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  • 1:

    HIRO

    矢崎 弘樹。25歳。俺の好きなタイプ。美人でスタイル良い子。性格?そんなんど−でもいい。

    2011-03-02 17:09:00
  • 2:

    33 レイ 24歳

    中学を出て直ぐに始めた現場仕事を1ヶ月で飛んで、初任給と身一つで大阪に出てきた。
    テレビでしか見たことの無い、煌びやかな世界、特に夜。
    あっけに取られて立ちすくむ俺に声をかけてくれたキャッチの人も驚くくらいの方言が、逆に女受けする!と半ば無理やりホストの面接を受けて、その日からレンタルスーツに身を包んで先輩方のお客の前に座った。

    2020-06-23 00:50:17
  • 3:

    「垢抜けてなくて可愛いね」
    なんて、生で見たことの無いくらいに綺麗なお姉さんに言われたら、恥ずかしくて嬉しくて
    「僕は…髪ば伸ばして…言葉遣いも治して…先輩方みたいにかっこちゃくなりたい…」
    なんてボソボソと返事をしたら
    「何語!?可愛い~!!!」
    とかなんとか、うちの田舎にいれば決して出会えないであろう綺麗な男女の前で沢山喋って笑われて、褒められて、緊張と飲酒と爆音と嬌声と、今日起きた全てのことに酔って、気が付いたらお店のソファーで眠ってた。

    2020-06-23 01:04:12
  • 4:

    俺って未成年やったよな…、お酒飲んで、こんな所で働いて大丈夫なのか。
    いつまでここにいて良いのか。
    寝泊まりは毎日ここなのか。
    昨日キャッチで僕に声をかけてくれた先輩はどこにいるんだろう。

    意識があっても、何をどう行動に移して良いのかわからなくて、ただお店のソファーに座ってキョロキョロして、周りが動き始めるまでじっとするしかなかった。

    2020-06-23 01:09:22
  • 5:




    それくらい、子供で、世間のせの字も知らなかった。

    2020-06-23 01:09:59
  • 6:

    1番にお店に出勤してきた下っ端先輩が、何から何まで教えてくれた。
    口約束だけど、きちんと入店した。
    先輩方と同居だけど、住むところもできた。
    お店での名前はレイ、お店での年齢は18歳。
    昔から、女の子みたいだね、と言われ続けて大嫌いだった顔だったのに、ここではとても価値のあるものだった。

    毎日、全てが初体験。
    目まぐるしくすぎる毎日に、瞬きすらできなかったけど、お母さんへの連絡は欠かさなかった。

    2020-06-23 01:16:18
  • 7:

    大阪ん飲み屋で毎日忙しく働いとうちゃ!
    皆優しくて可愛のっちもろうてる!

    体には気ば付けて
    いつばってん帰っちきんしゃい

    あんな田舎で生まれ育ったお母さんが、こんな都会で働いてる僕を見たら、ホストなんてやってるって知ったら、驚いて腰を抜かすだろう。
    いつか、お金をたくさん稼げたら、いつか呼び出して一緒に住むのもいいよな。

    友達たちは元気かなぁ。
    僕が大都会でキラキラしてる所を見せたいなぁ。

    2020-06-23 01:23:33
  • 8:

    田舎育ちでスレてない性格と、顔、とどめに方言がウケて、いつの間にかお客ができて、いつの間にか1人で部屋を借りれるくらいのお給料が貰えるようになった頃

    こん前連絡の少なかね
    いっぺんかえっちきよったら?
    お父さんも心配しとるちゃ
    茂義、まっとうとちゃ

    茂義なんてダサい名前で呼ぶな、僕はレイ。
    店ではNo.5になっていて、田舎を捨ててから3年経っていた。

    2020-06-23 01:31:56
  • 9:

    「レイ~☆いつになったら一緒に住んでくれる??もう付き合って半年やで??」

    俺をNo.5にしてくれた女が言った。
    毎月最低限の未収しか払えないけど。
    交友関係が少なく、自ら周りを遠ざけてしまうタイプのこいつは、本当に扱いやすい。

    「うーん、いつかお母さんば大阪に呼びたいからなぁ… 結婚前に異性っち住めん」

    僕は、敢えて方言を治さなかった。
    ここでは、こっちの方がウケがいいからだ。
    大阪に出てきた時より垢抜けてなくて、スーツが似合うようになった僕が方言を使うと、本当に面白いくらいに女にウケたからだ。

    2020-06-23 01:45:02
  • 10:

    「えー、寂しい」

    「君ん部屋に遊びに行くばい、いつばってん呼んでちゃ」

    そう言うと、僕をNo.5にしてくれた女、蘭がキャー、とチークを塗りすぎた両頬をさらに赤らめて照れた。
    濃いチークを塗りたくっても隠せないニキビ…じゃないな、吹き出物だらけの顔が近づいてきて、手入れゼロで盾割れた唇が、僕の唇に重なった。

    「さっきの、約束やで☆今日店終わったら欄の家、な☆」

    タイミング良く通りかかった憧れの先輩、No.1のショウさんが

    「ごめんな蘭ちゃん、今日はナンバー入ってるやつと役職でミーティングやねん」

    「えー、それってレイ絶対行かなあかんの!?なぁ!!!」

    「ごめんごめん、俺の顔に免じて今日だけ許したってやぁ」

    2020-06-23 01:58:44
  • 11:

    地位や名誉に弱いアホな女は、自分の口座の男より上の役職には弱い。

    「えー!!!もう………わかったぁ…!!!」

    ひぇー、汚いほっぺた膨らましても可愛くねぇ~。
    そして、ショウさんかっけぇ~、もちろんミーティングなんて嘘です。
    着いていい嘘、俺を守るため、かっこいい。

    こんな男に、俺はなりたい。

    2020-06-23 02:02:14
  • 12:




    「ただいま~」

    「おかえり~」

    僕には帰る家がある。
    サラリーマンや学生が一斉に目的地に向かう為に家を出る頃帰宅する僕を出迎えてくれたのは、本命の彼女、ユカリ。
    出会いは店。
    元客。
    元キャバ嬢。

    俺と入れ違いに家を出るのが、ユカリの息子、ケント。
    「……いってきます……」
    小学二年生、反抗期。

    2020-06-23 02:06:55
  • 13:

    ユカリは元売れっ子なだけあって、見た目は抜群。
    先程まで隣にあった汚い顔の半分くらいの大きさに、陶器のような肌、ツヤツヤの髪の毛、全身手入れが行き届いていて、本当に美しい。

    送り出しの時にじっと見つめてしまった蘭の、眩しそうに目を細めて頬骨を浮き立たせて笑う顔を思い出した後にユカリを見ると、同い年の、同じ性別の女には到底見えない。

    気に入らないと不貞腐れて当たり散らす蘭よりも、いつでも俺を暖かく迎え入れていれるユカリの元へ帰りたくなるのは必然だろう。

    ニコニコ優しい笑顔で、疲れてる僕に用意してくれた軽食を食べて、我慢できずにユカリを押し倒した。

    2020-06-23 02:13:23
  • 14:

    家にいる時は常にユカリに構っているし、構って欲しい。
    僕だけのユカリ。
    本カノがどうとか、一緒に住んでるとか、誰がどこで知ったのか謎だけど夜遊びウェブに書かれてる。
    おーい、蘭、夜遊び見ろよ、僕の真実が書いてあるよ。
    あ、やっぱり見なかでくれんね、僕を嫌いにならないで、だって、蘭がいないとNo.5になれないもの。

    ユカリを抱いて、寝て、目が覚めて、抱いて、お風呂でも抱いて、出勤する前にも、抱く。

    ケント?
    知らない、学校が終われば遊びにでも行ってるんじゃないの??

    2020-06-23 02:18:44
  • 15:

    34 蘭 24歳


    アレ??
    コレ、ユメ??


    隣に、ジュリ。
    お店。
    待機室。
    長い長い待機時間。
    化粧直し。
    テレビ。
    ニュース。
    幼児虐待。
    彼氏の名前。

    2020-06-23 02:24:35
  • 16:

    「蘭☆どうしたん??さっきから固まって」

    無邪気にジュリが聞く。

    「あの、え、ニュ、レイ、み、見て」

    「???」

    いつもは見ないニュース番組から、知っている苗字が聞こえたので顔を上げると、容疑者の名前が彼氏だった。

    聞き間違い??人違い??
    絶対にない。
    だって、彼氏のレイはの苗字は日本にふた世帯程の本当に珍しい苗字なのだ。
    忘れられない、だって、初めてあった日にその話したよね…

    「珍しい苗字で面白かやろ、絶対に覚えてね」

    2020-06-23 02:31:42
  • 17:

    下の名前が…
    茂義…??
    あれ、レイは本名って言ってたよね、じゃあやっぱりこの容疑者はレイじゃないのかな??
    でも、年齢はレイと一緒だ…

    でも、幼児虐待なんて、あるはずがない!
    レイは独身でお店の寮に住んでるんやから!


    母親の同棲相手…
    連れ子…

    あれ、まさかね。
    心臓を、キュっと上の方だけ持ち上げられた感覚が止まらない。

    2020-06-23 02:35:56
  • 18:

    冷や汗が止まらなくて、隣にいるジュリに説明をして、聞いてもらった。

    「でも、茂義やで…レイくんは本名が源氏名なんやろ??年齢は一緒やけど…同い年の従兄とか??」

    「母親の同棲相手とか、辻褄が合わんやん、レイくん寮やん」

    「彼氏を信じよう☆」

    「そうやんな、珍しい苗字やけど…」

    言いかけた時に画面に写ったのは、フードを被って俯き、手に布をかけられた男の姿だった。

    この前一緒に買いに行ってプレゼントした、レイが好きなブランドのパーカーのフードから

    「伸ばしとるんだ」

    って笑顔で言っていた、メッシュの前髪が見えた。

    2020-06-23 02:44:57
  • 19:

    間違いなく




    レイだった。



    …。

    2020-06-23 02:45:38
  • 20:

    35 ジュリ 20歳

    夢がある。
    目標も持たずフラフラ遊んで棒に振ってしまった青春時代を取り戻すために、高校に入り直すこと。
    心配をかけてしまったママや妹には頼らず、自分で学費を支払いながら勉強する。

    家にもお金を入れる。

    いつか、幸せな結婚をする。

    2020-06-23 02:54:53
  • 21:

    思い立ったら即行動。
    ママや妹が知ったら悲しむだろうけど、短時間で学費を稼ぐために風俗の世界に飛び込んだ。

    性的なテクニックはきっと乏しいけれど、お客が楽しんで帰ってくれるように、心を込めて会話や接客をした。

    「ジュリちゃんといると、本当に楽しい」
    「明るくて癒される」

    そんな事を言ってくれるお客が増えると、自然と待機時間なんてほとんど無くなった。

    2020-06-23 02:58:23
  • 22:

    初めて親元を離れ都会に出た。
    初めての夜の世界、初めての風俗。

    初めてだらけで出会ったのが、蘭。
    年下のジュリから見ても、恐ろしく生きるのが下手だ。
    でも憎めなくて、ルールに縛られず、感情をストレートにぶつける彼女を嫌いになれなかった。

    待機室でほかの女の子たちに

    「ジュリちゃんよくあんな子といれるね、一緒にいると周りからの評価が下がるよ」

    なんて言われたけど、ジュリが良ければそれでいいじゃない。

    2020-06-23 03:03:02
  • 23:

    あと少しで目標の貯金額に届きそうでウキウキ出勤するある日、大変な事が起きました。

    蘭の彼氏のレイくんが、彼女の連れ子を虐待した容疑者として夕方のニュース画面に現れた。

    隣で震えながら泣きじゃくる蘭も心配やけど、子供は大丈夫なのかなぁ。
    20歳独身子無しのジュリが受け止めるには中々重たいできごとでした。

    2020-06-24 00:07:20
  • 24:

    待機室は大騒ぎ。

    「彼氏ホストとかウケる」
    「いや、彼氏ちゃうやん、あっちが本カノで蘭は色やってんやろ??」
    「うわ、夜遊びにめちゃくちゃスレ立ってる」
    「惨め…」

    普段から蘭を好いていない女の子たちがヒソヒソ…

    「聞こえてるわ!!!こんなに泣いてる子の前でよくそんな事言えるな!!!すみませーん、スタッフさん、そういう事やから、私と蘭は今日もうあがります!!!」

    泣きじゃくってフラフラな蘭を支えながら待機室を出て、タクシーを拾って、帰宅ラッシュのミナミから四天王寺にある我が家まで。

    2020-06-24 00:16:46
  • 25:

    うちに着く頃には蘭も少し落ち着いたのか、嗚咽が止まった。

    「今蘭を1人に出来へん、好きなだけうちにいていいよ」

    「…ありがとう……」

    蚊の鳴くような声で蘭が応えた。


    もしもこの時に戻れるなら、私は私をボコボコにして、タイムトラベルの鉄の掟である「歴史を変えてはいけない」を破る。
    タイムパトロールに捕まってもいい、絶対に、絶対に、許さない。

    2020-06-24 00:20:06
  • 26:

    気が付けば、ずっと蘭がうちにいるようになった。

    お店の寮より広くて、そこそこ綺麗に掃除された家はさぞ居心地が良かったのだろう。

    「ジュリ、ホンマにありがとう☆ジュリがおらんかったら、蘭今頃どうなってたやろう…」

    年上の、自分よりも人生経験豊富で、お礼や自分の弱みを見せるのが苦手な蘭に素直になられるとやっぱり悪い気はしなかった。

    「好きなだけおっていい、って言ったのジュリやし、蘭が元気になるまで一緒にいようね」

    2020-06-24 00:24:09
  • 27:

    蘭を支えてあげるつもりだった。
    本当に、心の底から元気になって欲しかった。
    レイくんのことはあれからニュースでみないのでどうなったのかはわからないけど。

    心に傷を負った蘭が仕事に行きたくないと言うので、店の人には適当に言ってジュリ1人で出勤した。
    1ヶ月経っても2ヶ月経ってもずっと、蘭は家にいる


    家主であるジュリより長い時間、家にいる。


    元々お客や女の子たちからのクレームが多かった蘭は、いつの間にかお店のホームページから写真を削除され、寮の部屋の鍵も替えられて、実質のクビになった。

    2020-06-24 00:28:20
  • 28:

    さすがに食費やら、携帯代やらは自分で払うつもりだったらしく、時々どこかに出かけては、客の羽振りの悪さに怒り狂ってる。

    「客??お店、新しい所見つけたの??」
    「違うよ、出会い系でお金くれるオッサン探して会ってるだけ」

    ルールやノルマや時間を守るのが嫌いな蘭には、そっちの方が合っていたのか、ふた月もすると、急に落ち込んだり泣いたり、レイくんの話をすることも無く元気になって行った。

    2020-06-24 00:31:56
  • 29:

    …のは、良かったんやけど…

    感謝をする割には家賃や光熱費を入れるわけでもなく、食事以外は全部ジュリの物を使っていた。

    「やっぱりえぇ化粧水はちゃうな~」
    「今日出かけるからこの服借りてもいい??」
    「タオル洗濯終わってる??」

    初めての他人との生活、自分が働いている間もずっと家にいてダラダラしている居候、何もかもの消費がいつもの2倍。

    こんなものなのかなぁ。

    2020-06-24 00:35:47
  • 30:

    「蘭!使ったタオルは洗濯出してよ!カビ生えてるやん!」
    「食器使ったら洗って!せめてシンクまで持って行って!」
    「コップをテーブルの上に貯めやんといて」
    「ゴミはゴミ箱に捨てて!」
    「バキバキになったファンデ、床に放置しやんといて!」
    「なんでちょっとだけ残ったペットボトル何本もほうちするん!」
    「化粧水も化粧品もアクセサリーも、使ったら元の場所に戻してよ!」
    「ジュリの靴もパンプスも踵踏まんといて!」
    「外出する時鍵閉めて!」
    「トイレはドア閉めてして!毎回ちゃんと流して!」
    「布団に寝転びながらタバコ座んといて!換気扇の下だけやって!」
    「使用済みの生理用品そこら辺に広げて置いとかんといて!」

    2020-06-24 00:42:31
  • 31:

    何度も何度も伝えた。
    あの時の蘭を放っておかなかったことに感謝して欲しい訳じゃない。

    もう、元気になったのなら、自分の足で前に進んで欲しい。

    「えー、ジュリって意外と細かいなぁ…ここジュリの家やねんからジュリがやってや」

    部屋が汚い、ゴミの臭いがすごい、何でも2人分いるので今までのように貯金ができない、布団がタバコ臭い、眠れない…

    2020-06-24 00:46:12
  • 32:

    毎日イライラだった。

    口には出さなくも、お店の女の子たちはおおよその予想が着いていたみたいで

    「ほら、やっぱりな」

    と、ヒソヒソ言ってるのが聞こえた。


    ジュリがこんなにイライラしているのに、帰宅すると蘭は、キャミソールにパンツ姿で布団の上で寝転んでピザポテトを食べたギトギトの指で、ジュリの大切な漫画「NANA」を読んでた。

    「あ、ジュリおかえり。ピザポテト食べる??あ、もう粉しかないわ」

    2020-06-24 00:51:01
  • 33:

    袋を持ち上げて大きく口を開けて、ザラザラーっと残りカスを食べようとしたけど、ほとんどこぼれて布団に落ちた。



    無言で掃除機を出して掃除機で吸う。
    晴れの日にはできるだけ干していつもふわふわだった布団もシーツも、シミだらけでぺっちゃんこになってしまった。
    もうここはジュリの家じゃないみたい。
    蘭もゴミと一緒に吸い込んでしまいたい。

    良かれと思って家に呼んだらこんな事になってしまった…
    だけど無理矢理追い出すことが出来ない。
    優しい人間だから??
    違う、ジュリは偽善者。

    2020-06-24 00:58:06
  • 34:




    いつでも、誰の前でも
    「底抜けに明るくて、楽しそうで、皆に好かれるジュリ」
    でありたいだけだ。


    2020-06-24 00:59:06
  • 35:

    狭い狭いワンルーム。
    初めての一人暮らし。
    お金はあまり掛けられないけど、自分の好きな家具や雑貨を並べて、疲れて帰ってきて寛げるように、毎日綺麗にしてたジュリの城。



    蘭が加わると、物凄く心が疲弊する。
    いつ出ていってくれるんやろう。

    2020-06-24 01:05:10
  • 36:

    36 ショウ 29歳

    しまった!
    やりやがった!
    レイが捕まった!

    俺は直接は関係無かったけど、オーナーや店が打撃を受けた。
    マスコミにインタビューされた客は、面白おかしく受け答えするわ、お酒を飲ませてないと鉄板を張ったけれど、レイが未成年だった事、色々ややこしくて

    「諸事情の為」

    2ヶ月店を閉じた。

    2020-06-24 01:13:17
  • 37:

    店を閉めている間他店に移動することも考えたが、オーナーに恩があった俺は留まることに決めた。

    再オープンの前のミーティングで決まったのは、レイの1番の太客だった蘭の未収を回収する事。
    その使命を受けたのが俺だった。

    「できるか、No.1」
    「でき………ます」

    やりたくねぇ…

    2020-06-24 01:17:28
  • 38:

    詳しくは知らないが、見るからに売れない風俗嬢な蘭は、未収に未収を重ね、レイが捕まる前には合計が104万円にもなっていた。

    レイも甘い。
    あいつは
    「こん仕事は天職たい」
    なんて言ってたけど、払える当てのない客にこんな額の未収をさせてるクセにどの口が言うか。

    2020-06-24 01:21:59
  • 39:

    確かに可愛い年下ジャニーズ系弟くんタイプな見た目に方言のギャップが売りだったが、あんな女に頼らないといけないからNo.5止まりやったんや。

    レイを可愛がると、
    「面倒見が良くてステキ」
    と、俺の株が上がるので丁度よかったけど、今となっては本当に無駄だった。


    さあ、先ずは蘭が今どこで何をしてるのか探らないと行けなくなった。

    2020-06-24 01:25:55
  • 40:

    相当レイに入れ込んでたけど、ああいうタイプはいつまでもメソメソなんてしてない。
    傷心を理由に今頃ダラダラレイとの思い出を美化して浸ってるはずや。

    売れない風俗嬢は、入店初期の店の新人推しに頼って店を移動しまくってるはずや。

    俺はまず、蘭の顔を知ってる下っ端に手伝ってもらい、ミナミの有名系列風俗店のホームページの新人紹介コーナーを片っ端から見て回った。

    2020-06-24 01:31:25
  • 41:

    1度店を閉めたことで離れた客もいたけど、俺の客はほとんど戻ってきた。
    休みの間もマメに連絡をして、たまにはデートもする。
    未来への投資。
    デート代の何十倍もするボトルを下ろしてくれる、可愛い可愛い客たち。

    「オープンしちゃったからデートの頻度が下がっちゃって寂しいけど、その分店で会えて嬉しい!」

    シャンパン、シャンパン、コール、コール、シャンパン、コール。
    あぁ、よう飲んだ。

    2020-06-24 01:36:19
  • 42:

    「ショウさん!!!やばいっす!!!」

    コールや一気の不参加も許可してまで蘭を探していた下っ端が、空気を読まずに大声で叫びながら走ってきた。

    普段なら説教でもしてやりたい所やけど、その様子から蘭をみつけたのだろう、と確信した俺は、俺のために沢山シャンパンを下ろしてくれた社長令嬢に詫びて、下っ端とバックヤードへ向かった。

    2020-06-24 01:39:30
  • 43:

    「見つけたんか??蘭…」

    「ヤバいっす!!!」

    意外と早い発見に俺の酔いは少し覚めた。
    サンキュー下っ端、なかなか使える。

    「これ見てください!」

    下っ端が差し出した画面には、ぽっちゃり美女が少し照れながらこちらに「おいでおいでポーズ」をしていた。

    「?????」

    2020-06-24 01:42:39
  • 44:

    俺は画面から目が離せない。

    「?????」

    下っ端のガラケーの画素数では、既視感のあるこのぽっちゃり美女の正体がわからないので、店名と名前で自分のスマホで検索した。

    「………オイオイ!!!これ蘭やな!!!あいつ…写真写りよすぎるやろ、修正してんのか!?」

    「ですよね!俺も2度見でやっと蘭ちゃんやって気付きました!!!」

    カメラマンの腕が良いのか。
    下から当ててるであろうライトの性能が良いのか。
    画面で照れる蘭は、本人の欠点を全て補い+に変えていた。

    2020-06-24 01:47:24
  • 45:

    このパネルやったら新規の客着くやろうなぁ。
    新人推し時期最高!
    俺の素晴らしい読み最高!
    探し出してくれた下っ端最高!

    1年間誰にもNo.1を譲らなかった努力型の俺の頭の中では、もうこの時点で未収を回収してるシーンが流れていた。


    俺が上機嫌やと客も上機嫌。
    上手いことことが運んで、バックヤードにいる間放ったらかしだった可哀想な客は、嬉しそうにルイを下ろしてくれた。

    2020-06-24 01:50:59
  • 46:

    「おはよう、ルイ…じゃないわ、みきちゃん」
    危ね、ついつい昨日最後に下ろしてくれたボトルの名前でよんじゃった☆

    俺、まだ上機嫌。
    …やったから、昨日1日で、いつもの月の平均売上の半分くらい使ってくれたルイ…じゃないわ、みきちゃんとアフターでホテルで寝ていた。

    「どうしたん??昨日からご機嫌やね」
    社長令嬢みきちゃんは言う。

    「みきちゃんと一緒におれるんが嬉しいからやで」

    売上、ありがとう。
    未収なんてしやんと、いつもニコニコ現金払い、ありがとう。

    2020-06-24 01:55:49
  • 47:

    みきちゃんの中の俺の評価を更に上げるくらい楽しい時間を過ごして家まで送って別れた。
    帰りのタクシー代、ありがとう。

    神様、蘭を見つけてくれてありがとう。
    頑張ってくれた新人くんをどうか幸せにしてください。

    そのままのテンションで、蘭が在籍している店に電話をして、出勤を確認して早めの時間に予約する。

    パネル詐欺の蘭はやっぱり一見さんに人気らしく、何とか予約をすることができた。

    待っとけよ、蘭。
    ショウが行きますよ~!!!

    2020-06-24 02:01:34
  • 48:

    37 蘭 24歳後半

    「ただいま~」
    「…」

    仲良く2人で暮らしてたと思ってたジュリの家に帰っても返事がない。
    最近いつもそう。

    「蘭、お願いやからトイレ流して、ドア閉めてや…
    私帰ってきてドア開けたらめっちゃその…臭いが…恥ずかしくないの??」

    「あはは、ごめーん、忘れてた」

    一緒に住む前のジュリは、おおらかで明るくて楽しい子やと思ってたのに、ホンマに口うるさい、お母さんみたい、もう何年も会ってないけど。
    自分の家で好きに過ごして何が悪いんやろ。

    2020-06-24 02:21:10
  • 49:

    「…なぁ蘭、仕事は??レイくんの事で傷ついてるのはわかるけど、そろそろ仕事に戻って自分の生活して欲しい…もちろん何かあったら助けるから…」

    「…」

    わかってる、わかってるけど…
    レイと過ごした時のことを、ニュースを見た時の事を思い出したら、自分が可哀想で泣けてくる。

    2020-06-24 02:25:03
  • 50:

    何より、絶対に支払わなくてはならない携帯代と、消費者金融の返済額と、食費さえあれば他は何も縛られていない今の生活が心地よくて抜け出せない。

    でも小言が多くなってきたジュリはダルいなぁ。
    ホストにも、そろそろ通いたくなってきたなぁ。
    お金、欲しいなぁ。


    「…あのさ、ジュリ、蘭仕事始めるわ。店を紹介してくれへんかなぁ??」

    そう言うと、出会った頃の、向日葵みたいに凛と眩しい笑顔でジュリは笑った。

    2020-06-24 02:29:11
  • 51:

    復帰は喜んでくれたけど、ジュリは今の店でしか働いた事がなく、つてが無い。

    しょうがなく、夜遊びウェブや、夜の求人を開いて色んなみせの評価を見て、大手の面接を受けた。
    もちろん受かって、ダルいダルい講習を受けて、その日のうちにお店の寮に入った。
    いつ、どこの店の寮も同じ。無機質な白い部屋のワンルーム、もちろんユニットバス。

    ジュリの家はワンルームやけど日当たりが良くて、風呂トイレはセパレートで、いつも綺麗に片付けてたなぁ。

    2020-06-24 02:33:38
  • 52:

    今日から自分の城になる部屋には、店が準備してくれたテレビ、テーブル、オーブンのないレンジ。

    前の住人が置いて行ったであろう、ティッシュやトイレットペーパー等の消耗品、バスグッズ、ゼブラ柄の敷きパッドにショッキングピンク布団がおいてあって、なかなか快適だ。

    今日入店した店は、お祝い金が10万円。
    決めた理由のひとつが、これ。

    2020-06-24 02:38:59
  • 53:

    「じゃあ今すぐ10万円頂戴や」

    「すみません、お祝い金は入店して1ヶ月頑張って頂いてからのお渡しになります」

    「はぁ!?そんなん聞いてないし!どこにも書いてなかった!!!」

    「決まりなんです」

    「嘘つき!!!」

    事務所で騒いでいると、ボスと呼ばれるオーナーがやって来て、どうにか1万円だけその場で貰うことが出来た。

    2020-06-24 02:42:31
  • 54:

    小銭のみの財布に1万円札を入れて、デリバリーで、ピザとサイドメニューのチキンとコーラを小さなテーブルに乗り切らないくらい注文して、関東の芸人ばかりが出ているお笑い番組を観ながら貪り食った。

    最後の1切れが食べれなかったけど、空き箱は全て腕で部屋の隅に寄せた。
    ペットボトルが倒れてコーラがこぼれたような気がしたけど、気にしないことにした。

    注意してくるジュリがいないから、本当に楽だ。
    あ、そうや、ジュリに連絡しとこ。

    2020-06-24 02:50:25
  • 55:

    次の日出勤前に、ジュリの家に残したほんの少しの私物を引き上げた。
    ジュリは仕事だったので会わなかった。

    たった一日で、部屋や廊下や水周りが明るくなっていた気がした。

    ありがとう、ジュリの家、楽しかった。

    2020-06-24 02:53:56
  • 56:

    仕事前にパネル撮影をした。
    客の前では平気なのに、お店のスタッフのカメラの前で裸になるのは何故か少し照れた。

    下着姿で胸を強調してポーズを決める。
    中々可愛く撮れた。

    ほれみろ、新人大好きな客で予約が埋まってる。
    蘭、19歳、152センチ45キロ
    得意な技は…恋人プレイ

    ごめん、名前と身長以外全部嘘。

    2020-06-24 02:59:30
  • 57:




    この店にも少し慣れて、まだまだ新人推しキャンペーンが続いて待機時間が短く忙しい日々。

    「蘭さん、ネット指名入りました!」
    「はあ~い」

    時代遅れのトランスが小さく流れる店内の、区切られ、与えられた個室待機部屋、兼プレイルームのドアが開くと、たった3ヶ月ほど前まで見慣れていた顔があった。

    「蘭ちゃん!!!」

    心配してたよ、と抱きしめてくれるは、元彼氏、レイのお店のNo.1、しょうくんだったた。

    2020-06-24 03:07:16
  • 58:

    「え!?ショウくん!?・・・・??」

    「大変やったなあ、蘭ちゃん・・・レイが・・・あんなまさか・・・」


    正直レイのことは少し忘れかけていたので、全部思い出すのに時間がかかった。

    「俺も、レイがあんな状況何しらんかった・・・。蘭ちゃんに辛い想いさせてごめんなあ・・・」

    「・・・ヒック・・・ヒック・・・・・・」

    毎日客の汚いおっさんと肌を合わせてきたので、久しぶりの若い男・・・
    若い肉体・・・
    少しでも、か弱く可愛いと思われたい。
    だから、泣き真似をした。

    2020-06-25 19:17:16
  • 59:

    「蘭ちゃん泣いてる??ごめんホンマ辛い思いさせて・・・俺がもっとしっかりしてたら・・・」

    「・・・ショウくんのせいじゃない・・・心配かけてごめん・・・ヒック」

    ああ・・・体臭も良い匂い・・・吐く息すらも。
    泣き真似がバレないように、下を向いた。

    「レイの・・・後輩の彼女やから言われへんかったけど、俺ずっと蘭ちゃんのこと見ててん・・・」

    「ヒック・・・え・・・!?」

    店のNo. 1で、綺麗で金持ちそうな女に囲まれてるショウくんが、蘭の事を??
    若い肉体に。
    良い匂いに。
    No. 1らしい美しい顔に。

    2020-06-25 19:29:45
  • 60:

    このおいしい状況に。




    顔は下を向けて両手で覆ったまま、





    歯をむき出しにして、笑みをこぼした。

    2020-06-25 19:33:45
  • 61:

    それから毎日忙しかった。

    毎日仕事に通い、稼げなかった日はそういうサイトで客をとって稼いだ。
    ショウと一緒に住むために、たくさんお金が必要だった。
    No. 1ってランキング維持のために自分を磨き、後輩たちのフォローや面倒を見ているので貯金なんてなかった。

    それに、ショウには夢がある。
    No. 1止まりなんて小さな器じゃない彼は、自分の店を持ちたいらしい。

    蘭も店に通って売り上げに貢献したし、仕事の合間を縫って物件を見に行ったりもした。

    忙しい、大変な毎日だけど、本当に幸せで充実していた。

    2020-06-25 19:50:46
  • 62:

    ーーーークラブサーカスのショウ、本カノって店来てる??

    ーーーーあの背低い派手な子やろ??

    ーーーー毎回VIP席座ってる子

    ーーーー一緒に歩いてるの見た


    夜遊びウェブのショウのスレに蘭の事らしき書き込みがチラホラ。
    本当にニヤニヤが止まらない。

    お客さんの皆さーん!!!
    あなたたちの大好きなショウは、蘭のものですよ〜!!!


    ーーーーデブやん

    ーーーークラブサーカスのNo. 1の女があれとか終わってる

    ーーーー色に決まってるやん


    うっせばーか!!!
    ひがみ乙!!!

    2020-06-25 20:32:39
  • 63:

    「蘭、 ご機嫌やな、どうしたん??」

    隣で、産まれたままの姿のショウが言った。

    「夜遊びに蘭とショウのことめっちゃ書かれてる・・・バレたらヤバいよな、怖い・・・」

    「あちゃー!!!一緒におるとこ見られちゃったか・・・。まあ、俺の客に何か言われたら上手いことごまかすわ。
    だから蘭は何にも気にしやんで良いで。てかお前俺のこと信じろよ〜!!!夜遊びなんてチェックしやんでも、ほんまに好きなんは蘭だけやで」

    違う違う。
    心配やから見てるんちゃう。
    No. 1の彼女ってポジションを再確認して心の中で他の女にマウント取ってるだけ。

    2020-06-25 23:20:56
  • 64:

    ただ、気になることが一つ。

    ーーーーあんなチビデブ本カノなわけないやん。
    ショウはもう何年も前から本カノおるから。

    ーーーー誰??

    ーーーーまりさん

    ーーーー自演乙w

    ーーーーまりさんなら納得


    まりさんて誰やろ・・・
    噂やろうけど、名前上がるだけでムカつく。


    ーーーーホンマの本カノの名前なんやっけ??

    ーーーー蘭ちゃん??やっけ、多分

    ーーーービップの蘭ちゃん

    ほらな、気持ちいい・・・

    2020-06-25 23:26:25
  • 65:

    少し家賃は嵩むけど、お店の寮とは比べ物にならないくらいに綺麗なマンションで、二人の新生活を始めた。

    最初は家具も家電も最低限しかなくて、テレビ、エアコン、テーブル、ソファー、キッチン用品、いっぱい仕事を頑張って、順番に買い足してどんどん生活感が出てくるのが嬉しかった。

    家賃はショウが出してくれるから、他のお金は蘭が稼がないと・・・

    あ、やべ、消費者金融の返済今日やった。

    「ショウごめん・・・。どうしても支払い間に合えへんから、8万貸して欲しい。あかんかな・・・」

    「・・・良いで!!!蘭いつも頑張ってくれてるし、次からは気をつけてや。俺もあんまり金ないし・・・」

    「ありがとう!!!次からは絶対ない!!!今日仕事終わったら店行くわ、頑張る」

    2020-06-25 23:35:57
  • 66:

    ショウは、優しく笑って頭を撫でてくれた。


    ほれみろ夜遊びで蘭の事叩いてるクソ女ども!!!
    蘭は!!!
    本カノやから!!!
    ショウが!!!
    支払いしてくれる!!!


    ざまあ!!!

    2020-06-25 23:38:15
  • 67:

    同棲する前にショウと約束した事。

    帰りが遅い日もある。
    帰らない日もある。
    連絡でけへん日もある。
    家で、蘭の前で客と電話することもある。
    店で客とくっついたりすることもある。

    でも、絶対に絶対に蘭のところに帰ってくるから、頑張るのはランのためやから、これには口田さんといてほしい。

    想像したら悲しくなったけど、蘭のため、なんて言われたら我慢するしかない。

    2020-06-25 23:44:46
  • 68:

    毎日は無理だけど、ショウが連続で帰って来られなくて寂しい時は店に通った。

    「いらっしゃいませーーーー!!!」

    「蘭さん来てくれたんですか」

    「お前のためちゃうわ」

    「わかってますよ〜、ショウさん昨日は潰れて店で寝てしまって、きっと蘭さんに会いたかったと思いますよ」

    「え!!!ショウ店で寝てたん???」

    「そうですよ〜、僕ずっと一緒にいました」

    ・・・てっきり他の客とお泊まりかと思ったけど、店で寝てたんや・・・

    「蘭!!!どないしてん!!!今日は来てくれると思わんかったからめっちゃ嬉しいわ〜」

    接客中の客を放って、100点の笑顔で駆け寄ってきてくれるショウが本当に愛おしい。

    2020-06-25 23:53:07
  • 69:

    「蘭今日金ないんやろ??家で待っててくれて良いねんで。」

    「仕事頑張って、お金作ったから大丈夫。ショウに二日会ってないから寂しかってん」

    嘘。
    仕事は、新人キャンペーンが終わって劣悪な短時間な客ばかり当たるようになった。
    リピートは、ない。
    出勤時間のほとんどが待機時間だ。

    お金は、消費者金融の限度額いっぱいまで借りて持ってきた。

    「俺のために頑張ってくれたんか??・・・お前はほんまにええ女やな・・・」

    2020-06-25 23:58:24
  • 70:

    「蘭さんのためにビップ空けますね。普通席やったら、他の客が面白くないと思うんで」

    「いらっしゃいませー」

    「あ、蘭ちゃん、いらっしゃい」

    「蘭ちゃんお疲れ〜」

    ショウお気に入りの新人をはじめ、店のホストたちは蘭とショウが付き合ってて同棲してるのも知ってるからみんな優しい。

    居心地がいい。

    「蘭、せっかく来てくれたのにごめん・・・今日一番の太客が来てるからあんまり席つかれへんねん・・・」

    えーーーーー!!!せっかく来たのに・・・
    でも文句は言わない約束。
    ショウにだけは可愛くていい女だと思われたい。

    2020-06-26 00:06:09
  • 71:

    ぷーっとほっぺたを膨らませて、怒ったふりをした。

    「はは、そんな可愛い顔しても今日だけは無理やねん、ごめんな」

    わかってる。
    仕方ない。
    ショウのため。
    蘭のため。
    二人の、未来のため。

    ヘルプには、ショウお気に入りの新人が付いて蘭の知らないショウの癖や、可愛い、面白いエピソードをたくさん聞かせてくれたから退屈しなかった。




    「蘭〜!!!ちょっと休憩させて〜!!!・・・って、お前らめっちゃ楽しそうやな、何の話してたん??」

    「そんなん内緒やんな〜」

    「そうですよ〜ショウさんには内緒です☆」

    他の客の相手はしんどいよな・・・
    蘭の席ではゆっくりリラックスしてほしい・・・




    2020-06-26 00:15:40
  • 72:

    ショウが座って間もなく、ボーイが来て何かを耳打ちした。

    「あー、まじか・・・蘭ごめん、さっきの太客がシャンパン入れたからコール行ってくる」

    はあああああああああ!?
    ショウ今来たとこやん!!!
    是絶対わざとやん!!!

    太客の顔を拝んでやろうと、立ち上がってショウの背中を追った。
    すると、太客と目があった。

    2020-06-26 00:27:41
  • 73:

    手入れの行き届いた長く美しい髪をゆるく巻き、小さな顔に鼻。
    必要以上に大きな愛らしい目、ぷっくり艶々な唇に咥えられた細いタバコがとても妖艶だった。
    富の匂いがした。

    蘭を見てニヤリと笑って、恐らくブランドであろう形の綺麗なサマーニットのセットアップから伸びた細い細い二の腕をショウに絡ませて、何かを耳打ちした。

    ムカつくムカつくムカつく。

    うるさい!!!
    シャンパンコール!!!
    ふと客を見た時間はほんの一瞬だったのに、彼女の姿が脳裏に焼きついて離れない。

    「なあ、あいつ、よく来るん??初めて見たけど」

    「蘭さん鉢合わせるの初めてですか??月に一回くらいかな」

    2020-06-26 00:35:41
  • 74:

    名前は??
    職業は??
    年齢は??
    いつから店に来てる??


    聞きたいことはたくさんあったけど、ショウに悪く思われたくないからグッと堪えた。


    ああ、うるさい、シャンパンコール!!!
    うるさい!!!
    うるさい!!!
    うるさい!!!

    連続で何本も入れているのか、コールが鳴り止まない。

    2020-06-26 00:39:39
  • 75:

    そんなにショウに飲まさんといて!!!
    今日も帰って来れなくなるやん!!!

    全財産が入ったカバンをギュッと抱きしめた。
    いや、借金やから正しくは自分のお金じゃないけど・・・

    本当は今日店で少し飲んで、余ったお金で大きな冷蔵庫を買おうと思ってたのに。
    楽しく飲んで、ショウと一緒に店を出て、ご飯を食べて家に帰って、寝て、おはようって言って、一緒にお風呂に入って、ラフな格好で電気屋さんに行きたいな・・・
    って思ってたのに・・・



    あの女に負けたくない。

    2020-06-26 01:00:29
  • 76:

    余裕がない、お金がないなんて思われたくないから毅然とした態度で新人に言った。

    「モエシャン持ってきて」

    「え!?何言ってるんですか!!!そんな事したら僕がショウさんに怒られます!!!」

    「いいから・・・」

    「もう!!!僕知らないですよ!!!」



    これでショウが蘭の席に戻ってくる。

    あの女だけにいい思いなんてさせへん。

    2020-06-26 01:08:36
  • 77:

    あの女のコールが止むと、次は蘭の番。
    ボーイの耳打ちでショウが駆け寄ってきた。

    「蘭お前何してんねん!!!お前はそんなんしやんでええって!!!」

    「いいねん、ショウを助けたい・・・お願い・・・」

    ショウは、しょうがない奴やな、ありがとうって言って頭を撫でてグッと寄って蘭にしか聞こえない声で

    「愛してるよ」

    って言った。
    それだけでいい。


    2020-06-26 01:15:30
  • 78:

    最高にいい気分でコールが終わったら、

    「ごめん、お前は客じゃないからわかってくれるよな。ふと客以外の客ほったらかしやから順番についてくる」

    困った顔のショウを笑顔で送り出した。

    新人が席を外して暇を持て余したので、携帯を開いて夜遊びウェブを見た。
    もちろん、ショウの店、クラブサーカスのスレ。

    2020-06-26 01:20:23
  • 79:

    ーーーー蘭ちゃんきてるやん(笑)本カノやのに(笑)

    ーーーー↑どこの席??私もおる

    ーーーー今日ショウの客いっぱいやな

    ーーーー私の口座人気なくてよかった

    ーーーー間違ってたらごめんやけど蘭ってレイの客じゃなかった??

    ーーーー蘭って子同じ店やわ。安定の風俗

    2020-06-26 01:25:06
  • 80:

    腹の立つ書き込みしかない。
    ので、自分で書き込んだ。

    ーーーー今日も蘭とショウラブラブやな

    書き込んですぐに新人が戻ってきて、お店のラストが近いことを伝えられた。

    すると、またシャンパンコール。
    やっぱり、あの女。
    あームカつく。

    もう一回あの女の様子を知るためにトイレに立った。
    わざと近くを通った。
    顔は進行方向、目は、あの女。

    2020-06-26 01:29:51
  • 81:

    完全に雌の顔をして、ショウにしなだれかかり、酔いと喜びで頬をピンクに染めていた。
    その姿は大人っぽさを隠して、丸で恋する少女のようだった。

    女も私に気付いて、わざとらしくより一層ショウにひっついて、耳元で何か囁いた。
    蘭が近くにいると知らないショウは、蘭にするように女の頭を撫でて髪のカールの先までなぞり、手の甲にキスをした。

    美しい二人の絵になるその様を見て、今までにない衝撃的な嫉妬をした。

    悔しい。
    負けたくない。
    あんな女より蘭の方がショウに似合ってる。
    ショウとラストを迎えるんは蘭や。

    2020-06-26 01:41:38
  • 82:

    怒りと嫉妬で鼻の穴を膨らませながら、周りには悟られないように、できるだけ自然に、余裕な態度で

    新人に言った。

    「ドンペリの・・・ピンク持ってきて・・・」

    長い間ホストクラブに通っている中で一番の高額に手足が震えた。
    それでも、未収をせずに払える金額いっぱいいっぱいだった。

    消費者金融や携帯やマンションの光熱費は払えるのかな。
    とか、明日からお昼から出勤しようかな、とかを考えながら、自分なりにしれっと注文した。

    慌てた新人が
    「ショウさん呼んできます!!!怒られませんか???」

    「ショウには内緒でええわ!!!蘭の言う通りにして!!!」

    2020-06-26 01:52:57
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