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━†Tears†━
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1:
◆O0SM2LCy2c
「ねぇユキナ…ユキナは、大きくなったら何になりたいの?」
『ゆーちゃんねぇ、ママみたぃになりたい!!』 「……ママみたい?」 『そぅ!大きくなったらねママみたぃになりたい☆』
ママみたいに―――…
2006-07-31 03:10:00 -
11:
◆O0SM2LCy2c
そう言ってモモちゃんが指差した先には、更衣室に貼ってあるグラフ―――。
━━club Tears━━
No.1 【ユキナ】
もう、かれこれ何ヵ月かは変動のない順位表。 《ユキナさん見習ってモモも頑張らなきゃっ☆》 そう言ってまたフリルやレースのついた可愛らしい私服に着替え終わった彼女が、この店のNo.2。
“守ってあげたくなる女”というレッテルが、ものすごくふさわしい気がする…。2006-07-31 17:00:00 -
12:
◆O0SM2LCy2c
《ユキナ、今日もお疲れ!》
《……お疲れ様です。》 更衣室を出ると、すぐさま声をかけてきたのはこの店の【店長】。若干27歳という若さで、2年前からこの店の経営者をしている。 《やっぱり顔出しは大成功やな〜。これからまた、しばらく忙しくなるぞ。笑》今日の売り上げ清算をしながら、嬉しそうにあたしに笑いかける――
《ユキナもこんだけ効果あったら嬉しいやろ〜!?》
電卓を打つ手が、早まる。有名clubナンバーワンの待望の顔出しは、よほどの売り上げに貢献したらしい…。2006-07-31 17:11:00 -
13:
◆O0SM2LCy2c
《そうですね……。今月も頑張ります☆》
店長に軽く会釈をして、店を後にしようとした。 《……ユキナ。帰ったら、電話するから。》
去り際に耳元で、呟かれる。
あたしは、何も答えずにそのままその場を後にした。2006-07-31 17:16:00 -
14:
◆O0SM2LCy2c
そう、あたしは2年前から店長と付き合っている。 彼が、この店の経営者として他店から移動してきた時から。理由は、特にない。その店のナンバーワンと経営者がデキてしまう――。この世界なら、そんなどこにでも良くある話。
ビルのエレベーターを降りた。
《あっ、お疲れさま!!》2006-07-31 17:24:00 -
15:
◆O0SM2LCy2c
まったく意味が分からへん・・・・。
たかが携帯の番号を聞く為に、こんな寒い中待ってたん…?変なヤツ……
あたしは、その男と携帯の番号を交換した。別に、何の意味もなかった。ただ、なんとなく他とは違う気がしたんだ。アンタの目が。その瞬間に感じた。 アンタの目は―――― あたしに似てる……。2006-07-31 17:46:00 -
16:
◆O0SM2LCy2c
《なんで……あたしの名前知ってるん?》
《え…あっ…だってほら!雑誌見たからやん☆ユキナって本名なん?》
《うん…本名やで。》
男の名前は、【凌(リョウ)】 といった。年は、22歳。あたしの一つ上だった。 職業は、そう【ホスト】。
…同じミナミで働いてるらしい。2006-07-31 18:00:00 -
17:
◆O0SM2LCy2c
《あっ…やばっ!そろそろ店戻らなアカンわぁ〜!寒い中ごめんな。ユキナちゃんも、気付けて帰りや☆》携帯電話の時計を見て、慌てて言う凌。
《…分かった。凌くんも仕事頑張ってなぁ。》
《おぅありがと!! じゃあ、またメールするわぁ☆ちゃんと返したってな〜笑》
笑顔でそう言うと、走って繁華街の方へ戻っていった。
《……さぁ、帰ろっと。》2006-07-31 18:10:00 -
18:
◆O0SM2LCy2c
まさか、この日のこの出会いが、あたしの人生までもを狂わすなんて…誰が予想できただろう――?
《あっ…初雪やぁ〜〜!》
空には、今年初の雪の華が宙を舞う。
あたしとアンタが地獄に落ちた日も、そう、確かこんな雪の日だった……
2006-07-31 18:18:00 -
19:
◆O0SM2LCy2c
それからというもの、凌は毎日のようにメールや電話をしてきた。仕事の合間にメールがあったり、出勤前と仕事の終わりには、必ず電話があった。そんなこんなで約1ヵ月が過ぎ――、警戒していたあたしもさすがに徐々に凌に心を開いていった…。
ある日、彼が仕事の休みの日に二人で会う事になった。あれ以来キャッチをしている姿を見る事はなく、凌に会うのは久しぶりだった。2006-07-31 21:35:00 -
20:
◆O0SM2LCy2c
《ユキナちゃん!!ごめんなぁっ…待ったよな!?》待ち合わせに、ほんの少しだけ遅れてきた凌。 《……いや、今出てきたとこやから大丈夫やで☆》 車で、店のすぐ近くまで迎えに来てくれた。
《ほんまかぁ〜…良かったぁ!お疲れさま☆寒いやろ…?はよ車乗りやぁ〜》 話すたびに、お互いの白い息が目の前で交差する‥。《……お邪魔しまぁす。》バタン――――。
凌の車に、初めて乗った日。
いや、彼氏以外の車に乗ったのは何年ぶりだっただろう。あたしは基本的に、アフターはしない。同伴でも店の近くのお店以外は行かない為、お客さんの車にも乗った事がなかった。2006-07-31 21:52:00