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Dearest LOVE
-
1:
雪弥
今まで愛した人は一人も居なかった。
あなたに会えて変わった。愛する事を知った。
あたしは汚れてますか・・・?2005-06-08 15:47:00 -
2:
『久しぶりやな?元気してた?』
1年振りに再開した、りのが言う。りのは決して美人ではないが、昔から風俗をしておりホストの彼氏が居る。
『昼の仕事してたよ』
夜の街を歩くのは2年振りだ。2005-06-08 15:48:00 -
3:
『どこ行かれるんですか?』
私は下を向いていた。足元を見るとホストだとわかった。
“ホストなんか嫌い”
無視しようとした時、前に立つ2人の後ろから、一人の人が割って入った。
ホストが口を開けようとした瞬間、
『わぁ!入れ墨やぁ、私も入ってるでっ』
ホストなんか嫌いという気持ちも忘れ、犬のように飛び付いた。
彼はきょとんとした。一目おいて、目をまるくし言った。
『お前・・・バリ可愛いな』それが京との出会いだった。2005-06-08 15:48:00 -
4:
『今日は終電で帰るねん』
『そか!早よ帰りや?』
時計を見ると終電の時間だ。
『ばいばいっっ』
携番を交換し家へと向かった。
地元に着くと京の事を考えていた。
“同じ傷・・・”
不思議な事に京と私には同じ場所に傷や入れ墨があった。
ふと昔の事を思いだし、入れ墨が痛んだ。2005-06-08 15:49:00 -
5:
私の家庭は、物心つく頃から兄の母に対する家庭内暴力がひどく、母が好きだった私は毎日泣いていた。小さな頃から、母にただ愛されたくて、家事も勉強も必死だった私・・・。
水商売をしていた母。
ある日いつものように学校が終わり家に帰ると、突然母が言った。
『産まなきゃよかった』
そういうと、母は私を刃物で傷つけ2度と帰ってこなかった。2005-06-08 15:50:00 -
6:
自分がお腹を痛めて産んだ子供に、暴力を振るわれ続けた母には仕方のない選択だったのだろう。
母らしい事は一つもしてくれなかった母・・・。
男と逃げたのだと後から知った。
母の最後の姿は今でも忘れられない。私は母に愛された事などなかった・・・。
私はただ愛されたかった。13才・・・私は幼かった。2005-06-08 15:51:00 -
7:
18の時、一人の男と出会う。
名前は拓磨。
綺麗な顔だち、私はすぐに心奪われた。
彼がホストだと知ったのは、出会って少し後の事だった。
私はその頃には拓磨の彼女になっていた。
会う時はいつも私がお金を出した。
それで良かった。
愛を知らない私が、拓磨の『将来結婚しよう』
と言う甘い言葉に騙されるのに時間はかからなかった。2005-06-08 15:52:00 -
8:
削除削除されますた
あぼ~ん -
9:
ただ愛されたかった・・。
拓磨の為に、お金を渡すのは苦では無かった。
今で言う“直引き”なのだが、ホストという職業を知らない私は、無知で彼を信じていた。
拓磨に愛されたい。
何でもするから他の女の人の所なんて行かないで・・・。
願いはただそれだけ・・・。
『店を出したいから貯金したい』
私は必死に貯めていた60万を拓磨に渡した。
その後、彼の態度は豹変する。2005-06-08 15:53:00 -
10:
『金は?』
「もうないの」
『じゃあ客から貰うからいいわ』
・・・え??
『なぁ、俺の事本間に好きなんやったらヘルス行ってや』
拓磨は何を言ってるの…?背筋が凍りつく気がした。『俺態度で示してくれな信用できへんねん。他の客は行ってくれてるからさぁ、そういうコやっぱ大事やなって思ってまうやんかぁ』
私は愛されては居なかった。彼が愛したのはお金で、人ではなく・・・私を見ては居なかった。2005-06-08 15:54:00 -
11:
“拓磨・・・どうして…?”
私はフラフラと夜の街を彷徨った…。
気が狂いそう…。
もう目の前から愛する人が消えるのは嫌だった。
私は16の時、当時付き合っていた彼氏を事故で亡くしている。
バイクに乗っていた彼は不幸にもトラックと衝突し、50?吹っ飛び即死した。
お葬式には行かなかった。いや、行けなかった。
彼がもう、この世に居ない事を実感したくなかったからだ。2005-06-08 15:55:00 -
12:
削除削除されますた
あぼ~ん -
13:
啓介という…。彼はまだ18才だった。
京と出会うまでの私は、啓介と一緒に逝きたいと、いつも願っていた。
不幸は続くもので、拓磨との別れにより最大の不幸が訪れる。2005-06-08 15:56:00 -
14:
気が狂いそうだった私は、友達・・(冒頭で登場した、りの)
と夜の梅田へ行った。
忘れたい、忘れたい…。
真冬だったその日。
夜中3時の梅田には人通りもなく、
心が埋まる訳もなく、寂しさが増した。
そんな時
『送ったるわ』と声をかけられたと同時に、無理矢理クルマに押し込まれた。
車は2台・・・。人数は、6、7人…。
逃げれない。2005-06-08 15:57:00 -
15:
『名前何て言うん〜?』
リーダー格だろうか?車の運転手のΗが私に聞いた。
「・・・・雪弥」
『雪弥、綺麗な顔してんなぁ』
『本間やなぁ』男達も賛同した。
りのには興味が無かったらしく、男達は私に優しかった。
‐ターゲットは私だったのだろう‐2005-06-08 15:57:00 -
16:
『雪弥っ♪』
後ろからHが抱きついてきた。
「きゃあ!」
思わずはねのけてしまった。
Hの顔つきが変わる・・。『何さらすんじゃ、ワレ』「ごめんなさい、びっくりして…。」
もう遅かった
りのはもう1台の車に乗せられ私達は別々にされた。
男6人に車内で囲まれ、Hが私の髪をつかんだ。
「痛いぃぃ」
『黙れや!!』
男達は私を殴りつけた。2005-06-08 15:59:00 -
17:
しばらく殴り続けると、気が済んだのだろう。
Hが言った。
『お前の靴で車が汚れたやんけ、200万払えや!』「・・・っ、そんな大金ありませんっ」
半泣きになりながら言った。
でも不思議な事に、本当に辛い時、恐い時、涙もでないんだな。
冷静にそんな事を思っていた。
私は泣いていなかった。 『じゃあ…ぬげ』
男達はむりやり服を破った。
「いやぁぁぁ!」2005-06-08 16:00:00 -
18:
『うっさいんじゃっ!』
またグーで殴られた。
隙をついて車のドアを開け力いっぱい叫んだ。
「助けてぇ!りのー!!」
・・・りのは来なかった。
自分だけでも助かりたいのは仕方がない事。りのが悪い訳ではない。
また殴られた。もう殴られるのは嫌だった。2005-06-08 16:01:00 -
19:
それから、事が済むまでの事はあまり覚えていない。
私は男達の玩具だった。
車から降ろされた時、Hがお金を渡してきた。
―こんなものっ―
男達と別れた後、泣きながらお金を道に捨てた。
私は汚れてしまった…。2005-06-08 16:02:00 -
20:
18の出来事だった。
それからの私は毎日、薬漬けだ。
眠剤・・・安定剤。
もはや体に傷を付けなければ安心できず、家から出る事を一番に恐れた。
死にたいと思いながらも死ぬ勇気はなく、
“こんな私を誰が愛してくれる?親にも捨てられた私を誰が必要とするの?”
京と出会うまで私はこの考えを捨てれずに居た。2005-06-08 16:03:00 -
21:
19才の夏を迎える。
安定剤は手放せなかったが、心身共に回復していた私は、一つのケジメをつけようと思い、入れ墨を入れた。
汚れた私。過去を忘れてはいけない、結婚など・・・夢を見てはいけない。
私の入れ墨にはそういう誓いがあった。2005-06-08 16:04:00 -
22:
愛してくれる人も居た。
だけど愛する事はなかった。
19の夏に出会った、タカ。タカは心から私を愛して居たらしく、過去も、素性も明かさない私と
『結婚したい』と言った。
タカの両親は暖かい人で、『いいコなんだから、早く結婚しろ』と急かした。2005-06-08 16:05:00 -
23:
幸せな時間は暫らく続いた。
だけど愛する事は出来ない。本当の私を知ったらタカとの幸せが壊れてしまう。
私とタカは育った環境も、世界も違い過ぎた。
私の思い詰めた、行動は彼にとっては理解出来なかった“奇行”だった。
頭がおかしい。そう言われる事も少なくなかった。
ある日、タカの両親から話があると言われる。
『別れてほしい』との事だった。2005-06-08 16:05:00 -
24:
削除削除されますた
あぼ~ん -
25:
京と出会った頃、私は過去の事など気にする事もなくなっていた。
地元に着き、京にメールをする。相手の職業など考える暇もない位、京が気になった。
ピンときたからだ。
今思えば似ていたのだろう。
メールのやりとりを何日かした。京は決して店には呼ばなかった。
もちろん私の過去など知る訳もない。2005-06-08 16:07:00 -
26:
ホストと言う職業は後々、私に重くのしかかる。
拓磨の事があって以来、ホストとは無縁だった。
京とは付き合っていなかったが、お互いの気持ちは通じていた。
家が遠かった為、毎日は無理だが週に何回か帰ってきてくれた。
付き合ってからも京は店に来いとは言わなかった。2005-06-08 16:08:00 -
27:
京は色んな事を話してくれた。
自分に両親が居ない事…、昔、女の人にひどく裏切られた事。
京も昔、眠剤と安定剤を飲んで居た事・・・。
そういった時間を多く共有する事で、
初めて他人に対し、愛しいと思う感情を持った。
だけど、私は過去を話す事はなかった。
店に来いとは言わない京。支えたい気持ちが私の中に生まれた。
私は初めて夜の世界に足を踏み入れた。2005-06-08 16:09:00 -
28:
京はまだ、私が夜の世界に足を踏み入れた事を知らずにいる。
京は私には心を開いてくれたが、色を入れているコには冷たかった。
俗に言う、“釣った魚に餌を与えないタイプ”である。 昔、女の人にひどく裏切られたからだろうか?恨みでもあるかのような扱いだ。2005-06-08 16:10:00 -
29:
ーSideー京
トゥルルル…ガチャ
「…はい」
可愛らしい女の声。
『あや、おはよぉ』
《京は深く関わらないと気付かないほど、普段はアホキャラで、強気なタイプだ。》 「京、おはよっ」
『何してたんや?』
甘く優しく言った。
「寝てたよぉー、今日も会えないのぉ?お休みなのにぃ?」
『ゴメン×2今日は店の人の買い物付き合わなあかんねん』2005-06-08 16:11:00 -
30:
「淋しいよー」
京は目をこちらにちらっと向け、車の助手席で静かにしている私にキスを一つした。
あやはまだしゃべり続けていた。
『淋しい思いさせてゴメンな。また電話するわな』
京はあやにそう言い電話を切った。
電話を切った京は何かを考えているようだ。2005-06-08 16:12:00 -
31:
ーSideー京
“あやは細客やけど、惚れさせる為にちょっと色入れたら風俗に行くやろ”
そんな事を考えていた。
《そんな京だが、何故か私を可愛いがった。》
『雪弥、買い物行こかっ』「え?」
『何かペアのもん見に行こ』2005-06-08 16:13:00 -
32:
「えっ?ええよ〜。買ってもらうとか、悪いもん!」
『じゃあ、いらんのかっ?』
京はからかうように笑いながら言った。まるで小学生だわっ。
私は色カノの事が気になったが、考えないようにした。真実を知るのは恐いもの・・・。2005-06-08 16:14:00 -
33:
私の家に着いて寝る時も、寝た後も京の携帯は鳴りっぱなしだ。
“俗に言う鬼電、鬼メールかな?”
京は寝る時も携帯にキーロックはかけなかった。
「どうして?」と聞くと、
『お前は見ーひんし、見られてもいい』
と言った。
『俺が客に色かけてんの知ってるやろ?』
と笑いながら言った。2005-06-08 16:14:00 -
34:
拓磨はお風呂に入るのも、トイレに行くのも携帯を持ち歩いていた。
寝る時はもちろんキーロックだった。
…京は違うのかな?
ある日、京と喧嘩になる。私は「友達と遊びに行く」と嘘をつきキャバに仕事に行った。
連絡が取れないのに腹がたったのだろう。
『どこ行っとってん!?』口調が荒い・・。恐いよ。2005-06-08 16:15:00 -
35:
「地下に居たから・・。」
『怪しいなー』
思わずもういいわっ!!と言いそうになったが、嘘をついた罪悪感からか黙っていた。
『ふーん…』
今日は一言そう言って電話を切ってしまった。
“・・・私は仕事を理解して束縛もしなかったのに何なん!?”2005-06-08 16:16:00 -
36:
ーSideー京
イライラする。
「京の売り上げ助けたいから風に行く」
と言っていた、あゆが
「やっぱり恐いし勇気出ないから、キャバで頑張るね」
と言い出したのだ。2005-06-08 16:17:00 -
37:
“所詮スキとか言いながら口だけやんけ…”
そんな口だけの女を昔から何人も見てきた。
金がほしい訳ではなかったが、売り上げは確かに上げたかった。
雪弥はあれから電話もメールもしてこない・・。2005-06-08 16:18:00 -
38:
電話を切ってから何分たっただろうか。
仕方がなかったが改めて信用されてない事を実感すると泣けた。
携帯がなり、京からメールがきた。
『ゴメン』
と一言。
正直な所、育てかもと思っていた私は複雑だったが、京に電話をした。2005-06-08 16:19:00 -
39:
ーSideー京
“キャッチでもするか”
前から女の子が歩いてくる。顔は可愛かったが、京は雪弥より可愛いと思う子は居なかった。
雪弥は信じなかったが、京は雪弥に一目惚れだった。『何してるんですか?』2005-06-08 16:20:00 -
40:
京は声をかけた。
携帯が鳴っていたが、後でかけようと、見なかった。
「仕事帰りだよっ」
笑顔で女の子は答えた。
『何の仕事?』
「セクなの」
『そか、良かったら店こーへん?』
「えー?お金ないから、無理だよぉ!」2005-06-08 16:21:00 -
41:
『そんな稼いで何に使った〜ん?』
からかうように聞いた。
「50万位、買い物に使ってんっ☆」
『気ー付けて帰りや!ばいばい!』
番号も交換せずその場で別れた。
“吐き気がする”
京は、私利私欲の為に水する女が大嫌いだった。2005-06-08 16:21:00 -
42:
仕事が終わり、京は考えた。
“雪弥の所に帰ろう”
仲直りもしていない…。雪弥は自分の事を話さないし、ホストという仕事の事で我慢させているのも分かっていた。
“ちゃんと話をしないとなー…”
そんな事をぼんやり考えていた。2005-06-08 16:22:00 -
43:
京から電話が鳴った。
かけても出なかった事もあって戸惑ったが
「・・・はいよっ」
と元気なフリをした。
『今から帰るから』
「・・・うん」
それだけ会話をし、電話を切った。2005-06-08 16:23:00 -
45:
私は京に嘘をついて夜の仕事に言った事を打ち明けようと決めていた。
誤解を受けたままで信用を失うのは嫌だったし、何よりも京は喜んでくれると思ったからだ。
ホストってそういう生き物だと思ってたから・・・。2005-06-08 16:25:00 -
46:
今まで一度も仕事の事、お客さんの事を一言も話さなかった京…。
この日初めて京が精神的にまいっていた事を知る。
拓磨はホストだったが、仕事に対してプライドがなく、直引きが目的だった為、私は店に行かずに済んだ。
だから私はホストのイメージは拓磨が全てであり、ホストクラブがどういう場所なのか知らなかった。2005-06-08 16:26:00 -
48:
『何でや?』
京は静かに聞いた。
「私も何かしたい・・。」
待ってるだけは嫌だった。
『お前は何もしやんでいい、夜は辞めろ』
それが答えだった。
私は納得しなかった。
だけど、そのやり取りをしなければ私は引き返せたのだろうか・・・?2005-06-08 16:28:00 -
49:
ーSideー京
京は雪弥を店に呼ぶ気など無かった。
夜の経験も無いのにセクに行った雪弥の気持ちが痛かった。
でも同時に一瞬でもほっとした自分が居た。
正直困っていたのは確かだったから。2005-06-08 16:29:00 -
50:
京がキスをしようとした時、とっさに手で京の口を塞いだ。
『何でや・・?』
いつも強気でアホキャラのはずの京が初めて見せた表情。
“キライになった?”
そう伝わってくるようだった。
京は私の手を掴んで強引にキスをした。2005-06-08 16:29:00 -
51:
京はセクの内容をもちろん知っていたし、何故私がキスを拒んだか分かっていた。
だから無理矢理にでもキスをした。
私は精一杯の笑顔で言った。
「スキでもない人とお金の為にキスをしたよ・・・?」
『だから?』
京はキスをやめなかった。「京まで汚してしまう・・・。」
私の目から涙が溢れた。2005-06-08 16:30:00 -
52:
『他人の為に動ける人間を汚いなんて思わん』
朝を迎え、京が私の顔を見て言った。京はその日休みだった。
お客さんからの電話も出ずメールも返さなかった。2005-06-08 16:31:00 -
53:
京はできる限りの時間を使い、私を支えてくれていた。
風邪をひいた事を伝えると予定をすべてキャンセルし、仕事明けの疲れた体で私の看病をした。
せめてもの恩返しにと私は“いい女”を目一杯演じた。2005-06-08 16:32:00 -
54:
昔の家庭環境のトラウマからか、精神的に弱かった私は夜の仕事のストレスから毎日食べては吐いてを繰り返した。
京の仕事に対しての不安もあったから。
セクに勤めてから1ヵ月が過ぎようとしていた。
京からのメールだ
『仕事が終わったらキャッチ場に来てほしい』
私は迷走した。2005-06-08 16:33:00 -
55:
削除削除されますた
あぼ~ん -
56:
初めて行ったホストクラブ。
イメージとは違い、シンプルで私にはキラキラして見えた。
ワイワイ騒いだりする場ではなく、落ち着いて呑む雰囲気の場所だった。2005-06-08 16:35:00 -
57:
まだ早い時間だった為、従業員は出払っていて2人だけの空間になった。
見る物すべてが新鮮で子供に戻ったようにはしゃいだ。
二人で乾杯をし、ふざけたり真剣に向き合ったり。
心のバランスはとても曖昧で、気を張っていないと崩れてしまいそうな中、信じたかった。
私の選択は間違ってはいないと・・・。2005-06-08 16:36:00 -
58:
京には体の不調や毎日吐いている事、ホストという仕事への不安を私は一切口に出す事はなかった。
でもそんな無理は限界が早かった。
京はそんな気持ちを何も言わない私から感じたらしく
『水を上がれ』と言った。2005-06-08 16:37:00 -
59:
私は
「それだけは嫌だ」
と言った。
私が京の役にたたなくなった時の現実はまだ見たくはない。
京は
『夜行かなくてもいい。お前が精神的に潰れてしまうなら俺は一緒には居れない。でも、ずっと傍に居てほしいから、そうはなってほしくない。だから俺に合わせる事はないよ』
と言った。2005-06-08 16:37:00 -
60:
この時初めて私はホストではなく“京”という一人の人間を信頼するという気持ちを知った。
あの時の京の言葉は本心なのだろうと思えたからだ。
昼の仕事をしたって、彼は私を必要としてくれると素直に信じた。2005-06-08 16:38:00 -
61:
京は何でも話してくれるようになった。京の心に
“雪弥は裏切らない”
という感情が生まれたのだろう。
私は精一杯割り切っていたから。
色カノが何人か居る事、その色カノ達が毎日稼いでいる額など様々だった。
色カノの存在が後に私を苦しめる事になる。2005-06-08 16:39:00 -
62:
私と京は彼氏・彼女になって1ヵ月を迎えた。
京は
『雪弥は俺の都合の悪い部分に口を出さないで無償の愛情をくれるから、精神的に安心出来るし全てうまく行き始めてる』
と言って私に花束とキスをくれた。
私はその京の気持ちが嬉しくて、ある一つの決心をした。
支える為なら何でもすると・・・。2005-06-08 16:40:00 -
63:
私が選んだ道は、
・・・ソープだった。
他人からすれば理解出来ない考えかもしれない。
分かっている。
相手はホストだ。
だけど私にとってはホストではなく一人の男だ。
私は絶対的な信頼をしていた、母を慕うような感情に似ていた。
そう…刷り込みのような感覚。2005-06-08 16:41:00 -
64:
仕事初日の朝、緊張と恐怖から吐き気が止まらなかった。
出勤時間が迫る。
時間をあんなに長く感じたのは初めて・・・。
家を出る時間だ。
出勤すれば、元の生活に戻れない。
恋愛も京が最後になるだろう。そんな覚悟だった。2005-06-08 16:42:00 -
65:
部屋を出る瞬間、せきを切ったように涙が溢れた。
“頑張るって決めたんだ”そう自分に言い聞かせ、涙を止めた。
電車に乗る。仕事の事が頭から離れない。
また涙がでそうになる。
私は弱い・・・。
“姫”
それが私のもう一つの名前になった。2005-06-08 16:43:00 -
66:
プルルル・・・。
個室で待機していると、コールがなった。
口から心臓が飛び出そうな感覚。
「…はい。」
『お客さまが待ってるからスタンバイ宜しくね』
「…わかりました。」
初めてのお客さんだ。2005-06-08 16:44:00 -
67:
階段の前に正座をし、お客を迎える。
ートントントン・・・ー
足音が近づく。
私は覚悟を決めた。
この時の私はさっきまでの私とは別人のように、
凛としていた。2005-06-08 16:44:00 -
69:
部屋に入り、ひざを着いてお辞儀をした
「初めまして・・・姫です」とても柔らかく穏やかな笑顔だったと言う。
一人目の相手が終わると、私は初めて泡姫(風嬢)となった。
ーもう恐い事などない。大丈夫。私ならやれるー2005-06-08 16:46:00 -
70:
まったく抵抗が無かった訳じゃない・・・。
知らない男のモノを自分の中に受け入れるのだから。スキな人がいるのに・・。目を閉じると・・・、
そこには京が居た…。
涙がこぼれるのを必死に耐えた。
私は笑顔で“姫”を演じた。2005-06-08 16:47:00 -
74:
『・・・は?何言いだすねん!!ずっと傍におる言うたやんけ!』
タクシーのドアが閉まり、京が遠くなる。
私は泣かなかった。
私が伝えたかった言葉は別れなどではなかった筈だ。
でも、他の男に抱かれながら彼女でいたいなど、願ってはいけない。2005-06-08 16:51:00 -
75:
04/8/2 13:41
☆少し内容を中断して、書きたい事と言うか、報告があります。京との事はノンフィクであり、現在進行形だったのですが。さっき別れを告げられました。私の真っすぐさが彼にとって辛くなる結果を招いたそうです。『俺と出会わなければ、もっと違う道があったはず』だと。引き止めても彼は別れる事を取り消さなかった。2005-06-08 16:52:00 -
76:
私自身、今どうしたらいいか分からなくなっています。ソープにいった事、彼に出会って恋をしたこと、全部後悔していません。
むしろ感謝の気持ちでいっぱいです。辛いけど、時間をかけて小説を書きあげたいと思います。私は今、気が狂いそうですが、彼は彼なりに苦しんだ結果なので。受け入れました。2005-06-08 16:53:00 -
77:
私と彼の別れるまでの事もすべて最後まで書きます。別れた今、これから感情がどう変化するのかは分かりませんが、彼から貰った愛情や思い出をゆっくり形として残して行きます。
自分事ですいません?
私の顔は泣き過ぎて今、見れたもんじゃない笑。
これからはもっと強くなります、彼を見返すくらいイイ女になります。絶対幸せになる!!って決めました。どうぞ暖かい目で見守って下さい?2005-06-08 16:54:00 -
78:
ウチに帰ると後悔が押し寄せた。
“何やってんかな本間”
自分自身を責めても何も変わらない事くらい分かっていたが
“これで良かったのだ”
と思うしかできなかった。 電話が鳴った。
京からだ・・・。2005-06-08 16:55:00 -
79:
とにかく会って話そうと言われた。
合わせる顔がなかったけど、京の為に頑張るって決めたんだから、ちゃんと気持ちを言わないと
伝わらないし意味がない。2005-06-08 16:56:00 -
80:
節目を迎えていた。
過去の事を話す日が来た。
恐くはなかった。
京を信じていたから。
京が仕事明けに家にきた。『ちゃんと話してくれな分からん。』
ーあぁ、この人は私をまだ理解しようとしてくれてるー2005-06-08 16:56:00 -
81:
ゆっくりと、言葉を選びながら私は切りだした。
昔ホストに騙された事。友達に裏切られた事。
自分には赤ちゃんが産めない事(省略したが私は子供が出来ない体らしい。)
京はだまって聞いていた。2005-06-08 16:57:00 -
82:
「今、風俗で働いてるよ…」
京は一瞬顔色が変わり、下を向いたまま私を見なかった。
『何でそこまでするねん・・・何でや・・・。』
京のつぶやいた言葉に、私は胸に何かが突き刺さった感覚がした。2005-06-08 16:58:00 -
83:
そして、18の頃の忌々しい出来事を話した。
京は最後までだまって聞いてた。
少し目が潤んだように見えた。
「京…。私はっ…本命じゃなくていい…からねっ?……彼女作って…ほしいよ」私の目から大粒の涙がこぼれた。
間髪入れず京が言った
『彼女はお前じゃっ!!他の奴なんかどうでもええ!』
力一杯抱き締めながら京がそう言った。
「私はっ・・・苦しいよぉ」子供のように声をあげて泣いた。2005-06-08 16:59:00 -
84:
少し時間が経ち、大分落ち着いた。
目が腫れてぱっちり二重は三重位になった笑。
「京はママのように暖っかいっ☆」
ぎゅう〜っとコアラのように京にへばりついてた。
京はその日初めて笑った。そして21年間生きてきて、初めて
『愛してる』
と言われた。2005-06-08 17:00:00 -
85:
その日は本当に本当に幸せな日で、生まれて初めて体験する
“愛し愛された日”
になった。
京は私を子供のように大切に抱き締め、
『体しんどくないか?大丈夫なんか?・・・もう泣いたらあかんよ』
と言っていっぱいキスをした。
何度も何度も確かめ合った・・・。2005-06-08 17:01:00 -
86:
しばらくして私はサイトで一人の女の子と出会った。
スレの内容は、悩みや大好きな気持ちを書き込みするモノだった。
そこで、一人の女の子
“のんちゃん”(もち仮名です☆)と出会う。
のんちゃんは、彼の気持ちが分からないと迷い悩んででいた。
私はその時、精神的なものから、他人に優しくできる状態では無かったが、
その子をほっとけなかった。2005-06-08 17:02:00 -
87:
私は出来る限りの知識で、のんちゃんにアドバイスをした。
そして、のんちゃんと直?を始めた。
私達は写メでしか顔を知らなかったが、私が迷った時、京と喧嘩して別れると言った時、本気で話を聞いてくれた。
私ものんちゃんが辛い時、悲しい時は励ました。2005-06-08 17:03:00 -
88:
嬉しかった。私みたいなちっぽけな人間でも、誰かを励まし導いてあげれるのだと・・・。
しばらくして、のんちゃんが彼と両思いになったのだと聞いて、自分の事のように嬉しかった。
のんちゃんは今、その彼と愛し愛された日々を送っているのだろう。
私はのんちゃんに感謝している。省略して書けなかったが、私は彼女が居て救われた。
ーこれも一つの愛のカタチー2005-06-08 17:04:00 -
89:
ソープで働きだした私は、精神的に辛くなる事もなく、安定していた。
愛する人がたくさん出来たから・・・。
京、のんちゃん、8年間毎日一緒に居た友達。
私は家庭環境には恵まれず愛を知らなかったが、たくさんの愛のカタチを学んだ。
一番幸せな時期だっただろう・・・。2005-06-08 17:04:00 -
90:
京とも順調だった。
風嬢になっても京は私をとてもとても大事にしてくれた。
お店に行った日は2時頃からラストまで居て、近くの喫茶店で待ち一緒に帰る。
だけどいつからか私は、京のお客さんに罪悪感を持ち始めていた。2005-06-08 17:05:00 -
91:
仕事は順調だ。指名客も付き始め体力的にも辛くなくなってきた。
ただ、お客のモノが入ってくる時だけは違和感が頭から離れず、私は京を想い目を閉じるのだった。
京の顔、指の動き、吐息全て・・・。
お客は京の代わり。
そうじゃなきゃ私は私で居られない。
ーせつない・・・苦しいー2005-06-08 17:06:00 -
92:
“京、苦しい・・。”
私は京の前では必死に笑顔を作った。
“心配かけちゃダメた”
私はその思いで必死だった。
私は京によくこう言っていた
『例え騙されてたとしても私が騙されてないと思えばそれもまた真実』と。
『ここまで人を愛する事が出来て私は幸せだ』と・・。2005-06-08 17:07:00 -
93:
私は仕事で出勤してから、終わる時間まで休憩なく働いていた。
だけど、稼いでも稼いでもお金がない・・・。
その頃には毎日仕事が終わると京のお店に行ってたから・・・。
私は間違ってたのだろうか…?2005-06-08 17:08:00 -
94:
私には、勝手に自分の中で決めた暗黙のルールがあった。
《出勤前には電話ではなく、メールをする。(寝てる時間だろうから)
京が休みの日には自分からはメールも電話もしない。嫉妬心は出さない。
干渉や束縛ももちろんしない。
仕事の事には口出ししない・・・。》
“いい女”でありたかった。2005-06-08 17:09:00 -
95:
そんな私でも幾度か別れを考えた事もあった。
まだ私が京に不信感を持つ前の事…。
京は休みの日の殆どを私に使った。
お店で何十万とお金を落とす子ですら京と休みを一緒に過ごす事はない。
連絡すらつかない。2005-06-08 17:10:00 -
96:
優越感など持てるはずもなく、
私が居たら京はお客さんの為の時間を作れない。
仕事の邪魔になっている気がして、
離れるべきだろうと考え始めた。
京はそんな私にいつも
『お前が一番しんどい思いをしてるんやから』
と頭を撫でてくれた。2005-06-08 17:11:00 -
97:
私は心の底から京を信じてた・・・。愛してた。
だからこそ辛くなる時期もあった。
Hをする度ソレは増す。
自分が“風嬢”だから…。
いつもそれが引け目に感じた。
京にソレを言うと怒られるから必死に心の底に沈めた。2005-06-08 17:12:00 -
98:
私はいつもお客相手には濡れない。
だけど京と居る時は一緒に居るだけで濡れてた。
体は正直やわ。
お店の中。いつも私と京は仲良し。
誰にも見つからないように何度もキスもした。
強引に甘く・・。
京のいぢわる☆
ドキドキする…。2005-06-08 17:13:00 -
99:
私の日課は出会ったばかりから現在までの、
京からのメールを見返す事。
“会いたい”とか
“ゴハン作って待ってて”“雪弥これ以上可愛くならんといて”
ー京・・・甘い言葉吐き過ぎっ?ー
でも、幸せな時間の一つ。初めて家に来た日を思い出すから。2005-06-08 17:13:00 -
100:
それは出会ってから何日か経った時。
お互いスキだって自覚済みだった。
京からメール
“仕事明けおうち行くね”
やったぁ、会えるんだっ嬉しいな〜。
私はくすぐったい気持ちでイッパイ。
京が家に来た。私が作ったゴハンを一緒に食べて、時計を見ると昼の2時を回っていた。2005-06-08 17:14:00