:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺は頭が真っ白になってた。
秘かにどこかで自信があった。きっと由里は俺を好いてくれている…と。
確信にも近い自信があったりしたから余計に突き落とされた感じだった。
自惚れもいいとこだ。
それに(優也が一人の女の事でこんな簡単に泣くなんて…)という驚きも隠せなかった。2005-12-13 05:57:00 -
126:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(よっぽど優也は由里に惚れてんだろな…)
そう思うと俺まで胸が締め付けられる思いがした。
俺は自分の戸惑いを隠してひたすら優也を慰めていた。
その日から約2週間位、由里は俺達の前から姿を消した。2005-12-13 06:00:00 -
127:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(所詮ホスト相手の逆色恋って事か?)
なんだかプライドを踏みにじらされた思いだった。
そんな9月末のある日。
俺の積もりに積もった不安が一気に吹き飛ぶ出来事が起こる。2005-12-13 06:14:00 -
129:
まみ
続き気になる?
2005-12-13 07:57:00 -
130:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
名無しさん、まみさんありがとうございますm(_ _)m
文章とか下手くそですが、不器用ながらもマイペースに更新していくつもりなので
これからもどうぞよろしくおねがいします^−^
完全実話です。2005-12-13 15:19:00 -
131:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その日俺はいつも通りに仕事をしていた。
胸にモヤモヤした気持ちを抱えたまま、それを誰にも見せずに。
優也はかなり落ち込んでいて仕事も休み勝ちだった。
「俺が怪我させたり告ったりしたせいで…由里ちゃんが姿を消した…」
と自分を責めてばかりいて精神的に不安定になっていた。2005-12-13 15:22:00 -
132:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
開店して約2時間が経った頃。
店のドアが少しだけ開いてすぐに閉まった。
当時俺の店のドアには鈴を付けてあったから音でドアの開閉がよく解る。
(一体誰だろ…?)
不思議に思って店の外の様子を伺う為に俺はドアを開いた。2005-12-13 15:25:00 -
133:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
ドアを開けるなり俺はとにかくビックリした。
そこには由里が立っていたからだった。
いつもの笑顔で「久しぶり^^」と少しだけ照れくさそうに言った。
俺はなんだか何も言葉に出来なかった。2005-12-13 15:28:00 -
134:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
複雑な感情が一気に思考回路をぐるぐると回る。
(由里のせいで優也が…彼氏がいるくせに今更何の用だ…)
だけど紛れもなく一番大きな感情は
(会えて嬉しい…)だった。
(いつの間にこんなに好きになってたんだろう…人を好きになるってこういう事なんか…)2005-12-13 15:31:00 -
135:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
何を言っていいのか解らず呆然と突っ立てる俺に
由里はいきなり腕を俺の首に回してきた。
(え…?!何…?!)俺は内心キョドりまくってた。
「よっし^^じゃぁ帰るね♪この後行く所あるから^^」
何が起こったのか一瞬解らなかった。2005-12-13 15:34:00 -
136:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なんだか首もとが少し冷たい。
首もとを触ってみるといつの間にかネックレスが付いていた。
BVLGARIのB.zero1のWGのネックレス。由里がいつも付けていたのと同じものだった。
由里は事態の飲み込めていない俺を置いてエレベーターに乗り込もうとする。2005-12-13 15:37:00 -
137:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
俺はやっと我に返って咄嗟に由里の腕を掴んだ。
「ちょっ…由里待って!!」
「ネックレス気に入ってくれたら毎日付けてね?あたしとおそろいー^^」
「え…でもすっげー嬉しいけど受け取れねーよ…」
「なんで??」2005-12-13 15:40:00 -
138:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
(今一番由里に聞きたい事を言うんだ!頑張れ俺…!笑)
「由里…彼氏おるんやろ…?」
「…え?」
急に沈黙がエレベーター内に流れる。
きっとほんの何秒かだっただろうけど俺にはその沈黙がとてつもなく長く感じる。2005-12-13 15:43:00 -
139:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「なにそれー??彼氏とかいないよ!彼氏いたら夜の仕事とかしてないもん」
あっけらかんとした表情で由里がそう答えた。
俺は否定してくれた事に安心しながらも
どこかではまだ由里の言葉を疑っていた。
「ホントにおらんの…?」2005-12-14 03:19:00 -
140:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「そんなの誰から聞いたの??」
「いや…優也から…」
「そっかぁ。優也くん勘違いしちゃったのかな…。しばらくあたしと連絡取れなくて淋しかったー?^^」
「うん…」
思わず俺は素直にそう答えてしまった。2005-12-14 03:23:00 -
141:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なんだか急にすごく恥ずかしくなった。
こんなの俺じゃない。俺はこんなキャラじゃないはずなのに…。
由里は俺の頭を撫でながら
「ごめんね。いろいろあって携帯放置してた。もう携帯繋がるからまたいつでも連絡してきて?」
と 優しく微笑んでいた。2005-12-14 03:29:00 -
142:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
どうしてこの女は人の心を掴むのがこんなに上手なんだろうか。
きっと無意識なんだろうけど
俺は見事に由里に引き込まれていく。
それが怖くてその日からいつもわざと少しだけ距離を置いていた。2005-12-15 15:27:00 -
143:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
なぁ由里。
あの時に俺がもっとしっかりしてれば
お前をもっともっと幸せに出来たかな。
ただ怖かっただけなんだ。傷付くのが。素直になるのが。
悔しかっただけなんだ。いつからか好きになりすぎて−2005-12-15 15:30:00 -
144:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「優也くんにもよろしく伝えといてね^^」
そう言って由里はまた帰ろうとした。
俺はもうひとつどうしても由里に聞きたい事があった。
由里が優也に言った「大切な人。」
一体誰なんだろう…2005-12-15 15:32:00 -
145:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
だけど聞いちゃいけない気がした。
自分が傷付いてしまうような気がした。
だからそのまま由里を見送って仕事に戻った。
なんとも言えない複雑な気持ちだった。
でもとりあえず安心した。由里にまた会えて。2005-12-15 15:35:00 -
146:
ゅな☆
この小説好きL1*(♪^U^♪)*頑張って完結さ?てネン(o^皿^o)
2005-12-17 18:18:00 -
147:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
>>153サン
嬉しいお言葉本当にありがとうございます^^
すごく励みになります!!
頑張って完結まで更新していきます。2005-12-18 22:14:00 -
148:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
その日は仕事から帰るなり俺は優也の部屋へ向かった。
最近落ち込んでいて仕事も休み勝ちだった優也に
由里が来た事を一番に報告したかった。
優也は俺の話を聞いてすごくホッとしたような
嬉しそうな表情だった。2005-12-18 22:17:00 -
149:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「よかった…由里ちゃん元気そうやった…?」
「うん。怪我もちゃんと治ってたで!優也くんにもよろしくって笑ってた。」
「ほんまによかった…」
少し涙目になりながらも優也の顔はどこか緩んでいる。
なんか微笑ましく思えた。2005-12-18 22:20:00 -
150:
貴晃 ◆fnkquv7jY2
「あ!それと由里に聞いたけど彼氏なんて居ないっつってたぞ??」
「マジで?!」
「うん。彼氏居たら夜の仕事なんてしないっつってた。」
「…確かにそれもそーかな…なんか安心した…っつーか貴晃そのネックレス…」
俺はハッとした。由里に貰ったお揃いのネックレスが俺の胸元で無駄に輝いていた。2005-12-18 22:30:00