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♂2nd♀
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1:
麻衣
『いやや。行かんとって。ずっとココにおったらいいやん』
宮原 麻衣、20歳。
彼氏は32歳、既婚者。2006-06-23 11:02:00 -
39:
麻衣
「可愛い人やん。こんなん絶対悲しむ。知らん同士やった頃に戻ろ」
自分でも驚くくらい早口に撒くしたてた。
彼はあたしの腕を掴んだまま黙り込んでいる。
「目ェ見てもう一回ゆうてみ。それが麻衣の本音なんか?」
恐る恐る視線を彼に戻すと、少し悲しそうな、微妙な顔をしてまっすぐあたしを見ていた。2006-07-07 01:42:00 -
40:
麻衣
「離れていくんか?」
さっきまでは目も合わせられなかったのに、今度は金縛りにでもあったかのように目をそらせない。
強く握った手の平に汗がじんわりと滲む。
「…もうどうすればいいんかわからへん…」
好き。大好き。それでも許されない想い。断ち切らなければいけない想い。彼の為にも、奥さんの為にも、なにより自分の為にも、この選択はきっと間違っていないはずなのに。2006-07-07 01:49:00 -
41:
「麻衣が俺を好きなら、離れんでいいやん!てか離したくないねん…」
彼の手にも汗が滲んでいるのがわかる。
「俺のコト嫌いか?もう一緒におられへん?」
追い討ちをかけるように優しく諭してくる彼。
2006-07-22 10:40:00 -
42:
「嫌いとかない…。でも辛いねん!逢いたいとき逢われへんのも、寂しいのに寂しいってゆわれへんコトも…もう嫌やねん…」
彼は黙ってあたしをジッと見つめている。
早口で撒くし立てる口が歪む。目頭が熱い。
「嫌いとかはないねん!でも…嫌いになりたい…」
2006-07-22 10:46:00 -
43:
「麻衣に何してあげたらええ?俺が毎日ここにおったら、麻衣は安心するんか?寂しいなら寂しいって言えばええやん!麻衣が寂しいなら俺がいつでも側におったるから!」
今度は彼が撒くし立てる。
「無理やん!出来もしやんコトゆうなや!家に帰らな奥さん怪しむやろ!麻衣らが辛いより、奥さんのが何倍も辛いねん!」
早口で怒鳴りあげた。2006-07-22 10:52:00 -
44:
あたしがどう言おうと、彼は奥さんのトコに帰る。
夫婦間に愛があるのかないのか私にはわからない。
目の前には必死であたしを繋ぎ止めようと、強く強く腕を握る彼の姿。
…本当にわからない。離れたい。離れたくない。矛盾した気持ちが頭の中を駆け巡る。2006-07-22 10:57:00 -
45:
『麻衣の存在で、俺は毎日頑張れるんやで』
いつだったか、彼があたしにくれたメ‐ル。
奥さんの顔が脳裏にチラつく中、情けないことに……あたしはただ泣いていた。2006-07-22 11:00:00 -
46:
“不倫”なんて、あたしには無縁なモノだと、10代の頃は純粋にそう思っていた。
不倫モノのドラマを見て、『ほんまエグい、嫁持ちを男にみるとか気持ち悪い。男も男でありえへんわ。嫁かわいそすぎやん』
…そう批判していた。
まさか自分がこんな選択をする日がくるなんて、想像もしていなかった。2006-07-22 11:05:00 -
47:
それでも離れられない。彼とゆう鎖は、容赦なくあたしの足に絡みつく。
もがいてももがいても、絡まるばかり。
彼の優しさが今だけだとゆうコトも、いつかは奥さんのトコに戻るコトも、わかっている。
離れたいとゆう想いが、彼と交差するコトなんてないんだろう。同時に、奥さんに対しての感情が変化する。2006-07-22 11:10:00 -
48:
あんたは死ぬ時も、死んでからも彼と一緒やん…。今くらい…彼があたしを好きでいてくれる間くらい、あたしに譲ってくれたっていいやん。帰る場所はあんたのトコやねんから。
嫌な感情が体を埋め尽す。
“今だけ”
それが命取りになるとも知らずに。2006-07-22 11:13:00