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∞午前3時の運転手∞

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  • 1:


    『30円お返しです。ありがとうございましたー。』

    ──パタンッッ・・・

    2006-03-04 14:46:00
  • 20:

    一段落して、料金の受け皿に置かれたセブンスターメンソールを掴む。
    『フゥ。´Θ`。)疲れた』
    一服しながら、キラキラチカチカと電飾の輝く街を眺める。
    ちょっと前までの自分が沢山歩いているような真夜中の梅田。

    2006-03-04 15:06:00
  • 21:

    『あの人、ネクタイ曲がりようで。』
    独り言が増えた。
    何てったって、会話なんてないに等しいお仕事。
    性に合ってる分、淋しい時も結構ある。
    孤独なお仕事、タクシードライバー。

    2006-03-04 15:09:00
  • 22:

    『乗れますか?』

    黄昏れているといきなり声をかけられ、ハッとして手元のバーを引く。

    2006-03-04 15:10:00
  • 23:



    キィ─────パタン──ッッ

    2006-03-04 15:11:00
  • 24:

    『御堂筋の道頓堀まで行って欲しいんすヶド、えっ…と。んーと何て言うんやろ』
    『橋を越えた靴屋さんの辺りですか?』
    『あ!!それそれ!!そこです☆お願いします』
    『畏まりました、ありがとうございます』
    ━━━お客様をのっけた車は走り出す。今度の目的地は、繁華街ミナミ(。・v・。)

    2006-03-04 15:11:00
  • 25:

    シィ────ン・・・
    ━━━静まり返った車内は、お客様の香水だろうバニラのような甘い香りが充満している。

    。´v`。){あ、アイスクリーム食いたいけぇ、この人おりたら買いに行こっと。
    ----お客様のイイ香りは、運転手うにの気持ちまで甘く侵食しだしていた。うに、イイ香りに、かなりご満悦なご様子。

    2006-03-04 15:12:00
  • 26:

    ♪♪ピロ♪♪ピロ♪♪ピロ♪

    後部座席からなにやら音楽が聞こえ出す。
    ──ピッ・・・!!
    『はい。あぁ。わかってる。うん。今日仕事終わったら行くからって。』

    2006-03-04 15:13:00
  • 27:

    ピッ・・・・
    『ハァァァ。』
    緩んだ口元から、薄っぺらいため息がこぼれ落ちた。
    もちろん聞かないふりをするのだ。仕事だから。
    ----タクシードライバーは、ただ運転していれば良い。逆に言えば何があろうと、平常心を絶やす事なく運転と言う職務を松任しなくてはならない。

    2006-03-04 15:15:00
  • 28:

    黙ってハンドルを握る。それがお仕事。
    ・・・・・でもね、
    『運転手さん。ちょっと聞いてくれますー(。´ゞ`。)』
    こんな事も有るんです。
    こんな場合はもちろんです。

    2006-03-04 15:15:00
  • 29:

    『どうしました?』
    これが正解。
    『俺ね、ホストなんすよ』
    やっぱりね(。・v・。)
    『はい。』

    2006-03-04 15:16:00
  • 30:

    『最近結構売れてきてね。こーやってタクシーなんか乗れる位に。』
    『ハハッ。はい。』
    『でもねー。彼女が居るんすよね。』
    『はい。』
    『…辞めて欲しいって。』

    2006-03-04 15:17:00
  • 31:

    『んー。はい。』
    『でもね、やっと慣れて来て、楽しくなってきたんすよ』
    『はい。』
    『ぶっちゃけ色も使うようになって。あ、色って、お客さんと付き合うみたいなやり方なんですヶド』
    『はい、わかります。…なんとなくですヶド。』

    2006-03-04 15:18:00
  • 32:

    ----甘い匂いが漂う車は夜の街を走っている。
    『彼女が厄介で。色カノは切れってね。でもエースなんすよ。色カノってのが。』
    『はい。』
    『最低すよね。わかってんすヶドね。何て言うか…』
    『辞めたくないんですよね』

    2006-03-04 15:19:00
  • 33:

    『ハハッ。そう。今しかないんすよ。今辞めたらきっと二度と戻れない。ハハハ俺何言ってんやろ。すいませんね。忘れて下さい』
    『…はい。』

    *+*お客様は神様です。
    お客様が終わりと言えば、それ以上は口を開かない。これも鉄則である。

    2006-03-04 15:20:00
  • 34:

    『あの靴屋さんの辺りで良いでしょうか。』
    ----後部座席から漂う異様に暗い空気を尻目に運転手、業務にまっとうする。
    車が止まる。
    『あ、はいはい。えーっと、千六百…円ですね』
    『はい。では二千円お預かりで四百円お返しです。ありがとうございました。』

    2006-03-04 15:21:00
  • 35:

    お客様がドアから足を出し、聞こえないようにため息をはく、うに。
    『あ、運転手さん。』
    ビクッッ?(゚Д゚・)バレタ??
    『名刺ないっすか?良かったら毎日乗るし、運転手さんおかかいにしたいんすヶド』
    ━━━ご指名いただきました☆☆タララッタラ〜ン☆★

    2006-03-04 15:22:00
  • 36:

    たまに有るんです。
    特にホステスさんなんかが多いんですがね。
    毎日ご利用なさるお客様は、気心しれた運転手をご指名なさいます。
    この方もその様です。
    ----『畏まりました。こちらの番号が直通致しますので。またよろしくお願いいたします』

    2006-03-04 15:23:00
  • 37:

    『あ、ありがとう。じゃあコレ、俺の名刺なんで一応渡しときます☆』
    【叶 雄也】と書かれた黒い名刺を受け取る、うに。

    。・v・){ん何々??【ホールアドバイザー】??何ですかそれは(。´v`。)
    よく解らないポジションの雄也様。ですがきっちり受け取りました。

    2006-03-04 15:24:00
  • 38:

    ・・・パタ…ン!!

    『フゥ。´v`。)あ、アイスクリーム買いに行くんじゃった』
    ----またもや独り言を呟いてみる、うに。
    『ホールアドバイザーっちゅうんは偉いんやろうか。変わった役もあるんやのぉ』

    2006-03-04 15:25:00
  • 39:

    ♪♪リンコロ♪♪♪リンコロ♪♪♪

    『?(゚Θ゚・あ、俺の電話か』

    ----夜のお仕事を辞めてからと言うものの、めっきり鳴る機会の減ったうにの電話。久しぶりに鳴っております。

    2006-03-04 15:26:00
  • 40:

    『はい』
    『はっろーゥゥ!!うにたん☆俺俺俺俺俺俺☆』
    『ジンちゃん。どーしたん』
    『飯食い行こ(。゚∀゚。)』
    『んー。今仕事中やけぇなぁ』

    2006-03-04 15:27:00
  • 41:

    『いやーん!!リアチャンとユウもおるんやで〜(。゚∀゚。)早く来いちょ☆』
    『んー、っと2時か。わかった行くわ。どこ?』
    『素敵。´v`。)心斎橋におるから〜』
    『わかったわかった。すぐ着くけ待ってて』
    『ホイホ〜イホイ☆』

    2006-03-04 15:28:00
  • 42:

    うにの勤めるタクシー会社は、小さい会社なので一日のノルマも少ないのです。
    既にノルマを達したので、うにはちょっとサボる様です。

    『あ(゚Θ゚・)行くメシ屋ってアイスあるかな』
    ━━うに、どうしてもアイスクリームが食べたい様です。

    2006-03-04 15:29:00
  • 43:

    『リアとユウとか。久しぶりやね。でも相変わらずうるさいんやろうなぁ。´_`。)』
    *+*+プチプチと独り言。
    でもハンドル切るのはさすがにお上手。
    だってタクシードライバーですもの。
    ----ブイーンと煙たい音を立て、行燈の灯火の消えたタクシーが走って行きます。

    2006-03-04 15:30:00
  • 44:

    *+*+車がキキキッっと到着。
    ガチャ───!!
    ----助手席のドアが勢いよく開いた瞬間。
    『ヒャ(*゚Д゚)』
    うに、びっくりです。

    2006-03-04 15:31:00
  • 45:

    『あッッ!ウニタン〜!!久っしぶりィィ!!きゃぁ☆相変わらず男前やん〜!!!』
    座り込んだのはユウだった。
    ※この方は、でらべっぴんのオカマです。
    『ちょっと待ってユウ、お前後ろ座ってよ』
    迷惑そうに顔をしかめて笑う、うに。

    2006-03-04 15:32:00
  • 46:

    『やぁよ〜!!!あら相変わらず肌もスベスベだわぁ(。゚∀゚。)食っちゃいたい☆』
    ──カチャ・・・!!!!!
    『うに久しぶり〜』
    『あ、リア。久しぶり。ちょっとこのオカマ後ろ座らしてよ』
    *+*後部座席にはリアとジンチャンが乗り込んだ様です。

    2006-03-04 15:33:00
  • 47:

    『ウニタン久しぶり☆』
    『ジンチャン(。゚∀゚。)丁度、真後ろに座っとるけぇ見えんヶド久しぶりじゃなぁ』
    ──久しぶりの友との再会にうっとりするもつかの間。
    『あたし腹減った。うに、鍋屋いって〜』
    『相変わらずワガママな女じゃな。´v`。)鍋義でいいな』

    2006-03-04 15:33:00
  • 48:

    『鍋義とか(。゚∀゚。)やたら久々やん!!てか他開いてないかぁ。腹減った〜』
    『ジンチャン鍋義好きやったもんね。特にあんこう鍋』
    『さすがウニタン☆俺ほんと好きなん☆あんこう☆キャ』
    『あたしも好き。唐揚げ』
    『リアは唐揚げばっかり食べるのよねぇ。あたしはフグが好きよ』

    2006-03-04 15:34:00
  • 49:

    ボッポコボッポコ・・・・
    4人を乗せたタクシーが心斎橋を走ります。
    みんなそれぞれ違う道を生きてる毎日、
    今日さよならしたら、またみんなそれぞれの場所へ戻り、
    全く違った道を行く。

    2006-03-04 15:35:00
  • 50:

    『大人になったね。』
    誰かが鍋をつつきながら言いました。
    みんなは、少し寂しげに笑いました。
    気がつくと、みんな大人になりました。
    気がつくと、少し寂しくなった、うにでした。

    2006-03-04 15:36:00
  • 51:

    『で、確かリア結婚するんってね?』
    『うん。あー、うにには結構前に言ったっけ』
    ----ハフハフしながら、鍋をツンツンする。
    楕円型に配置された4人の中でうにとリアがお喋り。
    『え!!まじで(*゚Д゚)聞いてへんやん。リアチャンひっど!!』

    2006-03-04 15:37:00
  • 52:

    『あれ?ジンには言ってなかったっけ(。゚∀゚。)??カミとね、結婚しまんねん』
    『まじでかー。まだ若いのにー?もしやデキたトカ☆』
    ──ジンがお腹をポコリと膨らむジェスチャーをすると
    『あほか。´v`。)何となくってか、流れって奴。一緒に住んでるしね。お父さんとも話してたみたいやし。』
    ---なーんて言って、箸を持つ華奢な手からちらっとリングが光ります。

    2006-03-04 15:38:00
  • 53:

    『おかげでーそろそろオカマ引退よあたしも』
    ----はくはくとほっぺを動かしながらユウの声。
    『なんで。ユウがオカマなんとリアの結婚関係ないでしょ』
    ----続くうにの疑問。
    『ウニタンの馬鹿ッッ。ワカランチンな人ねぇ。つまりは、あたしもキャバ辞めて田舎帰るって言ってんのッッ』

    2006-03-04 15:39:00
  • 54:

    『あ、そーなの。そっかー淋しくなるねー』
    うにはぼんやり思いました。

    ──大人になるって淋しい事なのかもね──

    2006-03-04 15:41:00
  • 55:

    『じゃあまたね』
    みんなそれぞれ違う道を歩いて行きます。
    もしかしたらもう会わないかもしれない、
    そんな淋しさや虚しさも、
    素直に表現できずに笑う事ばかりを身につけるようになりました。

    2006-03-04 15:42:00
  • 56:

    うにはタクシードライバー。
    今日は少し【おせんち】になりました。
    それでも車は走ります。
    お客様は神様です。
    うには毎日従順にタクシードライバーとして走ります。

    2006-03-04 15:43:00
  • 57:


    『ファ(。´∀`。)眠いのー。今日も頑張ってメーター弾くぞ〜』
    ----カコカコと車内をいじると、今日もうにの仕事は幕を上げます。

    コンコンッッ!!!

    2006-03-04 15:44:00
  • 58:


    おっと、早速お客様が乗られるご様子です。
    さすが金曜日。
    いつの時代も金曜日はハナキンです。

    2006-03-04 15:44:00
  • 59:



    キィ────ィィ…パタン!!

    2006-03-04 15:45:00
  • 60:

    『あ…あの…、えっと…あの…梅田まで!!梅田まで行って下さい!!』

    ・・・・・・(。゚∀゚。)!?

    『お客様、ここが梅田でございますよ(。´v`。)』

    2006-03-04 15:47:00
  • 61:

    ん?このお客様、なにやら大きなお荷物…。
    しかもなにやら挙動不審でございます。

    『あッッ!!あ…えっ!!ごっ!!ごめんなさッッ!!……えっと…あの…ちょっ…と…大阪よく…わからなくて…』

    2006-03-04 15:48:00
  • 62:

    なるほど。
    お客様は上京仕立てなのでございますね。
    それにしても…
    『えっと…お客様、行き先は…どういたしましょうか?』
    うにもおめめがハテナでございます。?∀?。)ワォ

    2006-03-04 15:49:00
  • 63:

    『あ…どうしよう…あのッッあのあのあの…』
    お客様、もしかしてもしかすると、タクシー自体にも緊張なさっているご様子。
    『目的地…。お客様、目的地はどのような場所でしょう。もしかすると、何か手掛かりになるかもしれません』
    優しい言葉で緊張するお客様の眉間のシワを柔げる。これも立派なお仕事です。

    2006-03-04 15:49:00
  • 64:

    『あ!!あの、お店なんですヶド【クレア】ってお店なんです。わかりますか!?』んー・・・・ん!?}('θ'*。『お客様、北新地の【crea】でしょうか?』『はいッッ!!!そこです!!おおおお酒作るお店の!!』うには、余りに純粋そうなお客様に笑いそうになりながらも、頬をピンク色に染めて恥ずかしがりながら吃るお客様をルームミラーごしに見て微笑み、ハンドルを握りました。

    2006-03-04 15:50:00
  • 65:

    『よかったァァ・・。本当にありがとうございます!!面接なのに、遅れるところでした!!』
    緊張から解放されたのか、フワッと笑顔を見せるお客様。
    『いえ滅相もございません』
    丁寧にお返事。
    『……あたし、実家飛び出して来たんです!!』

    2006-03-04 15:51:00
  • 66:

    ?(゚ロ゚)!?
    うにはびっくり。
    『あたしの実家、本当にド田舎で。山と川しかないんです。それで…ヘヘッ。携帯サイトで知り合った人を…好きになって。大阪の人だったんです。なんか、夜の仕事で、スーツ着てお酒作る仕事だって…』
    ・・・・・・・・・( ̄A ̄。)ん?

    2006-03-04 15:52:00
  • 67:

    『すっごい優しいんです!!毎日メールしてて…彼が、大阪に来ないかッッて…☆一緒には住めないヶド、俺を支えて欲しいからって…ェヘヘ☆彼、お店に借金があるんです。だから支えてあげたくて…』
    ・・・・・・・・・・・(θAθ。)んん!?
    何やら怪しい雲行きデス…

    2006-03-04 15:53:00
  • 68:

    『さささ…ゴホッ…!!さようにございますか。』
    思わず上擦り吃ってしまう、
    うに。
    『エヘヘヘ☆でも、ホステスさんってどんなお仕事なんだろー。あたし何にも知らないから不安です。でも彼の為に頑張って支えてあげなきゃ!!』
    ミラーからちらっと見えるお客様は、リンゴチャンホッペが今にも破裂しかねない程に赤々として嬉しそうです。

    2006-03-04 15:54:00
  • 69:

    うにはお客様を勝手ながら
    《エヘヘチャン》
    と名付けました。
    エヘヘが口癖なエヘヘチャン。
    丸々リンゴなエヘヘチャン。

    2006-03-04 15:55:00
  • 70:

    『…ハァーァ。緊張して来た。どうしよう。運転手さん?』
    いきなり話し掛けられ、うにはまたびっくり。
    『はい。』
    それでも平然を装います。
    『あたし、変じゃないですか?面接とか初めてで…』

    2006-03-04 15:56:00
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