小説掲示板■空を見上げて■のスレッド詳細｜夜遊びweb関西版

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■空を見上げて■

• 1:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  『好きなもん教えて？』
  『空！だってな、空の下には大切な人が皆いてるねんで？俺らって大切な人と同じ空の下におんねん。それってすげーことやん？だから淋しいとき俺は空を見上げるねん！！』ｱﾀｼは今、空を見上げてる。ｱﾝﾀも今、この空見てるん？

  2006-05-28 18:25:00
• 2:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  『ｱﾀｼにはｱﾝﾀしかおらへんねん…だから離れんといて？』翔太に聞こえる訳がなかった。だって口に出してへんねんから。ｱﾀｼはいつも心の中で叫ぶだけ。それでも、本間に運命の赤い糸とかゆうもんがあるなら、心の声も聞こえると思うねん。

  2006-05-28 19:37:00
• 3:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  『梨奈…幸せなれよ？』そう言うて翔太はｱﾀｼに背を向けて歩いて行った。翔太が言う幸せ。その言葉は翔太と同じ立場におられへん事を意味した。そんな幸せ、ｱﾀｼは望んでなかった。

  2006-05-28 19:48:00
• 4:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  翔太が別れたいって言うた理由なんか知らんかった。考えたくもなかった。せやけど、やっぱ世の中って広いもんやねん。情報なんかは常に行き交ってる。それが噂か真実かなんか第三者には分からへん。それでも自分の周りの情報となると、知りたい思うもんやねん。

  2006-05-28 19:53:00
• 5:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  『梨奈の元彼の翔太くんおるやん？翔太くん今日、駅で女連れて歩いてたで！』友達のみゆきが言った。『やっぱなぁ。振られた原因女やったんやぁ。やられたわぁ』ｱﾀｼはため息をついてみゆきに言った。

  2006-05-28 19:57:00
• 6:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  ずっと気になってた。翔太が何で別れを切り出したんか、翔太は今どこで何してて誰とおるんか。人間なんかそんなもん。綺麗事並べて幸せなれや、へったくれや言うけど、そんなうたい文句ｱﾀｼには効かへん。だから男信じれへんねん。やけど、あの時翔太が空の話してくれた時、ｱﾀｼはもっかい男を信じてみようと思ったんや。

  2006-05-28 20:04:00
• 7:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  ｱﾀｼの親はいわゆる教育ママとか言われる人でｱﾀｼは親に縛られ続けてきた。親に気にいられるためにいい子にしてた。そのせいか分からんけど何をするのも周りの目を気にするようになった。でもそんなんが嫌になってｱﾀｼは15才ん時に家出して風俗嬢になった。

  2006-05-28 20:10:00
• 8:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  欲しいものは全部買った。淋しなったらホストに行った。薬もした。それでも心の中にぽっかりと空いた穴は塞がる事がない。ｱﾀｼは愛された事がないんやから。どんなんが好きとかどんなんが愛とか、そんなん分からんかったし分かりたくもなかった。

  2006-05-28 20:14:00
• 9:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  どんなに愛しても、愛される事はない。親にさえも。それがｱﾀｼのコンプレックス。

  2006-05-28 20:17:00
• 10:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  それから人は金で操れる。それがｱﾀｼが学んだ事やった。それからのｱﾀｼは銭、銭、銭やった。何をするにも金の事が頭に離れんかった。淋しい時は金を使ったらええ。買い物とかホスト行くとか。それがｱﾀｼの考え。

  2006-05-28 20:37:00
• 11:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  それでもずっと淋しかった。物足りんかった。イライラした。それやのに翔太の空の話を聞いた時からｱﾀｼの空虚感はいとも簡単に消えていった。

  2006-05-28 20:39:00
• 12:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  『大切な人と同じ空の下におる？アホ言わんといて。大切な人なんておらへんわ。』翔太に空の話を聞いたときｱﾀｼが言った言葉。『ほんなら大切な人作ったらええんちゃう？』簡単に切り返す翔太。『そんな簡単に作れるもんちゃうやろ。人間なんか結局自分が一番可愛いねんから。自分守るためなら人を裏切って、心ズタズタに引き裂けるねん。大切な人なんか別にいらん』それでも言い返すｱﾀｼ。『ほんならそれでええやん？俺かて、人は汚いし空が恋人やから。大切な人なんて綺麗事ゆうたわ。すまん。でもな、空は裏切らへんねん。絶対に。空は愚痴も悩みも罵声も、黙って聞いてくれる。』真剣に話す翔太。『ｱﾝﾀ頭いんどんちゃう？』切り替えせないｱﾀｼ。『そうかもな。』その時ｱﾀｼは初めて大切な人が出来たんや。

  2006-05-28 20:56:00
• 13:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  すごい人やと思った。翔太の過去も、住んでるところも、年も趣味も仕事も知らん。知ってるのは《翔太》って名前だけ。それでも、《翔太》は確実にｱﾀｼの心の鍵を解いた。

  2006-05-28 21:32:00
• 14:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  ｱﾀｼが欲した事。好きとか、愛してるとか、そんな言葉を望んだんとちゃう。キスとかセックスを求めてるんとちゃう。ｱﾀｼは心から笑いたかったんや。ｱﾀｼは泣き叫びたかったんや。ｱﾀｼは声に出して《たすけて》って言いたかったんや。

  2006-05-28 21:36:00
• 15:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  翔太と出会ったんはキラキラ光る、夜のネオン街。ｱﾀｼは仕事帰りでいつもみたいに駅まで歩きよった。

  2006-05-28 21:43:00
• 16:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  駅までもうちょってところでｱﾀｼは人にぶつかった。『俺翔太…名前は？』
  『梨奈…』　　　　　　　翔太と名乗る、ネオン街に似合わない男。それが翔太やった。今だにｱﾀｼは何で名前を教えたんかわかれへん。ただ翔太の輝いてる目と自分にはないオーラにひかれたんだけはまぎれもない事実。

  2006-05-28 21:48:00
• 17:

  名無しさん

  『なぁ。質問してええ？』翔太が言った。『好きなんもん何？』『銭』答えるｱﾀｼ。『好きなもんなに？』質問するｱﾀｼ。そんなｱﾀｼに翔太は空の話をしてくれた。これが翔太との出会いやった。

  2006-05-28 21:54:00
• 18:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  ﾌﾞｰﾌﾞｰﾌﾞｰ…マナーモードにしてある携帯が床で震える。着信-みゆき-『もしもし？梨奈？大変やって！梨奈の元彼の翔太くんおるやん？！翔太くん、覚醒剤で捕まるって。切符回ってるんやて！！』みゆきが電話越しに叫んだ。『覚醒剤？翔太が？アホな事ゆわんといて。そんなんするやつちゃうから。』ｱﾀｼはそー言いながら電話を切った。

  2006-05-28 22:05:00
• 19:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  胸騒ぎがした。翔太がおらんくなる。一人になる。ｱﾀｼは走った。翔太が逃げそうな場所は大体わかる。たぶんあそこや…。空が綺麗に見える、廃校になった小学校のふるびた総合遊具の一番てっぺん。ｱﾀｼは走った。

  2006-05-28 22:12:00
• 20:

  あげは ◆tr.t4dJfuU

  誰もいないふるびた校舎。ﾎﾞﾛﾎﾞﾛにさびた、茶色い門をのぼり、乗り越える。手には、さびてハゲたペンキのかすが付いた。総合遊具が見えた。上には人の影がある。ｱﾀｼは叫んだ。

  2006-05-28 22:16:00