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ピエロ

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  • 1:

    ◆NedEI85Yxg


    『ピエロみたいに笑ってたくない?ずーーっと!』


    ――――今でも、いつかのアイツの言葉を思い出す。

    2008-05-29 05:42:00
  • 49:

    麗香とは、初対面からウマが合わず、お互いがお互いを鬱陶しく感じていた――。家でも学校でも顔を合わす。それが堪らなく嫌で嫌でしょうがなく、ロクに家に帰らなくなるアタシ。それとは対照的に、ファザコンの麗香は毎日家に帰り、その父を溺愛していた母は麗香をも可愛がった。これは卑屈でも何でもないが、そこに愛なんてなかった。母はそういう人だった。
    日が経つに連れて麗香の父は本性を出す。"暴力"。と言っても、手を出されるのはアタシだけだったけど。

    2008-05-30 04:57:00
  • 50:

    もちろん母は助けてくれるハズもなく、それどころか父に加勢してくる日さえあった。麗香はと言えば、それを見て勝ち誇った様に笑っていた。
    傷だらけで学校に行く。土地柄のせいか、髪を染めてるだの、制服のスカートが短いだの、生意気だので先輩に呼び出され囲まれやりたい様にやられる。もういちいちどの傷が誰かなんてわからないし、どうでもいい。気に入らないならいっそ殺してくれたらいーのに。


    ――そんな時に出会ったのが、[アヤ]。アタシの初めてで、そして最後の"友達"――。後にも先にもこれほどの出会いはもうないと今でも思っている。

    2008-05-30 05:11:00
  • 51:

    『あんたの妹、やっちゃっていい?』
    ――アヤが初めてアタシに話しかけてきた言葉がこれ。先輩達に呼び出される時、唯一、二回以上顔を合わしてる子だったから顔は嫌でも覚えていた。大体みんな一回"アレ"をされたら懲りてたから。『別に…。名字が一緒なだけであんなん妹でも何でもないし。』『マジで!?どうりで全っ然似てへんわけや〜笑』アヤの第一印象は"馴れ馴れしい奴"。そん位。ただ、目鼻立ちがクッキリしてて綺麗な顔してるなと思った。

    2008-05-30 05:22:00
  • 52:

    その数日後、麗香が傷だらけで帰ってきて、パンパンに腫れた顔で父や母に泣きながら言ってるのを聞いた。「片瀬さんに殴られた!」……あいつ、ほんまにやってるし。麗香が言う"片瀬"はずばりアヤの事で、父と母は学校を通し、アヤとアヤの親に謝罪を求めたが、アヤも、アヤの親も家に来る事は無かった――。

    『あ!妹川姉!』
    ある日学校での事。トイレに入ると窓際で1人煙草を吸うアヤがいた。口元が切れて赤くなっていた。

    2008-05-30 05:37:00
  • 53:

    もちろん家にも煙たがられる訳だが、アヤがいる、それだけで何となく、楽になれた気がした。


    【13歳-夏-】
    生まれて初めての彼氏ができる。名前は[実好 英太-ミヨシ エイタ]名字で呼んでいた。それ位初々しい恋。隣のクラス。学校に行かず遊びぼおけてる時、アヤが連れてきて、出会った。これが"幸せ"かと、幼ながらに感じ、「卒業したら一緒に住もう」「結婚しよな!」そんな口約束も疑う事なく信じていた。何だかんだ、純粋だったのかも。

    2008-05-30 21:23:00
  • 54:

    でもその初めての"幸せ"は、簡単に崩れる。しかも原因は麗香――

    【14歳-春-】
    2年に上がると同時に、実好と別れた。いや、麗香に取られた。麗香が実好を本気で好きだったのか、アタシへの嫌がらせだったのか、そんなのはどっちでも良くて、ただ実好が麗香を選んだ事が、ショックで、恨むとか、取り返すとか、そんなんじゃなく、どこか遠くに逃げたくなった。どこか、誰も知らないところ――。

    2008-05-30 21:35:00
  • 55:


    『…なんか、どっか遠く行きたいわ。』
    『ふーん?んな行ってみる?』

    ――ほんまにノリ。この時のアヤの軽い台詞。"家出決行"。"もう二度とここには戻らんとこ!"その晩、それぞれ鞄に荷物を詰め込んで家を出た――。夜桜が綺麗だった。

    2008-05-30 21:41:00
  • 56:

    何も、考えてなかった。でも不安は無かった。"二人なら大丈夫!生きていける"何故かそう強く信じていた。アヤが一番だった。アヤの言葉だけは信じる事が出来た。

    まず、"金が必要"。そこで二人が初めてした仕事は[-セクキャバ-] 14歳の子供が服を脱ぎ、大金を稼ぐ。親父に触られるのは気持ち悪い。でも二人で生きていく為。"あそこ"におるより全然マシ。怖くなんかない。アヤといれば、本当に何も怖くなかった――。

    2008-05-30 21:51:00
  • 57:

    ある程度お金が溜まったら、家を借りた。と言っても客名義だけど―――嬉しかった。『うちら二人でもいけるやん!!』そう言って手を叩いて二人喜んだ事、アヤの笑顔。そこに偽りなどなかった事を、信じたい。

    【15歳-夏-】
    スカウトをきっかけに"キャバクラ"に移動した。楽しかった。触られずにすむ。お金もある。帰れる家がある。仕事でどんな嫌な事があっても、二人愚痴り合って笑う。"明日も頑張ろな"と。不満などなかった。寂しくもなかった。これっぽっちも。

    2008-05-30 22:01:00
  • 58:


    "幸せ"はどうして長く続かないんだろう。まるで何事もなかったかの様に、消えていく。闇に、連れ去れていく。

    【15歳-冬-】
    アヤが覚醒剤にハマった。当時付き合っていた男は、アヤを引きずり込んだ。ドラッグの世界に。始めは片腕、でも確実に吸い込まれていく、アヤを止める術が、あの頃のアタシには無かった――。

    2008-05-30 22:13:00
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