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ヒマワリ
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61:
「でもね、主人公の女が、辛い過去を受け入れて、
それでもその過去と共に生きていく姿は良かったですね。」
「・・・そうか。」
「原作と映画は少し違うかも知れないですけどね。」
そう言ってナツロウは事務所を出て行った。
ナツロウの感想を踏まえて読んでみるとするか。
2006-07-06 19:40:00 -
62:
「あ、いらっしゃいませ!」
北山さんは、俺の顔を見るなり笑って挨拶した。
「幻の光はもう読み終わられましたか?」
「うん。」
あれから俺は日曜日のたびに、この本屋へ通う様になった。
そして少しだけ北山さんと立ち話をした。
そうしていく内にだ、俺は彼女ともっとゆっくり話がしたくなったんだよ。2006-07-06 21:28:00 -
63:
「北山さん、バイト何時まで?」
「え?今日は6時までですけど・・・。」
彼女は俺が今日選んだ文庫本にカバーを掛ながら、不思議そうな顔をした。
「良かったら、終わったら食事にでも・・・。」
俺は声のトーンを落としてそう言うと、メモを渡した。
メモを準備してるあたりが、かわいいよな、俺。2006-07-06 21:35:00 -
64:
照れくさくなって俺は、本を掴むと、さっさと店を出た。
北山さんの表情を確認する余裕もなかったな。
メモには俺のアドレスと番号が書いてあった。
連絡もらえるか分からんが、俺はとりあえず喫茶店に入って、待機する事にした。
時間は4時30分だった。本を読んでりゃすぐに6時になるだろう。2006-07-06 21:39:00 -
65:
ところが待ってる時間って、長く感じるもんだな。
俺は本よりも、時計が気になって仕方なかった。
文章に集中出来なくて、5分おき位に時間を確認したよ。
やけにソワソワして、傍から見りゃ、挙動不審者だ。
「頼む!かかって来い!」
携帯様に拝みたくなったよ。2006-07-06 21:48:00 -
66:
6:45。携帯様が光を放つ。
見知らぬ番号。多分北山さんだ。
「はい!」
「あの・・・北山ですけど。」
来たっ!俺は心の中で拳を握り締める。
「はい。えっと今どこにいる?」2006-07-07 18:56:00 -
67:
「バイト先を出たとこなんですけど、
せっかくですけど、私家に帰らなきゃいけなくて。」
俺は落胆を押し殺して、つとめて明るく振舞った。
「そうかあ〜。残念だな〜。」
「ごめんなさい。」
北山さんは申し訳なさそうに謝った。2006-07-07 19:05:00 -
68:
「いやいや、急に誘って悪かったよ。
そしたら、今度時間ある時に食事に行かないか?」
電話口から戸惑う北山さんの様子が伺えた。
「え・・・あの・・・。」
ここで引いちゃ、男がすたる。俺はここ一番押してみる事にした。
「俺さ、北山さんから、色々面白い本を教えてもらいたいんだよ。
俺の感想とか、聞いてもらいたいしさ。要するに・・・。」2006-07-07 19:10:00 -
69:
俺は一旦息を継いで続けた。
「俺は北山さんともっと話がしたいんだよ。
駄目かな?」
北山さんは少し警戒心を解いた様だった。
「はい。分かりました。ありがとうございます。」
俺はメールを送ってもらうように頼んだ。
そして、近いうちに会おうという事になった。
頑張ったよな。俺。2006-07-07 19:15:00 -
70:
しかしだ。俺にはどうしても言い出せない一言があったんだよな。
それは仕事の事だよ。
「俺、ホストなんだよ。」
この一言だけが喉の奥に詰まって言葉にできなかったんだよ。
夜の仕事だとは言ってあったが、詳しくは話していなかった。
彼女の反応が怖かったんだよな。俺って小心者だよな。2006-07-17 22:32:00