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恋なんかじゃない
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1:
〜♪♪・・・携帯が歌う。メールだ。
僕の従順な相棒は、一日に何通もの手紙を受け取り保管してくれる。
僕はゆっくりと開封していく。
「今日はありがとう!」
「明日は3時頃行くね☆。」
2006-06-07 11:31:00 -
92:
「何かね、楽しそうに話してくるんですよ。この間こんな店見つけましたよとか、
あの映画のファッションはすげえ格好いい、どこのブランドなんですかね?とかね。」
「ほぉ・・・。」
「好奇心があれば、ひとつの根っこから幹が伸びて、どんどん枝が広がっていく。
あいつはほんと素直だから吸収も早いとおもうんですよね。」2006-06-14 14:21:00 -
93:
一真さんは間なしにビールをあおる。彼はめっぽう酒が強い。
「あいつに言ったんです。何でそんな風に俺に話すみたいに、客にも話せないんだ?って。」
「・・余計な感情が邪魔するんだろうな。」
「そうですね。結局のところそこだと思うんですよ。」
「根っこは出来てんだ。あとはそれを取っ払らえりゃいいんだ。
誰もが通る道だ。俺にもあったよ。その時は必死なんだけどさ、空回りするんだよな。
今考えてみりゃ、意外と難しい事でもないんだけどな。」
僕達は何かを思い出したように、顔を見合わせて笑いあった。2006-06-14 15:52:00 -
94:
横断歩道の向こう側にナツキさんが立っているのが見えた。
僕は歩を緩め信号が変わるのを待った。
僕に気づいてナツキさんは手を振った。
信号が青になると、彼女は嬉しそうに僕の方に走ってきた。2006-06-14 16:12:00 -
95:
「お久しぶりです。今日はありがとうございます!」
ナツキさんに会うのは3週間ぶりだ。
「ほんと久しぶりだね。いつもメールありがとうね。」
「いえいえ!またお会いできて本当に嬉しいです!」
僕らは並んで店に向かった。
「那智も楽しみにしてますよ。そうそう、今日は那智の誕生日なんですよ。」2006-06-14 17:23:00 -
96:
ナツキさんは目をまん丸にした。
「うそ!バースデーあるって、那智君のだったんだ!」
「そうなんですよ。」
「教えてくれてたら、何か準備したのに・・・。」
「お気持ちだけで那智は喜びますよ!ありがとうございます。」
「でも・・・せっかくの誕生日なのに・・・。」2006-06-14 17:27:00 -
97:
「ほんと気を使わないで下さい。それにうちはプレゼントはお断りしてるんですよ。」
「そうなの?」
「はい。来ていただけるだけで、もう感謝です。
那智はナツキさんが来るって言ったら、めちゃくちゃ喜んでましたよ。」
彼女は首を傾げて僕を見上げた。
「もうスキップせんばかりの喜び方でした。」
「ほんと?それすごく嬉しい。」2006-06-14 17:32:00 -
98:
ナツキさんの笑顔は子供みたいだ。ものすごく無邪気に笑う。
・・・そういえば、彼女は一体いくつなんだろう?
僕らにとってタブーとされる質問だから、尋ねることはできないな・・・。
「那智君は何歳になるの?」
「21ですね。」
「やっぱり若いね。ナツロウさんは?」
「僕は24です。」2006-06-14 20:50:00 -
99:
ナツキさんは、少し寂しそうに笑った。
「やっぱりみんな若いね。」
彼女の言葉は年齢を想像させるのに十分の重みがあった。
「今日は飲もうね!お祝いしなくちゃ!」
「はい!」
さっきの寂寥感を打ち消すくらいにいい顔で彼女は笑った。2006-06-14 21:17:00 -
100:
「那智君おめでとう!」
「ナツキさん!ありがとうございます!」
ナツキさんは那智のために、シャンパンを一本卸してくれた。
シャンパンを卸す前に、ナツキさんは僕にそっと耳打ちした。
「ねえねえ。今日那智君のお祝いにシャンパン頼みたいの。いいかな?」
「もちろんですよ!ありがとうございます!」2006-06-16 22:01:00