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■ヨドミ■

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  • 1:

    『おちょくんのもええ加減にせえや。もう疲れたわ。』

    緊迫した空気が、瞬く間に部屋中に充満する。毎度毎度、よくもまぁ飽きもせず同じ台詞を吐けるなぁと感心しながら、あたしは下を向いて、フローリングの木目の数を数えながら、このつまらない時間が過ぎていくのを待った。

    2006-06-01 09:43:00
  • 6:

    『ごめんなさい…また夢におかーさんが出てきてん。ツレもあんたも仕事忙しいし、誰でもいいからそばに居てほしかってん。ごめんなさい…』
    と、俯き、肩を震わせ、涙を流しながら淋しそうに言った。
    すると、彼はあたしを引き寄せ、力任せに抱き締めた。
    『ごめんな…お前の気持ち分かってやれんでごめん…もう一人にしやんからな…』

    2006-06-01 16:38:00
  • 7:

    これもまた、分かりきった言動であった。

    あたしは肺を圧迫され、少しの息苦しさを感じたが、静かに目を閉じ、彼の背中に両腕をまわした。

    2006-06-01 16:45:00
  • 8:

    くだらない詮索。面倒な衝突。勘繰り。思い込み…
    感情があるが故に、人間はこうもややこしい。
    揉め事やすれ違いといった問題が起きる度、他人の心が読めたらなぁ…と、有りもしない空想にひたることが過去に幾度もあった。誰だって一度は思うはずだろう。
    だが、それは人外による力。各宗教の信仰者達に言わせれば、【神の力】だそうだ。

    2006-06-01 16:59:00
  • 9:



    しかし、それに似た力が、あたしには、有る。

    2006-06-01 17:36:00
  • 10:

    ――――
    数時間後、あたしはまた違う男の所へと足を運び、金の入った分厚い封筒を受け取ってから、ようやく帰路に着いた。
    この男には、唯一の肉親であった最愛の姉を交通事故で亡くし、身寄りのない【可哀相な女】を演じていた。彼は家賃、生活費全般を援助してくれている。セックスは無し。

    2006-06-01 20:05:00
  • 11:

    先程の男は少々手がかかるが、ルックスがずば抜けて良い事と、すぐに足になる事、そして何より単純馬鹿で扱い易い為、繋いでいた。
    彼には、母親からの虐待がトラウマで、彼氏にも暴力を受けていて人間不振…といった設定にしてある。
    その他にも、現在交際をしている男は五人いる。
    中にはセックスが上手いからというだけの者や、ただおもしろいだけといった者も。

    2006-06-01 20:12:00
  • 12:

    きっと、こんなことをしているあたしを周りは良く思わないだろう。
    《遊び人》《魔性》《パンコ》《男好き》
    証拠に、こんな単語を女共から最近よく浴びせられている。
    別に、かまわない。

    2006-06-01 20:16:00
  • 13:

    多少の尾鰭はついていようと、その中心部は大概真実なのだ。
    悪いことと知っている。
    しかし何も感じない。
    だから何も思わない。何を聞いても。何をされても。

    2006-06-01 20:25:00
  • 14:

    しかし、偶然会った古くからの友人だけは、そんなあたしの姿を見て泣いた。

    『なんで?なんでそんな風になってもうたんよ…』

    2006-06-01 20:28:00
  • 15:

    胸が少しキリキリと痛んだ。
    思わず弱音をこぼしそうになった。
    懐かしい友人に、甘えたくなった。

    …しかし、そんなことはもうとうにできない事を、あたしは知っていた。

    2006-06-01 20:32:00
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