小説掲示板『だいじょーぶ』のスレッド詳細|夜遊びweb関西版

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『だいじょーぶ』

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  • 1:

    初めて書きます。読みにくい点もあると思いますが、よかったら読んで下さい

    2007-07-06 02:29:00
  • 2:

    ありがとうとかごめんとか、そんな言葉を聞きたかった訳じゃない。                 好きやから待っててくれ ただ一言その言葉が聞きたかった。             今更何を信じろと 今更どんな関係が築けると 埋まらない溝はあるよ。 もう戻らない気持ちもある それでも
    『だいじょーぶ』って まだ笑いあえるかなあ?

    2007-07-06 02:36:00
  • 3:

    『ほら 手ぇ』 ぶっきらぼうにその左手を差し出す。手を繋いで歩くなんて、一体何年ぶりだろうか。 『彩香、あれ見てみい』 彼氏の大介が指を指す。 その指の先には、ある看板が光っている。

    2007-07-06 02:41:00
  • 4:

    【CLUB COAL】 この夜の街の一角にある、ホストクラブの看板。 「なつかしいね。」 あたしは答えた。 『あいつの働いてる店やろ?』 胸が痛んだ。くすぶって消えない、あの人と過ごした日々。拓との思い出。 「そうやで。」 頷いた。

    2007-07-06 02:49:00
  • 5:

    あたしの顔色を探るように見てくる大介の目。   見透かされたような気がして、空を見上げた。   『ええ天気やなあ』   大介が言った。     「やねえ。ご飯食べよ?お腹減ったわぁ。」    大介の手を握り締めて、笑って大介を見上げた。

    2007-07-06 02:55:00
  • 6:

    拓と出会ったのは三年前。ここが24時間ネオンの煌めく街でなかったなら、綺麗な星の見えそうなそんな夜だった。         当時あたしは大学1年生。田舎という程田舎でもなかったけれど、都会とも言えないような街で育った。
    大学入学で、ミナミに越した。           家はわりと裕福で、父親がいない事を除けば、幸せな円満な家庭に育った。

    2007-07-06 03:06:00
  • 7:

    『彩香』        大介に名前を呼ばれる。 大介はあたしの大学の先輩で、今は大手企業に就職している。        在学中から何度か告白されていたけど、どうにもふみきれず、3ヶ月前からようやく付き合い始めた。  あたしが大学2年、彼が大学3年のときから仲が良かったので、2年の友達関係を経た後付き合い始めた事になる。

    2007-07-06 03:21:00
  • 8:

    『ほんまにえーの?』  ふと大介を見ると、不安そうな哀しそうな顔をしていた。          『彩香、俺とおっても、いつもどっか哀しそうな顔しとおで。』       「そんな事ないで!!」 そんな事…ない。    大介といると、愛されている事が伝わってきて本気で幸せだった。      大介を不安にさせて何をしてるんだろう。幸せにするって、大介を愛すんだって、あの時決めたはずだったのに。
    『拓の事…………』               『いや、拓より俺のが好きか?』                     「あたしは…」

    2007-07-07 13:15:00
  • 9:

    《お姉さん、何してはるんー》          今日もまた、学校が終わって家に一人でいる事に耐えられなくて、なんとなくブラブラしていた。     話かけてきた人は、スーツ姿のいかにもギャル男系。ナンパされたくてブラブラしていた訳ではないし、特に興味はなかった。       「なんにも」      そっけなく答えた。

    2007-07-07 13:25:00
  • 10:

    名無しさん

    気になるぅ??ァゲ?

    2007-07-07 16:05:00
  • 11:

    11さんありがとう
    今から更新します

    2007-07-11 01:29:00
  • 12:

    《なんにもってー!こんな時間にブラブラしてたら危ないでえ?はよ家帰りやあ》何故か心配された。   「暇やねん」      いろいろあって男は好きではなかったけれど、なんとなくこの人は嫌ではなかった。そんなにかっこよくはないけど、笑うと八重歯が出て可愛かった。    《俺、拓ってゆーねん。》「あたし彩香やで」   《いつもこの辺ブラついてんねやったらさ、番号教えてー。電話してくれたらかけつけるし。一人でブラついてたら、可愛いし危ないで》          「…可愛くないから大丈夫やで」         《危ないて!番号教えるん嫌やったら俺の教えとくから、かけたくなったらかけて!非通知でもええから》「…うん。わかったあ」             誰かに心配されるのは久しぶりで、嬉しかった。              番号を入力しおわると、拓は八重歯を見せて笑って言った。         《気をつけて帰りやー?だいじょーぶか?》    何が大丈夫なんやと思いながら、やっぱり嬉しくて、笑いながら頷いた。   《まっすぐ家帰れよー。また電話してや!》    手をふって、彼と別れた。

    2007-07-11 01:44:00
  • 13:

    拓に言われたとおり、まっすぐ家に帰った。    鍵を空けたら真っ暗で、また少し寂しくなった。  夜は苦手だ。無性に淋しくなる。         学校ではまだ、友達と呼べる友達もいないし、地元は遠い。時計をみるともう夜の1時だったけど、地元で仲の1番いい美里に電話をした。         ――――プルル… ――――            電話音だけが哀しく聞こえる。          美里寝てるのかな。電話を切った。        テレビを見ても淋しくて、携帯をいじっていた時、拓の名前を見つけた。

    2007-07-11 01:53:00
  • 14:

    拓に電話してみようかな。でもホストしてるって言ってたなあ。仕事中やんなあ…            拓の番号を表示した画面のまま、迷っているとトイレに行きたくなって携帯をベットになげた。                   あー。なんでこんなに淋しいんかなあ。                  ―…―…チャララ〜♪…―…―            着信音が鳴りはじめた。美里かもしれないと思い、急いでトイレからでた。   画面には【拓】と表示されていた。

    2007-07-11 02:01:00
  • 15:

    名無しさん

    なんでや?!番号教えてへんのに…        恐る恐る電話にでた。  「もしもし?」     《もしもしー?もしかして彩香あ?》       「うん、そうやけどなんで番号知ってんのん?!」 《なにゆーてんの!電話くれたやんかあ。もしかして彩香かなと思って急いで出たのに、なんぼ話し掛けても応答ないしやなあ》              どうやら、ベットに投げたときに電話がかかってしまったらしい。でも、かける勇気なかったから、ちょうどよかった…                   その旨を説明すると、《ドジやなあ》って言葉のあと笑い声が聞こえた。八重歯の笑い顔が目に浮かんだ。

    2007-07-11 02:10:00
  • 16:

    「今仕事中ちゃうん?電話大丈夫なん?」     心配になって聞いてみた。《だいじょーぶやで!今俺の客いてへんし。電話くれたんびっくりしたわ!絶対くれへんやろーと思ってたしな》         確かに、自分では発信ボタンは押せなかったと思う。             歳とか出身とか、最近の出来事とか、たわいない話をした。大学生だというと、《いいなあ。楽しそうやなあ》と羨ましそうな声をあげていた。       「なんでホストしてるん?」そう聞いてみると    《…やりたい事あんねん》なんとなくそのあとは聞けなかったから、他の話題をふった。        30分くらい話をしたあと、《あ!ごめんやけど呼ばれてもうた…行かなあかんからまたかけていい?》  電話ごしに男の人の声が聞こえた。

    〈拓はよせえやあー〉  
    「うん、わかった!忙しいのにごめんな。お仕事頑張ってなあ」       《ありがとう!はよ寝ろよーまたかけるわ!》   電話をきった。

    2007-07-11 02:25:00
  • 17:

    朝起きると、拓からまた一件着信があった。    このころあたしはホストの事なんてよくわからなくて、マメな男だなあ、なんて思ってた。
                電話はかけ直さずに、準備をして学校に行った。

    2007-07-12 20:40:00
  • 18:

    入学して一ヶ月。    ようやく友達らしい友達もできた。        うちの大学にあんまりギャルっぽいコはいないけど、同じ学部であたしを含めて4人、派手なコ達で固まっていた。         里菜と麻美と緑とあたし。いつも4人でつるんで、放課後も遊んだりした。  淋しさから、夜外出する事もほぼ無くなっていた。             里菜と一緒に学校内のテニスサークルにも入った。そこで出会ったのが当時3回生だった大介だった。

    2007-07-12 20:48:00
  • 19:

    ↑失礼しました。当時3回生⇒訂正
    当時2回生でした。

    2007-07-12 20:50:00
  • 20:

    6月の始め。あたしはそのサークルの飲み会に参加するために、ひっかけを歩いていた。          [彩香あ、飲み会の場所何処やったっけ?!]   「わかんない…ひっかけ集合しよってみんな言ってたんになあ。誰もいてないなあ?先輩に電話してみよ」[8時ひっかけやんなあ?ほんま皆時間にルーズやなあ(笑)]
    里菜と携帯を開いて話していた。                     《彩香?》       誰かに名前を呼ばれて振り向くと、拓が立っていた。

    2007-07-12 20:58:00
  • 21:

    《彩香やん!久しぶり!》八重歯見える笑い顔。久しぶりだった。      [だーれ?友達?]   里菜に聞かれた。    里菜にも麻美にも緑にも、拓の事は話していなかった。みんな派手だけど男関係はキッチリしているし、麻美は特に3年間付き合っている彼氏もいる。〈ナンパされて番号教えた。しかもホストやってる人に。〉そんな事言えなかった。      「んーちょっとした知り合い。里菜ちょっと待っててくれる?」       そう言って、拓に目で合図をした。        拓も理解してくれたらしく、ちょっと里菜から離れたところに歩いた。

    2007-07-12 21:05:00
  • 22:

    《ごめん。連れおってんな。マズかった?》    さっきとは打って変わって、申し訳なさそうに拓が言った。         「ううん、大丈夫やで!ごめんね、きにせんといて」あんまりしょげているので、こっちが申し訳なくなった。          「久しぶりやね!一ヶ月ぶりくらい?」      《やなあ?全然電話とってくれんし嫌われた思ってたわ》          そういえば、始めの一回以来電話は取っていない。嫌とかじゃなくて、タイミングが合わなかった。     「ごめんねえ。そんなんとちゃうで」       何を弁護してるかわからなかったけど、ごめんねって何度も謝った。     《うん。元気ならいーねん。》          拓はやっと笑ってくれた。

    2007-07-12 21:14:00
  • 23:

    《よかったら、アドレス教えてやあ?メール、暇な時にでも返してくれたらいいし》「あ、せやな。いいで」             拓に対する警戒心は最初からあまりなかったように思う。          アドレスを交換したら、
    《連れ待ってんねやんな?はよ行き!時間とらしてごめんな。》       「あ、うん。全然いいで!ありがとう。」     《お連れさんに謝ってきてい?一人にさしてしもたし…》          …真面目というか、ええ奴やなあ。ギャル男系ってチャライ奴多いから、酷く驚いた。            いいよ、と笑って里菜の元に向かった。

    2007-07-12 21:21:00
  • 24:

    呆然としていると、   《待っといててゆーたやん。危ないやろ》     拓に言われた。     「え?何言ったん?!」 《ないしょ》      そして里菜に向き直って、《ごめんな、彩香連れてったから一人にさしてもーて…怖い想いさしてほんまごめん。》        里菜に頭を下げていた。 [いえ!ありがとうございました…]       突然頭を下げられてあたふたしながら里菜が言った。            「里菜大丈夫?!あたしほんとごめん…」     1番あたしが悪いのに、拓に頼ってしまって情けなかった。         [ちゃうねん!ちょっと入れ墨凄いなとめちゃめちゃ見てもーてん汗。したら絡まれて。大失態や…大丈夫やし!]        [ほんまありがとうございました!彩香の友達ですよね?助かりました]   申し訳なさそうに、あたしと拓に言った。     《いやいやあ!無事でよかったわあ》       笑っていた。                  …―…―チャラ〜♪…―…―            里菜の着信音が鳴った。 [あ、先輩や!ちょっとすみません]       里菜が電話を取って話している間に、拓にお礼を言った。          「拓、ほんまありがとう。迷惑かけてごめんね…」 本当に申し訳なかった。関係のない拓を巻き込んで、危ない目に合わせるところだった。        《迷惑やなんて思わんで。彩香も友達も無事でよかったわ。》                    カッコイイ男だと思った。顔とかスタイルとかじゃなくて、本当に中身が。たかが一回会っただけ、たかが一回電話しただけの女をかばえる奴なんかそんなにいない。 人は結局自分が1番大切で、面倒なことなんて避けるものだと思うから。

    2007-07-12 22:10:00
  • 25:

    「ほんまにありがとう。でも、あーゆーの危ないから、拓も自分大切にしてや?殴られたりしたらあたしやって嫌やし!」     本気で心配になったから、あんまり深刻にならないように軽くちょけたように言った。         けれど拓は驚いた顔をして《…ありがとう。心配してくれて》        と言って、哀しそうに笑った。                      なんだかあたしも哀しくなって、黙りこんでしまった。                       [彩香!先輩達着いたって!皆もう店入ってるみたいやわ!]        里菜に言われて、はっと我に返った。       「あ!ほんまに?ほな行こうか!拓、本当にありがとね!」         元気に言った。     《俺も行かな!じゃあまた連絡するなあ!里菜ちゃんもバイバイ!》      今度は拓も元気に答えた。[あ、ありがとうございました!さよなら!]   里菜も言った。

    2007-07-12 22:23:00
  • 26:

    拓と別れて、先輩達と同じ学年のコ達と合流した。 わいわいとした雰囲気の中で、里菜と並んで歩きながら、改めて謝った。   「里菜、ほんまごめんね」            [気にすんなってえ!彩香悪くないやん!それよか、えーと拓さん?めちゃめちゃいー人やなあ?]   「ほんまそれな…」   話は拓の話になった。              [なんか、拓さん彩香の事好きなんちゃう?見ててそんなかんじした!]   突然の話に驚いて、急いで訂正した。       「んなわけないで!一回会っただけやし!ありえんありえん!」       [そーかなあ?そんなかんじに見えるけどなあ。あの人同じ大学っけ?何歳?]「絶対ちゃうから!(笑)同じ大学じゃないで。歳は20歳やゆーてた」    [なら2コ上かあ。大学生違うん?何してる人?]  「…働いてる。よくしらんけど…」                    やっぱりホストとは言えなかった。                     [社会人かあ!えーやん!二人付き合ったらえーのに(笑)]        里菜にからかわれて、ありえないと何回も繰り返してから、否定しすぎだと二人で笑った。

    2007-07-12 22:40:00
  • 27:

    飲み会は楽しかった。まだ話した事もなかった先輩や同級生とも仲良くなれた。次の日が日曜日な事もあって、一気コールもあちこちで始まっていた。     あたしはお酒は強し好きだけど、次の日居酒屋でバイトだったので、座敷の隅でちびちび呑んでいた。               『彩香ー!?何一人でたそがれてんのー?』    笠井先輩がやってきた。 「たそがれてないですよ!笠井先輩酔ってます?(笑)」          『全然しらふやゆーねん』あたしの横に座りながら言った。         『学校慣れたかあ?!』 「はいっ。楽しいです!」            たわいない会話をしていると、携帯のバイブが鳴った。

    2007-07-12 22:53:00
  • 28:

    【メール受信:拓】    今日ごめんな!まだ遊んどー?久しぶりに会えてよかったわあ。暇な時メールちょうだい!                    …そういえば、あの時入れ墨の男に、拓は何を言ったんだろう。       じっとメール画面を見ていると、笠井先輩があたしの顔の前で手をヒラヒラさせた。 『なにぼーっとしてんねん!彼氏からかー?』   笠井先輩が横にいる事をすっかり忘れていた。   「あっ。違いますよー彼氏じゃないですからー」  『ほんまー?やけにニヤニヤしてたでえ?』      先輩の顔のほうがニヤニヤしてるわ!と心の中でツッコミながら、あたしニヤニヤしてたのかあと思って恥ずかしくなった。          「ニヤニヤしてないですし!」先輩はケラケラ笑いながら、タケノコニョッキで盛り上がっている里菜のところに行った。

    2007-07-12 23:09:00
  • 29:

    『なあなあ、里菜!彩香がメール見てニヤニヤしてんねんけど!めちゃめちゃキモいねんけどー(笑)』                里菜は真っ赤な顔をして、里菜もまたニヤニヤしながら言った。         [あーきっと拓さんやあ!頼りがいのある社会人ですよお!]        「ちょ!里菜!汗」               {なんや彩香やるな!} {彩香彼氏作るとかずるいでえ!}        案の定皆にからかわれてしまった。        
    『誰やそれー?』    笠井先輩がツッコむ。   「誰でもないですて!」 『誰や聞いてんねん』  なんだか怒ったような口ぶりだった。                   訳がわからず黙ると、先輩はどこかに行ってしまった。

    2007-07-12 23:18:00
  • 30:

    拓に返信をしようとメールを打った。        【メール送信:拓】    謝るのこっちやしなあ…。ごめんなあ。今サークルの飲み会中やねん!皆酔っ払いやわあ(笑)今日はほんまありがとう!                   【送信完了しました】              携帯を閉じてグラスに口をつけた。         するとまた、携帯が震えた            【メール受信:拓】    どーいたしまして!飲み会かあ!彩香なんのサークル入ってん?                     返信早いなあー。またメールを打った。       【メール送信:拓】    実はテニスサークルやねん!全然テニスできやんけどなあ(笑)拓今からお仕事ー?                           【メール受信:拓】    ほんまかあ(笑)俺もサークル入りたいわ(笑)まだ仕事ちゃうでえ!飲み会終わったらまたメールちょーだい!                        【メール送信:拓】    入ったらいーやん(笑)じゃあまたメールするわあ!  
    飲み会が終わったらメールしようと本当に思った。

    2007-07-12 23:33:00
  • 31:

    いつの間にか先輩は戻ってきていて、他の先輩達と一緒に呑んでいた。                時間を見るともう11時をまわっていた。                 代表が立ち上がって、一次会終わりの話をしていた。            酔っ払いの介抱をしながらみんな各々外に出た。  帰宅組と二次会のカラオケ組に別れたが、あたしは帰宅組で、里菜はカラオケに行くと言って真っ赤な顔のまま同級生の男のコに絡んでいた。            里菜にさよならを告げて、数人と駅に向かった。あたしは歩いて帰るけれど、皆を見送りに駅に行った。

    2007-07-12 23:45:00
  • 32:

    みんなを見送って、歩いて一人で帰っていた。   もう12時だった。拓はお仕事始まってるなあと思いながら、拓にメールをした。            【メール送信:拓】    今皆と別れて家に帰ってるー!もうお仕事中やんね?お仕事頑張ってなあ!              【送信完了しました】              一人で歩いていると、何度もホストの人や若い男に話かけられる。軽くあしらいながら、ウザったいなあと思っていた。                   {お姉さん今から何処行くのー?初回タダやし飲みにいこー?}       {遊び行こうや!可愛いやん!}                     同じ言葉の繰り返し。けど、そういえば拓もこんなだった。大変だなと思った。                        家のカギを空けると、カバンの中で携帯が鳴った。  拓だと思って開くと、地元の友達の美里からだった。【メール受信:美里】   彩香久しぶりィ!元気してる?!夏休み絶対帰ってきてやァ!8月終わりに皆で沖縄行こう話しててん!詳しい予定決まったらまた連絡するから、頭に入れといてや☆                     沖縄かあ!行きたかったんだよなあ。                   【メール送信:美里】   もち行くしやな!また連絡ちょうだい!                  携帯閉じた。

    2007-07-13 00:14:00
  • 33:

    携帯は鳴らなかった。昨日まで拓の事なんて頭になかったのに、拓から連絡がこない事がすごく淋しかった。                       早く寝ようと、シャワーを浴びてベットに入った。                携帯をむやみやたらに開いては閉める。何度もセンター問い合わせをする。    何故かわからないけど、拓と連絡がとりたくて仕方なかった。                    2時をまわっても、携帯は鳴る事を忘れたかのようにシンとしている。                 いつの間にか眠りについていた。

    2007-07-13 00:20:00
  • 34:

    妙な夢を見て目が覚めた。ひどく汗をかいていて、〈置いていかないで〉と言う言葉が頭の中でリピートされていた。        頭は冴えているのに、もう現実に戻ったんだと分かっているのに、なぜか涙が出てきた。悲しくて悲しくてたまらなかった。    憂鬱で、少しの間動けなかった。         〈置いていかないで…〉                                     カーテンをあけてみた。眩しい光が差し込んで、やっと涙が止まった。                  今何時だろ…                  9時か…                    【メール受信3件】    【着信2件】                  誰だろ?
                【着信:拓 3時半】  【着信:拓 8時40分】            【メール受信:拓 2時半】連絡遅れてごめん!手えはなせなかった!もう家帰ってるよなあ?                  【メール受信:拓 4時】 もう寝た?起きたら連絡ちょーだい!                               【メール受信:ママ】   おはよ!ちゃんとご飯食べてる?

    2007-07-13 00:39:00
  • 35:

    拓どうしたんだろうと心配になった。仕事中なハズなのに、メールも電話も。しかもこんなに夜中だ。拓に電話をしてみた。                 …―…―…プルッ―…―…―《はい》        ワンコールで出た。     「もしもし拓?どうかしたん?メールと電話…寝てて今見てん。ごめんね」               《寝てたんかあー。よかったー》         「よかった?何が?」  《いや、今帰りよるゆーてほんまにちゃんと帰れたんかな思って。飲み会の後やと酒入っとおし、夜遅いしやなあ。変な奴襲ってきよったらどーしよーか思ってん。寝てたならいーねん。何回もごめんなあ》   「…心配してくれたんやあ。ありがとう…ごめんね、家帰ってからメールしたらよかったなあ…。」    《ちょっと気になっただけやでー。》       「ありがとう」     《こちらこそ》     「こちらこそて意味わからんやん…」       《……(笑)》                 心配してくれていた。思い出せない夢の憂鬱が、晴れて行くのが分かった。あたしは置いていかれてはいないのではないかと、漠然と思った。        また涙が零れた。                「ありがとう」     《どーしたん?》    「何があ…?」     《…泣いてない?》   「あはは(笑)泣いてないよ…」         《だいじょーぶ?》   「大丈夫、ありがとう。あ、お仕事は?終わった?」《終わったでー今から帰る。》          「そっかあ。お疲れ様!」《ありがとー。まあ、なんかあったらゆうてよー》 「うん!ゆっくり休んでなあ」          《ゆっくり休むわあ。また起きたらメールするな》  「分かったあ。おやすみ」《おやすみー》

    2007-07-13 01:06:00
  • 36:

    この日から、毎日拓とメールをするようになった。              拓が起きてあたしが寝る、21時〜2時くらい迄。 あたしが起きて拓が寝る、9時〜12時くらい迄。             あたしが夜遅く迄遊んでいたりバイトしていたり、 拓が撮影や営業をしていたり、休みの日曜〜月曜は、連絡をとる時間は前後していたけれど、毎日メールをして、たまには電話をした。            1ヶ月もこの生活が続いて、7月には当たり前のようになっていた。                 仕事が始まる前には、  《仕事終わったら連絡するなあ》         寝る前には、      《起きたら連絡するなあ》メールの決まり文句だった。 
                そういえば、拓はあんまり自分の事を話さない。  けれど、あたしがバイトでミスをしたとか、落ち込む事があった時には、必ず励ましてくれた。

    2007-07-13 01:21:00
  • 37:

    代わり映えないけれど楽しい毎日が続き、梅雨があけ、太陽がギラギラと輝くようになった。                   あたしはなんだか拓に依存してきていた。彼氏でもないのに。        《今から同伴やねん》  他の女の子と会いにいくと聞くと、嫌な気持ちになるようになっていた。               あたしは彼女じゃないんだ。分かってはいても、毎日連絡をとっていると、拓が酷く身近な人であるかのように感じるようになっていた。                      拓はしかもホスト。ホストに関する知識がなくても、ホストに恋するもんじゃないって事くらい心得ていた。               あたしは拓のなんなんだろう。                                  友達でも…ない?                ホストにとって店に呼ばない女の子って、どういう位置関係なんだろう。                            拓に疑問を抱いていたその頃、拓からあるメールが来た。

    2007-07-13 01:36:00
  • 38:

    【メール受信:拓】    おはよお!今起きた!あんなあ、ちょっとびっくりさせたるわあ。このサイト開いてみて!        http://Club-Coal*****             なんだろう?サイトに接続してみた。                    ゴールドの背景に黒の文字。ホストクラブのサイトだった。  なんに驚くのかわからなくて、キラキラ光る文字をクリックした。上から順番にクリックするが、なんなのかわからない。           【今月の売上】     横にnew、と表示されるその文字をクリックすると、見覚えのある写真と名前が表示された。                    【No.1 陽日 拓】

    2007-07-13 01:50:00
  • 39:

    な、なんばーわん?               水商売の事はよくわからない。でも、No.1が物凄い事は分かる。                   凄いねんなあ拓って!休みなく働いて、頑張ってるもんなあ!        感動して思わず拓に電話をした。                     …―…―プルルルル…―…―…            《はい》        「もしもし?!サイト見たで!拓No.1なん?!めちゃめちゃ凄いやん!おめでとう!!」         《ありがとー(笑)No.1とるん初めてやからなあ、ちょっと自慢したかってん》「自慢したくなるやろこれは!ほんますごいし!おめでとっ!パーティしよパーティ」《え?いいよーそんなん!》           「おめでとうパーティやん!やろー♪」       《じゃあ、ご飯作ってえ!ハンバーグ食いたい》   「なんでもつくるしー!」《ありがとう。楽しみにしてるわあ♪》                  凄いねんなあー。陽日 拓、No.1やって!                 「あれ?」       《なにー?》                  【陽日 拓】                  「なんでもない!あ、じゃあまた日にち決めよ?」 《おう!》                   気付きたくなかった事に気付きはじめていた。

    2007-07-13 02:03:00
  • 40:

    そーか。拓って源氏名やってんなあ。普通の名前やからわからんやった。               その事が酷くショックだった。自分はやっぱり友達でもなかったんだなと思った。             付き合う事もないだろう。            じゃああたしは一体誰?             一体何に依存して、何に嫉妬して、何に期待しているんだろう。       水商売をした事もないあたしには、源氏名イコールお客さんだと思えた。                                       嫌悪感を覚えた。    でもお店に来いって言われた事ないし…                  ワカンナイ。                     あたし何してんだろ?

    2007-07-13 02:11:00
  • 41:

    次の日の朝、いつものようにメールがきた。           
    【メール受信:拓】    おはよー!疲れたー今から帰るわあ!                               メールは返さなかった。                                      里奈と麻美と放課後遊んで、家に帰った。なんだか元気がないと二人に心配された。          「大丈夫やで!」    この相談は二人には出来なかった。拓の話はしていたけど、ホストだって事は今だに言えずにいたから。                          家でテレビもつけずに、メールを作った。

    2007-07-13 02:18:00
  • 42:

    【メール作成:拓】    おはよお!あんな、突然やけど、連絡取るの辞めよ!なんか先ないし!今までいろいろありがとう。楽しかったし!パーティ出来やんけどごめんね。元気に頑張ってなあ!ありがとう!                          なかなか送信出来なかった。悩んで悩んで、コレでいいと思った。                   【メール送信しました】                          画面を見て、哀しくなった。           コレでいいんだ。間違ってない。          自分に言い聞かせて携帯を閉じると、すぐさまバイブが鳴った。                               【メール受信:拓】    なんでなん?!どうしたん?!                      【メール送信:拓】    さっき書いたとーりっ                          バイバイって言ったらそれで終わると思っていた。                          【メール受信:拓】    付き合わん?

    2007-07-13 02:29:00
  • 43:

    目を疑った。意味がわからなかった。                   【メール送信:拓】    本気ちゃうよね?                【メール受信:拓】    本気やで。付き合おう                          からかわれてるんだと思った。信じられなかった。どれだけ優しくても、どれだけ泣ける言葉をはいても、拓はホストだ。                  【メール送信:拓】    拓って名前、本名?               【メール受信:拓】     違うで。本名はゆうすけ。                                    ならどうして、言ってくれなかったのだろう。付き合おうなんて言ってるけど、あたしが本名聞かなければ、言わなかったんじゃないの?          「うん」と言っていたら、あたしは本名もしらない人と付き合っていた。                           訳がわからない。                            【メール送信:拓】     本気ちゃうやん…                                        メールの返信はなかった。

    2007-07-13 02:40:00
  • 44:

    ?

    しぉり?

    2007-07-13 13:20:00
  • 45:

    ?サンしおりありがとうございます?みなさん読んで下さってるんかなぁ??カキコミ少ないから不安で?

    2007-07-13 22:36:00
  • 46:

    名無しさん

    .

    2007-07-14 01:19:00
  • 47:

    名無しさん

    おもしろい?

    2007-07-14 04:01:00
  • 48:

    48サンカキコミありがとです?
    49サンありがとう?頑張って更新するので読んで下さい?

    2007-07-14 10:52:00
  • 49:

    返信が来ない事は何を意味するんだろう。     冗談だった?      嘘だった?       からかわれた?                 あたしの事嫌になった?             バイバイする決心は着いていたのに、付き合おうって言ってくれた事本当は嬉しかった。         あたしは結局傷つくのが怖くて、拓を信じる事が出来なかった。       信じる事は出来ない癖に、拓が信じさせてくれる事を望んでいた。      あたしは拓が好きだったんだ。                      付き合おうと冗談で言うような人じゃないって分かっていても、信じられなかったあたしは弱かったんだと思う。                     あたしはメールを送った。             【メール送信:拓】     どうゆうつもりか説明して欲しい…
                            自分があまりに身勝手で格好悪くて情けなかった。

    2007-07-14 11:30:00
  • 50:

    返信は来ない。     一人でいられなくて、里菜と遊びに出かけた。   里菜に、〈拓に告白されたけど返信がこない〉と相談していた。                   [そっかぁ。拓さんいろいろ考えてるんかもね?気晴らしにクラブ行く?騒いだら少しは気分晴れるかな?]「里菜ありがとう…」              こうしてあたしたちはクラブに行った。       背中の開いたオソロイのTシャツにクラッシュデニムのショーパン。髪を巻いて逆毛で盛る。              爆音でサイケの流れるホールに降りた。まだ人は少なかったから、ドリンクカウンターでカクテルを呑んでいた。

    2007-07-14 11:44:00
  • 51:

    ガタンッ                     隣りの席に誰かが座る音がして振り向いた。                いかにもクラブに居そうなギャル男だった。席はたくさん開いているのに、隣りに座られた事が不愉快で、里菜に合図して席を立とうとした。                      [彩香…ちゃん?]               突然その男に名前を呼ばれた。          [彩香ちゃんやんな?俺!覚えてる?]      顔に見覚えはない。   「誰ですか?」

    2007-07-16 00:31:00
  • 52:

    [俺、拓のツレやねんけど、覚えてない?!拓が彩香ちゃんに話しかけた時横にいててんけど!]                 拓の名前を聞いて心が沈んだ。この人の事なんか覚えてもいないし、どうでもよかった。        「人違いじゃないですか?失礼します。」     里菜にごめんと言って立ち去ろうとすると     [ちょっと待ってよ!俺聖夜ゆーねんけど話しよや!前見た時から話したかってん!あんときは拓に先越されてもーたからあかんかったけど]        あたしの腕を掴んでまくし立てた。                    突然里菜が口を開いた。 〔じゃあ彩香話しい?あたしちょっと踊ってくるから!〕                      [お友達さん話わかるねえ!俺の連れ今呼ぶからそいつと踊っておいでや!一人じゃつまらんやろ。そいつ絶対変な事せーへんから!保証する]       そう言って電話をしだした。

    2007-07-16 01:08:00
  • 53:

    訳のワカラナイ里菜にイライラしながら耳打ちした。    「里菜、なんで?」   〔拓さんの知り合いやったら、拓さんが今どーしてんのか聞けるやん!あたしの事は気にせんでいーから聞き出しよ!彩香元気ないん嫌やし…知りたいやろ?〕里菜はあたしの事を思ってくれていた。                  「わかった。ありがとう」確かにこの人に聞けば何かわかるかもしれない。              〔あ、連れ来たで!〕  聖夜が指で指した先にいたのは、サークルが一緒の笠井先輩だった。       「〔先輩?!〕」    里菜とハモッた。                 『おまえら何してんの?』笠井先輩も酷く驚いていた。当たり前だけど。

    2007-07-16 01:19:00
  • 54:

    [そーいやあここ2日間くらい出勤してないみたいやなあ]         「…聖夜さんもホストですか?」         [あーうん。拓とは違う店やけどな。でも俺は営業で彩香ちゃんに話しかけたんちゃうで]       「俺はって…」     そんな言い方、拓は営業だったって意味やんな。         
    黙ってしまったあたしを見て、聖夜が言う。    [なんかあったん?拓と]「いいえ。」      事情を説明してはいけないような気がした。拓の迷惑になると思った。                [拓の事好きなん?]              答えられなかった。黙っていると、聖夜がため息をつきながら言った。    [No.1ホストに恋なんかするもんちゃうで。優しくすんのなんか当たり前やから。ホストやからな]                 涙が込み上げてきた。違う。拓はそんな男じゃない。あの優しさが嘘だったとは思えない。       …そう信じたかった。              [やめとけ。拓は。俺にしとき?]        頭をポンポンと撫でられた。            「聖夜さんもホストでしょ」 [俺は完全友営やから。営業でこんなん言わないし。もうすぐホスト辞めるしな]「ともえい…?」    [色、枕は使わないってこと。わかる?]     色枕は知っていた。以前拓が冗談で、俺は色枕ホストやからなあ(笑)って笑ってた。          「わかる…拓は色枕使うん?」          [……せやな。ホストは大概そうやで]

    2007-07-16 01:55:00
  • 55:

    何かが崩れた感覚がした。                                    [そんな落ち込むな。よくある事やから。よし、これから遊び行こうか?今日仕事休みやし。車あるからドライブでも行こうや!」  元気づけるように聖夜が言った。         「笠井に言ってくるからちょっと待ってて」                ちょっとしてから、笠井先輩と里菜がホールから出てきた。          〔彩香?〕       『おい、彩香』                 [俺らドライブ行ってくるわ!ちゃんと彩香ちゃん送り届けるから!わりいけど笠井、その娘送ってって。]『俺は構わんけど、彩香どしたんや?』      〔彩香?どしたん?〕  [とにかく行くわ。勝手言ってわりいな。チケ代俺出すわ。]         聖夜は無理矢理笠井先輩の手に一万円札を握らせて、あたしの手をひいて外に出た。

    2007-07-16 02:09:00
  • 56:

    なんだか自暴自棄になっていた。         近くの駐車場まで手をひかれて、助手席に乗った。 車は黒のベンツ。聖夜は運転席に乗り込んで、車を走らせた。         [寒くない?]     大丈夫だと答えた。   [めっちゃ綺麗な夜景見せたるから、元気出せな] 少しまた泣きそうになった。人前で泣く事なんか滅多にない。泣きたくなかった。ぐっと涙をこらえる。             聖夜は煙草を吸いながら、音楽を流した。                 車からぼーっと夜のネオンが消えるのを見ていた。

    2007-07-16 02:18:00
  • 57:

    山道をカーブを上がる。  街は小さくなっていた。             道中、あたしはあまり喋らなかったけれど、聖夜はあたしを元気づけるように馬鹿みたいな冗談ばかり言っていた。                    優しいんだなと思った。
    頂上に着く頃には、いつも通り話ができるようになっていた。                    「里菜にまた迷惑かけちゃった。気使って貰ったのに笠井先輩と残してきちゃった。大丈夫かな。」   里菜の事が心配になった。            [俺が勝手に連れてきただけやし、彩香が心配する事ちゃうで。笠井がおるから大丈夫や。]      また頭をポンポンってされた。少し嬉しかった。               「そういえば、なんで先輩の事名字で呼ぶん?仲良かったんやろ?」     [同じ名前やから、まぎらわしいねん(笑)]   「先輩もせいやってゆーん?」          [それは俺の源氏名やで]            本名なんなん?とは聞けなかった。拓も自分から教えてはくれなかったから。             [本名なに?ってきかへんの?]         「…聞いて欲しくないかもしれんし。」      [はは(笑)物分かりのいいコやなあ!思った通りや。俺は大介やで。呼ぶん、大介にして]

    2007-07-16 02:35:00
  • 58:

    「大介?聖夜じゃなくていーん?」        [二人でいてるときは大介って呼んで。ややこしくてごめんやけど]     「わかった。…大介」  うんうん、と言って聖夜は笑っていた。      本名を教えてくれた。やっぱり拓は営業だったのかなと思った。                               [頂上着いたで!降りるでー!]         バタンとドアを閉めた。   夏だと言うのに、頂上は少し寒かった。      聖夜は、バックシートからパーカーを取り出してあたしにかけてくれた。

    2007-07-16 02:43:00
  • 59:

    「ありがとう」     聖夜は手をひいて、柵のある場所まで歩いた。   「うわあー!めちゃめちゃ綺麗!!」       柵から下を見下ろすと、いつか見たプラネタリウムの星みたいに、物凄い数の光りの点が輝いていた。                 [やっと元気なった。] 横を見ると聖夜が笑っていた。          「大介。ありがとう」              ふいに抱き寄せられた。 「え?!ちょっと…」  [ええから]      強く抱きしめられた。服から、香水の香りがした。

    2007-07-16 02:52:00
  • 60:

    離れようと少しもがいてみたけど、離してくれなくて、そのまま身を委ねた。             鼻に纏わり付く香水の香りにくらくらしながらじっとしていた。                   [彩香]        抱きしめられたまま名前を呼ばれた。       「なに?」       ぱっと体を離されて、手が頬をなぞる。      [俺と付き合って]   「え?!」       [今日会って俺の思った通りの女やと思った。俺の女になって。]      頬に触れていた手が首に回り、聖夜の整った顔が近づいてくる。       あたしは、避けなかった。

    2007-07-16 03:01:00
  • 61:

    唇が重なる。                  短いキスをした後、また抱きしめられた。      「…お願いします」   あたしは頷いた。    聖夜なら拓を忘れられるんじゃないかと思った。忘れさせてくれるとそう思った            [ありがとな。]    聖夜はにこっと笑って、頭を撫でてくれた。    目が合って、また唇が触れた。          口の中を舌が這う。あんまり長い間キスをしたので、苦しくなった。      「んっ」        唇を離して聖夜を見た。 聖夜はもう一度軽くキスして、首にキスをする。体がビクッとする。        [可愛いすぎ…]    聖夜の手が背中をなぞる。背中の開いたTシャツのせいで、大きくて熱い手が直接肌に触れていた。    Tシャツの中に手が入る。  手はお腹をなぞり、ブラジャーの上から胸に触れた。  「ちょっ…大介」    唇を唇で塞がれて、聖夜の手はブラジャーの下を這う。また体がビクつく。    [やべえわ。これ以上やったら押さえきかん]   手をTシャツから出して、ギュッと抱きしめられた。
    [好きやで。ほんま可愛い。]          優しい口調で言う。   幸せだと思った。

    2007-07-16 03:25:00
  • 62:

    [冷えてきたな。そろそろ戻ろか!]       「うん。寒い?パーカー着る?」          パーカーを脱ごうとすると、[ええから(笑)ほんま素直やな]        笑って言われた。                手を繋いで車へ戻る。  [さ。行きますか!]  エンジン音をたてて車が走りだす。         横からちらっと聖夜を見ると、あたしが見ている事に気がついて、なんやねんと頭をくしゃっとした。  「なにすんの!セット崩れるやん!」        ははっと聖夜は笑っていた

    2007-07-16 03:34:00
  • 63:

    [家どこやっけ?]   「ミナミの…」      道順を説明する。    車を走らせ、見覚えのある通りに出た。      「あ、この筋行ったとこ!」           信号待ちのときに言った。[んー…]       聖夜は何か考えているような声をだした。     「どしたん?」     [今日うち泊まりこん?明日学校?]       「…明日学校やけど、必修授業ないから大丈夫やで」もう少し一緒にいたかった            [ほんまに?]     聖夜が嬉しそうに言うから、あたしも嬉しくなった。            [ほな俺んち行きで!] 「ラジャァ♪」       二人で笑った。

    2007-07-16 03:45:00
  • 64:

    デッカイ液晶テレビにゆったりとしたソファーにガラステーブル。キッチンも広い。あまり使われてないのか生活感はなかった。広い洋室の中には広いベットとコンポやクローゼットがあった。         [汚くてごめんやで]  「全然綺麗やん!めちゃめちゃ広いし!感動ー」  [そーか(笑)]    聖夜はソファーに腰掛け、おいでおいでと手招きした。 ゆっくり歩いて聖夜の前に立つと、そのまま抱きしめられた。        胸に顔を埋めて     [安心するー。なあなあ、彩香胸どんくらい?]  「へ?!なんそれ!」  [やー触ったかんじデカイねんもん!何カップ?]   「えー…DかEくらい…?」[でか!細いのになあ] 「どーでもいいやん!」 恥ずかしくて体を離して聖夜から離れようとした。             聖夜は立ち上がってあたしの腕を掴んだ。     またチュッとキスをする。   [全部俺のもんやから] そう言ってあたしをソファーに倒した。

    2007-07-16 04:08:00
  • 65:

    さっきの出来事を思い出して恥ずかしくなった。  [大介、恥ずかし…]  「可愛いから」     首筋を唇で愛撫される。 体が反応してしかたない。今度は素早く手が胸に触れる。乳首を転がされて、ゆっくりとTシャツをめくられる。胸があらわになる。 聖夜もソファーに乗ってきた。胸を愛撫されながら、長いキスをする。       長い髪が胸元にかかり、口に含まれて優しく包まれた。           「あっ」        思わず声が漏れる。   愛撫は続く。      左手がオヘソをなぞり、ショーパンのベルトを外し、ボタンが外れた。        下着の中に手が入る。  ゆっくりと優しく撫でられたあと、割れ目に指が入ってきた。        「大介…やぁッ」    恥ずかしくて、つい口に出た。聖夜の手が止まった。            […ごめん、嫌?]   「え…嫌な訳じゃなくて…あの…」        [俺彩香抱きたい]   真剣に言われて、頷いた。「ん。大丈夫…」    [嫌やったら言ってな。すぐやめるから]     うん、と笑った。

    2007-07-16 04:27:00
  • 66:

    キスをされながら、聖夜の指があたしの中をゆっくり動く。          我慢出来なくて、声が出た。           [彩香…声かわい]   その声にまた体がほてる。指の動きは少しずつ激しくなる。         熱くなるのがわかる。              めくられたTシャツを片手でぬがし、めくられた下着を外す。                     また聖夜の舌が胸を這う。            呼吸が乱れて、目がぼやけてきた。        体が敏感になっていて、触られただけで跳ね上がる。            聖夜の呼吸も乱れていて、なんだか愛しくて、聖夜の頬に手をあてた。
    [彩香…いい?怖くない?]           「大丈夫っ」      聖夜は微笑んで、あたしをお姫様抱っこした。   [ベット行こうな]    抱っこされたまま聖夜を抱きしめた。

    2007-07-16 04:41:00
  • 67:

    名無し

    見てて、吐き気してきたわ、色ホストも、枕ホストも、本気マジで気持ち悪過ぎ…

    2007-07-16 04:47:00
  • 68:

    その夜あたしたちは一つになった。                                腕まくらをして貰いながら眠りについた。                 また夢を見た。     〈置いていかないで…〉 その声が頭の中に鳴り響いて目が覚めた。     悲しくて悲しくて悲しくて涙が出た。       横にはスヤスヤと聖夜が寝ていた。この夢を見たのは久しぶりだった。      喉が渇いて、リビングで何か飲もうとベットを出ようとすると、手を掴まれた。  [何処いくん]     聖夜が目を覚ましていた。「ごめん…起こした?ちょっとお水貰ってい?」  [冷蔵庫にジュースある。俺も行く]        起き上がってTシャツと短パンを履き、あたしにもTシャツを着せてくれた。    「ブカブカやね(笑)」  Tシャツはお尻の下辺りまであって、ワンピースみたいになっていた。       [おま…それ可愛い(笑)]           聖夜は嬉しそうに笑って後ろから抱きしめた。

    2007-07-16 04:55:00
  • 69:

    71さん不快な思いさせてすみません。性的表現を交えようか迷ったのですが、あったほうがよいかと思いまして。気持ち悪い思いをさせてすみません

    2007-07-16 04:59:00
  • 70:

    夕方になって、あたしは家に帰った。       夜に里菜がうちに来る事になっている。                  家に戻って、少し仮眠をとっていると電話が鳴った。                        【着信:拓】                  ………え?                               目を疑った。      なんで拓?                   連絡がとれなくなって4日め。拓から連絡が来た。

    2007-07-16 05:06:00
  • 71:

    「…もしもし?」    《彩香?今だいじょーぶ?》           「うん。…どしたん?」 《連絡出来んくてごめんな。ちょっと…親父が倒れて連絡出来んやった。》  「え?!」       《ごめん。》      「いや、いいけど大丈夫なん?!」        《うん。医者は治るって言ってた。》       「や、お父さんもやけど拓大丈夫なん?!」    《なんとか。ありがとう。あんなときに連絡出来んくなってごめん》     「いーよそんなん。」  《あの日、どっか遊び行こうって誘うつもりやってんけど、おかんから電話来て。遊び行って直接ちゃんと話しようと思っててん。ほんまごめん。》                 嘘なのか、本当なのか  もうさっぱりわからない
                携帯が里菜からの着信を告げていた。                   「あ、ちょっと今取り込み中やから、また電話してい?」          《全然いーでごめんな》             電話を切って里菜に切り替えた。

    2007-07-16 05:19:00
  • 72:

    名無しさん

    ずっと読んでます。色々気にする人もいるかもやけど、少しH系でも、キレイに書いてくれてるし、どんなんでもつつみかくさず、主さんが思うありのままの文章で、長くなっても完結まで、ぜひ欲しいです。とても楽しいからぜひ主さんのペースで頑張って下さい?

    2007-07-16 20:06:00
  • 73:

    名無しさん

    やばい!早く続きよみたい

    2007-07-16 20:35:00
  • 74:

    〔もしもーし?彩香あ?もーすぐ彩香んち着くわっ〕「分かったー待ってるね!」           頭の中は拓の事でいっぱいだった。                    お父さん倒れたって   会って話すつもりだったって本当?それとも嘘?  考えても答えはでない。                         ―…―…ピンポーン―…―…            家のチャイムが鳴った。里菜が来たみたいだ。                 〔昨日どうだったん?〕 話はすぐに昨日の出来事の話になり、聖夜と付き合う事にした。と里菜に告げた            〔そっか…よかったね!笠井先輩もあいつはいい奴だって言ってたよ!〕   拓はいいの?と里菜は聞かなかった。気を使ってくれたんだと思う。                 〔あたしも報告あってさ、…笠井先輩と付き合う事になった〕        「えーーー?!」    思わず大声が出た。   〔あたしから告白してん。誰にも言ってかったけど、気になってたんよ(笑)〕「そっかあ!おめでとう!よかったね里菜っ!」  〔ありがとう!お互いがんばろうね!〕

    2007-07-17 00:24:00
  • 75:

    里菜もあのあとずっと遊んでいたらしく、酷く寝不足だったので、すぐに布団をひいてあげた。     里菜と先輩の馴れ初めを聞いてちゃかしたりしていたら、里菜はいつのまにか眠ってしまっていた。                           ベランダに出て煙草を吸いながら考えていた。                拓の事。        聖夜の事。                   携帯をにぎりしめ、発信ボタンをおした。                 【発信:拓】

    2007-07-17 00:29:00
  • 76:

    名無しさん

    ―…―…プルル…―…―…―                        コール音が鳴る。                 《はい》        拓の声が聞こえた。   「もしもし?拓?」   《うん。どしたん?》  「さっきはごめんね。話の途中で。あたしな、拓に言わなあかん事あんねん。」            覚悟は決まっていた。  《…なに?》      「あたし、彼氏出来てん。やから…」                   《そっ…か。彩香、律儀やなあ。じゃあ、そんなに前みたいに連絡とったら、彼氏サンに悪いなあ…。》  「そう…やね。」                《たまには連絡してい?》            「うん。」                   《ありがと。また連絡する。》          「うん」        《親父の事、俺の事、心配してくれてありがとうな。じゃあまた!》

    2007-07-17 00:45:00
  • 77:

    名無しさん

    ―…―…プルル…―…―…―                        コール音が鳴る。                 《はい》        拓の声が聞こえた。   「もしもし?拓?」   《うん。どしたん?》  「さっきはごめんね。話の途中で。あたしな、拓に言わなあかん事あんねん。」            覚悟は決まっていた。  《…なに?》      「あたし、彼氏出来てん。やから…」                   《そっ…か。彩香、律儀やなあ。じゃあ、そんなに前みたいに連絡とったら、彼氏サンに悪いなあ…。》  「そう…やね。」                《たまには連絡してい?》            「うん。」                   《ありがと。また連絡する。》          「うん」        《親父の事、俺の事、心配してくれてありがとうな。じゃあまた!》

    2007-07-17 00:48:00
  • 78:

    励ましてくれた聖夜を、好きだと言ってくれた聖夜を無下に出来なかった。              拓はなんだか淋しそうだった。そう感じただけかも知れないけれど。                 聖夜を裏切りたくない。あたしが今守るべきは聖夜だとそう言い聞かせた。              色営業とか枕営業なんてものがどんなものなのかわからない。あたしに色をかけているのか、すべての優しさが営業なのか、あたしには知る術もない。                あたしは今聖夜の彼女なんだ。

    2007-07-17 00:57:00
  • 79:

    聖夜は優しかった。   レギュラーでホストをしている訳ではないみたいで、平日にも会って遊びに行ったり、聖夜の家に泊まりに行ったりした。                                拓からは、たまにメールが届いていた。       【受信:拓】      元気してるー?彼氏さんと仲良くやってるん?               だいたいこんな内容だった。           仲良くやってるよ。拓は元気?、と返信すると   ええなあ!俺はボチボチやってるで!                    普通に返信が来た。               学校、バイト、サークル活動。友達ともよく遊んだ。   幸せだけど穏やかな毎日が過ぎ、季節は夏休みに入ろうとしていた。

    2007-07-17 01:07:00
  • 80:

    名無しさん

    つづき〜みたいわぁ〜??

    2007-07-17 02:21:00
  • 81:

    85さんありがとうございます?出来るだけ早く更新するのでよかったら読んで下さい?

    2007-07-17 02:30:00
  • 82:

    夏休みに入って、あたしは居酒屋以外のバイトを捜していた。         聖夜に相談すると、
    [俺キャバとかしか紹介したれんわ(笑)]     と言われた。      聖夜は冗談混じりに言っていたけど、入りたい日に入れるし、居酒屋終わった後も出来るし、何よりお金が貯まる。        父親がいなくて家計はさほど裕福ではないのに大学に行かせてくれたお母さんに楽をさせてあげたかった。            聖夜に、紹介して欲しいと頼んだ。        […俺的にはやってほしないけど、親に楽さしたいとか言われたらなあ…。夏休み限定やで?俺も10月いっぱいでホスト辞めるし、一緒あがろーか。知り合いの絶対安全なとこ紹介するわ]            渋々ながらも了承してくれた。                      [明日面接行こうか。俺仕事入る前なら時間あるし、一緒行くわ]      「聖夜ありがとう」

    2007-07-17 02:42:00
  • 83:

    名無しさん

    次の日、聖夜に付き添って貰って面接に言った。  友達のお母さんが、地元でスナックを経営していて、たまに遊びで手伝いをしたくらいしか経験がなかったから怖かったけど、聖夜が付き添ってくれていたから少し安心していた。                 【シエル】というキャバクラだった。          ドアを空けると、スーツを着た30前後くらいの男の人が出迎えてくれた。     〔お-聖夜久しぶり。〕 [斉藤さん、お久しぶりです。彩香、挨拶し]   「は、はじめまして」  緊張で声が裏返る。   [緊張しなくていーよ。聖夜の紹介やし、面接する気もナイから。予想通りかわいいしね。聖夜、B+で…いや、A-にしとくか。]  [わかりました。俺の女なんで、よろしく頼みます。夏休み限定なんで]   〔分かってるよ。任せてくれ〕                      源氏名は聖夜に合わせて
    聖羅に決まった。                [ドレスとか用意してあるんで。彩香、コレ]     聖夜に渡された紙袋を見ると、黒とピンクと白のドレスが三着程入っていた。   [入店祝い(笑)]   「こんなの貰えないよ…」[阿呆みたいに稼いで、返してくれたらいーよ]  「絶対返すからね!」  ケラケラ笑って、聖夜は帰っていった。

    2007-07-17 03:06:00
  • 84:

    斉藤さんから簡単な説明を受けて、今日はとりあえず10時から1時迄の3時間働く事になった。      聖夜がくれた白のドレスを着て、化粧を直した。               待機室に座っていると、綺麗な女の子達がたくさん入ってきた。       各々話をしたり携帯をいじったり、化粧を直したり髪を巻いたり。      少し息苦しかった。   〔聖羅ちゃん!〕    斉藤サンに呼ばれた。   おどおどしながら行くと、〔まずは1番テーブル行こうか!〕         と、現場の作業着を着た若い男の人が2人ドンと座っているテーブルを指さした。             「はじめまして、聖羅です!」          にこやかに笑って席に着く。           次いで女の子がもう一人席につき、話をはじめた。             かなり気さくな人で、男友達と話すようにして時間が過ぎた。        訳のわからないうちにぐるぐる席をまわり、気付けば時間は12時半だった。

    2007-07-17 03:54:00
  • 85:

    〔聖羅ちゃん、最後あそこの席行こうか。まりあちゃんのお客さんだからヘルプね。〕          中年のサラリーマンの人が座っていた。                     酷くだんまりとしていて、いくら話を振ってもなんの反応も示してくれない。 「お疲れですか?」   〔煩い。〕       「すみません…」                困ってどうしようとアタフタしていると、突然その人が胸を触ってきた。     気持ち悪い!!     だけど文句も言えない。怒らせたらいけないと思った。           足から股に手が伸びる。 「あ、あはは。ダメですよー!」         無理矢理笑顔を作って手を掴む。                     〔失礼します。聖羅ちゃんお願いします〕     斉藤さんが呼んでくれた。〔大丈夫?初日からごめんね〕          「…大丈夫です。いろいろとありがとうございました」           〔今日は体験入店だから、また少し早い時間に来てね。時給とか、詳しく話すから〕          名刺を頂き、店を後にした。

    2007-07-17 04:08:00
  • 86:

    憂鬱な気分になりながら、あたしなんかじゃ無理なのかなと思っていた。   簡単に夜の世界に飛び込もうとしていた自分が浅はかに思えた。                   【発信:聖夜】     電話をしようと携帯を操作したが、仕事中だ。電話をかけるのを躊躇った。              トボトボ帰っていると、携帯がメールを受信した。               【メール受信:拓】     元気してるー?何してるん??                      なんだか久しぶりだった。            【メール送信:拓】     久しぶり!今キャバの体験行ってその帰り…                 メールを送信したあとすぐ、電話が鳴った。                 【着信:拓】                              どうしたんだろう?取ろうか迷ったけれど、結局通話ボタンを押した。

    2007-07-17 04:18:00
  • 87:

    《もしもし?》     拓の声を聞くのは、あの夜以来だった。                              「どしたん?」     《なんでキャバの体験行ってるん?》        「紹介して貰ってん。」 《誰?スカウトの奴?》   「ううん。大介。あ、聖夜。拓知り合いでしょ?」 《え?なんで?聖夜の事知ってるん?》      「クラブで会ってん。」  《え?!聖夜に?!なんでなん?!てか何処紹介して貰ったん!》                  「え?シエルってとこ。あたしキャバとか向いてないんかな…触られんのとか上手い事交わせんし…」    《触られたん?…だいじょーぶ?》        「うん…でも、周りの女の子上手く交わしてたし、あたしが駄目なだけやねん」《んな事ないで。初めてですぐそんなん出来へんて。悪くないねんから、自分責めんとき。》      「…うん」       《無理なら辞めたらいいねんで?聖夜に言いづらいなら俺ゆうたるし。》               「大丈夫。自分が決めたんやし、自分でゆわな…ありがとう…」                   《そか…彼氏さんは嫌がらんかったん?》                 「あ…あんな、今付き合ってるん、聖夜やねん」

    2007-07-17 04:36:00
  • 88:

    《……聖夜と付き合ってるん?》                     突然拓の声が重たくなって、言ってはいけなかったんだと思った。                  「あ…他の人に言わんといて!口滑った…ごめん」             《言わへんよ…。けど…》「え?けど?」     《いや…。…なんかあったらいつでも言いや?ほんまに。》                     「う、うん。ありがとう」            なんか…どうしたんだろう。様子がおかしい。               ありがとうと何度も伝えて電話を切った。

    2007-07-17 04:44:00
  • 89:

    朝方聖夜から連絡があった。           [お疲れ!昨日どうやった?]          「あ…うん、ちょっと迷ってる」         [迷ってるって何を?] 「キャバで働く事…」   [とりあえず今からうちこん?]         [うん、分かった]               準備をして、聖夜の家に向かった。

    2007-07-17 13:31:00
  • 90:

    仕事終わって疲れている聖夜に、お味噌汁でも作ろうと思って途中スーパーに行って材料を買った。    二日酔いにはアサリがいいとテレビで見た事があったので、アサリのお味噌汁にしようと思った。                   501号室のインターホンを押す。[入ってー]      「お邪魔します」    部屋に入ると聖夜がソファで煙草を吸っていた。   「お仕事お疲れ様あ!アサリのお味噌汁飲む?作ろうと思って買ってきたで!」 ビニール袋を片手に、笑顔で言った。手料理を作るのは初めてだから、ウキウキしていた。                      [そんなんえーから、こっち来て]                    そんなんって…。喜んでくれると思ったのに、冷たく言われてショックを受けた。             「うん…」
    聖夜の隣りに腰掛けた。

    2007-07-17 13:43:00
  • 91:

    [キャバで働くん辞めるん?]           怒っているようだった。 昨日家に帰って考えてた事を聖夜に伝えた。                「毎日入るんは辞めようと思う…。でも、1日で辞めたら紹介者の大介の顔も潰れるし、週1、2回くらいで入ろうかなと思う。昨日帰ってから斉藤さんにも伝えた。こっちは構わないから、聖夜に相談してみなって。嫌だと思ったんなら無理して働かなくていいって言って下さったから…大介ごめんなさい…」                [金はどーすんの?]  「昼間働くとこ捜して、居酒屋と掛け持ちしようと思う…。週2回でも、キャバ入ったほうがィィ…よね?せっかくドレス買ってくれたのに本当にごめんなさい…」             聖夜のため息が聞こえた。

    2007-07-17 13:55:00
  • 92:

    [お前俺の事好き?]              「は?」        突然聞かれて間抜けな声が出た。         「もちろん好きやで」  そう答えた。                  [ならキャバ頑張れや。]             訳がわからなかった。              「キャバやる事と好きな事となんの関係があるん?」             [俺、10月の終わりに店辞めるから、イベントやんねん。それに来て欲しい。俺の最後見届けて欲しい。やから、キャバ頑張って。俺と一緒にがんばろや]                ますます訳がワカラナイ。

    2007-07-17 14:03:00
  • 93:

    「イベントに来てって、大介のホストクラブに来てって事やんな?なんでキャバやらなあかんの?」                   [俺の客がシャンパンタワーしてくれるゆーてんねんけど、最後は好きな女に1番に祝って貰いたい。]                「………」                   [最後くらい、俺の我が儘聞いて欲しい]     手を握られた。                 「…夏休みのバイト代で頑張るから、それじゃああかん?昨日めっちゃ触られて、極力キャバはしたくないねんけど…」        [触られんのなんかある程度しゃあないやん?たかがそんなんで嫌なるんか]

    2007-07-17 14:11:00
  • 94:

    セツナ

    >>76の者です??更新楽しみにしてます??また時間ぁったら更新して下さぃ??ぉもしろぃので頑張って下さぃ?

    2007-07-17 14:21:00
  • 95:

    もう何も言えなかった。             《…触られたん?だいじょーぶ?》        《無理や思うなら辞めたらいいねんで?》                 拓の声を思い出した。              ある程度しゃあない。その通りかもしれない。けれど、聖夜は大丈夫だったかと頭を撫でてくれると思っていた。         俺の事好きなん?って、あなたはあたしの事好きですか?                                  [よし、がんばろな?俺も頑張るから]      頷くしか出来なかった。

    2007-07-17 14:22:00
  • 96:

    セツナさん何度もありがとう?うれしいです!頑張ります!ありがとう!

    2007-07-17 14:25:00
  • 97:

    聖夜は上機嫌になって  [あ!味噌汁作ってやあ!彩香の飯食いたい!]  にこやかに言った。               「あ…うん」                  料理なんかしたい気分じゃなかった。とにかく家に帰りたかった。あたしの体なのに、触られて嫌だと感じるのはあたしの心なのに、[しゃあない]と簡単に言う聖夜に嫌悪感を覚えた。ショックだった。聖夜はあたしを大切に思ってくれてると信じてた。       頑張ってきた聖夜を祝ってあげたい、助けてあげたいという気持ちはもちろんあった。あたしが我慢さえすればいいのだろうか?                          「ご飯またでい?今日は帰えるわ…」       バックを取ろうと立ち上がると、後ろから抱きしめられた。

    2007-07-17 14:34:00
  • 98:

    [無理ゆってごめんな。でも俺彩香がほんまに好きやからな、彩香も俺のために頑張って欲しいねん。彩香なら頑張ってくれる思うから。ほんまにごめん]              「……分かったから…離して。」         そんな言葉聞きたくない。            振り返ると、聖夜が哀しそうな顔をしていた。   [俺の事好きやないん?]            なんだか自分が悪いような錯覚に陥る。普通に考えたらあたしは間違ってないのに、好きなのに我慢も出来ないのかと、責められている気分になった。                「ごめん。あたしが悪かった」          謝る事なんてないのに、謝罪の言葉が口をついた。

    2007-07-17 14:41:00
  • 99:

    セツナ

    いえ?毎回お返事ありがとうございます?書いてる途中やのに邪魔しちゃってすみません。大変やと思うしセツナへのお返事は返さなくても大丈夫なんで気にしないで下さい??あんまり何回も文章だと読んでる皆さんもいる事だし、これからはアゲるだけにしときますね?とても続き気になりながら読ましてもらってますので???

    2007-07-17 14:45:00
  • 100:

    また抱きしめられて、キスをされた。        服の中を聖夜の手が動く。スカートがめくられ、下着に手が入る。                    「ちょ…やだ!」    聖夜は止まらなかった。 リビングの床に倒され、服を脱がされ、脚を開かされた。                       「大介、やめて!」   抵抗していると、手を押さえられ、聖夜の体がのしかかり、身動き出来なかった。                       「やだ…なんで?なんでこんな事するん?」    [彩香…好きやで]               「んっ」        大介が中に入ってきた。 ゴムもつけてない。いつもちゃんとしてくれてたのに            涙が出た。これじゃレイプと大差ない。悲しくて怖くて、あたしの気持ちなんかお構いなしに聖夜は快感を味わう。                     なんで?なんで?!               あたしの涙を舌で掬い、聖夜はそのままのぼりつめた

    2007-07-17 14:54:00
  • 101:

    ゴムを付けてない。あたしの中に入ったままだった。                        怖くて、悲しくて、立ち上がる事が出来なかった。             [彩香…ごめん。でも俺彩香の事好きやから。]  座り込むあたしを抱きしめながら、優しい声で呟いた            怖い。下腹部痛い。帰りたい。                      「帰る…」                   服を拾い、急いで着替えて玄関に向かった。    聖夜が追い掛けてきた。 ドアノブに手をかけると、腕を掴まれ、聖夜のほうを向かされた。       頬を触る。       ビクっと後ろに後ずさると[…キスしてい?]    と聞いてきた。     何も答える気にならなかった。          優しくキスをされた。               玄関を飛び出した。

    2007-07-17 15:07:00
  • 102:

    名無しさん

    いつも、痛くないかとか、怖くないかとか、嫌じゃないかとか、気を使ってくれていたあの優しい行為とは物凄い違い。                  あんな事が出来る人だとは思わなかった。                 さんさんと太陽が照り付ける中、呆然としながら家に帰る。                     あの発言、あの行動。信じられなかった。                 家に着き、ソファに座り込むと、中だしされたという事実もあたしにのしかかってきた。                     「どうしよう…」    先月の生理から排卵日を計算すると、今日は危険日だった。

    2007-07-17 15:19:00
  • 103:

    どうしようもなく怖くなって、里菜に電話をした。 コール音だけが空しく鳴っている。                     麻美も緑も、美里も誰も出なかった。                   携帯を投げ付け、ソファにうずくまりながら考えていると涙がまた零れた。               泣き疲れて、いつの間にか眠りに落ちた。

    2007-07-17 15:24:00
  • 104:

    〈置いて行かないで!あたしたちを置いてかないで〉                        頭がガンガンした。割れるような痛みの中目を開けると、夜の11時になっていた。            携帯のバイブが鳴っている。                       【着信:20件】                 携帯を開くと、里菜から3件の着信。麻美と緑から一回ずつ。美里からも2件の着信。何故か、笠井先輩からも着信がきていた。  聖夜にいたっては、着信12件。                     【メール:12件】     聖夜からのメールが半分を占めていた。                   聖夜からのメールは開かなかった。                     また涙が出た。                             1番最近の、つまりさっき来たメールは、拓からだった。

    2007-07-17 15:34:00
  • 105:

    【メール受信:拓】     おはよー!あれからキャバの事どーなったん?聖夜に言えた?                     下腹部が痛んでトイレに駆け込むと、出血していた。             怖くて怖くて怖くて   もう頭の中がパニックだった。                       ―…――プルルル…―…―…                        《もしもし?》     「たく…」       泣きじゃくりながら電話をかけた相手は拓だった。             《どーした?!》                全てを打ち明けた。聖夜の立場を思いやる余裕なんか、今のあたしにはなかった                        《そか…。辛いやろう。怖かったな。よお頑張ったな。体はだいじょーぶなん?他に痛みはないん?》              「ん…痛みはない。けど、子供出来てたら…ど…しよ」           拓の優しい声にまた涙がでてきた。                    《時間経たんとそれはわからんやろうから、なんともいえんけど…とりあえず明日朝病院行こう。店終わってからならついていけるから。》                     「大丈夫…一人で行ける。ありがとう」      拓は関係ないのに、迷惑かけたくなかった。                《一緒行くから。一人じゃ心細いやん。》     「ありがとう拓」    《気にすんな》                 心からその優しさが嬉しかった。                     《キャバの事は、俺が話しつけるから、心配しやんと辞めーよ》        「…うん。ありがとう…」            《聖夜の事は、俺が話しにいく訳にいかんし、彩香が決めるしかないけど…別れるん?》                    「…とりあえず話しに行こうと思う。」      《せやな。でも電話にしーよ。会ってまたなんかされたらあかんし。》                「でも、昨日の聖夜おかしかったし、あたしが悪いんかもしれんし。」

    2007-07-17 15:59:00
  • 106:

    《悪い訳ないやん。触られんの嫌なん当たり前やし、行きたくないのに無理にイベントに行かんでいい。こんな泣きじゃくるくらい嫌がるんを、無理やりキャバやらして、来いってゆー方がおかしいから。》                 電話の中で、店に行きたくないと泣いていたのを思い出す。                     「好きなら行ってお祝いしてあげたいと思うよね…あたし彼女なのに」                《彼女を店に呼ぶ事については別にいいと思うけど、それはその娘が嫌がらないって前提あってやから。彩香はおかしくないから、心配することない》                拓の言葉に安堵する。              「拓、突然電話してこんなこと話してごめん。本当ありがとう。」      全然いーでと拓は笑う。いつでも連絡しといでって言ってくれた。                              着信が入る。画面を見ると、聖夜から。                  「聖夜から電話きた。やっぱり会って話してくる。逃げるような事するのは、聖夜にも失礼やし。」               《ほんまに、律儀やなあ。ブチったったらえーのに。まあ、やから惚れてんけど》                       「なあにそれ…」                《いやほんま。とりあえず明日9時くらいには店終わると思うから、病院行ける準備だけしといてな》              「ありがとうほんとに」             本当に本当にありがとう。

    2007-07-17 16:20:00
  • 107:

    セツナ

    ?

    2007-07-17 19:19:00
  • 108:

    名無しさん

    age

    2007-07-18 19:43:00
  • 109:

    名無しさん

    ァゲ??+゚ぉもろぃ?

    2007-07-19 19:45:00
  • 110:

    名無しさん

    あげ??

    2007-07-19 21:23:00
  • 111:

    みなさんありがとうございます?あげて下さってありがとう?

    2007-07-19 23:31:00
  • 112:

    聖夜に発信をする。               …―…―プルル…―…―…―            [もしもし?!]    「もしもし?電話出れんくてごめんね」                  [いや…本当にごめん。酒で酔っ払ってて…酒のせいにしたらあかんか…]              「もういいよ。」    あたしは答えた。    [許してくれるん?]              「……。明日仕事終わってから会える?話ある。」             [わかった。終わったら連絡する]        「うん。そんとき話すね」                        電話を切った。     聖夜がくれたドレスを準備する。お金を下ろしにコンビニに行った。

    2007-07-19 23:44:00
  • 113:

    2万円お金を下ろした。聖夜がくれたドレスがいくらするのかあたしにはわからないけど、足りなければ、後々返すつもりでいた。              話す事はたくさんある。             拓が病院についてきてくれると言っていたけど、仕事終わって疲れているのに申し訳ないから、聖夜と話をする事を理由に断るつもりでいた。        迷惑ばかりかけられない。            好きだと言ってくれた拓に聖夜との話をしてしまったのにも、罪悪感が募っていた。                      【メール送信:拓】     明日聖夜が仕事終わってから話する事になった。話がどれくらいかかるかもわからないから、病院一人で行くわ!いろいろありがとう。迷惑かけてごめんね。             保険証の準備をしてベットに入る。         心配をかけてしまった皆になんでもない、大丈夫とメールを送る。        子供が出来ていたらと思うと怖かったけど、覚悟を決めなければ。                  ずっと寝ていたのもあってなかなか眠れなかった。

    2007-07-19 23:58:00
  • 114:

    携帯が震える。     メールを開くと、拓からだった。                      【メール受信:拓】     そうかあ。わかった。とりあえず聖夜と話終わったらまた連絡ちょうだい。待ってるから。                   ありがとう。拓の優しさが胸に浸みた。

    2007-07-20 00:05:00
  • 115:

    携帯の着信音で目が覚めた。                       【着信:聖夜】                 「はい。」       [仕事終わった。]   「わかった。今から準備してすぐ行く」                  用意していたものをすべて持ち、サングラスをかけて化粧もせずに家を出た。               聖夜の家に着いてインターホンを鳴らすと、足音が聞こえて扉が開いた。                  [おはよう]      疲れた顔をした聖夜がいた。           「おはよ。朝早く疲れてるのにごめんね」                 聖夜は首をふり、リビングに入っていった。     靴を脱ぎ、あたしも後についてリビングに入った。

    2007-07-20 00:12:00
  • 116:

    [話ってなに?]    煙草をふかして聖夜が言う            「そのまえに、これ。」 ドレスが入った紙袋と2万円を入れた茶色の封筒を渡した。                      怪訝そうに紙袋と封筒を受け取り、どういうことだとあたしを見た。                 「もう貰えんからドレス返す。ドレス一枚着てもーたからそのお金。足りひんかったらまた返すから。」   [なんやそれ]     「ごめん別れよ。」               拓との電話を切ったあとからもう決めていた。               [なんでなん?]    低い声で聞き返す。               「聖夜があたしにキャバして頑張って欲しい気持ちもわかるけど、あたしはそれはおかしいと思う。」               [なんで?]                  「あたしがキャバ嬢してても、あたしはそうは思わへんから。聖夜にホストやらせてまで祝ってほしいと思わん。」                      [それはお前がやったことないからやん]                 「そうかもしれへんけど、今はそうは思えんのよ。」

    2007-07-20 00:25:00
  • 117:

    [結局お前俺の事好きちゃうかってんやん。綺麗事ゆーなや。]       怒りを帯びた声が耳をつく。           「そんなに来て欲しいなら、イベントのお祝いは行くわ。それでいいんやろ?」 [なんやそれ。そういうことじゃないやろ。]   「そういうことやろ?」             もう理解しあえない。キャバやらなくても、あたしの精一杯でお祝いしてあげたいという気持ち位あたしにだってあった。そのために買いたいものを我慢する事だって聖夜のためならもちろんしたかった。                 [普通のバイトじゃそんな稼げへんからキャバやったほうがいいでって言っただけやろ!]         怒りをあらわにしてまくし立てる。                    「そのことだけやない」 [無理矢理やった事って言いたいん?]      「あんなこと好きなコに出来んよ。」       [好きやからやん!お前が祝うん嫌やゆーから心配になってんやろが!]               「全部あたしが悪いん?」[そうやろが!]                哀しくなった。もう無理だと思った。

    2007-07-20 00:38:00
  • 118:

    「…もうわかった。あたしが悪いわ。あたし病院行かなあかんから、もういいから別れたい。」     涙声になった。                 [なんで病院行かなあかんの?]         涙声に気付いたのか、優しい声で言った。                 「…産婦人科行かな」              [行ってどないするん。まだわからんやろ]    「いつ頃わかるんか聞いてくる…」                    [てか、別れて子供出来たらどないするん?下ろすん?]                      よくそんな事軽々しく口に出来るね。あんたの子供なのに。なんで下ろすなんて            「聖夜はどうしたいん?」聞いたけど、なんとなく答えは見えていた。                [下ろすしかないやろ…お前まだ学生やし…]

    2007-07-20 00:46:00
  • 119:

    涙が溢れた。予想はしていたけど、あまりの身勝手さに悔しくなった。    あたしが悪いのかもしれないけど、それでも、その答えは聞きたくなかった。             「…バイバイ。」     泣きながら、それだけ言った。          帰ろうと立ち上がると  [待てよ。俺は別れへんからな。俺はお前好きやってゆってるやん…]                走って玄関を出た。   [別れへんからな!]  ドアが閉まる前に聖夜の声が聞こえた。

    2007-07-20 00:53:00
  • 120:

    強要されてするのと、自分がしたくてするのでは訳が違う。そのことが聖夜にはわからないのだろうか。 あんなにキャバやる事に、イベントでお金を使う事に固執されたら、あたしだって心配になる。       【色枕営業】その言葉が頭をよぎる。                   子供をおろすしかないと言われた事も、酷くショックだった。病院に着いて行こうかと言う発言さえ聖夜の口から聞けなかった。関係のない拓さえ言ってくれたのに            涙がとまらない。                哀しい。                    淋しい。                                【メール送信:拓】     話終わったあ。今から病院行ってくる。                  歩きながら拓にメールをした。

    2007-07-20 01:03:00
  • 121:

    拓からすぐに返信が来た。【メール受信:拓】     聖夜と行くん?                 【メール送信:拓】     違うよー                    【メール受信:拓】     今どこ?                    【メール送信:拓】     難波駅やで                   【メール受信:拓】     待っといて!すぐ行く!             驚いて、いいで!悪いわとメールをしたが返って来なかった。                     また迷惑かける。聖夜と一緒だと言えばよかった。 罪悪感に押し潰されそうになっていると、電話が鳴った。                      【着信:拓】

    2007-07-20 01:12:00
  • 122:

    「…はい」                   《もしもし?今店出たからすぐ行くから、ちょっと待っててなあ。だいじょーぶ?》                      「ごめんなあ…ほんまにごめん。迷惑ばっかりかけるなあ」         《俺が勝手しとおだけやからー(笑)》      電話ごしに笑い声が聞こえた。                      気持ちが少し穏やかになった。                      《すぐ行くからなー》              電話が切れてしばらくすると、見覚えのある姿が走ってくるのが見えた。

    2007-07-20 01:19:00
  • 123:

    息を切らしながら、待たしてごめんなと拓は言った。            「全然いいで…ほんまにごめん。ありがとう」   《いいえ!ほな行こうか》            拓と一緒に病院に歩いた。《聖夜とどーやった?》 「…別れたいって言ったけど別れへんって言われた」            《そーか…付き合ってくん?》          「今度店行ってくる。その後また話すつもり」   《聖夜の店行くん?》  「うん。」       《そーか…。》                 病院に着いて、待合室で名前が呼ばれるのを待った。

    2007-07-20 01:32:00
  • 124:

    〔坂下彩香さん2番へどうぞ〕          名前を呼ばれて立ち上がる。           「いってくるね」    《いっといでー》                拓のおかげだと思うけど、なんだか怖くはなかった。            診察室に入ると、優しそうな女医さんが待っていた。            〔今日はどうされましたか?〕          「あの…おとといに…その妊娠したかもしれなくて」            〔一昨日ですか…一応尿検査だけしましょうか。まだわからないですけど念のためね。生理はほぼ決まった間隔ですか?〕     「はい…。」      〔前の生理はいつ来ましたか?〕                     日にちを言うと、排卵日と被ってますねと言われた。            やっぱり…。      「いつ頃わかりますか?」            〔そうですね…三週間後またいらしてください。とりあえず今日は尿検査のみしておきますね。〕    そう言われて看護婦さんに案内され、コップを提出した。

    2007-07-20 02:25:00
  • 125:

    〔坂下さん〕      再度名前を呼ばれて診察室へ入る。                    〔やっぱりまだわかりませんね。三週間後に来て下さいね。〕        「わかりました。子供が出来ていた時のために何か気をつける事ってありますか?」                      女医さんは驚いた顔をした。           〔そうね。煙草やお酒は辞めて下さい。激しい運動もね。〕         微笑んで下さった。               診察室を出て待合室に向かう途中、お腹の出た女の人や小さい子供の手を引く女の人とすれ違った。   みんな傍には誠実そうな男の人が寄り添っていた。

    2007-07-20 02:33:00
  • 126:

    あたしと拓もこんな風に見えるのかなと思った。              誰かに見られたら拓は凄く困るのに、一緒に来てくれたことに改めて感謝した。同時に、甘えてしまった自分を情けなく思った。              待合室に入ると、拓は座りながら寝息をたてていた。            疲れてるのにごめんね。             起こさないように静かに横に座り、心の中でつぶやいた。

    2007-07-20 02:38:00
  • 127:

    会計を済ませてから拓を起こそうと名前を呼んだ。             《ごめん俺寝てた?!どーやった?》       慌ててる拓を愛おしく思った。          「やっぱりまだわからんって。三週間後に来てって言われた。」       《そか。じゃあまた三週間一緒来ような。》                胸が痛んだ。                  「…拓。ほんとにありがとう。こんなとこ誰かに見られたら困るのについてきてくれてほんまにありがとう。その気持ちだけで十分やから、もういいで…」  病院から出ながらそう伝えた。                      《困ったときはお互い様やで。》         八重歯をだして微笑んでくれた拓を見て泣きそうになった。

    2007-07-20 02:47:00
  • 128:

    タクシーを拾って、拓は家まで送ってくれた。                 《また連絡するな。》  タクシーを下りる時に言われて、ありがとうと何度も伝えた。                      拓を乗せたタクシーを見送って家に入った。                  携帯の電源を入れると皆から心配メールが来ていて、三週間後結果が出たら皆に言おうと決めた。                 聖夜からもメールが来ていた。           【メール受信:聖夜】    もう一度話合おうや。納得行かん。別れたくない。連絡待ってるから                 三週間後連絡する、とメールを返した。                   別れる以外ありえないけれど、話はすべて結果が出てからだと思った。

    2007-07-20 02:58:00
  • 129:

    皆の優しさに涙が零れた。            「ありがと…。」                〔何ゆってるんよ…。彩香…怖かったなあ…そんな事する人やと思わんかった〕里菜も泣いていた。               〔子供出来てたら…産むん?〕                      「産むつもり…。」               〔後悔せえへん?〕               「うん。どんなカタチで出来た子供でも、聖夜におろすしかないって言われても、それでもこの子はあたしの子供やもん…」                 〔応援するからな!〕  わんわん泣きながら里菜は言ってくれた。                 「あり…がと…」    里菜大好き。      皆大好き。       支えてくれてありがとう。

    2007-07-20 17:03:00
  • 130:

    里菜と別れて、家に戻る途中拓から電話があった。             《よっ!》       「ははっおはよお!」  《明日病院行くやろー?お供するからなっ》    「ありがとう!お願いしまーす!」                    また拓がついてきてくれる。やっぱり結果を知るのは怖いけれど、怖がりたくなかった。        〔御懐妊です〕     そう言われた時に、落ち込む事は赤ちゃんに失礼だと思ったから。      「待っててんで」    って喜んであげたかった。            もし出来ていたらママに話さなくては。                  でも、早くに病気で父親を亡くし一人で子供を育ててきたママなら、分かってくれる気がしてた。                明日…。                    全てがわかる

    2007-07-20 17:16:00
  • 131:

    もう季節は8月下旬。まだ蒸し暑い日々が続く。              寝苦しさで目を覚ますと、時計は8時を回っていた。            大きく欠伸をして    顔を洗って       きちんと朝食をとる。              化粧をして着替えていると拓からメールが来た。               【メール受信:拓】    おはよう!10時半には行けると思う!また連絡する!                       準備を終えてもまだ9時半だったので、拓との待ち合わせ前に少し散歩でもしようと家を出た。

    2007-07-20 17:24:00
  • 132:

    暑いけれどすがすがしい気分だった。                   まだ開店しない商店街を通り、朝の通勤に急ぐサラリーマンやOLさんを横目に、ゆっくり一人で歩いていた。              眩しいくらいにいい天気。            雲一つない空。                 歌でも口ずさみたい気分だった。                                 ふと前を見ると、髪色の明るいスーツを着た男が2人、前から歩いてくる。   サラリーマンには見えないし、ホストかなあと思っていた。             [彩香!!!]                             聖夜だった。

    2007-07-20 17:31:00
  • 133:

    一瞬にして朝の散歩は後悔へと変わる。                  家に居ればよかった。              ツカツカと、尖んがった白い革靴を鳴らして聖夜が近付いてきた。                    [何してんねん。俺の連絡全部無視してからや]              あたしの前に立つなり声をあげて怒鳴る。明らかに怒っている。                   「…ごめんナサイ」     それだけ声を振り絞った。            体が強張って動かない。             [ちょっと話しよや。こっちこいや]       腕を掴まれて細い路地に連れてかれる。                  やだ。なんか怖い!               逃げようと手を振り払うと                        パーン                                  左頬に痛みが走った。

    2007-07-20 17:41:00
  • 134:

    え………?                   驚いて聖夜を見上げると、哀しそうな顔をしていた。                        [殴らせんなや…]               言われてやっと手をあげられた事実に気がつく。                          呆然と聖夜を見ていた。             [ほんまに俺と別れる気なん?]                                 言葉がすぐに出て来ない。            暗く湿っぽい路地には人気は全くない。                  遠くで人の声が聞こえる。

    2007-07-20 17:47:00
  • 135:

    [別れるつもりなんかって聞いてんねん。]                はっと我に帰ると、聖夜があたしを見ていた。               「…別れたいです…。」             小さい声しか出なかった。                        パーン                                  また左頬に痛みが走った。口の中に血の味が広がる                         この人は誰?                  あの優しかった聖夜が              こんな事するわけない                          ぐいっと体を壁に押し付けられ、見上げた彼の顔は怒りに満ちていた。

    2007-07-20 17:53:00
  • 136:

    [なんでやねん。俺を裏切るんか…]                   聖夜の手が振り上げられ             また殴られると思い、反射的に手で顔を守った。                          予想していた一撃はやってこなかった。                              […悪い]       消えるような声で呟いた。                        ポケットで携帯の着信音が鳴る。          閉ざされた空間のように思えるこの暗がりで    これでもかという位鳴り響いていた。                               きっと拓だ。                              [誰やねん]                  「と、ともだち…」               一度切れたが、また鳴りだす。          待ち合わせ場所にあたしがいないから心配してくれているのかもしれない。

    2007-07-20 18:00:00
  • 137:

    何回も切れては鳴り響く着信音にイライラを募らせた聖夜は           あたしのジーンズのポケットから携帯を抜き取り    画面を見た。                              [お前…         なんで拓と連絡とってんねん!!]                   聖夜の声がこだまする。                         怖い。ほんとに怖い。  何されるかわからない。 早くここから逃げたい。                         [なんでどいつもこいつも拓やねん!]      壁に拳を打ち付けた。

    2007-07-20 18:08:00
  • 138:

    駆け出した。                  聖夜の発言の真意なんて今はどうでもいい                 早くここから逃げたい              早く拓に会いたい                            [待てや!]      聖夜の腕があたしの腕を捕らえ、大きく前に転んだ。                        ビールやジュースのかごや段ボールが積み上げてあるところに倒れこんだ。                全身を強く打つ。                            着信音は無情にも鳴り響く                                    [逃げんな!]     倒れたあたしを立ち上がらせ、怒りに支配された聖夜は、あたしの下腹部を蹴飛ばした。

    2007-07-21 00:45:00
  • 139:

    激痛が走りその場に座りこんだ。                                 「いた…」                   立っていられないくらいの痛みを感じた。                 「やだ…助けて…やだあ」                        緊急事態だと理解したのか聖夜は駆け寄ってきた  [大丈夫か?!俺…おい!彩香!!]                               あまりの痛みに                 気を失った。

    2007-07-21 00:50:00
  • 140:

                                                                置いて                                             いかないで

    2007-07-21 00:52:00
  • 141:

    目が覚めると、真っ白な天井に微かに匂う消毒液の香り。                      あたしは病院にいた。              《彩香?》                   拓の声が聞こえた。               「たく…?」      ベッドに横になったまま顔を向けると       《無事で…よかった…》 拓が呟いた。                              「あたし…どうしたん?」            何故ここにいるのか思い出せない。                    《彩香…もうだいじょーぶやから今はしっかり休み》                        「もうだいじょーぶ?」             《うん。もうだいじょーぶやから。》       優しい声で拓は言う

    2007-07-21 00:59:00
  • 142:

    「あたしの…赤ちゃん。いなくなった?」                 《…………》                  拓は答えなかった。               涙が頬を伝う。                             懐妊していた。     誰に言われなくても   あたしが1番わかっていた                        守ってあげられなかった 待っててんで、って言ってあげられなかった。   何にもして       あげられなかった…                           泣き叫ぶ元気もない。  涙だけが流れ続けた                           あたしの赤ちゃん                ごめんね…                   あたしが母親で                 本当にごめんね…

    2007-07-21 01:06:00
  • 143:

    〔目が覚めた?〕                医者と思われる人が入ってきた。                     《はい…》       拓が立ち上がる。                〔少し…席を外して貰っていいですか?〕     拓は頷き席を外した。                          〔気分はどう?〕    「………」                   〔至る所を打撲しているし、痛いでしょう。〕               何も答えなかった。               お医者さんはふうっと息をはき、あたしの目を見た。            〔落ち着いて聞いて下さいね。…大変残念ですが、〕                        〔流産しました〕

    2007-07-21 01:13:00
  • 144:

    名無しさん

    あげ??

    2007-07-21 02:34:00
  • 145:

    名無しさん

    聖夜死ね?

    2007-07-21 03:17:00
  • 146:

    名無しさん

    頑張れ?

    2007-07-21 03:25:00
  • 147:

    名無しさん

    更新楽しみにしてます??

    2007-07-21 05:36:00
  • 148:

    皆さんカキコミありがとう?カキコミ見たら頑張ろうっていつも思います?更新頑張るので見守って下さい

    2007-07-21 14:35:00
  • 149:

    流産…。                    やっぱり…                               涙を流すあたしを見て、お医者さんは言う。                〔心象お察しします…。けれど、幸い坂下さんの体は打撲以外何も心配する事はありません。また出会う子供のためにも、早く良くなりましょうね…。大事をとって一日だけ入院しましょうね〕                     痛々しそうにあたしを見て部屋を出られた。

    2007-07-21 14:44:00
  • 150:

    入れ違いに拓が入ってくる。                       ベッドの横に座り、あたしを優しく撫でてくれた。                         拓はなんにも言わなかった。                       慰めの言葉も                  励ましの言葉も                 何があったか教えてという追求も                     これからの事も                 何にも言わなかった。                                      ただずっとあたしを優しく撫でていてくれた。                           拓の方に目を向ける。              《どした…?》                 「あたし…」                              ガラガラ…        誰かが入ってきた。

    2007-07-21 14:54:00
  • 151:

    拓があたしの前で立ち上ったので誰が入ってきたのか見えなかった。                 《帰れ》                    [でも俺…]                  声を聞いた瞬間体が震えた。                       覚えてる。なんであたし今ここにいるのか覚えてる。なんで赤ちゃんがいないのか覚えてる…      「いや…やだっいやあー!!!!」                    《彩香!》       あたしの手を取り、   《帰れ!!!》                 一言叫んだ。

    2007-07-21 15:04:00
  • 152:

    なんで今まで考えなかったのかわからない。    なんで今まで普通でいられたのかわからない。   「やだぁ…!なんで…?!なんでよぉぉぉ!あたしの赤ちゃ…」       すべてが頭に渦巻いてパニックになる。        「あたしも一緒に…死ねばよかったぁ…死にたかったやだ…なんで…?!」  発狂したように泣き叫ぶ             〔どうしました?!〕  看護婦さんが入ってきて医者を呼ぶ。                   暴れるあたしを押さえつけ、なにか注射された。

    2007-07-21 15:13:00
  • 153:

    名無しさん

    面白いからあげ??

    2007-07-21 19:30:00
  • 154:

    セツナ

    ??

    2007-07-21 21:48:00
  • 155:

    あげて頂いてありがとうございます?
    申し訳ないですが少しの間更新出来なくなります。楽しみに見て下さってる方には本当に申し訳ありません??早く復帰できるようにするのでまた読んで下さい?いつもありがとうございます?

    2007-07-22 01:37:00
  • 156:

    名無しさん

    わすれんといてな。
    復帰してな。

    2007-07-22 01:42:00
  • 157:

    名無しさん

    待ってます?

    2007-07-22 03:37:00
  • 158:

    ありがとうです皆さん?実はこの小説は実話も混ざっているのですが、話に登場する拓絡みで衝撃的な事がありました。小説を書く事が辛くて今は出来そうにないので?何があったかはまた小説の中でお話します。こんな稚拙な小説を読んで頂きありがとうございます。落ち着いたら必ず更新致します

    2007-07-22 04:01:00
  • 159:

    名無しさん

    頑張って?みんな途中で書かなくなる人ばっかりやから書いて下さいね?

    2007-07-22 22:23:00
  • 160:

    思ったより早く解決し、更新出来そうです。遅れるかもしれませんが頑張っていきます?

    2007-07-23 02:28:00
  • 161:

    ごめんね。       せっかくあたしの元に生まれてきてくれたのに。              祝福されて生まれてきて 待ってたよって言われて 大きくなって      楽しい事たくさんしたかったよね。                    綺麗な空を見せてあげたかったな。                    抱きしめてあげたかった             生まれてきてくれてありがとうって        言ってあげたかった               守ってあげらんなくて              ごめん

    2007-07-23 02:33:00
  • 162:

    打たれた注射は鎮静剤だった。                                  目を開けると、いつの間にか、窓の外は暗くなっていた。                      誰もいない病室。    窓を叩く風の音だけが聞こえる。                     拓は帰ったのかな…御礼も言ってないや…                             ガラガラ                     扉が開くと、ビニール袋を持った拓がいた。                 《目が覚めた?》    ベットの横に腰かける。  《お腹空いてないかなと思っていろいろ買ってきた》コンビニの袋からパンやお弁当、お菓子を出しながら言う            《なんか食べ?》                拓を見ながら首を横に振った。

    2007-07-23 02:43:00
  • 163:

    「…お仕事は?」                《今日は休む。心配せんでいーから。ここに泊まる許可も取ったしな》    だいじょーぶやで、と微笑む。                      「あたし…とんでもないこと…しちゃった。」   涙が頬を伝う。     あの時散歩なんかしなければよかった       あの時早く逃げたらよかった           お腹だけは守らなきゃいけなかった        後悔に押し潰される。              「守れなかった…」               あたしが守らなくちゃいけなかったのに                  《彩香。》       哀しそうに顔を歪ませて拓はポツリポツリと言う。   《子供の事は残念やった…。辛いやろうと思う。俺でさえも辛いんやから、彩香はもっと…》      声が震えていた。    《せやけど…》                 《彩香が無事で、ほんまによかった…》

    2007-07-23 02:53:00
  • 164:

    「う…」        涙が止まらない。泣いたってしかたないのに。               《いっぱい悲しんだらいいで…。それがいなくなった子供への供養やで…。愛してた事の証や。な。彩香んとこ来れて、幸せやったと思う…》                    泣き叫んだ。拓の言葉に救われて、ただただ泣いた。            拓はずっと側にいてくれた。                       《だいじょーぶやから》             何度もそう言ってくれた。            《だいじょーぶ》                                        《な?》

    2007-07-23 03:02:00
  • 165:

    後に拓から聞いた話では、お腹を蹴られて気を失った後、異常事態に気付き、聖夜は拓に連絡した。               拓は直ぐさま駆け付けてくれて、倒れたあたしを見つけ救急車を呼び、病院まで付き添ってくれたらしかった。                      駆け付けた時には既にあたしの脚には血が垂れていて聖夜はパニックになっていた。                       聖夜も一緒に病院まで来たが、暴行した事実を聞き、追い返したらしかった。             この事件以来                  聖夜には会っていない。             そして
    拓から打ち明けられた話は            昔、聖夜の惚れた女の子が拓に惚れてしまい                拓のホストクラブに通うためにキャバ嬢になった。                という話だった。

    2007-07-23 03:14:00
  • 166:

    あの時聖夜が言った言葉 あれほどキャバに固執した事あたしに話かけてきた理由全てがやっと理解出来た。            あたしをその女の子と重ね合わせていたんだろう。             その子が拓のために出来た事が、あたしは聖夜のために出来なくてキレてしまった                        拓はあたしを連れて病院から帰る途中あたしに謝罪した。                      《俺のせいもあると思う。ごめんな…》

    2007-07-23 03:22:00
  • 167:

    「拓のせいとちゃうやん…拓、謝らんで。ありがとう。本当にありがとう」              拓は申し訳なさそうに首を振った。                    朝の日光がタクシーの窓から差し込んで眩しかった。              当分立ち直れない傷を負った。けれど、拓のせいだなんて微塵も思わない。  拓はあたしを助けてくれた拓はあたしを救ってくれた            それだけで十分だ。               タクシーを降りて、拓に御礼を言う。                     がんばろうって思った

    2007-07-23 03:29:00
  • 168:

    名無しさん

    更新復活?アゲ?

    2007-07-24 13:48:00
  • 169:

    名無しさん

    かいて?

    2007-07-24 19:20:00
  • 170:

    ありがとうございます?
    頑張ります?

    2007-07-24 22:49:00
  • 171:

    あれから二週間。
    夏も終わりにさしかかるある晴れた日。                  徐々に体調も回復してきて、今日は美里達と沖縄旅行の日。                     里菜達はあたしの体調を心配して、無理したらあかんでってお守りをくれた。何故かお守りは家内安全。 出発前日に麻美と緑と急いで神社に買いに行ったものの、家内安全しか残っていなかったらしい。    それでもないよりはマシだと朝一番に家まで届けてくれた。                      〔お土産楽しみにしてるでー!〕         〔気をつけてやあ!〕  〔楽しんできてなあ!〕             「ありがとう!行ってくるねえ!」        元気いっぱいに言った。

    2007-07-24 23:00:00
  • 172:

    【メール受信:拓】     おはよ!今終わったあ!今日から沖縄っけ?楽しんできてなあ!                   【メール送信:拓】     お疲れ様あ!お土産買ってくるなあ!行ってくる!ゆっくり休みやぁ☆                毎日の習慣になっている拓とのメールのやり取り。あの事件以来電話も多くなった。仲良しな男友達みたいになっている。                  バスに乗りながら拓のお土産なんにしようと悩んでいた。

    2007-07-24 23:34:00
  • 173:

    傷は癒えない。     時々まだお腹の中に命が宿っているかのように感じる時がある。       手足を切断した後に、感じるハズのない痛みを無くなった患部に感じるように、消えてしまった命の鼓動を感じる。                    消えたくなった時もある。けれど、それを踏み止まらせてきたのは拓のおかげだった。                     【メール受信:拓】     お土産くれるんー?楽しみにしとくわあ(笑)ゴーヤ一個とか辞めてよー(笑)体無理させないよーに!              メールを見ながら笑みが零れた。

    2007-07-25 01:56:00
  • 174:

    5日前、拓に誘われてご飯を食べに行った。    食欲が出ない、と拓になんとなく言ったら、美味しいご飯やさんあるから行こうと言ってくれたからだ。             拓が出勤する2時間前に待ち合わせをして、小さな小料理やさんに行った。優しそうな夫婦が家庭料理を振る舞う、感じのいいところだった。        《ここほんま美味いねんでー》          嬉しそうに拓が言うから、あたしまで嬉しくなった。            《好きなん頼みよー》  メニューを渡されて、肉じゃがとかお豆を煮たのとか、レンコンの天麩羅とか、体に良さそうなものを注文した。

    2007-07-25 02:06:00
  • 175:

    でてきた料理は本当に美味しくて、いつもより沢山食べれた。                    《俺玉葱も人参もピーマンも食べられへんねん》   拓は子供みたいに野菜を避けて食べていた。                少し拓の事を知ったみたいで嬉しかった。     拓は優しいけれど、どこか人に壁を作る。踏み込んではいけないように思わせる。何処に住んでいるかとか家族構成とか、そういうプライベートな事はあたしからは聞けなかった。                 たわいない話をして、この時に沖縄に行く事も話した。                       【メール送信:拓】     ゴーヤの代わりに玉葱とかいっぱい買ってくるわ(笑)楽しみしててね!おやすみ☆           バスの中でメールを送った。

    2007-07-25 02:14:00
  • 176:

    沖縄の海は綺麗だった。             夜になるとホテルの光が海に反射して、自分が光の中にいるように感じられた。             2日め美里たちとスキューバダイビングの体験をした。  [沖縄にはある名所があって、そこをカップルで訪れると一生幸せでいられるんだよ。]         毎日この太陽に晒されているんだろうと納得する程黒く焼けた肌をした、ダイビングの講師の先生が言っていた。          [何それ?!場所何処なんですかっ?行きたい!] 美里たちが興奮して尋ねる。           〔行ってみないとわからない。見つけた時に自分達で此処だと分かるよ。〕  そう言ってインストラクターのお兄さんは笑っていた。               あたしたちは意味が分からなくて、皆で不思議がっていた。         〔いつか分かるよ〕               そう。いつか分かる。

    2007-07-28 11:27:00
  • 177:

    ダイビングスーツを着て、ポンプを加えて海に潜る。   海の水は少し冷たかった。            〔せーのっ〕      皆で一緒にザブンと海に入ると、透き通った水の中に色とりどりの魚や海藻が生きているのが見えた。              言われていたとおり頑張って耳抜きをする。    思っていたよりすぐ出来た            なんて綺麗なんだろう              あたしの子供もこんな綺麗な世界で暮らせていたらいいな…         そんなことを思った。

    2007-07-28 11:32:00
  • 178:

    大阪に帰る日      皆でお土産を買っていた。わいわい騒ぎながらお土産を選んでいた。                 [彩香は誰に買うん?♪]美里に聞かれて     「ママと兄ちゃんと里奈達とー…バイト仲間にサークル仲間でしょお?あと…」               [拓さん?]                  「せやな!あと…赤ちゃんに。」                     美里は、赤ちゃん喜ぶよって哀しそうに笑った。              あたしは生まれてこられなかったこの子に、何処かに行けば必ずお土産を買って帰る事を習慣にした。

    2007-07-28 11:41:00
  • 179:

    ――――――――――――悲しみがむせかえる。  後悔がじわじわと身体中を侵食する。                   沖縄、一緒に行こうって約束したよね。                  一緒にあの場所を捜そうって約束したよね。                あたしはもう見つけてしまったけれど。                  でもね         あの場所が       何処かわかっても                今いる場所が何処なのか あたしにはわからない
    ――――――――――――

    2007-07-28 11:49:00
  • 180:

    空港に飛行機が到着し、皆でお揃いで買ったストラップをぶらさげながら、拓にメールをした。        【メール送信:拓】     今空港着いたあ!!お土産渡すから起きたら連絡ちょうだい☆                    時刻は18時。拓は寝ているはずだ。                   〔彩香また連絡する!〕 〔早く地元帰ってきてやー〕                       「冬休みには帰るから!またね!めちゃめちゃ楽しかったあ!」                   皆とは違うバスに乗り、家に帰った。

    2007-07-28 12:03:00
  • 181:

    沢山の荷物を抱えて家に帰ると、たかだか三日しか家を空けていないのに酷く懐かしく思えた。                 皆に帰ったよってメールした後、ハシャギ疲れてそのままベットで寝てしまった。

    2007-07-28 12:09:00
  • 182:

    名無しさん

    http://ip.tOsp.cO.jp/i.asp?I=hOshizOra8689

    未来は君のものっていう小説!感動するよ!

    2007-07-28 12:21:00
  • 183:

    ソラ

    この小説ヤバい〜めちゃおもろい?泣いてもたぁぁ?

    2007-07-28 17:56:00
  • 184:

    名無しさん

    書きまくって☆ 
    http://pr6.cgiboy.com/S/8072443

    2007-07-28 18:58:00
  • 185:

    名無しさん

    てか赤ちゃん赤ちゃんって生でやってできた訳やしそんな体でうろうろして危険にきまってるやん。しかも流産して生まれてこれなかったけどいつまでも赤ちゃんに執着してお土産とか買ってそんなんしてたら赤ちゃん成仏できひんよ。余計かわいそう。そんなけ執着しとたら次生まれてきた子供にヤキモチやいてのりうつられんで。ってきいた?

    2007-07-28 22:30:00
  • 186:

    多数カキコミありがとうございます。小説読んでみますね?ソラさんはこの小説への感想?なのか張り付けされてる小説の感想なのか判断しかねますけどこの小説へやったらありがとうございます?
    沢山ご意見頂きましたが、今から彩香の変化を見ていって下さったらうれしいです?

    2007-07-29 00:18:00
  • 187:

    目覚めると拓からメールがきていた。                    【メール受信:拓】     おかえりー!ほんまにお土産買ってくれたーん?今日やったら11時くらいならいけるで!                    時計を見ると11時半。急いで拓に電話をかけた。              《はい》        「もしもし?!ごめんー寝ててんっもう無理やんなあ?」          《いけるでー!今から出てこれる?》       「うん!」       《今ひっかけいてるから来れるー?》                   急いで土産を掴んで家を出る。          「10分で行く!」

    2007-07-29 00:35:00
  • 188:

    《彩香ー!》      ひっかけの辺りで拓に電話をしようと携帯に手を伸ばすと、スーツ姿の拓がいた。            「遅れてごめーん」   いいでえ!と八重歯を出して笑う拓。       「はい、お土産」    《ありがとうー!見ていいー?》         「うん。たいしたもんじゃないでー」                   拓はガサガサと袋を開けて喜んでいた。       《お香のセットー?あとコレ何?ゴーヤ?!(笑)めちゃめちゃ嬉しいし!ありがとう!》          お土産はハイビスカスの香りのお香のセットとゴーヤのお漬け物にした。                   《沖縄楽しかった?》 拓と店に向かって歩きながら沖縄の話しをした。  「めちゃめちゃ楽しかった!なんかなーカップルで一緒に行ったら…」     あの場所の話をしたら、へえー行ってみたいなあと笑う。          《来年行こうやあ!》  「へ?」

    2007-07-29 00:47:00
  • 189:

    誰と?         誰が?                     《一緒行こうやあ!来年な!》                      「………せ、せやな!」             あたしと?       拓が?                     《楽しみやあーあ、ほな俺ココで!気をつけてなーお土産ほんまありがとう》  「あ、うん!じゃあねお仕事頑張って!」     《また電話するわ!》              手を振りながら拓はネオンの中に消えていった。

    2007-07-29 00:52:00
  • 190:

    拓に付き合おうって言われて断ってから、聖夜と付き合い、また別れて拓とは友達関係を続けていた。              なんにも言わないし、もうあたしの事を好きではなくなったと思い込んでたけどどうなんだろう。                来年一緒行こうって   どういう意味だろう。              あたしは…                   拓を好きだと思う。   たくさん救われて感謝もしている。                    けど、聖夜と別れて間もないし、ホストとはもう付き合うのは怖い。                  今のままでいい…                            帰りながらボーっと考えた。

    2007-07-29 00:58:00
  • 191:

    夏休みはあっという間に終わりまた日常に戻る。              実家にお土産を郵送し、あれ以来体調を考えて休んでいたバイトも復帰した。迷惑かけました、とお土産を渡した。                     この間のお泊り会で里菜達にもお土産を渡した。              最後のお土産は机の中にしまってある。                              ゆっくりとあたしは回復していた。

    2007-07-29 01:04:00
  • 192:

    バイトが休みで次の日はなんにも予定がなくて、一人で徹夜でゲームをしてやろうと意気込んでいたある夜。             【メール受信:拓】     熱出てずっと寝てたあ。めちゃめちゃしんどいー              拓熱出たんや…大丈夫かなあと心配になった。               薬とかあるん?なんか欲しいもんあったら持ってくで            メールを返したけど、家も知らないしそんなの迷惑だろうと思っていた。                案の定、だいじょーぶやで。寝るわーって返信がきた            あたしは夜中中ゲームをしていて、気がつくと夜中2時携帯が鳴った。

    2007-07-29 01:11:00
  • 193:

    ソラ

    リアル?+゜この小説への感想デス?ゆサンがンばって下さい(艸*vωO)?

    2007-07-29 01:14:00
  • 194:

    「はい?」       《もしもしー?回復してきたあ!》        拓からの電話だった。              「大丈夫?ご飯とか食べた?」          《食ってないーなんかくわなあかんなあ》     「うちくる?(笑)雑炊でも作ろうか?」     冗談で言ってみた。               《行こうかなー行っていいん?》                     思わぬ返答で焦って答える「え?全然いーけど寝てたほうがいいで?!」   《もーだいぶん楽!ほんまに行っていい?》                「うん、おいで」                いいのかなと思いながら言った。

    2007-07-29 01:19:00
  • 195:

    ソラさんありがとう?嬉しいです?頑張って更新しますね?ありがとう?

    2007-07-29 01:21:00
  • 196:

    拓から家の近くに着いたと言われて外に出る。               ジャージ姿の拓を見つけて思わず笑ってしまった。  「拓!」                    《よっ!》       「拓ジャージやん(笑)」 いつも盛り盛りの頭も今日はペチャンコでなんだか可愛かった。                     《ジャージ族やからー(笑)》                       オートロックを外し家に入る。             《おじゃましまーす》  ペタペタ健康サンダルを脱いで拓はソファーに座りこんだ。

    2007-07-29 01:26:00
  • 197:

    作りかけの雑炊を作り上げ、拓に出すと      《すげー美味そう!彩香料理出来るねんなあ!》  嬉しそうに言ってくれた。茸と鶏肉の卵雑炊。あたしが病気のときママがよく作ってくれていた。    ママが仕事で夜遅くなる事が多くて、料理は勝手に出来るようになった。               《いただきまーす》               《めちゃめちゃ美味いー!》           子供みたいにハシャギながら食べてくれる。料理出来る子が好きだと前に言っていたのを思い出す。                「口に合ってよかった!」《ほんま美味いで!今までで1番美味い》                 社交辞令だとわかっていても嬉しかった。                 おかわりをして、早く風邪治すためにと思って買っておいたビタミンゼリーを食べて、拓は満足そうにありがとうと笑った。

    2007-07-29 01:35:00
  • 198:

    なんだか体調良さそうで安心した。                    付けっぱなしのゲームを見てゲームしたいと言うので一緒にゲームをした。                 馬鹿みたいな話をして、馬鹿みたいに笑って。               後になって思うと、このころが1番幸せだったね。             悲しい想いも後悔も   信じられない歯痒さや不甲斐なさ         何にもなかった。                今までの恋愛でいつもいい子でカッコイイ自分を作ってきたあたしにとって    拓は一緒にいて安心出来る存在だった。                  あんなにカッコ悪い自分を見せるのも        あんなに我が儘を言う自分を見せるのも      初めてだったよ。

    2007-07-29 01:47:00
  • 199:

    いつの間にか拓は眠っていた。          また風邪振り返すのに…             「拓ー寝るならベットで寝なあかんー」       《んー》        目を擦りながら拓はベットに倒れこんで、そのまま寝てしまった。                   「子供みたいや(笑)」             布団をかけて、一人で漫画を読んでいると、あたしもソファーで寝ていた。

    2007-07-29 01:51:00
  • 200:

    外の騒音で目を覚ますと、拓はまだ寝ていて、時間は12時になっていた。              朝ご飯にお味噌汁と卵焼きを作っていると、    《あれ…?》                  拓が目を覚ました。   「おはよー」      《俺寝てた?!やべーごめん!》         「全然いいで!ご飯食べて帰る?ご飯食べれる?」 「作ってくれたん?食べるーありがとう」                 また美味しい美味しいって言いながらご飯を食べてくれた。

    2007-07-29 01:57:00
  • 201:

    拓を見送りに大通りまで一緒に歩いた。                  《めっちゃ美味かったーほんまありがとうな!》  「いつでもおいでよー」 《またご飯作ってな!》             拓を見送ってから、家に帰った。                                 この日以来、一ヶ月に1、2回拓は家に来るようになった。         毎日メールしてたまに電話もしたけれど、あたしから遊ぼう…会おうとは言わなかった。         同伴予定も営業も忙しいだろう。         誘うのは躊躇った。

    2007-07-29 02:07:00
  • 202:

    外も寒くなってきて   サークルでテニスコートを借りてテニスをするのが辛くなってきた。                       寒くて手がかじかんで、ああもういつの間にか冬だなあって思ってた。                学校のテストが終わりクリスマス。拓はもちろん出勤。               24日はサークルでクリスマスパーティーをするので、カップルの里菜と笠井先輩も、24日はパーティーに参加するらしい。あたしももちろん参加する。 麻美はデート。緑は地元の友達とユニバーサルスタジオに行くからだ。                     街はクリスマスカラーに染まり、ゆっくり一年の終わりが近付く。                      過ぎてみれば早いもの。

    2007-07-29 02:20:00
  • 203:

    クリスマスパーティーには皆スーツで女の子はドレス。毎年恒例らしい。          サークルのOBの人のコネで、地下にあるバーを一日貸し切る。凄く華やかだと先輩から聞いた。                    前日に買った里菜と色違いの赤のロングドレスを持って、里菜と笠井先輩と会場に向かった。                    街はカップルでいっぱいで、中にはいかにも水商売な巻き髪のお姉さんが、いかにもホストのお兄さんと腕を組んで歩く光景も見られた。                        拓から何にも聞いていないけれど、拓もきっと同伴なんだろうと思った。

    2007-07-29 02:28:00
  • 204:

    『里菜、彩香ココやで!』 笠井先輩が階段を降りる。            「凄いなあ!」     〔ほんまやー〕     ツリーの周りを華やかなドレスを着た先輩達が囲んでいた。                       〔里菜、彩香着替えといでー〕          女の先輩に言われてトイレで着替えた。                   〔綺麗なんは今だけやで〕含み笑いをしながら先輩に言われて、どういう意味だろうと思った。                 〔メリークリスマス!騒ぐでオマエラ!〕                       サンタクロースの恰好をした代表が挨拶し、わいわいと皆で酒を呑んでゲームをして。             「あたしもー無理ー」  テキーラを一気してヘロヘロだった。                       〔綺麗なんは今だけ〕  あー納得。       会場はめちゃめちゃだった

    2007-07-29 02:37:00
  • 205:

    潰れてカウンターで寝ている人が増えてきて、代表なんかサンタクロースの服なんてとうの昔に脱ぎ捨てた。                ドレスもぐちゃぐちゃ。              里菜もカウンターで寝ていた。肩にスーツがかかっているところを見ると、笠井先輩が介抱していたんだろう。             同じ学年のコ達と一気ゲームで盛り上がっていると              『彩香』        笠井先輩に呼ばれた。

    2007-07-29 02:42:00
  • 206:

    「なんですかぁー?」  千鳥足で先輩の座る席に行くと          飲みすぎだと怒られた。             『お前体いけんか?』              「へー?体?とりあえず吐きそうですけろ?先輩なんで元気なんー」     『俺は強いんだよ(笑)そーじゃなくて体。もーいいんか』                     やっと何を言っているのか理解して、笠井先輩が初めに気付いたと里菜の言葉を思い出した。      「大丈夫です。ありがとうございました。本当に」             『無理すんなよ。あれから大介とは会ってないねやろ?』                      久しぶりに聖夜の話を振られて、酔いが一気に醒めた            「なにもかも知ってるんですね」                     頷く先輩を見て心が痛くなってきた。       「聖夜は…大介はあれからどうしてるんですか?」

    2007-07-29 02:51:00
  • 207:

    『ホスト辞めて東京行った。お前が元気してんのかずっときにしてたで。』               「…そうですか。」               『お前今彼氏は?』   「いないですけど…」  『拓って奴とは付き合ってないん?』                   「ほんまに全部知ってるんですね。付き合ってないです」                      『好きなん?』                 「………はい」                 素直な気持ちだった。もう気がついている。あたしは拓が好きだ。                  『そか…まあ何でもゆうてこいよ。大介の話して悪い』           「いえ…。大介がまだ悔やんでるなら、怨んでないからって伝えて下さい」              『わかった』

    2007-07-29 02:58:00
  • 208:

    先輩の席を離れて一人でカクテルを呑んでいると、携帯が鳴った。                    【メール受信:拓】    おっはよーメリークリスマスイブ!今から出勤やー!                携帯の画面をボーっとみる。           【メール送信:拓】    おはよ!メリークリスマスイブー☆お仕事頑張ってな!素敵なクリスマスを過ごしてねー              メールの返信はなかった。             ホストと付き合ったらクリスマスも一緒に過ごせない。   誕生日も、バレンタインも、何にも出来ない。                 わかってる。      このまま先に進まなければいいんだ。                   大丈夫。

    2007-07-29 03:06:00
  • 209:

    お正月は実家で過ごした。久しぶりのママのご飯はやっぱり美味しかった。              拓に作ってあげようと、ママからレシピを教わる。  拓は31日の朝に友達のいる名古屋に行ってくるとメールが来て、それ以来連絡をとっていなかった。                ママとお兄ちゃんと初詣に行った。        おみくじを引くと何故か凶だった。                    「凶が出たー(笑)」  〔いいことあるなー今年は(笑)〕        お兄ちゃんが茶化す。              ママが笑っていた。               4日はパパの命日。   5日はあたしの誕生日。             お墓参りに行って、誕生日はママの手料理とケーキを食べて夜から美里達が祝ってくれた。

    2007-07-29 03:17:00
  • 210:

    学校が始まるのでアパートに戻る。         帰ると里菜達が誕生日を祝ってくれた。                  拓から大阪に帰ってきたと電話があった。                 《え?誕生日やったん!》昨日誕生日のお祝いをしてもらったと言うと驚いて拓が言う。        「せやでー19才なった!拓誕生日いつ?」     《おめでとう!お祝いしなあかんな!俺は11月18日やでー》                     「え?!何でいわへんのよ!」                      《んー(笑)そんなおめでたくないし(笑)》               「なんでやねん(笑)祝うわっ☆」        《いいでそんなん!それよか彩香のお祝いしよ!今度の土曜日暇?》     「んー大丈夫やけどいいで」                       《いーから!飯食いいこ☆てゆーてもフランス料理とか無理やけど(笑)》                土曜日の9時にご飯をご馳走になる事が決まった

    2007-07-29 03:29:00
  • 211:

    土曜日拓との待ち合わせの前に、一人で買い物をしに心斎橋に行った。                雪が降っていた。                なんだか着て行く服に迷って、オーパを一通り見てかったからだ。       可愛い毛皮のミニ丈コートを見つけて、ママに誕生日に好きなもの買いなさいって貰ったお金でコートを買った。インナーやブーツとも合ったから、そのまま着て行った。             拓との待ち合わせのために急いで大通りに出た。  「さむ…」                   ――――チャラー♪――――             「はい」        《もし?おはよー!今何処ー?》         「心斎橋のオーパ出て歩いてるとこ!」       《心斎橋?俺今近くいてる!》                      「ほんまに?何処待ち合わせ…」                     キキーッ          ガシャーン

    2007-07-29 03:46:00
  • 212:

    物凄い金属音がして後ろを見ると、車が横転していた                        《なんの音?!》    「事故あったみたい…」 道を戻って車に走り寄る。「ちょっと一回切るで!救急車呼ばな!」                 〔キャー!救急車!!〕  〔うわあ!事故や!〕  周囲の人が悲鳴をあげる。                        119を押そうとすると、横にいた男性が、救急車お願いします!と言っているのが聞こえた。                              携帯を閉じ、ひっくり返った車の中の人を救出しようとしている人を手伝おうと車に近寄る。                  〔お姉ちゃん、こっちこんとき!〕

    2007-07-29 03:56:00
  • 213:

    救出しようとしている何人かの人々の中にいた、おじさんに制された。                「なんで?!助けな!」             横転した時にガードレールにぶつかり、車はめちゃめちゃだった。中の人は大怪我じゃないかと思われた。              〔こらもうあかんわ…〕 「え?」                    ちらっと見ると、中年男性と思われる人が血だらけで車の横にほうり出されていた。                      置いていかないでパパ!!            頭がガンガンした。

    2007-07-29 04:03:00
  • 214:

    頭が痛い                    頭が痛い                    頭が痛い!!!                 置いて行かないでよお… パパああ………                 小さい女の子の泣きじゃくる声。                     誰の声?!!                  誰なん?!                   頭が痛くて、立ってられない。          その場にしゃがみ込む。 〔お姉ちゃん?大丈夫か?!〕          おじさんの声が遠くで聞こえる。                     置いて行かないでよぉぉ…パパぁ目を開けて…               〔彩香…〕

    2007-07-29 04:10:00
  • 215:

    《彩香!!》                  「パパ…?」                  《彩香どした?!大丈夫か?!》         涙が流れて目が霞みながら拓の姿が見えた。                「思い出した…」                フラつく体を起こされて、拓に支えられながら歩道の隅に行くと、救急車のやってきた音が聞こえた。

    2007-07-29 04:14:00
  • 216:

    思い出した。全て思い出した。                      何度も見てた夢。                置いて行かないでと泣いていたのは        幼い頃の自分だった。

    2007-07-29 04:17:00
  • 217:

    あの時も雪が降っていた。                        小学3年生のとき、あたしの誕生日の前日に、パパと二人で車に乗っていた。             あたしのピアノ教室が遅くなって、仕事帰りのパパに迎えに来て貰った。                「ねーパパ。今日ご飯なにかなあ?彩香お腹減ったあ」           〔ママがハンバーグやって言ってたでー明日は彩香の誕生日やからな、パパケーキ買ってくるから。〕    「ほんと?ケーキやあ♪」             彩香は食いしん坊やなあってパパは笑っていた。              キキー                      金属音が聞こえたと思った瞬間、体が物凄い衝撃を感じた。                     対向車がスリップして正面衝突だった。

    2007-07-29 05:00:00
  • 218:

    パパは血まみれで、あたしの上に覆い被さっていた。                        「パパ?!ねえパパ!置いてかないで!パパ!!」             泣きじゃくりながらパパを呼ぶ。                     〔彩香…ごめ…んな〕              それがパパの最後の言葉。                        置いていかないでって叫んでも                      置いていかないでって泣いても                      もうパパは                   応えてくれなかった

    2007-07-29 05:04:00
  • 219:

    《彩香?どしたんや?だいじょーぶか?》                 「パパに守られてあたし生きてんや…」                  《え?》                    ママは病気で亡くなったって言ってたけど、あたしを守るための嘘だった。              「思い出してん。パパが死んだ時の事…」                 心配そうにあたしを見る拓に、大丈夫と言って立ち上がる。         頭痛は晴れていた。               《ほんまにだいじょーぶか?とりあえずどっか入ろうか?寒いやろ…》                辺りを見渡すと、警察が取り調べをしていた。さっきのおじさんが警察と話しをしている。                   「おじさん?」     〔さっきのお姉ちゃん!大丈夫なんか?〕     「うん。ありがとう。あたしに出来る事、なんかある?」                      〔お姉さん、事故の瞬間見はりました?〕     警察の人に聞かれた。              「見てないです…横転した音で車の近く行ったんで」〔そうですか。帰られて大丈夫ですよ。ご協力感謝します〕

    2007-07-29 05:16:00
  • 220:

    《彩香行こうか》    拓に言われて、頭を下げて現場を後にした。                《だいじょーぶ?》   「うん、心配かけてごめんね。」         《事故間近で見てショックやったろ…》        「大丈夫。そんなに弱くないで。」        拓に笑顔を見せた。   《ご飯食べれる?》   「もちろん!」                 パパの話を拓にした。ショックだったけれど、思い出せてよかった。                   《同じ光景見て思い出したんやな…ショックちゃう?》 「ショックやけど大丈夫。パパに守られたんやって思い出せたから。」                  ママ達には思い出した事、まだ言わないで置こう。心配かけるから。

    2007-07-29 05:24:00
  • 221:

    《そか。よかった》   「あたし置いていかれてないな。守って貰ったんやでな。」         《うん。》       哀しそうに笑う拓を見て、拓のおかげでもあるんやでって言ったら、びっくりしていた。                                            綺麗な創作料理のダイニングバーを拓は予約してくれていて、ご飯を食べながら話していた。                    デザートでホールのケーキが出て来て、隅にあるピアノで誕生日ソングを演奏してくれた。             《誕生日おめでとう》  「ありがとう…」                胸がいっぱいになった。 拓ありがとう。                 あたしは拓が好きやで。

    2007-07-29 05:33:00
  • 222:

    いつもいつも励ましてくれて、元気がなければ元気づけてくれて、心配ばっかりしてくれる。                  拓にどれだけ救われた事か                        拓はわからないかもしれないけど、本当にいつもありがとうって思ってる。              好きです。ほんまに               手を繋いで歩けなくても             他の女の子と駆け引きしなくちゃいけなくても               生活時間帯が合わなくても                        普通の人と付き合えば  当たり前な事が当たり前に出来なくても                  拓がいい。

    2007-07-29 05:40:00
  • 223:

    あたしはこの日、拓への告白を決めた。

    2007-07-29 05:42:00
  • 224:

    名無しさん

    この小説めッッちゃ好き??頑張ってね??

    2007-07-29 23:13:00
  • 225:

    232サンありがとうございます?そんなん言って頂けてほんま嬉しいです?頑張りますね?

    2007-07-30 01:00:00
  • 226:

    拓がいなければあたしは パパの事も受け入れられなかったと思う。                 置いていかないで                漠然とずっと淋しかった             泣いても        縋り付いても      決して戻らぬ愛する人に 置いていかれた気がして淋しかった                    けれど         置いて行かれてないんだって今はそう思える    守ってくれた愛が残ってるから。                     置いて行かれていないよ             だいじょーぶ                  ね?

    2007-07-30 01:08:00
  • 227:

    ケーキを食べて店を出る。             「割り勘やでっ」    《だめー彩香いっつもおごらしてくれやんから、今日誕生日くらいおごらして》「でも…」       《いーの》       「わかった。ごちそうさま!今日はありがとう…」             どういたしましてって笑いながら一万円札を出した。            《雪やまへんなあ》   空を見上げると、吸い込まれるように暗闇に白い水玉模様が浮かびあがる。  ちらちら舞う雪の中を、二人で歩いた。                  《ほな俺ここで》                「うん。あ…あんな」              《うん?》

    2007-07-30 01:17:00
  • 228:

    「拓は…今彼女いいひんの?」                      《せやなあーモテんからなー(笑)》        笑いながら言う。そんな訳がないのに。                  「彼女欲しくないん?」 《どやろーんー》                「あんな…」      《なにー?》      あたしが今から言おうとしてる事なんか、思いもつかないかのように首を傾げる            「あたしじゃあ拓の彼女は役不足かなあ?」    誰かに告白するのは初めてで、可愛いげのない言い方をしてしまった。    素直に好きやって言えばいいのに…情けない。               《え…?》       怖くて顔があげられない。フラれるのかな…やっぱりあたしじゃだめだよね…              なかなか答えない拓は今困った顔をしているのかもしれない。

    2007-07-30 01:27:00
  • 229:

    足元で雪が溶けていくのが見える。俯いたまま答えを待った。                    《彩香…》                   「…はい」                   フラれると思った。                《俺彩香の事好きやで》             えっ                      思わず顔をあげると、恥ずかしそうに頭をかく拓がいた。          《前に俺からゆったん覚えとー?あれから気持ち変わってない。》                  《せやけど…あの時とは状況ちゃうねんな…。No.1なって、今物凄いプレッシャーやねん。仕事、ほんまに頑張りたい。俺ホストやし…あんましかまってあげれやんかもしれん。元々彼女出来てもいっぱい会うタイプちゃうし…》                     「うん…」       雪の音が聞こえる

    2007-07-30 01:38:00
  • 230:

    拓はきちんとあたしに伝えてくれた。       《淋しい想いさせるかもしれん。俺なんかで彩香幸せなれるかなって思うねん。俺は彩香の話聞くだけでなんか嬉しいし、俺でいーんかな…》                    拓も不安なのかな。   あたしの事をほんまに想ってくれてるんかな                《どーしよ…どしたらいいんか自分でもわからん…》淋しそうに俯く。                拓、あたしはだいじょーぶだよ…                     「あたしな。」     《ん…》                    「拓といるだけで幸せやで。覚悟も出来てる。応援するで、後悔しいひんように今しかできひん事したらいいって思う。やから…」             うまく気持ちを伝えられない。

    2007-07-30 01:49:00
  • 231:

    《…俺でもい?》                好きな気持ちを伝えたくても、伝えられなくてもどかしい。                     あたしは今まで     いい車に乗っているとか 顔がカッコイイとか      頻繁に会えるとか    そういう外側の面を重視する人間だった。                 違うんだよ。      ただ拓が好きなんだよ。 心配しなくていいんだよ。伝えたくてもどう言えばいいのかわからなかった。             「俺がいいねんで!」  一生懸命伝えようと必死に言う。

    2007-07-30 02:15:00
  • 232:

    嬉しかった。      今までのどんな愛の言葉より嬉しかった。                 出会ってからの9ヶ月間で拓が孤独を背負っているのはなんとなく感じてた。 家庭が複雑なのかな。母親の料理をまともに食べた事がないって前言ってたね                         一人じゃないよ。                何があってもあたしは拓の味方だから。                  絶対一人になんかしないから。

    2007-07-30 02:57:00
  • 233:

    頭をあげると拓がまた泣きそうな顔をして笑っていた                        二人で笑った。                 「お仕事やんね?時間大丈夫?」                     《あ、そろそろ行くわ…仕事終わったら連絡するな》「うん。頑張ってね」                          この日の事は生涯忘れないと思う。

    2007-07-30 03:00:00
  • 234:

    幸せな気持ちで家に帰って拓にメールした。                 【メール送信:拓】    今日はありがと!ご飯もケーキもめちゃめちゃ美味しかった。我が儘言わないようにするからね。お仕事頑張ってな!                    ホストという仕事に対して絶対我が儘は言わないようにしようと思った。    頑張りたいなら頑張って欲しい。         あたしと付き合う事で、拓にマイナスになるような事態だけは絶対したくない。              【メール受信:拓】    どーいたしまして!今日、めっちゃ嬉しかった。また明日連絡するな。                いい彼女でいるからね。

    2007-07-30 03:06:00
  • 235:

    朝起きると、拓からメールが来ていた。                   【メール受信:拓】    おはよー!今終わったあ!まだ寝てるー?                 急いでメールを返した。              【メール送信:拓】    今起きたで!おはよう!お仕事お疲れ様っ!                送り終わると電話がかかってきた。                    ――――チャラ―♪――――                        「はーい」       《おはよー!》     「おはよ!お疲れさまあ!今から帰るんー?」   《疲れたあー。今からちょっとお客サンの買い物付き合う約束やねん…》    「日曜やのに大変やなあ…」                       少し胸が痛んだ。                《40位のおばちゃんとやからな!梅田で待ち合わせ2時やからちょっと会えるねんけど、今から行っていい…?》         「うん!ご飯作って待ってるわあ」                    拓と会える。それだけで嬉しかった。       それに、拓は今までお客さんと何処に何をしに行くとかあたしに言ってくれなかった。心配させないように気を使ってくれてるのかな

    2007-07-30 03:18:00
  • 236:

    お味噌汁と肉じゃがを作って待っていると拓が来た。            《おじゃまします》   「はーい」       《ご飯やあっ!めっちゃ嬉しい。》                    にこにこ嬉しそうにご飯を食べる。        《美味しい!やっぱり彩香料理うまいよなあ》               何を作っても美味しいって食べてくれる。そんなところも凄く愛おしかった。             二人でコンビニにお菓子を買いに行く。いつものお礼だと言って、たくさんゼリーやお菓子を買ってくれた。             「ありがとう!」    《いーえっ》      拓も幸せそうに笑っていてあたしは本当に嬉しかった。

    2007-07-30 03:24:00
  • 237:

    ある日の朝、学校に里菜と歩いていると拓から電話がかかってきた。                 「もしー?」      《もしもし?おはよー!今仕事終わったあ》    「お疲れ様っ」     《めっちゃ酔ってんねん(笑)今何してるーん?》 「大丈夫…?今学校行ってるでー」        《学校かあーいつ帰ってくるん?》        「今日は4限までやから5時くらいーでもそのあとバイトやねんっ」     《そっかあ…わかったあ…バイト終わったら連絡ちょーだあーい♪》     「うん!ゆっくり休んでな!」                      会おうとしてくれたんかな?なんかほんま、あたし彼女なんやな…      嬉しい…。

    2007-07-30 03:32:00
  • 238:

    里菜に拓さんー?ラブラブやんって冷やかされた。             「うんっ」       素直に幸せだと言った。             〔よかったなあ♪〕   里菜は笑顔で答える。              「なんか、いろんなところで拓が頑張ってくれてるんがわかるねん。」    〔例えば?〕      「この間、里菜とクラブ行ったやんかあ?」     〔うん!この間の土曜日な?〕          数日前、里菜と久しぶりにクラブに行った。                 クラブに行くと拓に言うと、こんなメールが来た。   【メール受信:拓】    変な男に着いてったらあかんで!帰ったら電話ちょうだい!気をつけて行ってらっしゃーい                   付き合う前、絶対こういう事は言って来なかった。 楽しんできてなってメールが来たハズだ。                  「それにな、里菜と別れた後電車乗る前に拓から電話きてん」        〔うんうん〕      ニヤニヤしながら里菜が相槌をうつ。

    2007-07-30 03:43:00
  • 239:

    「まだ遊んでるん?って。心配してくれたみたいやねん。仕事中やのに電話くれてん…なんか、付き合う前にな、絶対せえへんかった事してくれるんよ。頑張ってくれてるんやろーなって思う…」                    〔彩香の事ほんまに好きなんやろ!ノロケうざいわー(笑)〕         ケラケラと里菜が笑う。               ノロケかあ…(笑)                ごめんなさい(笑)

    2007-07-30 03:48:00
  • 240:

    バイトが終わって拓にメールした。                      【メール受信:拓】     お疲れさまあ!飯でも行く?                       【メール送信:拓】     うん!                     何もかもに拓の変化を感じるよ。愛情を感じる。  ありがとうね…なにもかも                        待ち合わせをして居酒屋に入る。         たわいない話をしていたけど、なんとなく拓は元気がないように思えた。               「拓元気なくない…?なんかあった…?」     心配になった。

    2007-07-30 03:53:00
  • 241:

    《んー…。なんか、あるお客サンがな…異常なくらいメールとかしてくるねん。寝ててメール返せんやったら、もうおんなじメールを何十件も。最近電話に留守電も増えてきて…ちょっと疲れて…》                       聞いてて腹がたってきて、「なんそれ!あたしがその人におんなじ事したろか!したら拓が嫌なんわかってくれるやろっ…そんなんあたし怒ったろか?!」  思わず言ってから後悔した。嫌な言い方してしまった            「あ…ごめん…」                《あははは!(笑)彩香がしても怖くなさそーやー》拓は何故か大爆笑していた。           《ありがとう、元気出たわー》          八重歯を出して笑う姿を見て安堵する。                  ちょっとくらい役に立てたかな…

    2007-07-30 04:03:00
  • 242:

    少しでも拓の力になりたくて、少しでも拓に笑って欲しくて。                    けれど何をしてあげればいいか、何を言ってあげればいいか、あたしには分からなかった。                   たいした力になれなくても拓の足を引っ張る事だけはしたくない。      
    彼女になっても、自分から会いたいとはとても言えなかった。        けれど今になって思えば、ただ怖かったんだと思う             お客さんと約束あるねんって断られるのが怖かった。            言葉には出せなかったけどずっと思ってたから。  (あたし以外のコに優しくしないで)                   拓のためにできる事がお客さんのほうがたくさんある事もわかってた。    あたしよりもお客さんを取る事が拓のためになる事も            わかってたんだよ…

    2007-07-30 04:14:00
  • 243:

    拓と付き合い始めた1月。拓にとって酷く大切な一ヶ月だったんだと後で知る。            1月の終わり、拓が仕事始まる前にうちに来てご飯を食べていた。      元々彼女とも頻繁に会わないと行っていた拓は、この三週間の間に忙しい時間を縫って週に3、4回あたしに会ってくれていた。              《今月なーNo.1とれたら主任になれるねん》    テレビを見ながら、拓がボソッと呟く。                   「ほんまに?!凄いなあーっNo.1とれそうなん?」             《締日で決まるなー》  難しい顔をしている拓を見て、はっと思いついた。 「あたしちょっとくらいなら助けれるよ?!…たいした事出来んけど…」               テレビから視線をはずして、驚いてあたしを見る。

    2007-07-30 04:35:00
  • 244:

    ――――――――――――後悔が身体を支配する              もう何を思ったって遅いのに           あたしはなんの固定観念に捕われていたんだろう              タブーばかり決め付けて  侵される事を恐れて               もっとしてあげれる事              たくさんあったね                見栄もプライドも不安もすべて捨て去って      ただ真っすぐ走ればよかった。                      それでも                    行き着く先があなたとの未来だったかは      わからないけれど。
    ――――――――――――

    2007-07-30 04:54:00
  • 245:

    ソラ

    あげ(`∀´*)?

    2007-07-30 08:46:00
  • 246:

    名無しさん

    ァゲ??ホンマ泣けるゥ?

    2007-07-30 13:56:00
  • 247:

    拓の出勤時間になり、拓を見送りに外に出る。               《ごちそーさまっ》               「いいえ!てかあたしこんな格好で一緒おったら明らかおかしいでなあ…この辺に住んでるお客さんおらへん?」         いつもスウェットで拓を見送りに出ていたので、誰かに見られたら困る事に今更気がついた。                    《いてるけどだいじょーぶやで》         心配しんなよって笑う。             「妹やってゆーときよ!」            《そんなん言わへんよ。会ったら彼女やでってゆーわ。俺の客そんなんで怒らへんから》        「……そんな事ないやろお…」                      今度から一緒に外に出る時は綺麗にしておこうと自分に約束した。                  けど、拓が彼女やって言うって言ってくれた事、凄く嬉しかったよ。                 本当に                     優しいね。                   あたし心から幸せだった

    2007-07-31 00:54:00
  • 248:

    ソラさんあげてくれてありがとう?めっちゃ嬉しいです?カキコミみると頑張ろうって思います?
    256サンもありがとう?頑張りますね?

    2007-07-31 00:58:00
  • 249:

    悲劇は突然訪れる。締日が終わった2月1日の朝。             No.1とれんやった                そのメール以来                  拓と連絡がとれなくなった

    2007-07-31 01:01:00
  • 250:

    大丈夫?ってメールをしても返ってこない                  電話も通じない                 ショックを受けているんだろう事はわかってた。    今あたしはただ待っているべきなんだという事もわかってた。                    連絡が取れない中一週間が経った。                    元気してるのかな…               大丈夫なのかな…                あたしじゃ力になれないのかな…                     生きてる…よね?

    2007-08-01 00:12:00
  • 251:

    例えば         拓の身が危険に晒されて、病院に担ぎ込まれていてもあたしには知る方法がない。                       例えば         拓が死んでもあたしはわからないんだ。                  不安が募る。心配で頭がおかしくなりそうだ。   人なんて簡単に死んじゃうんだよ…        ねえ拓わかってる?               あたしは拓の事を何にも知らない。        何処に住んでいるのかも、本名が何なのかも、交友関係ですら何にも知らない。            ClubCoalのホストで、陽日拓と言う源氏名しかあたし知らない。                    いつになったら連絡が来るのかもわからない

    2007-08-01 00:21:00
  • 252:

    携帯は肌身離さず持っていた。          授業中も、バイト中も、お風呂にもトイレにも。                学校に行って里菜達とお喋りしていてもどこか上の空だった。                    〔彩香なんか元気ないで?どうしたん?〕     皆で放課後話をしている時に、里菜に言われた。              もう連絡が切れてから10日になる。不安の限界が来ていた。                     「実は…」       事の経緯を説明する。              もしかしたら俗に言う【飛ぶ】という事態ではないかとさえ思っていた。               拓の身が心配なのと混じって、あたしは本当に彼女なのかと不安になっていた。【飛ぶ】と言う事は拓はもうCoalの従業員でさえない。あたしが【色】とか【育て】だったなら、あたしに連絡する事はまずないだろう。

    2007-08-01 00:30:00
  • 253:

    最近ホストサイトを見て、そういう営業方法がある事を知った。                      店に呼ばれてないから…そんな言い訳もう通用しない。                       違う。拓を疑うな!   信じられなきゃ彼女だと名乗る資格もない!                〔辛いやろうけど待つしかないなあ…そのうち連絡来るで!〕        里菜に元気づけられる。             [なんで連絡くれへんねやろな?!彩香不安なるんくらいワカラヘンの?!]   麻美が言う。                  「ショックなんやと思うねん…ずっと頑張ってたし…」 わかってる。ショックだよね拓。                       {せやけど…元気してんのかくらい気になるなあ} 緑も言う。                   「うん…なんか、自分が情けないねん。拓がしんどい時に、会いたいって思って貰えん自分が情けない。」本当情けない。頼って欲しい。悔しいってあたしに当たって欲しい。どんな愚痴だって聞きたい。

    2007-08-01 00:43:00
  • 254:

    [鬼電してみたら?]  麻美に言われて首を振る。            「そんなんされるの嫌やと思う。毎日一通メールは送ってるけど…」                  〔待つしかないでな…〕             「…うん」                               悔しい。        淋しい。        情けない。       怖い。         負の感情に覆われながら、2週間が過ぎた。

    2007-08-01 00:49:00
  • 255:

    バイトを終えて家に帰って、明日の予習をしていた。             携帯が震える。                 メールが一件届いていた。             【メール受信:拓】    ずっと連絡とれんくてごめんな。携帯放置して名古屋行ってた。今日帰ってきてん。ほんまにごめん…              「拓だ…」       安心で涙が出そうになった            電話したいのを堪えて、メールを送る。メールしてきたって事は電話はまだ出たくないって事だろう。                 【メール送信:拓】    いいで!何回もメールとかしてごめんな。元気なった?            携帯が震える。                 【メール受信:拓】    だいぶ元気なった!今日今から会える?行ってもいい?                       【メール送信:拓】    いいで!待ってるわ!              拓に会える…      嬉しい

    2007-08-01 01:03:00
  • 256:

    ピンポーン                    チャイムが聞こえた。    オートロックを解除する。               《おじゃまします》   スーツを着た拓が入ってくる久しぶりに見る拓はなんだか痩せていた。                 「よっ!ご飯食べる?」 いつも通りに振るまった。            《うん、ありがとう》  弱々しく笑う。                 《ごめんな。長い間連絡とれんくて。連絡しなあかんって思いながら、どうしても出来んやった。》               「いいで。しんどかったやろっ…」                    ごめんと行ってまた泣きそうな顔をして笑う。               「いいってえ!今日出勤?」           胸が痛くて明るく言った。            《うん。今日から復帰するわ》                      「そっか。無理せんようにね。なんも出来んけど愚痴くらい言ってな…」               ありがとうって笑ったけど辛そうだった。

    2007-08-01 01:15:00
  • 257:

    3日くらいしてまた連絡が取れなくなった。                今度は4日くらいで連絡は来たけれど、連絡が取れない間、またいろんな感情に押し潰されそうになった。            同じ事が数回続いた。                          「ねえ…なんで連絡とれんのん?連絡とれへん事がどれだけあたしを不安にするかなんでわかってくれんのん!いっぱい連絡してくれなんて言ってないやん!あたしに一回メールする事がどれだけ嫌なんよ…」   始めと同じように家に来ていた時、淋しくて怖くて不安で心配で思わず口をついた。                      下を向いて       《ごめん…》      それだけ呟いた。                謝らなくていい     ごめんなんて言葉が聞きたいんじゃない                  不安なんだよ…                 拓あたしの事      ほんまに好き?

    2007-08-01 01:26:00
  • 258:

    不安だった。                  好きなら辛いとき会いたいって思うんじゃないの?             どうして何も言ってくれないの?                                 付き合ってからも、拓はあたしに全く手を出して来なかった。                    どうして?                   何考えてんのか                 全然わかんないよ

    2007-08-01 01:29:00
  • 259:

    ある夜拓から電話が来た。            「はい」        《もしもし!今から行ってもいー?》       「いいけどどしたん?」 《同伴予定なくなって時間できてん!》                  「わかったあー待ってるね」                       心のもやもやがいっぱいになってきた。                  拓が来て、二人でダラダラしていた。        言わなきゃ始まらない… 「ねえ拓、ちょっと真面目な話してい?」     《なにー?》      キョトンとしてあたしの方に向き直る。                    「拓はさ…同伴予定潰れて時間が開いたとかじゃなくて、ただあたしに会いたい時って…ないの?」               《………》       押し黙る。                   なんか言ってよ…    あるよって言えばいいだけじゃない

    2007-08-01 01:39:00
  • 260:

    《俺な…》                   なに…?        《刑務所入ってる訳ちゃうし、時間作れるやん。会いにいけるやんって思うんよ》                       《せやけど、急に客から電話あって行かなあかんくなったりするから…簡単にゆえんくて。》                  《嫌な想いするやろ…》             拓の言葉を聞いて胸が痛んだ。あたし何ゆってるんやろ…          「ごめんナサイ…」                《なんで謝るんよ(笑)》            「嫌な事言ったから…」             《気にしすぎ(笑)彩香、会いたいって一回俺にゆーたときも、すぐ困らせるよーな事言ってごめんって謝るやろ。そんなんで困らへんから。だいじょーぶやから。普通に嬉しいから。》            ごめん…        「うん…ありがとう」              《ごめんな。嫌な想いさして。》         また泣きそうな顔をして、彼は笑った。

    2007-08-01 01:51:00
  • 261:

    ――――――――――――あたしずっと今まで   不可解な行動や言動も全部優しさ故の事なんだと  思ってたんだ                  あまりに優しすぎて   人を傷つける事が怖いからなんだろうって。                そんなあなたが     好きだった。                  勘違いだったかな    そうかもしれないって今は思う。                     けれどやっぱり     勘違いではなかったと  信じてるよ。                  見えないものは信じるしかないんだって      そう思うから
    ――――――――――――

    2007-08-01 02:02:00
  • 262:

    何が正しいかなんて誰にもわからない。      何が真実なのかも誰にもわからない。                   信じるしかない。    愛情は感じるもんだよね             不安も淋しさも消えないけれど、あたしは信じるから            嫌な想いさせてるのはあたしのほうだ。      ごめんね拓                               きちんと服に着替えて見送るときに        《何処にも連れてってあげてなくてごめんな。時間ちゃんと作るから》    拓はあたしにそう言った。            負担にならないように決めたのに。        ごめんね        本当にごめん                  「ありがとう。無理しやんくていいで!会いたい時に会いに来てくれたらそれが嬉しいわあ」      頑張って笑うと、いつも会いたいよって拓も笑った。

    2007-08-01 02:11:00
  • 263:

    愛しくて恋しくて    ありえないくらいに好きだった。                     結婚したいと思えたのは初めてだった。                  言ってくれる全ての言葉。してくれる全ての言動。 全てが愛しくて     全てが恋しかった。               そのぶん疑う自分が嫌だった。                      笑って欲しい      幸せでいて欲しい    ずっと元気でいて欲しい             あたしに何ができるだろう少しでも助けになれる事ってなんだろう                  答えは出ていた。                拓の働くホストクラブに通う事

    2007-08-01 02:21:00
  • 264:

    名無しさん

    しおりぃ(★´・З・)ノ

    2007-08-01 13:41:00
  • 265:

    しおりありがとうございます?カキコミ本当に嬉しいです??沢山の方に読んで頂いてありがとうございます

    2007-08-02 01:24:00
  • 266:

    ある日バイトを終えて家に帰ろうと歩いていた。               今日は早番だったので10時にバイトを終え、CDを見ようとTSUTAYAに寄った。             〔お姉さん、夜のバイト興味ないー?〕       スカウトの人に話し掛けられる。           いつもはスルーするけれど、少し話を聞いてみた。  〔時給も待遇もいいところ紹介すんで!連絡先聞いていー?興味あったら連絡ちょーだいや!〕     「…うん」       連絡先を交換する。   悪い人ではなさそうだったし、夜の仕事をしようかという事は、頭の中にあった            少し無駄話をして、その人と別れTSUTAYAに入った。            「あれ?」       見覚えのある後ろ姿。              「拓!」        拓がいた。

    2007-08-02 01:34:00
  • 267:

    拓は気付いていないのか振り向かない。      走り寄ろうとした時、後ろから甘ったるい女の人の声が聞こえた。      〔たーくー!お待たせえ☆レジ混んでて遅くなったあー〕          《おう》        女の人の呼び声に反応して拓が振り返る。                 やば…                     隠れようとした瞬間拓と視線がぶつかった。                なんとも言えない顔をしてあたしを見る。                 知らないフリすべき?               話かけるべき?

    2007-08-02 01:41:00
  • 268:

    反応に迷っていると、その女性は拓に走り寄った。 何食わぬ顔で腕を組む。 〔たーくっ!行こうやぁー♪カリナお腹減ったょっ〕            《うん》                    ……………                   TSUTAYA来なきゃよかった            〔何立ち止まってるん?あの子知り合い?〕    カリナと言うその女性はあたしをギロリと睨んだ。              このままスルーするのも不自然だ。ちゃんとしろあたし「拓サンお久しぶりです」 愛想笑いを取り繕う。              《…久しぶり》                 「綺麗な人と一緒やなあ!じゃあまた暇出来たらお店行くな!」       元気に言ってみる。   「ご一緒のところすみませんでした」       女の人に会釈をし、さっと場所を移動した。

    2007-08-02 01:52:00
  • 269:

    「あの子お客ぅ?見いひん顔やなぁーま、行こうゃ」拓を引っ張りながらTSUTAYAを出て行った。                胸がムカムカする                  うまくやれたかな…               腕組んでたな…いいなあ。            彼女って紹介してくれやんかったな                    当たり前か。そんな事あの子の前で出来る訳ない。 したらいけない。                でも…悲しい                  涙を堪えてTSUTAYAを出る。さっきのスカウトの人がまだ近くにいた。

    2007-08-02 01:58:00
  • 270:

    〔あれ?彩香ちゃん!〕 スカウトの人が走り寄ってくる            〔TSUTAYAおったん?もー帰るん?〕                   言葉を発すれば涙が溢れそうで黙る事しか出来なかった。                      〔どないしたん?なんかあった?あ。俺の話すんそんなに嫌?ごめんなごめんな〕           一人で焦ってごめんと謝る。名前…聞いてなかったな            「ちが…違うよ。名前…なんだっけ…?」     〔俺?ゆうき!俺のせいじゃないん?焦ったあ(笑)どしたんよ?〕                 「ゆうき君のせいちゃうで。ごめんな、なんでもないから…帰るね」     〔え?帰るん?一人で危なない?送ろうか!〕

    2007-08-02 02:06:00
  • 271:

    大丈夫、ありがとうと言ってその場を去った。               頭の中はさっきの女の子の事でいっぱいで何にも考えられなかった。     綺麗な人やったなあ…20代前半くらいかな                 大丈夫。        辛くなんかない…    覚悟決めたハズだ                家に着いてぼーっとしていると、拓からメールが届いた

    2007-08-02 02:11:00
  • 272:

    【メール受信:拓】    さっきはごめん。                …それだけ?                  なんのフォローもしないの?             メールは返さなかった。              大丈夫やで、気にしんなよそう言うべきだとわかってた。けれど言いたくなかった。気にしてないだなんて言いたくなかった。               気にするよ       悲しくなるよ      悔しいもん       大丈夫って言いたくない             ――――チャラー♪――――            拓から電話がかかってきた。           今は取れない。                 大丈夫って笑えないから。

    2007-08-02 02:19:00
  • 273:

    けれど何回も着信を告げる携帯電話。                   「もしもし?」     電話を取った。                 《もしもし彩香?!寝てたー?》         やたらハイテンションな声がした。           《さっきごめんなあーびっくりしてすぐ反応出来やんかったあ!》                  なんでこんなに明るく言えるの?嫌な感情が溢れでてくる。イライラが止まらない             《彩香?聞いてる?》  「うん」                    《なんか…怒ってる?》             なあにそれ?      なんでわかんないの?              〔拓はぁ?ちょっと拓ぅぅ!カリナの拓はどこー〕 遠くであの人の声がする。            …もうやだ                   「ごめん切るね」    《え?ちょ…》     プツッ
                携帯の電源を落とした

    2007-08-02 02:29:00
  • 274:

    ホストと付き合えば仕方ない事だってわかってる。  こんな事なんともないって笑わなきゃ                   けど出来ない                  なんでわかってくれないんだろう。        優しい言葉を吐いたって、綺麗事言ったって、あたしの気持ちなんてコレっぽっちもわかってくれないじゃない                       嫌な想いさせてごめんなって誠意ある謝罪がどうしてないの?                    拓がわからない

    2007-08-02 02:37:00
  • 275:

    翌朝電源を入れると、3通メールが届いていた。               【メール受信:拓 3時】 電源切った?ほんまごめん。客とおったんが嫌やった?ごめんな…                  【メール受信:拓 8時】 本当にごめん。起きたら連絡ちょうだい。                 【メール受信:祐樹】   昨日スカウトした祐樹やけどわかるー?なんか昨日様子おかしかったからメールしてみた。よかったらメールちょうだい!                     祐樹にメールを返信して、学校に向かった。

    2007-08-02 02:45:00
  • 276:

    学校に行くために駅に歩いていると拓から着信が来た。           いい加減取らなきゃ…              「…はい」       《もしもし?!彩香ごめん…》          「……」        《俺酔っ払ってて…ごめんな》          「もう…いいよ」    《ごめんな…》     「あたしこそごめんね」             頑張れあたし。こんな事で拓に迷惑かけてどうするの。キスしてた訳じゃない。セックスしてた訳じゃない全然大丈夫だ                  《今から学校?》    「うん!お仕事お疲れ様」《うん。あんな、彩香突然やねんけど…明日かあさって店遊びこやん?》               …えぇ?                    《昨日俺とおったお客がな、彩香と呑みたいってきかへんねん。嫌やったらいいけど…》

    2007-08-02 02:59:00
  • 277:

    「なんで突然あたし?」             《昨日見て気に入ったらしい。たまに無茶言い出すねん…。彩香呼ばんとオーナーに言うってごねるねんな…うちの店のオーナーの娘やねんあの子。せやけど、ほんま嫌やったらいいから!》              行かなきゃいけないって事か…行かなきゃ拓の面子も潰れるかもしれない               「いいで。行っても」              《ほんまにごめん…》              「謝らんくていいで!拓悪くないやん。とりあえず今から電車乗るから…」              電話を切る。学校に行く気が失せて、来た道を戻った。                       気持ちが沈む。     本当は行きたくない。

    2007-08-02 03:11:00
  • 278:

    翌日の午前0時拓はあたしを家まで迎えに来てくれた                        《おはよう》      「おはようー」     二人で店への道を歩く。                         《彩香初回やからそんな金かからんし、帰りたくなったらゆうてな》     「うん」                    初めて拓の店に行く。お客さんと絡む拓を見るのは苦痛だろうと思われた。              【Club COAL】     白い看板と光るネオン。エレベータで3階に着く。                赤っぽい明かりが辺りを照らす。                                 〔いーらっしゃいませえ〕ドアを開けるとホストの人達に出迎えられた。                 なんだか気分が悪くなってきた。                     既に何席かに女の人達が座っていた。隣りにはスーツ姿の男の子。                   1番奥の席に通されると、異常なくらいに女の人達に凝視された。

    2007-08-03 00:11:00
  • 279:

    居心地悪いな…                 〔いらっしゃいませ〕  オシボリを渡される。可愛い顔をした男の人だった。             《彩香何飲む?飲み放題やからなんでもいいで!梅酒とかにしとく?》    「うん…」                   《お願いしまーす》   梅酒のボトルが運ばれる。 《水割りでい?》     拓はあたしの横に座って、カチャカチャと水割りを作っていた。                     〔いらっしゃいませーい〕再度掛け声がして振り向くと、カリナさんが入ってきた。

    2007-08-03 00:53:00
  • 280:

    〔あっ彩香ちゃーん♪〕 甘い声を発しながら同じ席に座る。あたしとカリナさんは、テーブルを挟んで向かいあって座っていた。              《おはよっカリナ!今日も綺麗やなあ♪》      突然拓のテンションが変わり、ギョッとして拓を見た。  〔せやろー拓ちゃん♪拓ちゃんも今日もカッコイイでぇ〕きゃっきゃっとカリナさんが言う。         カリナさんのボトルが席に運ばれる。         〔カリナいつものなぁ〕  慣れた手つきでオシボリを受け取り、違う男の子に言った。          《もお作ってもらっとーからっ!俺さすが(笑)》 ギャハハと拓が笑う。               いつもとこんなに違うんや…                       〔彩香チャーン、今日突然ごめんなぁっ。カリナなぁーどうしても一緒に呑みたかってんー〕        何処から声が出るんだと思うくらいの声で言う。  「いいえ!嬉しいです♪」笑顔を作った。

    2007-08-03 01:07:00
  • 281:

    カリナさんのカクテルが運ばれてくると、カリナさんがお手洗いに立った。                  《彩香だいじょーぶ?》 いつもの声で聞く拓。  「…拓、カリナさんの隣り座っときよ?あたし大丈夫やから。」        少し黙って、わかったと席を移動した。                  〔あれえ?拓チャンなんでこっち側いてんのぉ?〕  オシボリを手に笑顔でそう言った。         《さあなっ?なんでやろーなっ?》        〔カリナわかったしぃー♪〕二人で顔を見合わせて笑う             吐き気がしてきた。              [お邪魔しちゃっていいですかー?]       さっきの可愛い顔のコが席に来る。        〔あ!直樹ぃ!彩香チャンの隣り座ったってえ!〕              [お隣りいいですか?] 「どうぞ♪」      笑顔で言った。

    2007-08-03 01:17:00
  • 282:

    4人で話しをしていた。 一気ゲームをしてだんだん皆酔っ払ってくる。    カリナさんはヘロヘロになって拓にもたれ掛かる。    《カリナあかーん!》    拓がカリナさんの頭を持ってソファーにもたれ掛かかせる。            〔いいやぁん!拓のケチー!なあ彩香チャン?〕   「うん。いいやんね!」 話しを合わせた。                《彩香》        低い声で拓に呼ばれてビクッとする。                    そんな事言っても話し合わせるしかないやん…               [まあまあ(笑)]   直樹君が笑ってフォローを入れる。                       〔わかったぁー。直樹ぃリシャール2本持ってきてぇ!〕《カリナいーって!無理しんなあ!》        〔無理してなぁぃ!直樹はやくぅー〕       目を虚ろにしながらカリナさんがいう。

    2007-08-03 01:29:00
  • 283:

    拓と直樹君が目を合わせて拓が頷く。直樹君は席を立った。                     《カリナありがとうっ!ばり嬉しいわあ!》     カリナさんを見つめながら、極上の笑顔で呟いた。                           音楽が消えてスポットが暗くなる。         辺りが静まりかえる。              〔はーいこちらのお姫様からぁリシャール2本頂きましたぁ!ありゃーす!〕  マイクで誰かが喋ると、爆音で音楽が流れ、ホスト達が皆集まってきた。                   シャンパンコールが始まった。

    2007-08-03 01:38:00
  • 284:

    シャンパンコールが終わると、カリナさんは酔い潰れて寝てしまった。                     《直樹、ちょっと席外して。あと、カリナにブランケットかけたって》        〔わかりました〕                直樹君が席を外す。               《今日、ありがとう。ごめんな。でも、ホストの俺見て貰えてよかったわ…》              「いいよ。働いてる姿見れてよかったと思うから」 声を枯らして、酒を呑んで、あたしが知ってる拓とは別人だった。      「だいじょーぶ?お茶頼んでいーよ?」      酔っ払っている拓を見て心配になった。      《ありがとう。悪いけどお言葉に甘えるな》    そう言って拓は、お茶を取りに行った。

    2007-08-03 01:49:00
  • 285:

    〔ぅぅー゛〕      カリナさんが目を覚ます。             「大丈夫ですか?」   〔あれ?たくわぁ?〕  「お茶取りに行きましたよ!」                      辺りを見回してから、あたしを見た。       〔なあなあ、彩香ちゃんて拓のただの客?〕                えっ…                     「そーですよー(笑)」 笑顔を作る。                  〔ふーん。拓はカリナのやから。邪魔せんといてな。〕

    2007-08-03 01:56:00
  • 286:

    「………」                   なんて返せばいいか迷っていると、直樹君がやってきた。                      〔カリナちゃん起きてん?拓さんが呼んでたで?〕               ブランケットを手渡し、拓がいる方を指指した。   〔ほんまぁ?行ってくるーっ♪〕         カリナさんは席を立った。                         〔なんか言われた?〕  「えっ?!」      直樹君の言葉に驚いて直樹君を見る。                   〔異様な雰囲気やったから…〕          「そう?大丈夫やで!」 また笑顔を作る。                〔作り笑顔痛々しいで〕             「………」       なんだろう?この人…              「俺の事覚えてへんの?彩香ちゃん」

    2007-08-03 02:05:00
  • 287:

    ………………スカウトの人!                                                 「祐樹くん!!!」   今迄気が付かなかった!             〔酷いよなあーどんだけ俺存在薄いねんー(笑)〕             だってだってだって!  全然雰囲気違う!                「髪型も服装も全然ちゃうねんもん!なんでホストしてるん?!スカウトちゃうかったん?!」                    [ここの代表の後輩やって手伝いするときあんねん。本業はスカウト。客引き抜いていいって言われてるしな。ここのお客さんに、風俗紹介したりしてる。]               「へぇ…怖いな。びっくりやし!」                    [俺んがびっくりやし(笑)拓さんと知り合いやったんやー]                    《何盛り上がってんのん?》           拓がお茶を持って帰ってきた。

    2007-08-03 02:16:00
  • 288:

    「なんでもなーい」   焦って笑った。     《ふーん…》      訝し気にあたしたちを見る            [言ってもいーやん?あのね拓さん…]      「ちょっと!」                 《なんやねん?直樹ゆうてや》                      [彩香ちゃんと知り合いやったんですよ]     《知り合い?》     「てかカリナさんは?!」 《トイレ。いーからゆって》             [一昨日スカウトしてて声かけたんっす。そんだけですけどね(笑)]                  ふーんと言ってあたしを見る。         《とりあえず、彩香チェックしたからな。》      「うん」                    《直樹頼むな》     [わかりました]    席を立った。

    2007-08-03 02:27:00
  • 289:

    すみません…行が何度もズレて読みにくいですね?気をつけてます?本当すみません

    2007-08-03 02:29:00
  • 290:

    《直樹の事知ってたん?なんで隠すん?》     少し機嫌悪そうだ。   「さっき気付いたんよ!覚えてなかってんもん」  《スカウトって何するつもりやったん?》     「わかんないけど水しようかなーって…」     《それはいいけど…なんでなん?》                     「…なんとなく」                拓のホストクラブに通う為とは言えなかった。なんか恩着せがましいし                  《そか…》                   直樹が帰ってきて、伝票を拓に渡す。                   《延長なってもーたから…ごめんな》                   一万円札を渡して二千円お釣りを貰った。                 「帰るわ」

    2007-08-03 02:37:00
  • 291:

    《いこかー》      「じゃあね!」     祐樹君にさよならを告げて店を出る。                   〔ありがとうございましたあ!!!〕                   従業員の声を聞いてエレベーターに乗った。                《彩香ありがとうな》  「いいえこちらこそ」                          《あと…水はしやんときよ。せんでいいやん》   「………ん」                  エレベーターを降りると外はまだ暗かった。    「さむっ」       《気ぃつけてなー》   「うん、じゃあね、がんばってな」                    「拓ってカリナさんとな…」           《え?なんて?》    「なんでもないや。バイバイ」          《また連絡するな》               聞かないでおこう。疑うなんて拓に失礼だ。                あたしは拓が好き。   それだけで十分だ。

    2007-08-03 03:06:00
  • 292:

    拓と付き合い初めて1ヶ月半。                                  別れは突然訪れた。

    2007-08-03 03:08:00
  • 293:

    ――――――――――――あの時あたしたちはまだ付き合っていたの?                だとしたなら      手を離したのはあたしの方だ。                      何にも言ってくれなかった。いつもそうだったよね。             人付き合いが苦手だと言っていたけれど、思ってる事を口に出さないからだよ            今思えば全て計算づくだったのかもしれないけれど、            優しいだけだったんだと                         信じたい。                   それは今も変わらない。 ――――――――――――

    2007-08-03 03:14:00
  • 294:

    ソラ

    あげ(σ・∀・)σ+゜

    2007-08-03 13:38:00
  • 295:

    ソラさんいつもありがとう?本当うれしいです?

    2007-08-04 02:43:00
  • 296:

    《別れよ…もう彩香に嫌な想いさしたくない》               「嫌な想いなんかしてへんよ…」                     《彩香にこういう行動とらせたのは俺やろ…。お互いの為にならんで…》               お互いのためって…どういう意味?        あたしの事もう嫌なん?             《とりあえず今から同伴やからまた連絡する…》              数日、連絡は来なかった。            なんで?        嫌だ。         嫌だよ         こんな風になりたくて、距離置こうって言った訳じゃない!                     あたしの事が嫌になったならそう言ってよ。                こんな別れ方嫌だ!

    2007-08-04 03:02:00
  • 297:

    拓の店に行った次の日、知らない番号から着信があった。                      「もしもし?」     〔カリナやけど〕                なんで番号知ってるの?             「あ、昨日はありがとうございました。どうされたんですか?」                   〔突然ごめんやけどな。あんな、陽菜ってコ、知ってる?〕         「知らないと思いますけど…」          〔陽菜ってコの話拓から聞いたらカリナに教えてくれへん?〕        「ハイ…陽菜さん?がどうかしたんですか?」    〔彼女らしいねん。わからへんけど。彩香ちゃんは拓に色恋で会いに来た訳ちゃうみたいやったから、聞いとこ思って。〕                 彼女?                     どういう事?                  彼女はあたしだよね?              カリナさんのはったり?             勘違いだよね?                 ホストにはありがちなただの噂だよね?

    2007-08-04 03:12:00
  • 298:

    カリナさんの電話を切った後、携帯を操作して発信画面にした。                   《はいよー》      「ねえ。陽菜さんて誰?」《え?》        「陽菜さんて誰?!」              胸が痛い。苦しくてたまらない。何が本当かもうわからない。苦しい。    どうして?拓                  信じたいと思ってもあたしには自信がなかった。拓に愛されている自信。拓の彼女である自信。     カリナさんの言葉に頭をいっぱいにしていた。               《何の話?どしたん?》 言葉一つ濁さず拓はたんたんと述べる。      《なんもないで?彩香が心配になるような事なんもないで?》                    駄目だあたし。                 何を言っているんだろう。何を拓に聞いてるんだろ。あたし最近こんなんばっかり。                      〔…ちょっとの間距離おこ一週間後、連絡するね〕 信じられない自分が許せない。                      《え?なんで?なんでなん?》

    「また連絡するから」  電話を切った。

    2007-08-04 03:28:00
  • 299:

    《なあ、なんのための一週間なん…?》                  明日連絡をしようと決めた一週間になるという前の日、拓から電話がかかってきた。                      「最近あたし、あかんことばっかり言ってたから、時間おかなヤバイと思って」            落ち着かせようと思った。            綺麗な空気吸って、拓をまた信じて歩いていけるように、拓に嫌な思いさせないように…                    必要な時間だった。               けれどそれは間違っていたみたいだね。      別れようなんて、    お互いの為にならないなんて、          聞く嵌めになったから。             あたしが拓を疑う度に、傷つけていたのかもしれない            連絡してよって言う度に 嫌な思いさせていたのかもしれない。                   ごめんね拓。                              数日後、拓から普通にメールが来た。

    2007-08-04 03:36:00
  • 300:

    別れているのかいないのか            話はまだ途中だったはず。            拓はもう別れたと思っているのだろうか。     それとも、別れ話は流れたと思っているのだろうか。                        メールが来て以来、前と変わらず連絡をとりあっていた。                      拓は自分の気持ちを話さない。何を思ったのか全くあたしに言ってくれない。 全てうやむや。                             この中途半端な状態に耐え切れずにメールを送った。【メール送信:拓】     あたしたち今別れてるの?付き合ってるの?どっちにしても話したい…中途半端な状態、嫌やねん。ケジメつけようや…

    2007-08-04 03:45:00
  • 301:

    【メール受信:拓】    ごめん。まだわからん。ちょっと考えさせて                                        何日経っても答えは来ない。                                   疲れてきていた。    いつも待つ側。     どうして何もかもこんなに中途半端なん?     あたしが連絡を待ち続ける間、陽菜さんとかカリナさんとか…たくさんの女の子といちゃついているのかと思うと胃が張り裂けそうだった。                     連絡は来ない。                             もう                      いいよ。                                【メール送信:拓】    別れたいなら別れたいって言えばいいやん。    もういいよ。バイバイ

    2007-08-04 03:52:00
  • 302:

    【メール受信:拓】    別れるのはわかったけど、なんで怒ってるん?バイバイってなに?                              なにそれ?                   もう意味がわからない。             別れるのはわかったってなに?                      むしゃくしゃする    やる瀬ない気持ちに苛まされる。                     あたしそんなに無理な事言ってなかったと思う。  ちゃんとあたしと向き合って。                      ちゃんとあたしと話して。            あたしから逃げないで!             あたしに文句も言わない。あたしに我が儘も言わないまるであたしに何の興味もないかのようで、悲しくてたまらなかった。                【メール送信:拓】    今までありがとう。たくさんごめんね。拓に会えて幸せだった。バイバイ

    2007-08-04 04:00:00
  • 303:

    ――――――――――――彼女の手には細い手には不似合いな男物の指輪。              あなたがあたしの家に忘れて行った事がある、あの指輪によく似てる。                もうわかってしまった。             なにもかも。                  きっと始めから、見つけていたんでしょ?     沖縄で聞いた、あの場所。            その場所に一緒に立つのはあたしではない。                なにもかも                   わかってしまった。

    2007-08-04 04:07:00
  • 304:

    セツナ

    久アゲ

    2007-08-05 20:59:00
  • 305:

    セツナさんお久しぶりです?あげて頂いてありがとう?

    2007-08-06 02:06:00
  • 306:

    拓と別れて数日間、あたしは学校を休んだ。                鳴らない携帯に心が痛んだ。拓限定の着信音。聞こえない。                     さよならを言ったのはあたしなのに。なんて身勝手なんだ。                     バイトにも身が入らなくて、トレーに乗せたビールをひっくり返し、店長に怒られた。            ぼーっとしているあたしに今日はもう帰りなさいと、店長は言った。                 トボトボと歩いて帰る。              何してるんだあたし。              細く薄暗い道に入った。                         タッタッ…         足音に振り向くと、小太りの男が立っていた。   〔お姉さん遊びいこー〕 サラリーマン風の男。顔を真っ赤にして息を切らしている。                     気持ち悪い                   無視をした。      〔無視しんといてや〕  腕を掴まれた。     ハァハァと息が荒い。                無言で振りほどく。               〔今俺勃起してんの〕  男は自分の下半身を撫でる〔今からしようよ〕               気持ち悪い!      変質者?!                   辺りには人もいない。              この人ヤバイ       走って逃げた。     男は追い掛けて来る。  〔待てや!〕      追い付かれて腕を掴まれた。                       やだ!怖い!
                無我夢中で相手のスネを蹴った。明るい街に走った。

    2007-08-06 02:31:00
  • 307:

    大通りに出て後ろを振り返ると男はもういなかった。            いつから着いて来てたの?ストーカー?!     やだやだやだ!!    気持ち悪くて怖くて、家に帰れなかった。                 恐怖で泣きそうになって、無意識に電話をかけた。             発信先は                                拓。                      《はい…》       「拓…」                    《どうしたん?》    「変な人…いてて…」              今あった事を話していると頭が冷静になってきて、あたしは拓にさよならを告げたんだと思い出した。  電話なんかして、なんて身勝手。                     「ごめん…バイバイって言ったのに電話して…」  《何ゆーてん。そんなんええよ!それよりだいじょーぶか?今何処なん?行こうか?》                                             拓は変わらず優しかった。            「大丈夫…ごめんね。友達んち泊めて貰う…」               《そか…そーしたほうがええよ…いつでも連絡しといでよ?》

    2007-08-06 02:47:00
  • 308:

    あたし、拓に甘えてた。 拓ならなんでも許してくれる気がしてた。                 あたしはいつも自分勝手で拓が好きなのに思い通りにならない苛立ちや、以前の親しい関係と変わっていく淋しさから、何度も拓にさよならを告げた。                それでも文句一つ言わず、《だいじょーぶ》って言ってくれる拓に甘えてたね。            その度に、拓とは何事もなかったかのように連絡を取って家にきたりした。              拓からたまに遊ぼうって連絡があった。                  前のように毎日連絡をとる関係ではなくなっていたけれど。         頻繁に連絡を取らなくなって、以前のように拓の状況がわからなくなった。              一度店に行って以来、祐樹と親しくなって、連絡をとる度拓が元気にしているのか聞いた。                   数日間店を休んでいると聞くと、心配で心配で、拓に連絡をした。      《ぼちぼち元気なってきた。だいじょーぶやで》  拓はそう言っていた。

    2007-08-06 03:03:00
  • 309:

    あたしは2年生になった。            〔よお!久しぶり!〕  祐樹から電話がきた。  無駄話をする。祐樹の彼女の話や仕事の話。近況報告を適当にした。                 〔この前COALにまたヘルプで行ってんけどなあ、拓さん、また店休んでるらしいでえ!最近病んでるっぽい〕祐樹は、あたしの気持ちを知っていて、拓の事を必ず話してくれる。     「ほんま…なんでなん?」            〔拓さん来月主任なるんやって!就任イベントするらしい。それでちゃう?〕             あたしが心配したって仕方ないのに、心配でたまらなくなる。                    【メール送信:拓】     拓元気?だいじょうぶ?                        拓にメールや電話をするときは緊張する。迷惑にならないか不安になるから。  メールを送ってソワソワしていると、携帯が着信を告げた。            【着信:拓】

    2007-08-06 03:17:00
  • 310:

    「もしもし?」                 《彩香?》       「どしたん…?」                《今から行ってい…?》 「どしたん?元気ないやん…全然いいで?だいじょーぶ?」         《うん…夜遅くごめんな》            しばらくして拓がやってきた。                      「何食べたい?」                《ハンバーグ》     弱々しく笑う。                 やっぱり元気ない。               「なんか…あった?言いたくなかったら無理にきかへんけど…」                   いつものように美味しいと言いながらご飯を食べる拓は、箸を止めて小さい声で呟いた。        《主任…なるんまた無理になった》                    「どして?」                  《未収飛ばれて、売り上げ全然なかった…長い付き合いの客で、そんなんせえへんコやったのに…》               「信用しててんな…」              《うん》                    拓は俯きながら箸を動かす

    2007-08-06 03:29:00
  • 311:

    《その娘の実家連れに教えて貰って親にも話して、お願いやから未収ちゃんと払ってくれって言ったら、なんであんたなんかに払わなあかんのって言われた。》            「は?」                    《めちゃくちゃ言われて、もういいわってそのまま帰ってんけど…》                 「………」                   《俺…ホスト辞めよかな》                        「なあ拓…拓は悪くないで?あたしは拓の事ほんまに好きやで。今回その娘がした事は人として最低な事やけど、絶対拓の事好きやったんと思うよ。」                拓は黙って聞いていた。             「他のお客さんだって従業員の人らだって、拓の事好きやよ。裏切られる事もあると思う。せやけど、皆待ってるで。拓と一緒にいるのが幸せな人らが待ってるで。やりたい事あんねやろ?せやからホストやってるんやろ?自分のために頑張って。後悔しんように、諦めずに頑張って。拓なら絶対夢叶えれるから」               励ましになったかわからない。こんな稚拙な言葉が、拓が今欲しい言葉かどうかわからない。けど、後悔しないで欲しかった。               《…ありがとう》
    俯いたまま、拓は言った

    2007-08-06 03:47:00
  • 312:

    拓はホストを頑張っているようだ。        あの日から数日後、ホスト頑張るってメールがきた。             そんなある日里菜から電話がかかってきた。                「はーい?」      〔彩香ぁ…〕      里菜の泣き声が聞こえた。            「どしたん?!」    〔先輩と別れた…〕               え?!なんで?!                里菜と笠井先輩は、付き合い初めてもうすぐ1年を迎えようとしていた。               「なんで?!大丈夫?!今家?今から行くから!」             急いで里菜の家に行くと、目を真っ赤にした里菜がいた。                      〔あたし…浮気してもーてん…〕                     え?          驚いていると、里菜は泣きじゃくりながら話をした。

    2007-08-06 04:06:00
  • 313:

    〔先輩、就活時期やんか…忙しくてなかなか会えやんくて、あたしがよく文句言ってたんよ…。先輩仕方ないやんって、それしか言わんくて、淋しくて。喧嘩ばっかしてたんよ、最近〕             知らなかった…                 〔この間、彩香バイトで参加出来やんかったときの新歓の飲み会で、1年生と意気投合してもーて…あたしも酔っ払っとって、ャってもーた…〕                   「先輩にばれたん?」              〔サークルの誰かに、ホテル入るん見られたらしい。ほんで先輩の耳に入って…別れるって…いややぁぁ〕              泣きじゃくる里菜を抱きしめた。里菜が先輩を本当に好きな事は、あたしが1番よくわかってる。よほど淋しかったんだろう…元々里菜は、浮気なんてするこじゃない。                    泣き付かれて寝てしまった里菜に布団を被せて、先輩に電話をした。

    2007-08-06 04:17:00
  • 314:

    『はい』        ワンコールで先輩は電話に出た                        「里菜と別れるんですか?」           『あー聞いたんか』   「…ハイ」                    『別れる。何言われても意思は変わらん』     「里菜、簡単に浮気するコじゃないですよ!よっぽど淋しかったんですよ…」 『そんなんわかってる』 「じゃあなんで?…許せないですか?」                  はあ、とため息をついて先輩は言った。      『他に好きなコいてる。けど里菜の事好きやし、大切にしていこ思ってた。今回の事でその気持ちが薄れた』           「誰ですかそれ…1年近く付き合った里菜より大切やってゆうんですか?!」             『どっちがいいって比べて出した結論じゃない。里菜とはもう付き合えん。それだけや。』       「なんそれ?!意味わからん!」         里菜の気持ちを思うと、切なくてついキツイ口調になった。          『彩香が里菜を大切に思ってるんはわかってるから。俺もこれからも大切にするで。後輩としてな』               何も言えなかった。   「ごめんなさい」    『謝んな。ちゃんと里菜の事も考えてくから。おまえは心配すんな。里菜の側にいてやって』      「はい」                    里菜ごめんね。力になれんくて…

    2007-08-06 04:37:00
  • 315:

    学校に来ない里菜の家に毎日通った。麻美と緑と一緒に、うちらがいるからって励ました。                   笠井先輩とも、毎日連絡を取っていた。                  時間が経つにつれ、里菜は元気になってきて、先輩ときちんと話を出来たようだった。                     里菜との別れ話以来、先輩と急激に親しくなった。 別れて4ヶ月、里菜はバイト先の人に告白されたらしく、付き合う事にすると嬉しそうに言っていた。              先輩と飲みに言った時、それを報告すると、    『よかったわ』     と笑っていた。                 「先輩は好きな人とどーなん?」         『どうやろうな。』   「告白しないん?」   『まだ時期ちゃうな』  ふーんと、その時は気にもとめなかった。

    2007-08-06 04:47:00
  • 316:

    名無しさん

    頑張って?

    2007-08-07 08:40:00
  • 317:

    ただ好きだった。                                        それだけなのに。                                        「ヨリ戻されへん?」               《……ごめん》                 「あたしの事もう好きやない?」                     《好きやけど今は付き合えん…ごめん。今は誕生日も控えてるし、そのうちちゃんとするから》                                         嘘ツキ

    2007-08-08 02:15:00
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