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Ring

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  • 1:

    知香

    薬指に光るリングは、あの日誓ったあたし達二人の絆の証。

    『生涯愛し続けることを誓いますか?』

    あたしは言った。

    『はい。誓います』と。

    そう誓ったはずだった…

    2006-07-18 18:32:00
  • 2:

    知香

    二年前、誰もに祝福されながらあたし達は結婚式をあげた。

    式も披露宴も二次会も…幸せな笑顔や笑い声で溢れてた。

    幸せになりたい、いや、必ず幸せになれるとあたしはあの時そう強く思っていた。

    2006-07-18 18:39:00
  • 3:

    知香

    あたしが生涯愛することを誓った相手。

    それは潤だった。
    優しくて強くて格好いい理想そのものの男。流行りのIT企業でバリバリ働く潤は、出会ったばかりのあたしの心を一瞬で奪った。
    吸い寄せられるように潤に惹かれていったあたしを、潤も大きく受け止めてくれた。

    2006-07-18 18:49:00
  • 4:

    知香

    なんかおかしくない?亜美を見てすぐにそう思った。

    店内はみごとに貸切状態な上そこにいる誰もが綺麗な格好をしていた。男の人たちは格好いいスーツに身をまとい、女の子たちもドレスアップ。

    明らかに場違いなカジュアルなキャミソールにジーンズ姿のあたしはどこからどう見ても完全に浮いていた。

    2006-07-18 19:03:00
  • 5:

    知香

    『ちょっ亜美どうゆうこと?ご飯食べるだけって聞いてたから…あたし完全はずしてるやん』

    焦ったあたしはオドオドしながら亜美にそう言った。

    『ゴメンゴメン!言うの忘れてた。まぁいいやん♪せっかく来てんからゆっくり飲みながらご飯食べよ!』

    2006-07-18 19:08:00
  • 6:

    知香

    ありえへんやろ…うん、絶対こんな雰囲気。

    普通なら帰るやんな。普通の女の子なら。

    でもあたしは違ってた。ってゆうかおなかすいてた。だから場違いとかよりもとりあえずご飯だけ食べて帰ろうみたいな。わざわざ来て何もせずに帰るなんてあほらしいやん?

    2006-07-18 19:15:00
  • 7:

    知香

    人の目なんて気にしない。気にしててもしょうがないし。

    『とりあえずほんまにおなかすいてるからご飯だけ食べてすぐ帰るわ』

    これぞ関西の女。独特の変な根性がある。開き直りが早いってゆうかなんてゆうか…逆にネタになるからいっか♪みたいな。

    2006-07-18 19:38:00
  • 8:

    名無しさん

    roadのちかちゃん?それなら続き気になるから書いてほしいです??わがままゆってごめんなさぃ。

    2006-07-18 22:35:00
  • 9:

    名無しさん

    違うんちゃう?前のも完結してないし…完結させてから、新しいのん書く人やと思う。違うサイトで小説書くて言うてたで

    2006-07-19 01:53:00
  • 10:

    名無しさん

    絶対そう。書き方一緒やし。RAINの人やね。

    2006-07-19 20:33:00
  • 11:

    名無しさん


    2006-07-23 02:07:00
  • 12:

    知香

    『すいませーん、とりあえずーこれとこれとこれ、持ってきてもらえます?』

    フロアにいたお店のスタッフさんにひとまず注文を済ませた。

    ってゆうかのどかわいたな…ふと周りに目をやると綺麗なバーカウンターを見つけた。バーテンもいるしあそこでお酒作ってもらおーっと♪

    2006-07-25 00:59:00
  • 13:

    知香

    『ちょっとお酒作ってもらってくる』

    『わかったぁここで待っとくね』

    亜美にそう言われたあたしは早々とカウンターに向かった。正直周りから浮いてるしフロアにいたくもない。それなら隅っこの方で静かに料理を待つ方が賢明だと思っていた。

    2006-07-25 01:03:00
  • 14:

    知香

    『なぁなんか柑橘系のカクテル作ってよ』

    あたしはカウンターのいすに座りながらバーテンダーにそう言った。

    『ハハッ』

    2006-07-25 01:06:00
  • 15:

    知香

    はぁ?こいつ…笑った?微妙な笑い方に腹が立った。

    『何がおかしいん』

    あたしはバーテンダーを睨みながらそう言った。しゃくにさわるクソガキ。あたしよりも明らかに年下だった。

    2006-07-25 01:10:00
  • 16:

    知香

    『だってどう見てもカクテルより生!って感じやん。生もあんでーお姉さん』

    なにこいつ…あたしのテンションは一瞬で下がった。

    なぜなら思いっきりの図星だったからだ。生をグッと飲みたい気分だったのをあえて我慢してたから。

    2006-07-25 01:18:00
  • 17:

    知香

    『おしゃべりなバーテンダーなんか流行らんで。とりあえずのど渇いてるから早く作って』

    『ハイハイ』

    そいつは生ぬるい返事をしながらあたしの目の前に生ビールをコンと置いた。

    2006-07-25 01:21:00
  • 18:

    知香

    『あたしは柑橘系のカクテル頼んだはずやけど?』

    イラッとしながらそう言ったあたしを見ながらそいつはまた笑っていた。うざ…

    もう完全切れた。あたしは目の前に置かれた生ビールに手を伸ばすと一気飲みしてすぐに飲みほした。

    2006-07-25 01:24:00
  • 19:

    知香

    『めっちゃいい飲みっぷりやなぁ。俺そんなんめっちゃ好き』

    そいつはさっきとはまた違う無邪気な笑い方であたしを見てそう言った。

    『あんた犬みたいやなぁ』

    2006-07-25 13:19:00
  • 20:

    知香

    あたしはふとそう言っていた。なんなんやろ?飼い主にじゃれる犬みたいな…そんな感じの笑顔に見えた。

    『ふーん。まぁ犬みたいなもんやな。しかも雑種の捨てられた野良犬…って(笑)ちゃうやーん!』

    そいつはあたしを見て一人でノリ突っ込みをしていた。

    2006-07-25 13:24:00
  • 21:

    知香

    あれ?なんなんやろ?あたしは変な気持ちになった。この子…めっちゃ今悲しい顔で笑ってる。

    寂しがりなんやってすぐに分かった。憎たらしさや明るさは寂しさの裏返しやって。不思議とそう思った。

    『ってゆうかお姉さん明らかに場違いやん。なんでここにいてんの?』

    2006-07-25 13:27:00
  • 22:

    知香

    『場違いって(笑)あんた失礼やなぁ。まぁ確かに場違いやけど。ま、別にいいねん。ご飯食べたらすぐ帰るし』

    『そっか。まぁいんちゃう?ここおってゆっくりしとき。俺がしゃあなしで喋り相手しといたるから。なぁ、名前なんてゆうん?』

    『七海。あんたは?』

    2006-07-25 13:33:00
  • 23:

    知香

    『大地。かっこいいやろ?俺自分の名前めっちゃ好きやねん。ま、七海もけっこういい名前やん。』

    こいつ呼び捨てにしてるし…でも嫌な気はしなかった。

    このバーテンダー。年下の大地と出会ったのは潤と出会うほんの数分前だった。複雑な恋愛が静かに幕を開け始めようとしていた…

    2006-07-25 13:41:00
  • 24:

    知香

    『七海って何歳?』

    『22。あんたは?』

    『二十歳。若いやろ』

    2006-07-25 13:44:00
  • 25:

    知香

    まぁ確かに…。正確にゆうならば早生まれのあたしよりも大地は三歳年下だった。

    『大地ーチャイナブルーと神風作ってや』

    あたしがカウンターで飲みながら大地と話していると一人の男の人がお酒を頼みにきた。うーわ…なんなんこの人…

    2006-07-25 13:53:00
  • 26:

    知香

    『ひぇっ…あ…そ…うです…』

    あたしが気持ち悪いぐらい裏がえってしまった声でそう言うとその男の人は笑いながらあたしの隣に座った。

    『じゃあ俺もこっちで飲もっと。隣いい?』

    2006-07-25 13:59:00
  • 27:

    知香

    『あっ…はい。全然どうぞ』

    あたしは男の人の顔をまともに見れなかった。そう。これが潤との初めての出会い。欠点とゆうものがない完璧な男。

    『今日は何繋がりでここ来たん?あ、俺こうゆうものです』

    2006-07-25 14:05:00
  • 28:

    名無しさん

    2006-07-26 03:02:00
  • 29:

    名無しさん

    ??

    2006-07-27 18:21:00
  • 30:

    知香

    『潤くんには気つけやぁ。女はすぐ落ちてしまうねんから(笑)』

    大地の声にハッとする自分がいた。

    落ちてしまう?そりゃあそう…。こんな格好いい紳士的な男だったら女なんて簡単に落ちてしまう。でもあたしには世界の違う人。あたしは落ちるわけがない…そう思った。

    2006-07-28 02:38:00
  • 31:

    知香

    『おい大地ひどいなぁー相変わらず。別に口説いてたわけちゃうやんかぁ。なぁ?』

    落ちるわけがない…うん。そう思ったはずだった。

    なぁ?そう言ってあたしの目をジッと見たあの瞬間までは…落ちるわけがないって、そう思っていた。

    2006-07-28 02:43:00
  • 32:

    知香

    それが何でだろう。隣からあたしの顔をのぞき込むようになぁ?と聞く潤を見た時、あたしは…落ちてしまった。

    潤に…落ちてしまってた。綺麗な顔にキラキラした目。飾らない爽やかさ。

    馬鹿らしいけど一目惚れってこういうことをゆうんだろうなって実感した。

    2006-07-28 02:48:00
  • 33:

    名無しさん

    ???

    2006-08-04 18:45:00
  • 34:

    知香

    『おーい』

    『えっ?』

    『えっじゃないやろ。なにぼーっとしてんねん。まさかほんまに潤くんに落ちたんか(笑)』

    2006-08-07 01:19:00
  • 35:

    知香

    大地が笑いながらあたしを見てた。顔があつくなっていくような気がして、心拍数も確実に上がってるような気がした。

    自分の心臓の音が聞こえるくらいドキドキしてる。

    恋の始まりを知らせる音…。

    2006-08-07 01:25:00
  • 36:

    知香

    『七海ちゃんかぁ。可愛い名前やなぁ。俺は加藤潤。あっさっき名刺渡したよな。みんな潤って呼んでくるし七海ちゃんも潤でいいで』

    潤…くんか…。なんでやろう?あたし変や…。

    今までのあたしなら好きになるはずない人だと思った。こんなすごい人…容姿は完璧だし地位もあるしお金だって全て持ってる。

    2006-08-07 01:36:00
  • 37:

    名無しさん

    ?

    2006-08-07 18:13:00
  • 38:

    知香

    潤はあたしが求めていた理想そのものの男だった。

    複雑な家庭環境で育ったあたしは、まず男に一番に求めるものは経済力、いわゆるお金だった。

    ギャンブル中毒のような父の多額の借金が原因であたしの家庭は幼い頃に崩壊した。それからは貧しい子供時代の始まりだった。

    2006-08-13 17:55:00
  • 39:

    知香

    母は幼いあたしと妹のために寝る間もおしんで毎日毎日働いてた。

    でも、借金を残して蒸発した父のせいで働いても働いても生活は一向に苦しいままだった。

    あたしはお金が大キライになった。人を変えてしまう、人生を変えてしまうお金が大キライだった。

    2006-08-13 17:59:00
  • 40:

    知香

    あたしは幼いながらにも自分のおかれている環境が痛いほどによく分かっていた。

    だから欲しいものがあっても行きたいところがあってもいつもいつも我慢をした。

    母を困らせちゃいけない、うちはお金がないんだから、そう思ってずっと何年も欲を押し殺した。

    2006-08-13 18:04:00
  • 41:

    知香

    誕生日やクリスマスにもプレゼントはもらえなかったけど唯一母は小さなケーキを毎年買ってくれた。

    あたしはそれがすごく嬉しかったし、それでじゅうぶんだった。

    あの頃のことはきっと忘れない。一歳年下の妹、夕海(ゆうみ)と二人で分けて食べていたケーキの味も、あたしはきっと一生忘れないと思う。

    2006-08-13 18:11:00
  • 42:

    知香

    お金で苦しい思いをたくさんしたけど、お金では買うことのできない小さな幸せを母はあたしと夕海にあたえてくれた。

    でも人間ってそんな当たり前な気持ちすら見失ってしまう時がある。

    あたしがそうだった。思春期になった十代半ば頃、大好きだった母を泣かせてしまったことがあった。

    2006-08-13 18:17:00
  • 43:

    知香

    中学三年の秋、あたしは万引きをして捕まった。あたしが万引きをした物。それは生理用品と下着だった。

    学校帰りに近所の大きいスーパーで友達と一緒に万引きをした。

    でも私服の保安員に見つかってスーパーを出てすぐに捕まった。

    2006-08-13 18:21:00
  • 44:

    知香

    みんな親を呼ばれたけど、あたしの母は仕事があったためにすぐに来ることができず最後まであたしは一人でスーパーの事務所に残された。

    やっと母が現れたのはスーパーが閉店してから一時間後の夜10時過ぎだった。

    母は事務所に入ってくるなり深々と頭を下げて店員に謝っていた。

    2006-08-13 18:25:00
  • 45:

    知香

    『本当にすいませんでした…』

    謝り続ける母を見て、あたしは自分のしたことを本当に後悔した。母を困らせないいい子でいたかったはずが、逆に母を困らせてしまった。

    『おたく母子家庭なんでまぁ家庭の環境もしんどいんかもしりませんけどこういった物はやっぱりお母さんがちゃんと買ったるべきなんじゃないですか?』

    2006-08-13 18:29:00
  • 46:

    知香

    店員が冷静な口調で母にそう言った。

    『はい…すいません…あたしがいたらないばっかりに…本当にすいませんでした…』

    母はそう言いながら泣いていた。きっと悲しさと悔しさが入り混じった涙だったと思う。大好きな母の涙を見た時、あたしも涙が止まらなくなり家に帰るまでずっと泣き止むことができなかった。

    2006-08-13 18:34:00
  • 47:

    知香

    母はあたしに何も言わなかった。怒ることもせず、家に帰ってからすぐにまた別の仕事に出掛けて行った。

    あたしはどうしていいか分からず、夕海にそのことを話すと、夕海はあたしに怒った。

    『絶対お母さんショックやってんで。下着も買ってあげれてない…って自分のこと責めるに決まってるやん…』

    2006-08-13 18:42:00
  • 48:

    知香

    『うん…』

    『まだお父さんの残した借金返しながら夕海とお姉ちゃんのこと育ててくれてんねんからさ…今だって仕事三つも掛け持ちしてんねんで…』

    夕海は怒っていたはずが気付けば泣いていた。あたしは情けなかった。大切な母や妹にこんな思いをさせて…情けなかった。

    2006-08-13 18:45:00
  • 49:

    知香

    母は次の日もあたしに何も言ってこなかった。

    『七海ー夕海ーご飯できてるからちゃんと食べていきやー。いってきまーす』

    いつもと変わらない朝。いつもと変わらない声。いつもと変わらない母。変わっていたのは…あたしの気持ちだった。

    2006-08-13 18:55:00
  • 50:

    知香

    コンパは頻繁だった。というよりも先輩からお呼びがかかれば強制的に参加しなければならなかった。

    しかもくだらない三箇条まである始末。
    1うまく先輩を引き立てよ。2出しゃばらない。3ハズレ担当。
    最後のハズレ担当ってのは要するに太ってたり不細工だったり早い話が先輩達の眼中からハズレてる男を相手にしなければならない。正直キツい…

    2006-08-13 19:37:00
  • 51:

    知香

    医者や有名人とのコンパもよくあった。でもそうゆうコンパでは人数合わせで呼んでくるくせに、コンパ中に先輩からメールがきて(もう盛り上がってるし帰ってくれていいよ)とサクッとやられる。

    とんでもない職についてしまったとよく後悔した。でも母に新作の化粧品を渡してあげたり、メイクをしてあげたりするとすごく喜んでくれたし、あたしもそれが嬉しかった。
    だから嫌々ながらも仕事を続けられた。

    2006-08-13 19:44:00
  • 52:

    知香

    お金もそこそこ稼ぐこともできたし、美容部員を始めて二年たつ頃には、率先してコンパにも参加した。

    いい男を見つけるためいい女になろう。

    化粧は職業柄すごく上手くなったし、流行りにもうまくのっていた。あとはいい男だけ…経済力のあるかっこいい男…あたしはそんなことばかり考えていた。

    2006-08-13 19:50:00
  • 53:

    知香

    優しすぎるくらい優しくてポーンと大きな家を建ててくれるような人…そこでお母さんも一緒に暮らせたらいいのにな…

    理想ばかりがどんどんふくらんでいく。

    でも出会って付き合う人に、そんな理想ばかりを求めてしまうあたしは、本気で好きにはなれなかった。

    2006-08-13 19:54:00
  • 54:

    知香

    何人かと付き合ってもいつも同じパターンで別れることになってた。

    『ごめん…あたし他に好きな人できてんやん』

    あたしはいつも付き合っている彼氏より経済力のある男が現れたら、そっちに乗り換えてた。最低かもしれないけど、それくらいあたしには経済力って大事なものだった。

    2006-08-13 19:58:00
  • 55:

    知香

    でもそんなことを繰り返していくうち、どんどん自分が分からなくなっていく。

    あたしが大事なのはお金?
    大きい家に住みたい。経済力のある人と結婚して母を安心させたい。そう。いつもあたしには『お金』という過去のトラウマがつきまとっていた。

    2006-08-13 20:04:00
  • 56:

    知香

    『なぁお姉ちゃん暇?夕海彼氏とご飯食べてるからこーへん?』

    あたしがそんなトラウマで悩みを抱えている頃、夕海からの電話で仕事が終わった後、一緒に食事をすることになり、久しぶりに夕海の彼氏とも会うことになった。

    夕海はその彼氏と二年近く付き合っていた。あたしは正直うーん・・・という感じだった。

    2006-08-13 20:12:00
  • 57:

    知香

    とは言っても夕海の彼氏はいい奴。うん、すごくいい奴だと思う。

    でも、仕事は鳶。現場仕事。雨や不天候で仕事が休みになったりする不規則な仕事。

    重労働で手や顔を汚しながら働いてるわりに、稼ぐ金額は…言っちゃ悪いけどいいとはいえない。

    2006-08-13 20:17:00
  • 58:

    知香

    あたしならごめんだ。

    愛だの恋だの言ってても、お金がなければどうにもならない。

    お金が全てではないけどお金で変わってしまうものもたくさんある。人の気持ちもお金で変わる。いいようにも悪いようにも…

    2006-08-13 20:21:00
  • 59:

    知香

    苦労をしたからこそ、こう思ってしまうのかもしれないけど、人間お金がなければ何もできないんだから。

    衣・食・住。どれをとってもお金はかかる。着る服ひとつにしても四季それぞれで変わるし食べることにしても結局お金がないと始まらない。

    寝る場所や生活全てに関わる家だって、結局…

    2006-08-13 20:26:00
  • 60:

    知香

    『七海ねぇ久々!今日もいいにおいすんなぁなんの香水やった?』

    『ANNA SUIのスイドリームやで。ってゆうか黒っ!ヒデほんま焼けすぎやであんた』

    夕海たちの待つ居酒屋に入ってすぐにそんな会話から始まった。

    2006-08-13 20:46:00
  • 61:

    知香

    夕海の彼氏『ヒデ』こと秀吉とは、すごく仲がいい。

    人としていい奴だし、あたしにも七海ねぇちゃんってなついてる。

    別にあたしの彼氏でもないから経済力があろうがなかろうが関係もない。夕海がヒデでいいならあたしはそれでいいと思う。

    2006-08-13 20:51:00
  • 62:

    知香

    『そやろー。現場焼けらしいねんけど黒すぎじゃない?(笑)やばいやんなぁ』

    夕海の笑い声が幸せそうだった。

    夕海はあたしみたいにすれたところがない。お金に執着心もないし、何でも普通のことが幸せと思えるような子。

    2006-08-13 21:03:00
  • 63:

    知香

    ヒデがパチンコで負けてお金がなくなって約束していた誕生日プレゼントをくれなくても、

    『一緒に公園で花火したからいいねん。めっちゃ楽しかったで♪』

    って笑ってるような子。

    2006-08-13 21:06:00
  • 64:

    知香

    同じ家庭で幼少時代を過ごしてきたはずの夕海とあたしは、いつのまにか対照的になっていた。

    なんにでもささやかな幸せを感じられる夕海と、安定した経済力だけを求めるあたし。

    『最近仕事どうなん?うまいこといってんの?』

    2006-08-13 21:19:00
  • 65:

    知香

    『あー。まぁまぁかな。でもまた仕事変わるかもしれんねん。現場監督がめっちゃ偉そうでいつも切れそうなるから俺』

    ヒデはいつもこんな感じ。こうゆうところはあたしを苛立たせる。

    男のくせにすぐに言い訳や泣き言を言って職を転々とする。正直頼りなくて夕海が心配になる。

    2006-08-13 21:24:00
  • 66:

    知香

    もし仮にこのまま夕海とヒデが付き合っていつか結婚でもすることになったら…って考えると、姉としてはこんな状態の男に妹は任せられない。

    『いちいち小さいことで文句ばっかりゆわんとしっかり働き。そんなんじゃロクな人生おくられへんで』

    口うるさい姉。少し静かになる空気。なんか重い…

    2006-08-13 21:28:00
  • 67:

    知香

    『ごめん帰るわ』

    お金を置いてすぐに店を出た。最近あたしイライラしやすい。何をそんなに苛立ってんの?経済力とか地位とか…そんなに大事なものなんかな?

    22歳の春、あたしは帰り道、一人でハァーッとため息をついていた。

    2006-08-13 21:33:00
  • 68:

    知香

    『もしもしーなっちゃん何してんの?』

    夕海たちのことをボーっと考えていた次の日、友達の亜美から急に電話がかかってきた。

    『暇してたらご飯食べようー久々にゆっくり飲もうよなっちゃん♪』

    2006-08-13 21:37:00
  • 69:

    知香

    飲もうよ…か。そういやおなかすいたな…。

    モヤモヤしながら家にいるより外に出るほうがいいか…。一人で考えながら結局行くことにした。お店の場所は亜美がメールで地図添付をして送ってきてくれた。

    地図を見ながらなんで神戸やねん!遠っ!って思いながらもすぐに家を出た。なんとなく…飲みたい気分だったから。

    2006-08-13 21:42:00
  • 70:

    知香

    それがついてみればかなりの場違い。来るんじゃなかった…って最初は思った。

    潤に会うまでは…そう思ってた。

    でも潤に会って思った。今日は来てよかったー♪って。つまらなかった毎日が嘘のようにあたしの心は弾んでたから。

    2006-08-13 21:46:00
  • 71:

    知香

    『七海ちゃんっていくなん?』

    ほら。ドキドキする。言葉ひとつでこんなにドキドキしたりするっけ?

    『22です』

    2006-08-13 21:48:00
  • 72:

    知香

    『そうなんやぁ。俺は25。まぁ今年で26やねんけど』

    『あっじゃあ3歳上ってことですね。あたし早生まれやけど23の子らと同じやから』

    『ふーん潤くんと俺の中間ってことか(笑)やっぱ俺若いな。ピッチピチの二十歳やもん』

    2006-08-13 21:54:00
  • 73:

    知香

    あたしと潤くんの会話にちゃちゃをいれる大地。いたずらっぽく笑う顔は、何故だか憎めない。

    3歳年上の潤と3歳年下の大地。そして2人の間にいるあたし。

    変な感じ…。

    2006-08-13 21:58:00
  • 74:

    知香

    『そういえば大地店やるって話どうなってん』

    2人の会話が始まる。

    『あっもうすぐっすよ。来月の27日にオープン予定っす。今内装とかいじってもらってて』

    2006-08-13 22:01:00
  • 75:

    知香

    話を聞いていると、大地はこの店のバーテンダーではなかった。

    今日お店を貸し切ってパーティーをすることになったから、ここにバーテンとして呼ばれたらしい。

    大地は潤くんのよく行くバーで働く店員で、大地を気に入った潤くんがよくこうして呼んだりするみたいだった。

    2006-08-13 22:05:00
  • 76:

    知香

    『ほんじゃあ来月オープンの日顔だすわ。場所また教えて』

    『分かりました!絶対来て下さいよ!』

    その来月オープンするバーは、大地が自ら立ち上げて経営するお店らしい。若いのにチャレンジャーだなぁと思った。

    2006-08-13 22:09:00
  • 77:

    知香

    『七海も来てな!可愛い子つれて(笑)』

    また大地はあの顔で笑う。不思議な気分。

    『はいはい。気が向いたら行ったげるわ』

    2006-08-13 22:13:00
  • 78:

    知香

    『なんやねんそれー。あっこれ俺の番号のってる名刺やからやるわ。また場所教えるから電話してきて』

    大地はそういってあたしのグラスの横に名刺を置いた。

    『あ!ってゆうか七海ちゃん俺と一緒に行く?俺一人で行くのもなんやし。嫌じゃなかったらやけど』

    2006-08-13 22:16:00
  • 79:

    知香

    ・・・・・?

    え?一緒にって…あたしと?

    『ようゆうわぁ潤くん。一緒に来れるような女いっぱいおるくせに(笑)七海危ないでー口説かれんぞ』

    2006-08-13 22:19:00
  • 80:

    知香

    そう言った大地の声など、あたしにはほとんど聞こえていなかった。

    『一緒に行く…ます』

    あたしは緊張のドキドキのあまり、行きますを行くますと噛んでしまったぐらいだった。全然笑えない…

    2006-08-13 22:22:00
  • 81:

    知香

    『携帯貸して?』

    潤くんにそう言われてあたしが携帯を手渡すと、すぐに潤くんの携帯が鳴った。

    『発信に入ってる番号が俺の番号やから登録しといて。俺も今七海ちゃんの番号登録してるから』そう言って潤くんはピコピコと携帯をさわっていた。

    2006-08-13 22:26:00
  • 82:

    知香

    思わぬタイミングで舞い降りたチャンス。

    携帯番号ゲットなうえ、次に会える約束までできた。ダブルでおいしいやん。

    いやいや…おいしいとか思ってる場合じゃないやん…これってほんまなん?軽くあたしはパニック状態だった。

    2006-08-13 22:29:00
  • 83:

    知香

    『潤ーっ♪』
    『潤さぁーん』

    ドキドキしているあたしを黄色い声が刺激する。フロアーから聞こえてくる女たちの声だった。
    明らかに女たちは潤くん狙いに感じる。次々に潤くんを呼んでは手招きをする。それを見て見ぬふりをする潤くん。

    2006-08-13 22:38:00
  • 84:

    知香

    綺麗な人もいっぱいおるのに…そういえばなんでこの人ここで飲んでるんやろ?

    『あの…さっきからずっと呼ばれてるけど戻らなくていいんですか?』

    言わなくてもいい余計なことを言って後悔した。

    2006-08-13 22:41:00
  • 85:

    知香

    『あぁ…じゃあそろそろ戻ろっかな。また電話するね』

    余計なことを言って後悔した。潤くんはそう言って戻っていってしまったから。

    あのキャーキャーしているフロアーに潤くんが歩いていくと、あっという間に女の子たちに囲まれて見えなくなるぐらいだった。

    2006-08-13 22:45:00
  • 86:

    名無しさん

    ??

    2006-08-13 23:58:00
  • 87:

    知香

    『潤くんばりかっこいいやろ?でも惚れんなよなー(笑)はい、料理できたで』

    黙って女たちに囲まれている潤くんを見ていたあたしに大地は料理を出しながら笑ってそう言った。

    『あほか惚れへんわぁ。めっちゃおいしそうやなぁ。早く食べてはよ帰ろうっと』

    2006-08-15 00:56:00
  • 88:

    知香

    『おー食いまくったれ!俺もちょっと酒飲もっかな』

    大地はそう言ってシェーカーを振り、静かにグラスの中にそれを注いだ。

    淡いブルーがグラスを染める。なんだかほっとするような…でも寂しいような色…。綺麗に晴れた空のようで、深すぎる海の底みたいな…

    2006-08-15 01:03:00
  • 89:

    知香

    『なぁ…それなんてゆうお酒?』

    あたしは大地に聞く。大地は少し黙った後、こうつぶやいた。

    『ブルーエンジェル…』

    2006-08-15 01:07:00
  • 90:

    知香

    『ブルーエンジェルかぁ…。青い天使ってこと?初めて聞いたわ』

    そう言ったあたしの言葉に大地は何故か無反応で、あの子犬のような無邪気な笑顔が見えなくなっていた。

    『大地…?』

    2006-08-15 01:10:00
  • 91:

    知香

    『…リジナルカクテル…やから』

    『えっ?』

    『ブルーエンジェルは俺のオリジナルカクテルやねん…。まぁ七海には飲まさへんけどな(笑)』

    2006-08-15 01:13:00
  • 92:

    知香

    大地はすぐにあの大地に戻った。飲まさへんけどなって笑いながらあたしに言う。

    でも何でなん?何で…あんたそんな悲しい目して笑ってんの?

    ふとした時に見える影のような悲しい顔があたしの目には映っていた。

    2006-08-15 01:17:00
  • 93:

    知香

    『彼氏おるん?』

    しばらくの沈黙の後、大地は前髪を直しながらあたしにそう聞いた。

    『おらんけど』

    2006-08-15 01:25:00
  • 94:

    知香

    『そんなことないで…理想とか別に…』

    あたしはそう言ってため息をついた。

    『なんやねーんテンション下がってるやん!あかんで上げてかな』

    2006-08-15 01:31:00
  • 95:

    知香

    22歳の春、あたしはふとしたきっかけでこのお店に顔を出し、偶然大地とこうして話をした。

    初めて会った時、なんて不愉快なガキなんだろうって一人で苛立っていたのを思い出す。

    なぁ大地…?あんたはいつも笑ってたね。悲しい目をして笑ってた…。

    2006-08-15 01:39:00
  • 96:

    知香

    『そろそろ帰るわ。ちょっと飲みすぎたし』

    フロアーがまだワイワイしている中、あたしはカウンター越しに大地にそう言って席を立った。

    『大丈夫か?家どこなん?近いん?』

    2006-08-15 01:42:00
  • 97:

    知香

    『近いわけないやーん…あたしめっちゃ大阪の北区に住んでんのにぃ』

    しかも終電もない。神戸からタクシーに乗れば交渉してねぎっても一万円は絶対かかる。

    『マジで?俺天満やで家。もう俺もそろそろ引き上げるし乗っけてたろか?ポンコツやけど』

    2006-08-15 01:47:00
  • 98:

    知香

    『えーーっポンコツ嫌やぁ(笑)』

    『はぁー!?俺の愛車をポンコツ呼ばわりすんなやぁ』

    『あんた自分でポンコツって言ったんやんか』

    2006-08-15 01:50:00
  • 99:

    知香

    不思議とこの空気がすごく心地良かった。

    初めて会ったばかりで話し始めてから数時間しかたっていないのに、大地は不思議な空気をあたしに感じさせた。

    からみやすい話し方、無邪気な笑い声。明るい空気…。癒やしに似たような感じ。

    2006-08-15 01:55:00
  • 100:

    知香

    『ほんな帰るでーちゃんとついて来いよ』

    偉そうにカウンターから出てくるとそう言ってあたしの前を歩いていく。年下のくせに生意気。でもなんとなく見ていて楽しい。

    二十歳の大地は大人と子供のはざまにいる。抜け切れていない子供みたいな可愛さがあたしにはとても新鮮に映った。

    2006-08-15 02:06:00
  • 101:

    知香

    『あれ?大地もう帰るんか?あ、七海ちゃんも帰んの?』

    あたしと大地がお店を出た時、うしろから声をかけられた。潤くんや…

    『もうそろそろお開きでしょ?終電もないし帰る方面一緒らしいから送っていくことになって。ってゆうか送らされるんすけど(笑)』

    2006-08-15 02:11:00
  • 102:

    知香

    『なにゆって…』

    あたしは突っ込むはずの声が小さくなってしまっていた。潤くんの前では何故だかアホらしく騒げない。

    初めて会った二人の男。大地とはノリ合えるのに潤くんはドキドキして素をだせなくなる。これって…

    2006-08-15 02:15:00
  • 103:

    知香

    『ごめんなぁ七海ちゃん。大地に送ってもらうにしてもとりあえずこれは受け取っといて。タクシー代がわりやから』

    潤くんがあたしのカバンにそう言って何かをいれる。

    カバンを見ると茶色い紙…えっ!?これめっちゃ諭吉やん…しかも三枚も?

    2006-08-15 02:22:00
  • 104:

    名無しさん

    更新まってらぁ

    2006-08-16 01:27:00
  • 105:

    知香

    『いっ、いいですよこんなん…もらえないです!』

    あたしはすぐにカバンからお金を出して潤くんに渡そうと手を差し出した。

    『ほんまにいいって。気持ちやし。なんか今日は楽しく飲めたし』でもそう言って受け取ってくれなかった。

    2006-08-17 18:41:00
  • 106:

    知香

    『えーやん貰っとけやぁ。なんなら俺が貰ってもいーで(笑)』

    困っていたあたしに大地は笑いながらそう言った。

    『あ、そや。ごめん忘れてたわ。大地なんぼぐらいがいい?』

    2006-08-17 19:07:00
  • 107:

    知香

    『金はもういーっすよ今日もいろんな人紹介してもらったし。いつも潤くんで繋がった人らが飲みに来てくれるしそれで俺は自分で店だせるぐらいまでになれたしそんだけで充分っす』

    二人のやりとりを見ながら、こういう付き合いのできる仲っていいなぁと思った。

    2006-08-17 19:15:00
  • 108:

    知香

    『じゃあ帰りますわ。また連絡して下さいね』

    『おー。お前も連絡してこいよ。七海ちゃん乗せて帰るんやし気つけて帰らなあかんで。じゃあ七海ちゃん、また』

    潤くんはあたしと大地を笑顔で見送ってくれた。

    2006-08-17 19:18:00
  • 109:

    知香

    『なぁお金…3万もほんまに貰ってよかったんかな?』

    『いいやろ別に。儲かったと思って貰っとけばいいねん』

    車に乗り込むとそんな会話から始まった。

    2006-08-17 19:28:00
  • 110:

    知香

    『うーん…そっかなぁ。ってゆうかそれよりさぁ、さっきから思っててんけどクーラー効いてる?』

    『効いて…ない(笑)ってか今壊れてるから効かんで』

    まさかほんまにポンコツとは…

    2006-08-17 19:41:00
  • 111:

    知香

    そう思うとあたしは不思議と笑ってた。

    『なに笑ってんねーん。クーラー効かんしほんまにポンコツやぁとか思って笑ってたんやろ』

    大地もそう言って笑ってた。

    2006-08-17 19:45:00
  • 112:

    知香

    『だってほんまにポンコツやん(笑)』

    『まぁ…そこは否定できひんわなー。って俺の愛車をなんてことゆうねん』

    そう言って大地はプッとふくれた顔をしてみせた。色んな顔をする奴やなぁ…あたしはふくれた大地を見ながらそう思った。

    2006-08-17 19:55:00
  • 113:

    知香

    憎たらしく笑ったかと思えば寂しそうな目をしたり、無邪気に笑ったりこうしてスネた顔をしたり…

    年下なせいか可愛らしく感じる。弟…のようなヒデみたいな感じ?

    でもヒデとはまた違った感じで…

    2006-08-17 20:03:00
  • 114:

    名無しさん

    ??

    2006-09-07 00:30:00
  • 115:

    名無しさん

    期待age?

    2006-09-23 09:57:00
  • 116:

    名無しさん

    これ完結したん?

    2006-11-06 17:34:00
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