小説掲示板青空と烏のスレッド詳細|夜遊びweb関西版

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青空と烏

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  • 1:

    碧 虎?

    君があたしの空を飛んだから、あたしは救われた。
    あの晴れた夏の日。  青い空の下で
    眩しいほど浴びる太陽が嫌いだった。

    そして 君に出会った。

    2006-02-27 08:47:00
  • 2:

    碧 虎?


    肌触りの良い風が吹き抜ける午後。
    その風に揺られて、心地良い葉音を奏でる木々。

    いつもの公園で、シェリーは今日も青い空を見上げる。

    2006-02-27 08:58:00
  • 3:

    碧 虎


    一日がはじまれば今日もまたノイズが聞こえる。耳をつんざく痛い言葉たち。
    ひとつも吸収されずに吐き捨てられていく。

    「ほんま男前やねんってぇ!」「まじ!ね-シェリーも行くでしょ?」

    2006-02-27 09:03:00
  • 4:

    碧 虎?

    傾きかけた太陽が照らし出す廊下で、制服を身に纏う二人の少女が、明るく長い髪を揺らせながら尋ねる。
    ほとんど人のいない廊下でその声だけが響く。
    「シェリー?」
    ちょうどタイミングよくシェリーの手に持たれたモノがノリのいい音と共に震えはじめた。

    2006-02-27 09:27:00
  • 5:

    碧 虎?

    シェリーはそれを顔の横に持ち、意地悪そうに微笑む。
    『ごめ-んあたし今からパパとデート!』
    「またぁ?!あんた何人おんのよ-!なぁナナ?」「若モンのがええやぁん上玉やのにぃ〜そらナチも怒るてぇ〜」

    2006-02-27 09:50:00
  • 6:

    碧 虎?

    姐御肌なナチとやたらと語尾を上げて話すナナ。二人は上から下まで全く一緒の格好をしている。特に指定のない制服、リボン、ローファーに髪形。双子ルックが流行っているらしい。
    学校も終わった今さらながらにそれに気付いたシェリーは、
    『おろそカワイイやん』とだけ言い残し学校を出た。

    2006-02-27 10:00:00
  • 7:

    碧 虎?

    残された二人は、不服ながらも、笑顔でシェリーを見送った。


    《いつもの場所に後5分もあれば着くよ。今日も制服で来るんだよ。》
    そう打たれたメールが来てから20分後。

    2006-02-27 15:44:00
  • 8:

    碧 虎?

    『パパ。制服はあたしの戦闘服やの。』
    茶色いリボンに合わせたローファー。シェリーの長い足を強調する短いスカートとルーズソックス。
    指定のない制服をシェリーは“双子ルック”とは比べものにならないほどセンスよく着こなしている。
    「その髪は、今流行りのエクステってやつ?」

    2006-02-27 16:16:00
  • 9:

    碧 虎?

    あの二人と違い、偽物ではない腰まで垂れたくすんだ金色の髪。
    『ん-ん。自毛。』
    そう言ってナイフとフォークを置き、男が煙草を吸う姿を眺める。
    「シェリーも吸うかい?」『そんな肌に悪いもん吸わへんよ。それよりパパ、いつものは?』
    「ちゃんとあるよ。」

    2006-02-27 16:28:00
  • 10:

    碧 虎?

    「はい。これだろう?」
    そう言って出されたのは小さな袋に入った粉薬のようなもの。
    「いつも言うけれど、シェリーはしちゃいけないよ」
    『だからねパパ。シェリーはね、肌に悪いもんわ大っ嫌いやの。』
    渡されたものをスクールバッグにしまい込む。

    2006-02-27 16:44:00
  • 11:

    碧 虎?

    「まぁ…それならいいんだけどね。」
    その言葉を後に、二人はベッドで交わる。

    制服を纏ったままのシェリーを、
    男はむさぼる様に舐め回す。

    2006-02-27 18:02:00
  • 12:

    碧 虎?

    「シェリー…僕のシェリー。萌えるよ‥」

    『パパ…ァッ』
    シェリーの中に男のソレが侵入する瞬間。
    この瞬間だけ、シェリーは好きだった。

    2006-02-27 18:07:00
  • 13:

    碧 虎?



    「シェリーは何が欲しいの?」
    シェリーの家へと向かういかにも、なベンツの中。『え〜?』
    わざとらしくシェリーは、窓を開け夜風を浴びる。

    2006-02-27 18:12:00
  • 14:

    碧 虎?

       『シェリーはお金だけがスキよ。』
    シェリーは艶やかな声で。
    ―――
    「じゃあまた連絡するよ」分厚い札束を受け取り、にこやかにシェリーは微笑む。
    『じゃあね、パパ★』

    2006-02-27 18:21:00
  • 15:

    碧 虎?


    車に背を向け歩いていくその姿。
    制服がまだ青い匂いを漂らせるが、
    夜に揺れる髪が何とも言えない女を感じさせる。

    2006-02-27 18:26:00
  • 16:

    碧 虎?

    16歳、シェリー。
               ベンツから見つめたままの“パパ”もまた惹かれていく。

    もちろんこの男とシェリーの間に血縁関係などない。
    金で契約された パパ とシェリー。

    2006-02-27 18:34:00
  • 17:

    碧 虎?

    玄関に入るなり服を脱ぎ出す。
    パパと交わったことが嫌なわけではない。
    その行為をした事によって体が汚れてしまっていないか――― それだけ。
    シャワーを浴びながら、ふと鏡に目をやる。
    全身をくまなく汚れていないかチェックし――…

    2006-02-27 18:45:00
  • 18:

    碧 虎?

    背中にある十字架のような傷を見つめる。

    その傷を見るたび、
    シェリーは見たことのない両親を考える。
               ――― シェリーの携帯が、またノリのいい音を鳴らし出す。

    2006-02-27 18:50:00
  • 19:

    碧 虎?

    濡れたまま浴室を出て携帯を手にとる。
    ディスプレイに映し出された文字を見て、それを投げやる。
    『しつこいっつーの!』シェリーは、両親を知らない。
    ずっと施設にいた。
    『今さら戻る訳ないし』

    2006-02-27 18:56:00
  • 20:

    碧 虎?

    電話は、施設の先生。
    シェリーは中学卒業と同時に施設を脱走した。
               生後二ヶ月くらいで施設の前に捨てられていたという、シェリー。
    背中の傷は、その時からあるものだと先生が言っていた。

    2006-02-27 19:02:00
  • 21:

    碧 虎?

    特に不満なんてなかったが、楽しみもなかった。
    ただ言葉にできぬほど、空虚感が存在した。

    そして、シェリーは施設から逃げてシェリーになった。
               だからシェリーは、戻らない。

    2006-02-27 19:08:00
  • 22:

    碧 虎?

       ――愛ってなに?

     ――信じるってなに?

      ――幸せってなに?

    2006-02-27 19:13:00
  • 23:

    碧 虎?

    すれている、とか何かに傷ついた訳ではない。
    シェリーは生まれきて今まで、感じたことがない。知らないだけ。

    恐ろしいほどに、
    純粋なだけ。

    2006-02-27 19:16:00
  • 24:

    碧 虎?



          ―――――「すごいやんシェリー!」 「コレまぢ手に入んないんよ-!」
     『お金。よこしな。』
    昨日、パパからもらったモノと引き換えにお金を受けとる。

    2006-02-27 19:20:00
  • 25:

    碧 虎?

    「ありがとね〜!」
    馬鹿な面をした男と女が馬鹿に喜んでいる。

    それでせいぜい壊れな―
    「コォラシェリー!」

    2006-02-27 19:24:00
  • 26:

    碧 虎?

    裏庭から出てきたシェリーを見つけたナチとナナが声を張る。
    「まぁた売人してぇ〜。」
    『あんたらもいる?』
    「ばっいる訳ね-やん!あほ!」
    シェリーは友達でも関係なくそれを売る。例え、人間を壊すモノでも。

    2006-02-27 19:31:00
  • 27:

    碧 虎?

    友達だから引き止める―友達だから、とかそれもまたシェリーの知らないものだった。
    『嘘、ジョーダン!』
    二人があまりに強張った顔をするのでシェリーは笑って見せた。
    「驚かすなっつぅの!」
    「ね、シェリーお昼食べいこよぉ?食堂〜♪」

    2006-02-27 19:38:00
  • 28:

    碧 虎?

    シェリーはぱっと顔を上げた。        初夏の、真っ青な空。
    『あたし今日は散歩★』「ほんま好きやなぁシェリーは!」「ぢゃまた後でねぇ〜」


          ―――――雲が流れる空。青い空。

    2006-02-27 19:46:00
  • 29:

    碧 虎?

    『キライやよ太陽は。』

    いつも晴れた日に訪れる公園のベンチに寝そべって、つぶやく。
    めまいを覚えるまぶしさに、果てのない青空。
    シェリーは、ここに存在するのが好きだった。

    2006-02-27 19:51:00
  • 30:

    碧 虎?

    今日は、放課後、ナチとナナとカラオケに行ってそのまま帰った。


    普通にみんなと一緒に笑うし、怒る。

    2006-02-27 20:37:00
  • 31:

    碧 虎?

    ただ何か足りない。
    それをシェリーも気付いていた。
               それが青い空の下にいると、何も気にせずいれる。

    だからシェリーは今日も青空を見上げる。

    2006-02-27 20:42:00
  • 32:

    コアラ

    コアラのしおり?    頑張って????

    2006-02-27 21:15:00
  • 33:

    碧 虎?


    あの日からここ最近、太陽がずっと隠れている。曇り空が続いて、シェリーの心も晴れない。


    「シェリ〜散歩行けんくて残念やねぇ〜」

    2006-02-27 22:09:00
  • 34:

    碧 虎

    教室の窓から空を眺めるシェリーに、ナナが話し掛ける。
    『んあ?雨降らんだけマシやね-。』
    「明日は快晴やあてっ」『ほんまっ?』
    ナチの言葉に嬉しそうなシェリー。それを見てナナが笑う。
    「よかったねシェリー♪」

    2006-02-27 22:17:00
  • 35:

    碧 虎?




           ――――「シェリー、もっと足広げな」
    あるホテルの一室。

    2006-02-27 22:25:00
  • 36:

    碧 虎

    『すぐるパパ、痛い‥。』

    ―午前二時―
    シェリーは、二時間ほどずっと秘部を舐められ続けている。
    このすぐるパパと呼ばれる男は、シェリーの三人いるパパの中で若いためか、いつもシェリーを玩ぶ。

    2006-02-27 22:36:00
  • 37:

    碧 虎?

    何度も何度も、シェリーが昇天しては続けられる。
    「パパのんほしいんやろ?もっと果てろ。声を上げろ。ええな?」


    純粋すぎるが故に色褪せた眼で、シェリーが睨む。

    2006-02-27 22:42:00
  • 38:

    碧 虎?

    それに萌えたのか、男はシェリーの中に入り込み、一気に果てた。


    シェリーはそのまま眠りに落ちた。

    2006-02-27 22:50:00
  • 39:

    碧 虎?

    すぐるパパと会う時は疲れ果てる。いつもそのまま泊まってホテルから学校へ向かう。
    ただ目覚めると、すぐるパパと引き換えに札束が置かれてある。
    二人のパパと比べものにならない金額。

    だからシェリーは、いくら疲れようがすぐるパパを必要とする。

    2006-02-27 22:58:00
  • 40:

    碧 虎?

    すぐるパパは、いわゆるヤクザで 売人 というシノギをシェリーに教えたのもこの男。
    そして、その媒体となるものを入手してくれる、ベンツにまたがるパパ。医療機関と薬物は驚くほどに隣接している。

    そうやってシェリーは生きている。

    2006-02-27 23:03:00
  • 41:

    碧 虎?

    お金がすべて、ほど執着していないがなければならないもの。
    あって困らないもの。


    シェリーは、他に何も求めない。

    2006-02-27 23:07:00
  • 42:

    碧 虎?



    ――――

    目が覚めるとまずシャワーを浴びる。     常に美しくありたい――シェリーの生き方。

    2006-02-27 23:11:00
  • 43:

    碧 虎?

    ホテルを出ると、鮮やかな空がシェリーを迎えてくれた。
    ───快晴。
    『ナチの言ったとおりやな‥』
    学校へは向かわずに、あの公園へと歩く。

    2006-02-27 23:15:00
  • 44:

    碧 虎?

    シェリーは気にせず隣に寝そべった。
    この青い空が見たいだけ。

    隣りに座る人がシェリーを見る。
    「俺、もしかしてじゃま?」

    2006-02-27 23:25:00
  • 45:

    碧 虎?

    『あたし、空見てるだけやから。』
    シェリーは空を見上げたまま答えた。
    「そっか-。いっつもおんの?」
    『…いるよ。晴れた日だけ。』
    そっと慣れやすく話し掛けてくるその顔を見てみた。

    2006-02-27 23:31:00
  • 46:

    碧 虎?

    その人は、優しげな笑顔だった。
    「俺初めてきたけどええね-ここ。」
    シェリーは視点を空に戻した。
    「うん、気に入った!」
    シェリーは流れる雲を見つめたまま。

    2006-02-27 23:36:00
  • 47:

    碧 虎?

    「ちゃんと学校行きなさぃよ-。」
    立ち上がりシェリーの頭を撫でて歩いていく。


    しばらく空を眺めたシェリーは、あの人が歩いていった方を見た。    もちろん、姿はなかった。

    2006-02-27 23:44:00
  • 48:

    碧 虎?

    柔らかい空気の人やな…だけど、どこか自分と同じ匂いがした―――


    シェリーがそう感じたあの人も、同じことを思っていた。

    2006-02-27 23:49:00
  • 49:

    碧 虎?

    《なんかほっとかれへんコやったな――…》


    「何ぼーってしてんのォ」甘い声を出す派手な女と、“あの人”は夜の街へと消えていった。

    2006-02-27 23:53:00
  • 50:

    碧 虎?




    「シェリー、元気なくなぁい?」
    『…んなこたないわぃ』あの日。あの人に出会ってから何回か公園に行ったけれどあの人に会うことはなかった。

    2006-02-28 00:02:00
  • 51:

    碧 虎?

    「嘘。嘘嘘うそぉ-ッ!」ナナのふくれっ面。
    「シェリーのそんな顔見たことないもぉんッ」
    『あたしは普通だっつぅに。』
    そう言いながらも、どことなくあの人が気になるシェリーがいた。
    たった一度だけなのに。

    2006-02-28 00:08:00
  • 52:

    碧 虎?




    「久しぶり!まぁ座りぃよ?」
    放課後、絶対にいないだろうと思って来た立ち尽くしたままのシェリーにあの人は微笑んだ。

    2006-02-28 00:15:00
  • 53:

    碧 虎?

    放課後に見る空は、青空じゃなくて少しオレンジがかった綺麗な色。
    そんな空もシェリーはたまに見上げている。

    「もぉちょいしたら日ぃ長なるからこの時間も青いのになぁ-」
    『太陽キライやからあたしは別にいいけど。』

    2006-02-28 00:22:00
  • 54:

    碧 虎?

    「空は好きやのに?」
    あの優しげな笑顔を見せる。「あっ!名前は?俺はねタケってゆぅの。」
    『あたし、シェリー。』
    「はっ?尾崎??」
    『何それ。シェリーはシェリーなの。』

    2006-02-28 00:27:00
  • 55:

    碧 虎?

    「アハッおもろいやん、シェリー!」
    タケは、えくぼを出して笑った。
    『あんたも空が好きなん?』
    「シェリーがおるからね」そう言ってシェリーの頬に触れる。
    「ほなまた会えたらな!」

    2006-02-28 00:31:00
  • 56:

    碧 虎?

    シェリーは今日は、去っていくタケの後ろ姿を見送った。
    前も感じたこと。
    誰かに触れられて、戸惑うのは、タケが初めてだった。
    誰かに会えて嬉しいと思ったのも、シェリーにとって新鮮だった。

    2006-02-28 00:35:00
  • 57:

    碧 虎?

    自分となんだか似てる気がする人──タケ。
    その名前を知った日から、シェリーはあの公園が前にも増して好きになった。

           ――――
    「シェリーってばぁ!もぉ〜最近浮世離れしすぎやぁんっ!」

    2006-03-01 15:36:00
  • 58:

    碧 虎?

    『んにゃん?』
    「あ-だめだめ。コイツほんまいけてないわ。」
    ナチがつぶやく。
    「こんな日は散歩に行ってきなよぉ?」
    そう言って窓を開けるナナの髪が、カーテンと共に揺れる。

    2006-03-01 15:40:00
  • 59:

    碧 虎?

    ―――『ぢゃ、シェリーはたそがれに参るわ★』「行ってきなせぇ♪」


    もう時刻は夕方だと言うのに、シェリーの真上に広がる空は、雲一つない青。
    柔らかい風が頬に触れて、今日の太陽はなんだか優しい。

    2006-03-01 15:44:00
  • 60:

    碧 虎?

    ―――――だけど。
    『あんたわキライ。まぶしくて頭がイライラすんの…』
    風が、一層大きく吹く。
    まだまだ青い葉がシェリーの頭に舞落ちる。
    「なぁに独り言つぶやいてんのさ。」

    2006-03-01 18:33:00
  • 61:

    碧 虎?

    『────!タっタケ!』タケはにこっと笑う。
    「おはよシェリー。」
    寝そべるシェリーの隣に座りこみ、何か話す訳でもなくタケも青を眺めた。
    制服姿のシェリーと、何やらお洒落なスーツ姿のタケ。
    はたから見れば、大層不思議な光景。

    2006-03-01 18:38:00
  • 62:

    碧 虎?

    『タケは?』
    「俺?見たとおりよ-。」少し言いにくそうにメッシュがかった長い髪を掻き上げる。
    『ぢゃサラリーかぁ!』そのシェリーの言葉に驚きつつもタケは、否定しなかった。
    急にベンチ立ち上がるシェリー。
    また、大きな風が緩やかに吹いて。

    2006-03-01 18:51:00
  • 63:

    碧 虎?

    シェリーの短いスカートが風にまかれる。


    タケは、その姿に見とれた。
    もちろん、スカートはふんわり広がりパンツは丸見え。だが、そこにイヤラシイや下品、など全くなく。

    2006-03-01 19:28:00
  • 64:

    碧 虎?

    ただ風にあたる心地そうなシェリー。

    さわやかな青空に、シェリーが映える。

    言葉が見つからない、タケ。

    2006-03-01 19:31:00
  • 65:

    碧 虎?


       ―――――ピッ!

    止まったかの様に思えた時が、シェリーの携帯のけたたましい音で動き出す。
    『あたしそろそろ行かんと。』

    2006-03-01 19:35:00
  • 66:

    碧 虎?

    「おっ‥お-。」

    急に吹きやんだ風。
               『じゃあねんタケ☆』
    軽やかにベンチから跳び、走ってゆくシェリー。

    2006-03-01 19:39:00
  • 67:

    碧 虎?

    その走り去ってゆく姿を見ながら、タケがつぶやく。
    「…6時か。そろそろ俺も出勤準備しよかね。」

    タケ、22歳。 ホスト。

    2006-03-01 19:45:00
  • 68:

    碧 虎?

    手入れの行き届いた髪に、胸をはだけたスーツ。
    いかついアクセを派手に散らした、見るからにホストなタケ。


    《あのコは俺のどこがリーマンに見えたんや?》

    2006-03-01 19:51:00
  • 69:

    碧 虎?

    それは、シェリーが何も知らないだけ。    純粋だから?ホストなんて興味がないから?
    ただ、シェリーの思考回路にはスーツ=サラリーマンしかなかった。


    ――――だけど、否定しなかった。

    2006-03-01 19:55:00
  • 70:

    碧 虎?

    ―――タケは、その端正な顔立ちと回転の早い頭で、常に結果だけが全ての世界で生き残ってきた。
    19歳から訳あって始めたホスト。がむしゃらに、計算しつくして走りつづけて気付けば得たトップの座。


    《愛する女?いるよ。  俺に出会った女、みん な愛してるよ。》

    2006-03-01 20:15:00
  • 71:

    碧 虎?

    ―――それなのに、シェリーに出会ってしまった。



    「タケェ!モエとおんのに何トリップしてんの!」

    2006-03-01 20:18:00
  • 72:

    碧 虎?

    「あ?わりわりっ!」
    モエの肩に手を回す。
    「それよりモエ。今日新人入ってんよ-お祝い★」
    「もぉ〜しゃあないなぁ!タケのためやかんね!ぢゃぴんくで!」
    モエは頬を赤らめて、タケの手をにぎる。   「ありあ〜っす!!」

    2006-03-01 20:23:00
  • 73:

    碧 虎?

    うるさい爆音とともに始まるシャンパンコール。今夜もまた、偽りの愛に溺れていく女たち。   「やぁっぱタケやね!大すきぃっ」



    ――――なぜか、シェリーには知られたくなかった。

    2006-03-01 20:27:00
  • 74:

    碧 虎?

    --―――――欲しいものなんてない。お金がスキ。意味なんてない。
    これがあたしの生き方。

    青空を見るのが、趣味?そんなモノじゃないけれど、明日もあの青を見上げる。

    2006-03-01 20:34:00
  • 75:

    碧 虎?

    あたしは、何か足りてない。
    青空を見上げれば、答えなんてわかる訳ないけれど何もかも許してくれる気がする。


    そして、―――――タケに出会った。

    2006-03-01 20:38:00
  • 76:

    碧 虎?



    ―――――
    繊細なジャズ流れるレストランバーで、シェリーはタケの事を考えていた。
    また会いたいって思わせる、あの雰囲気――今まで知らない‥

    2006-03-01 20:43:00
  • 77:

    碧 虎?

    「口に合わなかった?」シェリーの三人のパパのうち、唯一月契約している男が心配そうに尋ねる。
    『パパやんとおるから美味しいやん★』
    シェリーは即座に笑顔を作る。
    この男は、体の関係なしで週1回会うという契約で月80万シェリーに落とす。

    2006-03-01 20:48:00
  • 78:

    碧 虎?


    今まで、“パパがいる”事を誰にも隠すことなく生きてきたシェリー。
    むしろ自慢するかの様に。

    ‐―――――――誰かに対して初めて言いたくない、タケには、言い出せなかったシェリーがいた。

    2006-03-01 20:52:00
  • 79:

    コアラ

    しおり?

    2006-03-01 21:02:00
  • 80:

    名無しさん

    2006-03-01 22:00:00
  • 81:

    碧 虎?

    コアラしゃん二回目レスあリあす??
    88サンレスアンカ-あリあしゅ?

    2006-03-03 06:53:00
  • 82:

    碧 虎?

    数回しか会っていない―   何も知らない――

    それでも、タケと言う存在が確かにシェリーの中に入りこんでいるのは間違いなかった。
               《あたしはシェリー。何も求めない。》

    2006-03-03 07:01:00
  • 83:

    碧 虎?




    「シェリーなあしてんの?」

    2006-03-04 06:51:00
  • 84:

    碧 虎?

    『パパ探し。』
    「またぁ〜?!もぉ充分でしょぉ?」
    暑い夏の陽射し浴びる午後。
    中庭に咲く黄色いヒマワリが目に痛い。
                 『暇つぶし。』

    2006-03-04 06:54:00
  • 85:

    碧 虎?

    あれからひんぱんにあの公園で話す様になったシェリーとタケ。
    お互い自分の事を話しているようで話さない。
    不思議な関係。

    それが心地よかった。

    2006-03-04 06:58:00
  • 86:

    碧 虎?

    「シェリーはさ〜いつも綺麗やなぁ!髪もやし肌もつるつる★」
    『タケもいっつも髪つんつんやんか。サラリーも大変やねんね-』
    「‥まあね笑。
    シェリーはバイトせぇへんの?」
    『…別にする必要ないから。』

    2006-03-04 08:02:00
  • 87:

    碧 虎?


    「シェリーのそれってぇまぢ儲かるバイトよね!ナナもパパほしぃよぉ」

    ―――する必要ないから。
    タケにそんな事を言った。《だってシェリーにはパパがいる。》 …―― ―――なんて言えない。   言えなかった。

    2006-03-04 08:08:00
  • 88:

    碧 虎?

    『すぐ見つかるよ?これで。』
    そう言って出会い系サイトを開いた携帯をナナに見せる。
    「でもやぱ怖いからやっぱナナわしなぁい!」

               ヒマワリが風に揺れた。今日も、空は 青。

    2006-03-04 08:14:00
  • 89:

    碧 虎?

    シェリーの散歩は、学校が終わってから行くことが多くなった。
    その時間にタケがくることがわかったから。
    それでも真夏が到来した今、放課後でも空はしっかり青く、太陽はしっかり二人を照らす。

    2006-03-05 08:23:00
  • 90:

    碧 虎?

    二人には携帯なんて必要なかった。
    会いたくなればあの公園へ向かう。


    青空が繋ぐ二人の関係、 シェリーとタケ。

    2006-03-05 08:25:00
  • 91:

    碧 虎?



    『ぢゃあたしそろそろ散歩〜』
    「最近シェリーよく行くねぇ?なんかあんの?」
    『なんもないよ。…夏だから。』

    2006-03-05 08:28:00
  • 92:

    碧 虎?

    シェリーは、ナチとナナにタケの話しをしない。

    言う必要があるの──?           きっと、シェリーはそう答える。

    2006-03-05 08:31:00
  • 93:

    碧 虎?



    ―――――――
    タケが寝そべるとなりにそっと横になるシェリー。
    「おはよシェリー。」  タケが笑顔で。

    2006-03-05 08:33:00
  • 94:

    碧 虎?

    青い空が近くに見えて、太陽が暑い。
    それを遮る木々の葉々たち。
    爽やかな風が吹いて、蝉の声が遠くに聞こえる。

    その青い空に、ひとつの影。

    2006-03-05 08:37:00
  • 95:

    碧 虎?

    『あ。烏や。』
    青空に似合わない、黒い翼を広げた烏が一匹。
    『なんかあの烏タケに似てる-。』
    「俺が?カラスにぃ?」『だってあの烏頭つんつんしてるしタケのスーツ黒やから一緒やん☆』
    「あはっうまいこと言ぅなあシェリー!」
                 「じゃあさ。」

    2006-03-05 08:45:00
  • 96:

    碧 虎?

    「じゃあさ。」
    タケがシェリーをまっすぐ見つめる。
    「シェリーは青空やな!」
    シェリーは不思議そうに首を傾げる。
    「何も語らんけどいつの時もすべてを受け入れてくれる。でも悲しい時には雨も降らす。だからシェリーは青空や。」

    2006-03-05 09:10:00
  • 97:

    碧 虎?

    『…それはなんかちゃぅ気が‥────────「シェリーは、ふいに悲しい顔してる。」
    シェリーを遮ってのタケの言葉、眼差しにシェリーは一瞬、ドキッとした。

    『…そ‥そおかな‥。』戸惑うシェリーを止めるかの様に、携帯の着信音が響く────

    2006-03-05 09:19:00
  • 98:

    碧 虎?

    「もし-? 俺?今公園で…はっ?!なんでお前っ‥おぅ、行くわ!」
    電話を切ると、タケは立ち上がった。
    「悪いシェリー!俺ちょい行くわ!」
    『え?うん‥。』
    「またな!」      走って行くタケを見ながら、なんだか胸がざわつくシェリーがいた。

    2006-03-06 15:10:00
  • 99:

    碧 虎?

    タクシーに乗り込んだタケは、行き先を告げると煙草に火をつける。


    電話は、同期のタチ。
    嫌な予感がする。
                改めて携帯を開けると、不在着信が50件。

    2006-03-06 15:14:00
  • 100:

    碧 虎?

    すべて、モエからだった。

    「────?」
    今日タケは、あの公園へ向かう直前までモエといた。
    アフターの約束をしていたが、空があまりにも青くて、いつのまにか青空を見るとシェリーを思い出すタケがいたから断ったのだ。

    2006-03-06 15:19:00
  • 101:

    碧 虎?

    「後でかけるか。」
    そう言って携帯を閉じた。
    今はとにかくタチの話が気になる。
                「1350円です。」
    タクシーを降りると、タケはタチの待つ自分の店へ走った。

    2006-03-06 15:23:00
  • 102:

    碧 虎?

    ────「タチっ!なんでお前俺がシェリーとっ…!」
    店に入るなり叫ぶタケに、タチは携帯を見せた。
    「シェリー?まぁ、これや!」


    携帯サイトの掲示板。

    2006-03-06 15:27:00
  • 103:

    碧 虎?

    今まで、サイトに書かれた事は何度もあるタケ。「‥リアルタイムはえぐいやろ。」
    タチが煙草に火を点けて言う。


    ─────「…モエや。」

    2006-03-06 15:39:00
  • 104:

    碧 虎?




    ―――――
    公園に残されたシェリーの携帯が、一つのメールを受信する。

    2006-03-06 16:14:00
  • 105:

    碧 虎?

    《シェリーちゃんやったら、20は出せるなぁ〜!》            そのメールを見てシェリーは微笑んだ。


    新しいパパを見つけたシェリー。待ち合わせ場所に向かう。

    2006-03-06 16:18:00
  • 106:

    碧 虎?

    「シェリーちゃん?」
    現れたのは、まだ若い男。30くらいだろうか。
    お金なんて払わずとも、女が寄ってきそうな風貌。
    だが、シェリーには関係ない。
    『あたしがシェリーよ。』

    2006-03-06 16:22:00
  • 107:

    碧 虎?

    「ほな、行こか。」
    男はシェリーの肩を抱き、二人はホテルへと早々に入った。


    『…ぁんッ‥』

    2006-03-06 16:26:00
  • 108:

    碧 虎?

    男は部屋に入るなり、シェリーの唇に唇を重ねる。
    舌を絡ませ、深く重ねる。

    「おいで?」
    シェリーの服を優しく剥ぐと、腕で包み込む。

    2006-03-06 16:29:00
  • 109:

    碧 虎?

    男の愛撫はとても繊細だった。
    首も、胸も、足も、秘部も。音をたてながら、優しく舐める。
    『…ぁあッん‥』
    シェリーの声が漏れる。男の優しい温度に、シェリーはなぜか温かい気持ちになった。

    2006-03-06 16:34:00
  • 110:

    碧 虎?

    シェリーの中に入り込むと、さっきまでの優しさと変わって力強く突いてくる。


    「はぁっ…‥ッリぃっ」男が何か囁いたが、シェリーは聞き取れなかった。

    2006-03-06 16:38:00
  • 111:

    碧 虎?



    「また会ってくれる?」下着を身につけるシェリーの背中に男が話しかける。
    『かまわへんよ。』
    シェリーは背を向けたまま答える。───────────男の目がシェリーの背中の傷に止まる。

    2006-03-06 16:43:00
  • 112:

    碧 虎?

    「‥────エリ!!」

    シェリーの体が一瞬、反応する。
    『は?何言うてんの?あたしはシェリ‥』
    「エリやろ?!その背中の傷…エリやろぅ?!」

    2006-03-06 16:47:00
  • 113:

    碧 虎?

    男は興奮気味に叫ぶ。
    『やったら何なん?あんたになんか関係ある?』「やっぱり…ユリは?!ママはっ元気か?!」
    男はシェリーの体を強く揺らす。
    それをはねのけて、シェリーは冷たく言い放つ。              『知らん。』

    2006-03-06 16:53:00
  • 114:

    碧 虎?

    「なんで…っ」
    『あたしはずっと一人で生きてきた。…施設で。』男は俯き、小さく呟く。 「そうか…あいつも‥」

    『あんたは何なん?あなしの何を知ってんの?』シェリーの鼓動が早くなる。

    2006-03-06 17:00:00
  • 115:

    碧 虎?

    「俺は…‥お前の父親や…。」


    ─────シェリーの体に衝撃が走る。
               『…‥は‥?』

    2006-03-06 17:04:00
  • 116:

    碧 虎?

    「お前は…俺とユリが14ん時孕んだコやねん‥。」

    男は、震えながら話し出した。
    シェリーに視線を向けずに。

    2006-03-06 17:07:00
  • 117:

    碧 虎?

    シェリーは、“父親”をまっすぐに見ている。


    「当然どっちの親にも反対されて…けど俺らは家を出た。自分らで育てるって決めた。」─────男はシェリーを見た。           「育てれるって思った。」

    2006-03-06 17:12:00
  • 118:

    碧 虎?

    シェリーの鋭い視線を感じながら男は話し続けた。

    「…俺があほやった。薬にハマって…頭おかしなってお前を殺そうとした。そん時の傷がその背中の傷や…」
    シェリーは視線をそらさない。
    「そんな俺からユリはお前を連れて逃げた。」

    2006-03-06 17:16:00
  • 119:

    碧 虎?

    「ユリとはそれっきりや…。」
    悲しげな表情を見せる、シェリーの父親。


    「一人で育てる言うてたけど…あいつも無理やってんな…‥。」     シェリーはただ、そんな父親を、睨み続けた。

    2006-03-06 17:22:00
  • 120:

    碧 虎?

    「エリっ…本間に俺が悪いねん!でも今ならっ…!!」
    ───────バシッ!シェリーは、自分に触れようとする父親の手を払いのけた。
    『だから?何?あたしら今ヤッてんで?お金渡しぃや。パパになるか?』

    怖いほどに、シェリーは冷たく微笑んだ。

    2006-03-06 17:28:00
  • 121:

    碧 虎?

    「エリッ!ほんまにすまんかった‥!」


    『…‥死なずにすんだことだけ感謝するわ。』
    そう言って立ち上がるシェリー。

    2006-03-06 22:07:00
  • 122:

    碧 虎?

    「エリ───!!」


    『シェリー。あたしはシェリーや。』
               それだけ言い残すと、静かに部屋を出る。

    2006-03-06 22:09:00
  • 123:

    碧 虎?




    シェリーは、茫然とただ歩いた。
    何も考えられない──。

    2006-03-06 22:12:00
  • 124:

    碧 虎?

    寂しいとか、辛いとか。
    両親に会いたいとか──

    今まで感じた事ない。
               それなのに、胸の鼓動を抑えられない。

    2006-03-06 22:15:00
  • 125:

    碧 虎?

    フラフラと行くあてもなく歩き、気がつけば辿り着いたのは、あの公園だった。
    そっとベンチに寝転がるシェリー。

    2006-03-06 22:17:00
  • 126:

    碧 虎?




    明け方の空に浮かぶ白い月が、綺麗すぎて―――。           
    シェリーの頬が濡れる。

    2006-03-06 22:19:00
  • 127:

    碧 虎?

    その溢れ出る涙粒は、シェリーが仰ぎ見るあの青空よりも美しい。


    早くそれにシェリーが気付けたなら――――……

    2006-03-06 22:24:00
  • 128:

    碧 虎?




    ────ガシャーン!!「いやっ放して!!」
    「モエ!落ち着け!落ち着いてくれ!!」

    2006-03-06 22:27:00
  • 129:

    碧 虎?

    「いやぁっ!モエだけのタケじゃないんならタケなんかいらん!!」
    泣き叫ぶモエ。
    何もできずにいるタケ。

    ───何でやねん…!! 何が足りひんねん?!「もぉあんたなんかいらんからぁあっ!!」

    2006-03-06 22:31:00
  • 130:

    碧 虎?

    ───タケの何かが切れた。
    「……行けよ。どっか行けよ!どおせお前も俺から離れてくんやろ?!」

    唖然とするモエ。
    「はよ行けや──!!」

    2006-03-06 22:34:00
  • 131:

    碧 虎?

    「……あんたなんか一生一人やわ。」
    モエはそう呟き、歩いて行った。


    「───あぁっ!っくそ!…‥ハァ…ハ‥。」  気が動転したのか、息が荒くなるタケ。

    2006-03-06 22:41:00
  • 132:

    碧 虎?

    「……何もいらんわ。」

    小さく呟くと、ポケットからあるモノを取り出す。
    小さな袋に入った粉薬のようなもの。

    2006-03-06 22:59:00
  • 133:

    碧 虎?



    袋に、─E─の文字。

    2006-03-06 23:10:00
  • 134:

    碧 虎?

    一気にそれを口に放り込む。



    「……シェリ…ー‥」

    2006-03-06 23:11:00
  • 135:

    碧 虎?





    ─────『…タケ?』玄関の取手に手をかけたシェリーは動きを止めた。

    2006-03-06 23:20:00
  • 136:

    碧 虎?

    胸騒ぎを感じたシェリーは、今来た道を引き返した。
               必死で走った。
    あの公園へ。
    感情もなにもかも剥き出しにして。

    2006-03-06 23:25:00
  • 137:

    碧 虎?

    息を切らせながら着いた公園のベンチには、いつもの様にタケが寝そべっている。
    安心したシェリーは、静かに声をかける。
    『おはよ、タケ‥────!!』
    近付いてみると、明らかにタケは普通ではない。

    2006-03-06 23:30:00
  • 138:

    碧 虎?

    目は虚ろで焦点が合わず、口からは垂液が垂れている。


    『…タケっ?!タケ!』おかしいと思ったシェリーは、必死にタケの体を揺さ振る。
    『タケってばぁ!!』

    2006-03-06 23:36:00
  • 139:

    碧 虎?

    一つの袋がタケのポケットから落ちる。
    『…‥これ‥。』


    《なんでシェリーのネタは“E”って書いてあんのぉ?》《シェリーが売ったっていう印しよ。》           『なんでタケがっ…!あたしが売ったの…──!』

    2006-03-06 23:53:00
  • 140:

    碧 虎?

    『いやぁ…っタケっタケ!』
    戸惑うシェリー。初めて自分のせいで誰かが傷つく恐怖を知る。
    『どうしよ…タケぇ…どうし‥病院‥病院行かな…!』
    戸惑いながらも、タクシーで病院へ向かうシェリー。

    2006-03-06 23:59:00
  • 141:

    碧 虎?

    あたしのせいでなんて嘘って言って────…‥


    「筧武人さんとはどういうご関係で?」
    待合室で待つシェリーに看護婦が尋ねる。

    2006-03-07 00:02:00
  • 142:

    碧 虎?

    『‥大切な人です。』
    シェリーはまっすぐ答えた。
    その看護婦が話すには、早くに胃を洗浄できた事でなんとか今は大丈夫と。ただ意識が回復するのが遅ければ命が危ない─

    『‥あたし、タケが目を覚ますまでそばにいます。』

    2006-03-07 00:07:00
  • 143:

    碧 虎?

    シェリーは、今にも零れそうな涙をこらえて答えた。


    ―――どうか、どうかタケが早く目を覚まします様に……――――――

    2006-03-07 00:11:00
  • 144:

    碧 虎?

    シェリーにとって、誰かのために願うのも涙を流すのも初めてだった。


    だが、そんな事どうでもよかった。
                タケが今すぐ笑ってくれるなら、あたし、何にもいらない────。

    2006-03-07 00:14:00
  • 145:

    碧 虎?



    病院で過ごす一日は、驚くほど長くて、シェリーは気がおかしくなりそうだった。
    だけど、タケのため──。           窓から見える青空が眩しくて―――
    『一緒に見ようよ…』

    2006-03-07 00:19:00
  • 146:

    碧 虎?


    タケが病院に運ばれてから五日が過ぎた。
    そろそろ意識が戻らないと危ない、と伝えられたシェリー。


    『タケ‥ごめ…‥――』震えるシェリーの手を、優しく握り返す温度が伝わってくる。

    2006-03-07 00:23:00
  • 147:

    碧 虎?

    「…シェリー?何泣いてんねん…。」
    タケが弱々しくも、優しく微笑む。
    『タケっ…‥!』
    「…なぁシェリー‥俺はまだまだ弱いわ……。」タケは遠く呟く。
    『あたしっタケが目ぇ覚めて…っほんまよかった…』

    2006-03-07 00:30:00
  • 148:

    碧 虎?

    タケはまた優しく微笑む。
    「……シェリー。俺、サラリーなんかやないで?」『え…‥』
    「ホストやねん。」
               青空に照らされた病室は、その明るさとは対照的に重たい空気が流れる。

    2006-03-07 00:35:00
  • 149:

    碧 虎?

    「…そんでまた俺から一人離れていった。」
    『…また?』
    タケは頷き、ゆっくり話し出した。

                「俺、ずっと一人で生きてきてん────。」

    2006-03-08 19:17:00
  • 150:

    碧 虎?

    タケの話しは、こうだった。
    物心つつく頃には、母親の男遊びに愛想を尽かし出て行った父親。
    そして、タケが12歳の時に男と消えた母親。
    それから一人で必死に生き、辿り着いたのがホストだった。
    「シェリーとおれば、綺麗な心でおれたんや。」

    2006-03-08 19:21:00
  • 151:

    碧 虎?

    ―――同じ…‥。あたしとタケは、同じ。
    境遇は違えど、似た二人。

    ――だけど、あたしは…『──タケっごめん!』シェリーは俯きながらも、大きな声。

    2006-03-08 19:25:00
  • 152:

    碧 虎?

    「なんでシェリーが謝んねん?」
    シェリーは更に下を向く。
    『あの薬…タケが飲んだ薬はっ…あたしが回したやつやねん…。』
    タケは一瞬表情を変えたが、シェリーを優しく見つめ直す。
    『あたし…お金が欲しくて。特に意味なんてない。お金が手に入るんなら何でもした。』

    2006-03-08 19:29:00
  • 153:

    名無しさん

    アゲ?

    2006-03-10 02:37:00
  • 154:

    碧 虎?

    あげあリあす?

    2006-03-13 04:33:00
  • 155:

    碧 虎?

    『友達にも売った。関係ないって思ってたから…でも、タケを公園で見つけた時‥嫌やって思った。』


    『タケだけは…って。あたし、こんな気持ち初めてやねん。』

    2006-03-13 20:08:00
  • 156:

    シェリーはタケから目を逸らした。
    『…バイトする必要ないって言ったやんな?』
    タケは頷いた。
    『……‥パパおるからやねん。あたしもずっと一人で生きてきたんよ。それで‥今日本間のお父さんとヤッた。』
    シェリーの断片的な話しにタケはよく理解できていない様だ。

    2006-03-13 20:14:00
  • 157:

    碧 虎?

    シェリーは、表情を曇らせながら話した。
    ずっと施設で暮らしていた事。
    中学卒業と同時に脱走した事。
    パパのお金で暮らしている事。
    そして─────‥

    2006-03-13 20:19:00
  • 158:

    碧 虎?

    ─────『タケがずっと気になんの。』
    タケは微笑んでいる。
    『…あたしっスキとかそうゆうのんわからんくてっなんか足りひんって自分でもわかってて…でも。タケに会って変われた気が…っ』
    シェリーが言い終わらぬうちに、タケが抱き締めた。

    2006-03-13 20:28:00
  • 159:

    碧 虎?

    「…でも。」
    心臓の音が止む。
    「俺はまだ弱い。ずっと逃げてきたから。…体もこんなやし。」
    シェリーは首を傾げる。

    2006-03-13 20:51:00
  • 160:

    碧 虎?

    「後…一週間。一週間あれば俺は元気になる。その時、あの公園で会おう───。」



    二人の唇が触れ合って、シェリーは病室を出た。

    2006-03-13 20:53:00
  • 161:

    碧 虎?

    病院を出たシェリーが見上げた空は、
    青かった。

               
    ――――――

    2006-03-13 20:56:00
  • 162:

    碧 虎?



    「シェリ〜っ今日合コンなりぃ♪」
    ナナの弾む声。
    「あんたこないだバイトでぶちったんやから今日はこいよ★」

    2006-03-13 21:06:00
  • 163:

    碧 虎?

    『男前なん〜?』
    シェリーが、微笑む。
    「当たり前っ♪」
    『ほな行くッ!!』
    「よしきたぁ〜!!!」ナチとナナが声を合わせる。

    2006-03-13 21:15:00
  • 164:

    碧 虎?

    ――――あれから半年。

    シェリーは、パパ全員と切った。今、ショップ店員のバイトをしている。
    そして、バイトがない日はナナとナチと遊ぶ。
    「シェリーほんまにパパ切ったん?」

    2006-03-13 21:20:00
  • 165:

    碧 虎?

    『切ったよ?…ナチとナナと遊んでる方がいいもん。』
    三人は笑った。
    「今日は気合入れんぞ-!!」

               あれから半年。シェリーがタケに会う事はなかった。

    2006-03-13 21:25:00
  • 166:

    碧 虎?

    タケと病院で約束してから一週間。
    シェリーは公園に行かず、パパ全員と話しをつけた。
    ナナとナチに対して心を解放した。
    自然体の、シェリーでいた。
    実の父とは、少しずつ連絡を取り合った。

    2006-03-13 21:32:00
  • 167:

    碧 虎?

    そして一週間が経った。


    心が待てない。
    シェリーは公園へと走った。

    2006-03-13 21:35:00
  • 168:

    碧 虎?

    公園を見渡すと、タケはいなかった。


    その瞬間、突風が吹き荒れて――――
    『タケ───?』

    2006-03-13 21:38:00
  • 169:

    碧 虎?

    シェリーの目の前で、黒い羽が舞った。
    シェリーはそれを手に取る。
    『烏の羽…‥?』
               眩しすぎる太陽と、めまいを覚える青い空。

    2006-03-13 21:48:00
  • 170:

    碧 虎?

    シェリーは手に羽を持ち、ベンチに寝そべる。
    一日、タケを待った。


    青空が、燈色に変わってもタケは現れなかった。

    2006-03-13 21:53:00
  • 171:

    碧 虎?




    「シェリー、今日も青空やね!」
    「散歩行かんでいいの?」

    2006-03-13 21:55:00
  • 172:

    碧 虎?

    『今日はナチとナナと合コン!!』



    あれからも、シェリーはタケを待ち続けた。シェリーを救ってくれたから。

    2006-03-13 21:58:00
  • 173:

    碧 虎?



    透き通る青い空。
    太陽を遮る黒い影。
    青い空を羽ばたく烏。

    2006-03-13 22:01:00
  • 174:

    碧 虎?




    今日もシェリーは、青空を見上げる。
                   ○終●

    2006-03-13 22:04:00
  • 175:

    名無しさん

    完結おつかれ?

    2006-03-27 01:44:00
  • 176:

    名無しさん

    2006-04-29 19:38:00
  • 177:

    名無しさん

    なんて゛タケのとこ行かなかったのぉ?
    行ってハッピーエンドじゃだめやのぉ??

    2006-05-21 18:12:00
  • 178:

    名無しさん

    ?

    2006-12-20 22:36:00
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