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君が笑ってくれるなら。
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1:
◆qKVw/6MKg6
君が笑ってくれるなら なんだって出来る。
少なくともあたしは あの頃―
本気でそう思っていた。2007-09-12 00:38:00 -
81:
◆qKVw/6MKg6
――…
2007-09-16 16:32:00 -
82:
◆qKVw/6MKg6
『おはようございます』 女の子達に挨拶を交わし、翌日あたしはいつも通り出勤した。今日は金曜日だ。"花金"と呼ばれるだけあって、週末の、特に金曜日はどこのお店も忙しい。
あたしも、今日は何組かお客様が被っている。週末はポイントの稼ぎ時…。バタバタと席を回らなければいけない中で、いかに各お客様に長い時間居てもらえるかに限る―。
待機室でも女の子の営業電話の声が鳴り響いていた。あたしも、この時ばかりは必死で 昨日のことなどすっかり忘れていた。2007-09-17 06:04:00 -
83:
◆qKVw/6MKg6
「葉月さん、二番テーブル戻ってー!その後すぐ五番戻って延長いくから!」 『はーい。了解です。』 ボーイの指示通り、あたしはくるくると席を回る。
『失礼しますー!金ちゃんお久しぶりー(笑)』 「あ、葉月ちゃんっ…ひ、ひ、久しぶり……ひっ」 『あはは、久しぶりやね★元気そうで良かったわー』「う、うん…葉月ちゃんも」
俯き加減に、返事をする、少し挙動不審で眼鏡をひっきりなしに上げたり下げたりしている彼は、 通称《金ちゃん》28歳、独身━。これまたDollsからの長いお付き合いのお客様だ。
『金ちゃん、今日なんかすごい荷物やない!?どないしたん?買い物?』2007-09-17 06:15:00 -
84:
◆qKVw/6MKg6
相変わらず落ち着きのない金ちゃんの横には、大きな紙袋がたくさん…。んー、ものすごく気になる所。 「あっ…あ、あ、これは…はっ…葉月ちゃん…に…」『えっ!?…あたしに?』なんだろう…?差し出された紙袋の中身を確認する。
中には―――、なぜか―、【メイドさん】の衣装が。え?え?なんでですか?
『金ちゃん……コレは?』「は、葉月ちゃ…んにすごく似合うと、思って……」『あ…ありがとう(笑)』
なんともリアクションしにくいプレゼントに驚きつつも…、あたしはとりあえず金ちゃんと乾杯をした。2007-09-17 06:24:00 -
85:
◆qKVw/6MKg6
こんなある意味サプライズ??な、プレゼントをくれたりする少し変わった金ちゃんは、お客様としてはすごく甘えやすいタイプだ。飲みたいものを飲ませてくれるし、延長交渉もスムーズにOKしてくれる――。 「は、葉月ちゃん……それ着て…しゃ…写メール送ってくれる…かな?」
…少し変わった趣味はあるみたいだけど。まぁ、慣れたらなんてことない。
「失礼します…葉月さん、リストお願いします!」 そうこうしていると指名回しをしているボーイが席に来た。ん?今来たばっかりやのに…?やたらと早くないか?2007-09-17 06:33:00 -
86:
◆qKVw/6MKg6
『ごめん金ちゃん…、ちょっと待っててなぁ。すぐ戻ってくるから!』 「はい……待ってます…。」淋しげな金ちゃんを気に掛けつつ、あたしは指示通りリストに向かう。
『…どないしたん?なんかえらい早くない?』 「いや、悪い悪い。いや実はちょっとな…―!」 困った表情をするボーイ。『んん?何かあった?』
「五番の客がめちゃくちゃ怒ってんねんやん。理由聞いても分からんし…。とりあえず葉月戻せゆってるから、一瞬戻ろか。」2007-09-17 06:41:00 -
87:
◆qKVw/6MKg6
『五番?んん…?隼人んとこ――??怒ってるってなんでなん?』 「いや、理由は分からんねん…。とりあえず席戻さなヤバイからすぐ行って理由聞いてきて!」 『あーい、了解。』 ボーイに急かされ、何がなんだか良く分からないままあたしは席に向かった。
『隼人?ただいまー!ごめんな、待たせてもて。』 「……あぁ?」 ん?ん?なんだなんだ…。確かにご機嫌斜めの様子。席を外してたから?いや、隼人はそんな事で怒るタイプでもないはず―。
『どうかした?なんか怒ってるみたいやけど…??』2007-09-17 06:53:00 -
88:
◆qKVw/6MKg6
「お前……俺のことナメてんのか?」
『は…?どうゆう意味?』「お前、男と同棲してるらしいやん。なぁ…?俺のことおちょくってんのか?」
―――ん?―‥んん? 『ちょ、ちょっとちょっと待って待って……!全然話が見えへんのやけど…。』
全く意味が分からない。男と同棲――?あたしが? DVDプレイヤー貰って本気で喜んでる、―あたしが?どっからそんな情報…。2007-09-17 07:00:00 -
89:
◆qKVw/6MKg6
とりあえず隼人には納得してもらったけど、なんとなく元の気分には戻りにくいようで「今日は帰るわ…」と言って、帰ってしまった。隼人は仕事が忙しく滅多に来れない分、いつもオープンラストで居てくれるお客様だっただけに―…痛い。
気分を直して他の席に回ったものの、他の席でも次から次へとあり得ない事を言われる。あ、なるほど…。取り巻き達もグルなのね。
うん、笑えないかも。2007-09-17 07:40:00 -
90:
◆qKVw/6MKg6
結局、早々にチェックが出る席ばかりで、―…ラストまで居てくれたのは金ちゃんだけだった。
『金ちゃん、今日はありがとう…!ご馳走さま!!』「ま…また…来るから…」 金ちゃんは、俯き加減にそう言うとチラッと一瞬だけあたしの表情を確認して、エレベータに乗る。あたしは金ちゃんに笑顔で手を振って、見送りをした。2007-09-17 07:46:00