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1:
麻衣
『いやや。行かんとって。ずっとココにおったらいいやん』
宮原 麻衣、20歳。
彼氏は32歳、既婚者。2006-06-23 11:02:00 -
2:
麻衣
「また明日連絡するわ」
優しく笑って、あたしの頭をポンポンと2回叩く。
駐車場まで彼を送り出して、「いってらっしゃ〜い」と言ってバイバイのキス。
バイバイを言わないのは、言ってしまうともう逢えなくなりそうで恐いから。2006-06-23 11:06:00 -
3:
麻衣
‐略‐
バイバイを言わないのは、言ってしまうともう逢えなくなりそうで恐いから。2006-06-23 11:08:00 -
4:
麻衣
彼と関係を持ったのは、あたしが18歳の夏だった。
年よりずっと若くて男らしい彼に惹かれるのに、そう時間はかからなかった。
左手の薬指に指輪はなかったけど、奥さんがいるって事は彼本人から聞いていた。2006-06-23 11:11:00 -
5:
麻衣
19歳の時、やっぱり不倫は駄目だと思って身を引いたりした。
でも、彼に呼び戻されて結局このザマだ。
自分では割り切っていたはずだったのに、いつの間にか泥沼につかったまま。ヌルい恋愛にハマってしまっていた。2006-06-23 11:21:00 -
6:
麻衣
彼はあたしの事を彼女と言って、週に5回はあたしに時間を作ってくれた。
連絡は毎日。奥さんも薄々感付いているらしいけど、何も言ってこなかった。
これが『嫁』と呼ばれる人の余裕なのかと思うと、悔しい反面、悲しくなった。2006-06-23 11:24:00 -
7:
麻衣
不倫はいけない事だとか、そんなの自分が一番わかってる。
悲劇のヒロインぶるつもりもさらさらないし、奥さんを一番に愛している事も、
あたしは所詮都合のいい性欲処理機ってゆう事も、理解しているつもりだ。
それなりに悲しんだり、寂しかったり、嫉妬したりもするけど、日曜には自分からは連絡しない。家庭を壊すつもりもない。2006-06-23 11:28:00 -
8:
麻衣
この関係を続ける事に対して、罪悪感も葛藤もあった。何度も終わりにしようとした。
でも出来ない。
あたしはきっと、このまま彼に捕われたまま離れられないんだろう。不倫なんかするヤツが、普通に幸せを掴みたいなんて都合が良すぎる話だ。2006-06-23 11:32:00 -
9:
麻衣
その日はシトシト小雨の降る日曜日だった。
家にいるのが暇で、でも別に遊びに行きたいわけでもない。
パパッと用意をして、ツタヤに向かった。
駐車場に、見慣れた車が止まっている。彼の車だ。2006-06-23 11:46:00 -
10:
麻衣
入ってすぐのCDコーナーに彼の姿を見付けた。
しゃがみこんでCDを見ている。ゆっくり歩いて彼に近付くと、あたしはある事に気付いた。
彼の横に、女物のカバンが置いてある事に。2006-06-23 11:51:00 -
11:
麻衣
また心臓が鳴った。
今度はドキドキじゃなくて、ドクンッと嫌な音だ。
彼はCDを選ぶのに夢中で、まだあたしに気付いていない。2006-06-23 11:53:00 -
12:
麻衣
嫌な予感がザワザワと覆い尽す。フワフワする足を反対に向けて、あたしは出口に向かった。
ちょうどCDコーナーから出ようとしたその瞬間、
『なぁ〜、見たいってゆうてたDVD全部借りられてるで〜』
向こうから女の人が歩いてきた。2006-06-23 11:58:00 -
13:
?リこ?
続き気にナル??
最後まで読むので、
ガンバって完結させて下サィ(。・∀・。)?2006-06-23 22:24:00 -
15:
麻衣
━━━━━━━━━
「まじで?あ、俺このCD欲しい」
後ろから声がした瞬間、前から来た女の人があたしの横を通り抜けた。
その時、あたしのカバンに女の人の左手が触れた。
2006-06-24 09:26:00 -
16:
麻衣
足元がフラついていたせいか、その衝撃で簡単にヨロッときた。
「あ!すいません」
眩しいばかりの笑顔で、彼女はあたしに謝った。
「あ…いえ」
軽く微笑んで会釈した。2006-06-24 09:30:00 -
17:
麻衣
髪をアップにして、小花柄のワンピースを着ていた彼女。
メイクも薄い、少し童顔の可愛らしい感じの人だった。
足元がなくなったみたいに、あたしはその場から動けない。心臓が痛い。
心臓を鷲掴みにされるって、きっとこんな痛さなんだろうなんてボンヤリ考えていた。2006-06-24 09:35:00 -
18:
麻衣
「欲しいのんてコレ?」
「うん。あ〜…買おかな…でもな…」
「悩みすぎや!笑 買えばいいやん」
「じゃあ買うわ〜笑」2006-06-24 13:22:00 -
19:
麻衣
足音が近付いてくる。
ハッとして通路の端に寄った。通りすぎる時、彼と目が合った。
あたしを見て少し驚いてから、そのまま通りすぎた。
彼がレジカウンタ‐に行ったのを確認して、うつむいたまま足早に店を出た。2006-06-24 13:28:00 -
20:
麻衣
なんかあたし、
かなり惨めやな。
惨めすぎて笑えてきた。
同じ市内やもん。逢う事だってあるさ。驚きはしなかったけど、やっぱりあたしは日陰の存在で、奥さんにはかなうわけがない事を思い知った。2006-06-24 13:30:00 -
21:
麻衣
〜♪♪♪♪〜
メール受信。彼からだ。
『びっくりするやん?一人やったん?昼は嫁のお守りやから?、夜?するわ?』
2006-06-24 13:34:00 -
22:
麻衣
ダメだ。あたしいつまでこんな馬鹿な事続けてるん?
こんなん許されるわけない。人を不幸にしてまで貫きたい想いなんか?
あたしは馬鹿やない。これ以上深みにハマる前に抜け出せば…まだ引き返せる。2006-06-24 13:39:00 -
23:
麻衣
『夜、話があるねん。ちょっとでいいから時間作って』
『了解?』
終わりにするんだ。2006-06-24 13:41:00 -
24:
麻衣
奥さんの顔が頭から離れなかった。可愛い人。
あたしはどっちかとゆうと派手目な外見だった。
ほんまはあ‐ゆう格好のんが好きなんかな?
なんかいろんな思考がグルグル回って、家につくまでにかなり時間がかかった。2006-06-24 13:45:00 -
25:
麻衣
夕方18時半、彼から電話が鳴った。
「今からでいい?どこ?」「家にいる。」「行くわぁ」
ピンポーン。
30分程で彼が来た。2006-06-24 13:49:00 -
26:
麻衣
部屋に入るなり、あたしを抱き締めて「めっちゃ逢いたかったぁ」と言った。
「最近家にいても息が詰まるねん。でも笑っとかなあかんし、ほんましんどい。
麻衣とおると楽や」
2006-06-24 13:52:00 -
27:
麻衣
ほんまなんか嘘なんかも、もうあたしには見抜けなかった。
恋は盲目というけれど、昼間の光景を見ていただけに、なんか胡散臭かった。
抱き締め続ける彼を引き離して、手をひいて中に招き入れる。
━握った手の平がやけに温かくて、変な汗をかいた。2006-06-24 13:57:00 -
28:
麻衣
「話って何?」
あたしの顔を覗き込んで、悪戯っぽく微笑む。
「いや‥あの‐…その…」2006-06-24 13:59:00 -
29:
麻衣
離れたくないってゆう考えが頭を駆け巡る。
渡したくない。離れたくない。
でも、後は必ず楽なはず。普通の恋愛をして、普通に幸せになる。不倫にハッピーエンドなんてありえない。2006-06-24 14:01:00 -
30:
名無しさん
辛すぎっ。。私も彼氏の嫁みた…。可愛かったし…。続き、頑張って下さいっ!
2006-06-24 22:58:00 -
32:
麻衣
━━━━━━━━━
「お…奥さんは?大丈夫なん?」
「家にいてる。あいつの話なんてどぉでもいいやん」
彼の顔があたしの顔に近付く。真っ直ぐに見つめてくる目から目が離せない。2006-06-25 03:12:00 -
33:
名無しさん
続き読みたいので完結まで頑張って☆
2006-06-25 03:14:00 -
34:
麻衣
ソファーの上。電気もついてるしテレビもついてる。
てゆうか今、そんな雰囲気じゃない。
あたしの気持ちなんておかまいなしで、彼の唇があたしの首筋に移動する。
軽くキスを繰り返した後、服の上から胸を触ってきた。2006-06-25 03:15:00 -
35:
麻衣
「や…待ってって」
「麻衣…めっちゃ好き」
このまま流されてもイイかな‥なんて気分になってきた。が!
今日のあたしは昨日までのあたしと違うねん!2006-06-25 03:18:00 -
37:
麻衣
━━━━━━━━━
「ちょ、ほんまに待って」
彼の手を差し戻した。
しつこく何度も手を出す彼。「待ってって!」2006-06-25 03:24:00 -
38:
「…なんなん?」
不思議そうに覗き込んでくる彼を見て、堅く決意したはずの意思が揺れる。
「今日は…そぉゆう気分じゃないねん…ごめん」
目が合わせられない。不自然なほど露骨に目を反らしてしまう。
「…嫁さんの事?」2006-07-07 01:35:00 -
39:
麻衣
「可愛い人やん。こんなん絶対悲しむ。知らん同士やった頃に戻ろ」
自分でも驚くくらい早口に撒くしたてた。
彼はあたしの腕を掴んだまま黙り込んでいる。
「目ェ見てもう一回ゆうてみ。それが麻衣の本音なんか?」
恐る恐る視線を彼に戻すと、少し悲しそうな、微妙な顔をしてまっすぐあたしを見ていた。2006-07-07 01:42:00 -
40:
麻衣
「離れていくんか?」
さっきまでは目も合わせられなかったのに、今度は金縛りにでもあったかのように目をそらせない。
強く握った手の平に汗がじんわりと滲む。
「…もうどうすればいいんかわからへん…」
好き。大好き。それでも許されない想い。断ち切らなければいけない想い。彼の為にも、奥さんの為にも、なにより自分の為にも、この選択はきっと間違っていないはずなのに。2006-07-07 01:49:00 -
41:
「麻衣が俺を好きなら、離れんでいいやん!てか離したくないねん…」
彼の手にも汗が滲んでいるのがわかる。
「俺のコト嫌いか?もう一緒におられへん?」
追い討ちをかけるように優しく諭してくる彼。
2006-07-22 10:40:00 -
42:
「嫌いとかない…。でも辛いねん!逢いたいとき逢われへんのも、寂しいのに寂しいってゆわれへんコトも…もう嫌やねん…」
彼は黙ってあたしをジッと見つめている。
早口で撒くし立てる口が歪む。目頭が熱い。
「嫌いとかはないねん!でも…嫌いになりたい…」
2006-07-22 10:46:00 -
43:
「麻衣に何してあげたらええ?俺が毎日ここにおったら、麻衣は安心するんか?寂しいなら寂しいって言えばええやん!麻衣が寂しいなら俺がいつでも側におったるから!」
今度は彼が撒くし立てる。
「無理やん!出来もしやんコトゆうなや!家に帰らな奥さん怪しむやろ!麻衣らが辛いより、奥さんのが何倍も辛いねん!」
早口で怒鳴りあげた。2006-07-22 10:52:00 -
44:
あたしがどう言おうと、彼は奥さんのトコに帰る。
夫婦間に愛があるのかないのか私にはわからない。
目の前には必死であたしを繋ぎ止めようと、強く強く腕を握る彼の姿。
…本当にわからない。離れたい。離れたくない。矛盾した気持ちが頭の中を駆け巡る。2006-07-22 10:57:00 -
45:
『麻衣の存在で、俺は毎日頑張れるんやで』
いつだったか、彼があたしにくれたメ‐ル。
奥さんの顔が脳裏にチラつく中、情けないことに……あたしはただ泣いていた。2006-07-22 11:00:00 -
46:
“不倫”なんて、あたしには無縁なモノだと、10代の頃は純粋にそう思っていた。
不倫モノのドラマを見て、『ほんまエグい、嫁持ちを男にみるとか気持ち悪い。男も男でありえへんわ。嫁かわいそすぎやん』
…そう批判していた。
まさか自分がこんな選択をする日がくるなんて、想像もしていなかった。2006-07-22 11:05:00 -
47:
それでも離れられない。彼とゆう鎖は、容赦なくあたしの足に絡みつく。
もがいてももがいても、絡まるばかり。
彼の優しさが今だけだとゆうコトも、いつかは奥さんのトコに戻るコトも、わかっている。
離れたいとゆう想いが、彼と交差するコトなんてないんだろう。同時に、奥さんに対しての感情が変化する。2006-07-22 11:10:00 -
48:
あんたは死ぬ時も、死んでからも彼と一緒やん…。今くらい…彼があたしを好きでいてくれる間くらい、あたしに譲ってくれたっていいやん。帰る場所はあんたのトコやねんから。
嫌な感情が体を埋め尽す。
“今だけ”
それが命取りになるとも知らずに。2006-07-22 11:13:00 -
49:
「麻衣」
彼があたしの名前を呼ぶのが好き。あたしの髪を撫でるのが好き。顔が好き。体が好き。声が好き。あたしを触る指も好き。
なにもかもが好きやねん。離れたくない。2006-07-22 11:19:00 -
50:
あたしは簡単に、彼の手中におさまった。
“優柔不断”そう批判されるコトも十分に解っている。
この関係は誰も知らない。友達にも言えない。彼の友達にも紹介してもらえない。“一生日陰の存在”でいるコトを、あたしは選んだ。
2006-07-27 11:12:00 -
52:
『ついたよ?』
彼からのメ‐ルを見て、玄関のドアを開けた。
彼といると無意識に顔が弛む。誰かをこんなに好きになれた自分がなんとなく誇らしかったし、恥ずかしかった。好きッてゆわれる事がこんなに嬉しいなんて知らなかった。2006-07-27 11:25:00 -
53:
あの話をした頃から、逢うだけの日が増えた。
sexもしない。キスを何度か交して、抱き合ったり、普通に冗談言ってフザけて、DVD観たり、それだけ。
ヤリたくなったら、どちらからともなく始まる。
毎日くるメ‐ルや電話。
今までとは違う。“普通”が一番幸せだった。2006-07-27 11:35:00 -
54:
「今が一番幸せ」ってあたしが言うと、「麻衣と逢ってから、俺はずっと幸せや。そんなん今までは幸せやなかったみたいやん」って、少し不機嫌になる。
そんな彼が愛しくて、あたしはまた幸せになる。
あたしもな、あんたと出会ってずっと幸せやったよ。でもな、前は幸せより不安のが大きかったねん。奥さんの事が気になって、嫉妬して、妬ましかったねん。
「今みたいな時間が、ずっと続けばいいな。」2006-07-27 11:41:00 -
58:
汗が滲む指で携帯のメモリから彼の名前を探す。
発信ボタンに指をかけた時、知らない番号から着信が鳴った。直感で、奥さんだと悟った。
同時に、『ああ。彼の携帯を見たんだ』と頭が冷静に判断する。
頭とは反対に、心臓が大きく脈を打ち始めた。震える指で通話ボタンを押す。2006-07-27 11:52:00 -
60:
「旦那が浮気してるんは薄々気付いてました。相手が20歳ってのは驚いたけど…。疑惑はずっとあったけど、昨日携帯見て確信になりました。
たぶらかしたんは旦那の方やと思います。あなたはまだ若いやろ?旦那とは別れて、違う方を見付けて下さい。家庭を壊すような真似しやんといて!」
「あたしは…家庭を壊すつもりは…」
「あんたの意見なんか聞いてないし聞くつもりもない!あんたの存在が迷惑やねん!あんたがいるだけで家庭が壊れるねん!人のモン盗らんといて!」2006-07-27 12:23:00 -
61:
泣きながら狂ったように叫ぶ奥さんに、あたしは何も言えなかった。
鼻水をすする音が何秒か続いた。
「そういう事やから。もう人の旦那に関わらんで。旦那には夜言うから。」
その言葉を最後に電話はプツリと切れた。2006-07-27 12:27:00 -
64:
「…はい」
「麻衣?何してるん?」
彼の声の様子から、まだ何も知らないんだと思った。『旦那には夜に言う』奥さんの言葉がグルグルと回る。
「…なあ…。奥さん、から電話あってんけど…」2006-08-08 16:55:00 -
65:
沈黙が流れる。かなり驚いているんだろう。
「…マジで?なんて?」
「全部バレてるわ…。家庭壊さんといて、人のモン盗らんといて、やって」
ハハッと笑いながら会話の内容を淡々と彼に伝えた。2006-08-08 16:59:00 -
66:
彼は黙って聞いている。
「…なぁ…。やっぱりこんなんあかんよな…」
「…俺は麻衣と離れたくない」
楽しかった日々が蘇る。もう彼以上に人を好きになる事も出来ないかもしれない。涙が視界を徐々に曇らせていく。2006-08-08 17:09:00 -
67:
「帰るべき場所へ帰り」
泣いているのを悟られないように、精一杯力強く言い放った。
「なんでやねん!帰るべき場所は俺が決めるねん!麻衣がきめる事ちゃうやろ」2006-08-08 17:13:00 -
70:
さっきまで流れていた涙は不思議なほどピタリと止まり、暗くなり始めた部屋の真ん中にただ座り込んでいた。
握った携帯からは彼からの着信が延々と流れている。
‐これでいい。
いい機会やったんや。あたしは鎖から抜け出したんや。2006-08-09 16:33:00 -
73:
時が経つのはいつだって早いものだ。
あたしには同い年の彼氏が出来ていた。
彼を忘れたわけじゃない。まだ忘れられない。この先も忘れる事なんてない。
彼からの連絡は、2ヶ月前の土曜日で途絶えた。
彼に逢いたくて…触れたくて、何度も何度も泣いた。2006-08-09 16:44:00 -
74:
彼氏の名前はタツキ。
電気工事の仕事をしている20歳。
毎日泣いてばかりいたあたしをみかねて、幼馴染みの優衣が紹介してくれた。
よく喋るタツキにたくさん笑わされた。約1ヶ月の友達期間を経て、タツキに告白され先月付き合い始めた。2006-08-09 16:52:00 -
75:
タツキは毎日車で40分かけてあたしに会いに来てくれる。
“彼氏”という存在の人がいつも身近にいる。いつもあたしだけ見てくれる。
あたしだけに見せる顔や、2人の時の甘えたなところ、“彼女やねん”と友達に紹介されるところ。
当たり前なのに、なにもかもが新鮮で…なにより心地よかった。‐あたしはタツキの『一番』なんだ‐2006-08-09 16:57:00 -
76:
幸せだった。彼のときに感じていた漠然とした不安や、先の見えない付き合いじゃなく、未来のある『普通』の恋愛。
あたしは確かにタツキに惹かれていたし、彼はあたしを愛してくれている。
一緒にいると、とても穏やかな気持ちになれた。
2006-08-10 00:43:00 -
77:
タツキはとうとうあたしの実家に住み着いた。自宅同棲というヤツだ。
タツキの前では全然飾らないで素の自分でいれたから、他人と一緒に暮らすという事に何の抵抗もなかったし、両親もタツキを気に入っていた。
付き合って半月足らずで、あたし達は同棲に踏み切った。
これが分かれ道になるとも知らずに。2006-08-10 10:18:00 -
78:
彼との思い出が詰まったあのアパ‐トは解約し、引っ越し資金が貯まるまでの自宅同棲。
ご飯も母が作ってくれていたし、タツキは生活費を毎月3万あたしの家に入れてくれていたから、自宅でやる事は何もなかった。
タツキは極度の人見知りで、両親と3人になるとあまり喋らずおとなしかった。2006-08-10 10:22:00 -
79:
あたしは小さなスナックで働いていて、夜は20時〜1時まで家にいなかったから、自宅でのタツキの様子など知るよしもない。
タツキの母と姉はスナックを経営していて、タツキは夜の仕事に理解がある。
あたしが仕事に出ている間、タツキはずっと家であたしを待ってくれていた。
2006-08-10 12:15:00 -
80:
付き合って間もない彼女の実家で、一人で夜を過ごすタツキ。気を使って遊びにも出れずに、かなりストレスが溜まっていただろう。
でも、あたしにはそんな素振り全然見せずに、いつも「おかえり」と笑顔で迎えてくれていた。
同棲開始から3週間、タツキは遊びに出たまま家に帰らなくなった。2006-08-15 21:30:00 -
81:
「なんでなん?!一緒におったらいいやん!」
「は?遊びに出るんがなんであかんの?意味わからん。」
こんな言い合いを毎日のように繰り返すようになった。タツキの携帯は遊びに出ているあいだ常にoff。
いきなり変貌したタツキ。理由がわからないあたしはわけもわからず、毎日ただ泣き叫んでいた。2006-08-15 21:35:00 -
82:
『…auお留守番サ‐ビスです…』
このガイダンスを聞く度に張り裂けそうな怒りと不安に襲われた。
なんでなん?あたしなんかした?結局タツキもそこらへんの奴と同じなん?
もうあたしはいらん子なん?2006-08-16 23:35:00 -
83:
1日に1回も連絡がとれないなんて日常茶飯事。
たまに電話が繋がると喧嘩になり怒鳴られる。
でもあたしは慣れなかった。毎回泣き叫び、狂ったように喚き散らした。
タツキは必ず最後に「はぁ」と重い溜め息をついて、あたしの電話を途中で切る。そこから先はもう電話に出てくれない。あたしはまた泣く。
全てが悪循環。誰か助けてほしいと、この頃いつも思っていた。2006-08-16 23:42:00 -
84:
タツキは勝手な奴で、あたしがたまに電話に出ないと家まで見に来た。
そして怒鳴る。でも馬鹿なあたしは、そのあとに優しくしてくるタツキを受け入れて許していた。
━今だけやって。ちょっと早いけど、いま麻衣らは倦怠期なんや。麻衣さえ我慢すれば全てうまくいく。いつかはまた前みたいに戻れる。
そう信じてやまなかった。2006-08-16 23:47:00 -
86:
あたしの働くスナックは家からかなり近い。ッても、徒歩20分くらい。
酔い気味な日はタクを使わずに歩いて帰っていた。
その日も、ブランデ‐を飲みすぎたあたしは、フラフラしながら帰路についた。
家までの直線に差し掛かった時、1台の車があたしに横付けしてきた。2006-08-16 23:53:00 -
89:
「まだ夜やってんか?てか酔ってる?乗りや。」
淡々と喋る彼に何も言えない。フラッシュバックのように蘇る彼と過ごした時間。
脳裏に駆けるタツキの顔。
「い、い。歩いて帰る。家すぐそこやし!」2006-08-17 00:02:00 -
90:
「ええから乗れ。話したい事もあるし。すぐ送るし」
タツキの顔が頭から離れなかったが、神妙な顔の彼になんとなく逆らえず、助手席に乗り込んだ。
…これが間違いだった。
ごめんな、タツキ。2006-08-17 00:05:00 -
91:
車は家から10m程手前にある街灯もない暗い路地に停車した。
「話て何?」
「何じゃないねんけど。いきなり連絡とられへんなるし、何?て聞きたいのはこっちやし」
彼は目も合わさずに淡々と喋り続ける。2006-08-17 00:09:00 -
92:
「…ゆうたやんか。もうしんどいって…「やり直したい。嫁さんとは今別居してる。離婚も考えてる。俺には麻衣が必要やねん」
あたしの話を遮って彼が撒くし立てる。
“離婚”…。
重苦しい2文字が頭の中をぐるぐる回る。必要って…そんなん…今更…2006-08-17 00:13:00 -
93:
「…麻衣、今彼氏いてるし。」
「そんなん関係ないしな。てか奪うし。俺は勝手にするし、あとは麻衣が決めればええんちゃう」
今までにないふてぶてしい彼の姿に戸惑った。
「勝手な事ゆわんといて。麻衣の彼氏バリ優しいしな、麻衣を1番に考えてくれるねん。シュンの時みたいに寂しい思いも後回しにされる事もないし。」
言っていて少し虚しくなった。寂しい思いも、後回しにされる事も、今はタツキにされている。あたしは思い付く限りのタツキの良い所を言いまくった。2006-08-17 00:26:00 -
94:
「嘘つくなや。これはなんやねん」
腕時計をした左手をシュンに思いっきり引っ張られた。少しゴツめのgucciの時計。タツキからのプレゼントだった。
その下に隠されていたのは、何本ものためらい傷。
━あたしは、辛さから逃げる為に、いつからか、リストカットを覚えていた。2006-08-17 00:30:00 -
95:
「幸せならこんなんしやんやろ。」
冷たく言い放つ彼と目を合わせられない。
「違うねん…コレは…」
「辛いんなら辛いって言えや。腕もアザだらけやんけ。強がりもいい加減にしろや!痛々しいねん!」
タツキはキレるとあたしを殴っていた。二の腕とお尻、太股には紫のアザが無数にあった。仕事の時はスト‐ルやカ‐ディガンで隠していた。2006-08-17 00:35:00 -
96:
目頭が熱くなる。堪えていた涙が頬を伝うのがわかる。
なんであんたはいつもそうやって、あたしの全部を見透かすん。なんでそんなあたしを見てるねん。
誰も気付かなかった。手首の傷も、アザも…。誰にも言えなかった。“辛い”も“痛い”も。2006-08-17 00:39:00 -
97:
酔いも手伝ってか、あたしは子どものようにワンワン泣いた。
付け睫が取れて、マスカラが落ちて頬が真っ黒になりながら、左手をシュンに捕まれたまま、泣いた。
窓ごしに、目を背けたシュンが泣いているのが微かに見えた。
「ほんまは辛いねん。痛いねん…。大事にされとったはずやねん…。麻衣は彼氏の1番やったはずやねん」
ワンワン泣き喚くあたしを、シュンは力いっぱい抱き締めた。「俺がおるやん」と呟きながら、シュンは何をするわけでもなく、ただ抱き締めて一緒に泣いてくれた。2006-08-17 00:46:00 -
98:
━浅はかだったと、今になって思う。
誰かにすがりつきたい一心で、甘えるべき相手を間違えた。
その日は何もせず、あたしが泣きやむのを待って自宅に送ってくれた。
残るのはシュンの温かさと、タツキへの罪悪感。2006-08-17 16:07:00 -
100:
「…はい…」
重い瞼をこすりながら、寝惚け声で電話に出る。
「はい、ちゃうやろ。どこにおんねん」
「え?普通に家いてるけど…。どうしたん?」
機嫌の悪そうな声。少し酔っているようだ。2006-08-17 16:14:00 -
101:
「今から行くわ」
それだけ言い放って、電話はプツリと切れた。
━20分後━
クラクションの音でハッとした。外に出てみると、タツキが愛車のBMの運転席から顔を覗かせていた。2006-08-17 16:17:00 -
102:
「乗れやあ」
声をかけられて、駆け足で車に乗り込んだ。機嫌の悪そうな横顔に、自然と緊張が走る。
全身がこわばっているのがわかる。
自分が思う以上に、あたしの体はタツキを恐れていた。2006-08-17 16:20:00 -
103:
「違う男の匂いがする」
走り出すなり、タツキが前をむいたままあたしに喋りかけた。
「え?!何ゆうてんよ」
ギクッとした。知っているわけがない。
でも怖かった。タツキはあたしの何もかもを監視して全て知っているようで、あたしは自分の彼氏に妙な恐怖を感じた。2006-08-21 09:26:00 -
104:
「浮気してないんか?」
「してないよ」
窓の外を眺めながら答えた。タツキの顔を見ずに答えたのが悪かった。
━バチンッ!!
音がした瞬間に、頭に鈍い痛みが走った。2006-08-22 11:20:00 -
105:
「いッた…、何すんねんいきなり!」
タツキに叩かれた頭がジンジンと痛む。あまりにも痛くて、思わず声を荒げてしまった。
「はあ?!うるさいんじゃボケ!おまえ目ぇ見てモノゆわれへんのか!」
…そんな理由?叩かれた意味がわからない。初めてタツキをムカつくと感じた。
「そんな怒ることないやん!」2006-08-22 11:27:00 -
107:
「ごめんなさ…ッい」
━もう嫌や。痛い…。痛い痛い痛い痛い!
「や…だ、もぉ嫌やぁぁ!」
あたしは叫んだ。狂ったように叫んだ。
同時に、タツキの手を勢いよく払い除けてドアに手をかけた。2006-08-28 00:41:00 -
108:
路肩に停められた車からなんとか外へ逃げ出した。
「待てやコラァ!」
車からタツキが追い掛けてくるのが見える。
━怖い。あたし絶対殺される!
泣きながら、暗い道路を逃げた。『捕まったら殺される』馬鹿みたいな事を本気で考えていた。2006-08-28 00:47:00 -
109:
タツキは足が早い。車で追い掛けてくると思ったのに、あたしが細い道ばかり逃げると思ったのか、エンジンをきって走って追い掛けてきている。
暗く静かな路地に足音が響く。
タツキがどんどん近付いているのがわかる。
あたしはヒ‐ルで逃げていたから、走りにくい。おまけに恐怖で足がうまく動かない。
━逃げきれない。2006-09-06 10:44:00 -
110:
『いや‐!』
襟首を捕まれた感覚がした瞬間、かなり大きな声で叫んだ。
『黙れコラァァ!ちょろちょろ逃げてんちゃうぞ!殺すぞ!』
髪の毛を捕まれておもいっきり後ろに引っ張られた。2006-09-06 10:49:00 -
111:
「痛い…もぉヤメてやぁ…」
泣きながら懇願したけど、もう遅い。髪の毛を捕まれたまま後ろ向きにひこずられる。
漫画やドラマなら、こんな時だれかが助けに来てくれるのに、今ここには誰もいない。
どんなに泣き叫んでも誰も助けてくれない。2006-09-06 10:53:00 -
112:
自分の今置かれている状況にサ‐ッと血の気が引いた。涙は止まり、髪の毛を引っ張られる痛みだけがジンジン響く。
「も…う嫌や。別れて下さい…こんなん耐えられへん…」
やっと発した言葉だった。2006-09-06 10:57:00 -
113:
「あぁ?!誰に口きいとんねん!」
髪の毛を掴んだまま今度は前に突き飛ばされた。
膝を擦りむいた。
手と足がありえないくらいガタガタ震えている。
━待て。考えろ。チャンスや!2006-09-06 16:12:00 -
114:
“今なら逃げれる”
一瞬にそう判断したあたしは、ヒ‐ルを脱いで思いっきり走り出した。
裸足だからおもしろいくらいスム‐ズに足が動く。
怒り叫ぶタツキの声が聞こえる。早く、早く逃げな。2006-09-06 16:15:00 -
115:
とりあえずあまり光のない住宅街に逃げ込んだ。
明るくなるまで待って、タクで帰ろう。
もう明け方だったから、すでに空はほんのり明るかった。
太陽を待つ間も、足は震えっぱなしだった。2006-09-06 16:18:00 -
116:
『…これでタツキとも確実に終わりやな…』
ホッとはしなかった。タツキにも良いところはたくさんある。
いつからこんなになってしまったんだろう。
あたしは確かに幸せだったはずなのに。
美化された記憶が次々に脳裏に浮かぶ。2006-09-06 16:21:00 -
117:
人間はいつだって、過ぎた思い出をよく感じるものだ。
あたしが今流している涙も、タツキを愛しく思うがためのものなのかな。
“これでいいん?”
何度も何度も自問自答する。
答えは見付からない事に気付きながら。2006-09-09 11:30:00 -
118:
「帰ろ…」
朝日が昇りきって明るくなった道を、大通りに向かってトボトボ歩く。
タツキからの着信は、あたしの履歴を埋め尽していた。
━♪♪♪♪♪♪♪━2006-09-09 11:34:00