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FAITH
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1:
◆veUs8IjfB6
私はしがない風俗嬢。
夢の為?借金返済の為?はたまたホストに貢ぐ為?
そんな明確な目的なんてものはありません。ただただ其の日暮らしの為に「風嬢」やってます。2007-04-25 03:19:00 -
61:
◆veUs8IjfB6
「…変な人…」
私は俯いて、静かに言い捨てた。そうする事しか出来なかったのだ。顔を合わせる前に描いていた彼へのイメージで、しょっぱなから身勝手な悪態をついていたため、彼の私に対する第一印象は最悪なものだろう。だから、最後までこの人格を突き通す事が、彼に対する誠意だと思った。
今更彼の純粋な言葉を受け止め、其れに順応して態度を変えるなど、彼の優しさに甘えて自分を正当化するだけだ。
其れにどんな想いがあるにしろ、風嬢に性欲以外の憧れを持つなんて、おかしいのだ。私が満たす事が出来るのは、性欲以外に無いのだから。2007-05-28 18:43:00 -
62:
「あはは、よー言われるで、でも普通より変わってるほうがええわ」
言葉は意図を外れて機能する。彼はにこにこと嬉しそうに笑い、前髪を指先でもてあそぶ。超絶に格好いい、わけではないけど、決して不細工ではない。物腰柔らかな喋り方と、少し垂れ気味の大きくも小さくもない瞳、鼻筋の通った顔立ちが、穏やかな印象を濃くして安心感を与えてくれる。そして何処か落ち着いた姿勢が、包容力も感じさせる。
それらは全て無意識、なのだろう。きっと彼は意識せずとも女に好かれるタイプだ。
「あ、紫苑ちゃんて、何が好きなん?俺に紫苑ちゃんの事教えてや」2007-05-28 18:47:00 -
63:
「そんなもの…」
「何でもいいねん、好きなもの、嫌いなもの、楽しい事、嫌な事。教えれる事だけ、生きてきた事教えてや」
不思議な人だ。威圧ではなく、優しさで制している。決して強制されているわけでもないのに、なんとなく逆らう事が出来ない。子供に向けられる無邪気さと似た、居心地の悪いそれ。
「貴方の事も、教えてや。名前も、知らんもん」2007-05-28 18:50:00 -
64:
抵抗としてはかなり無意味な、ただの時間稼ぎ。だけどマナーとして当然の事。名前も知らない人に、私の個人情報は教えられない。…なんて、其れは結局一般論でしかなく、今の私にとっては本当にただの時間稼ぎの作意でしかない。
「あ、ごめん、俺、朝比奈紫苑」
「………は……?」
聞きなれた単語が復唱された気がした。否。気がしたのではなく、確信だ。2007-05-28 18:53:00 -
65:
「あはははは、俺も紫苑ってーの、紫苑ちゃん」
驚きで無防備になった私の表情がおかしかったのか、結構本気で彼は笑っている。私も思わず吹き出して、驚きの表情を笑顔で染め上げた。
「はは…あはははは…紫苑ちゃんとか呼んでて照れへん?」
「まあ、結構きもいもんあるで」2007-05-28 18:56:00