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檻の中
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1:
綾乃
私の体験談です?つまらない上に重いです?素通り?していただいてもかまいません
2005-09-11 01:24:00 -
21:
綾乃
その日の夜は今思い出しても吐き気がする。客の体臭、体を這う手、乾いた笑い声…。朝方仕事が終わる頃には私は自分で歩くのもままならないほどいろんな意味でボロボロになっていた。【睦月…睦月…】心の中で愛しい人の名を何回も何回も呼んだ…。
2005-09-11 01:44:00 -
22:
綾乃
睦月に会いたい!私は携帯で彼の名前をさがす…しかし、会いたい気持ちはあるのに、携帯の最後のボタンだけがどうしても押せなかった…ばれるのが恐かったのだ。仕方なく私は家に帰り、死んだように寝てしまった。起きたときにはすでに昼の3時になっていた携帯を開くと睦月から着信が入っていた…少しドキッとする。母がいないのを見計らって外でかけなおす… 睦月は1コール目で出た!
2005-09-11 01:45:00 -
23:
綾乃
『綾乃?何してたん?』「ごめん寝てた…」嘘ではない。 『それやったらいぃねん連絡とれんから心配になっただけやねん』
「心配さしてごめんなさい」あやまる声が震える、『綾乃?ホンマは何かあったんちゃうか?』
睦月はするどい…「何もないって!」否定する私の言葉を無視し、一方的に会う約束をして彼は電話を切った…。2005-09-11 01:46:00 -
24:
綾乃
睦月の強引さとバレるのではないかという恐怖感が交ざった複雑な気持ちで、待ち合わせ場所のカフェにむかった。
どうやら睦月はまだ来ていないみたいだ、私は無駄に愛想の良いバイトの女の子が運んできた、何やらオススメだという甘ったるい飲み物を遠慮がちに舐めながらボーッと外の人混みの中に睦月を探していた。2005-09-11 01:47:00 -
25:
綾乃
10分くらい待っただろうか、後ろの方から彼の声がした。『ごめんな!一瞬迷った、何飲んでんの?』
「わからんけど、オススメやねんて。」 『ふーん』と言いながら睦月はその甘い飲み物を口に運んだ。
『甘ッ!これはありえへんなっ』と、苦い顔をする彼。2005-09-11 01:48:00 -
26:
綾乃
それを見て少し笑った私に睦月が話を切り出した…『で?何があってん?』 無言の私…。
『なぁ綾乃?黙ってたけど俺わかってるねんで?そろそろちゃんと話してくれてもいいんちゃう?俺そんなに頼りないか?』しばらく黙っていたが、とうとう私は母のことを話してしまった……風俗の事も…。2005-09-11 01:48:00 -
27:
綾乃
何も言わない彼を置いて、私は席を立ち、店を出た…泣くことが出来たらどんなに楽だっただろう…歩き慣れた道がいつもより長く暗く感じた…。家に帰っても店に出ても睦月の事ばかり考えて…いつから私はこんなに弱くなったのだろう……。客の愛撫で吐きそうになりながら自分の弱さを悔やんだ…。
2005-09-11 01:49:00 -
28:
綾乃
私はまた母の檻の中に戻った…。そして自由になることも、恋をすることも、人間であることすらもあきらめた…。ところが2、3ヵ月たった頃、睦月から電話がかかってきた。会って話がしたいという、迷ったが結局会うことにした。
開口一番に睦月は言った
『逃げよう』
「え?」 何を言っているのかわからなかった。2005-09-11 01:50:00 -
29:
綾乃
『言うタイミング逃してずっと言えんかったけど俺、綾乃が好きや』
嬉しいが、急すぎて戸惑う私。
『ホストあがってきたから!あの時はごめん…何も出来んうちから助けるとか言いたくなかってん…家も二人で住める部屋に引っ越した。絶対俺が守ったるから!俺の事好きじゃなくてもええから、俺んとこ来い』
頭が真っ白になった。睦月が私を好きだといってくれている。こんな私を守ってくれると…。2005-09-11 01:51:00 -
30:
綾乃
私は「好き」と一言だけ言って、彼の背中に手を回し、シワ一つないシャツをくしゃくしゃに掴んで声をだして泣きじゃくった…。ただただ泣いてばかりの私をなだめるほうが睦月は大変だったかもしれない…。何とか私をタクシーに乗せ、新しいマンションに向かった…。
2005-09-11 01:52:00