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◆Precious◆

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  • 1:

    諸星リナ。

    幼い頃の夢はなんだっただろう。
    最近思い出せずにいたが、急に思い出した。

    2007-03-02 18:07:00
  • 2:

    諸星リナ。

    誰にだって小さな夢はある。
    あたしにだってあった。
    20歳から大人だと思っていた幼いあたしは、成人式の振袖をみてお嫁さんになれるのだと思っていた。

    2007-03-02 18:09:00
  • 3:

    諸星リナ。

    飽きっぽいあたしでも変わる事のない夢があるとすれば、愛しい人といつか結ばれるということぐらいかもしれない。
    初めはパイロットになりたかったし、次は学校の先生。
    それから、優しいレジのおねーさんで、次は芸能人。
    あたしの夢は尽きることがない。

    2007-03-02 18:12:00
  • 4:

    諸星リナ。

    女の子は誰でもが願っていることかもしれない。
    愛しい人とずっと一緒にいれること。
    純白の衣装をきて大切な日を迎えること。

    2007-03-02 18:15:00
  • 5:

    諸星リナ。

    あたしだってそうだ。
    彼の隣で笑っていたい。
    愛されたいし、愛したい。

    2007-03-02 18:17:00
  • 6:

    勝手に愛するとの間に出来た命を捨てた今日も思う―" " "07/03/02 18:18

    2007-03-02 18:18:00
  • 7:

    諸星リナ。

    「最低」と嫌いになってくれたらいい。
    いっそ、「安心した」と思ってくれてもいい。
    お願いだから・・・

    2007-03-02 18:21:00
  • 8:

    諸星リナ。

    一緒に泣いたりなんてしないで。
    自分が悪いと責めないで欲しい。
    優しく抱きしめないで。

    突き放して。

    2007-03-02 18:24:00
  • 9:

    諸星リナ。

    荒削りな直人が泣いている姿が愛おしいと思った。

    2007-03-02 18:27:00
  • 10:

    諸星リナ。

    ねぇ、直人?
    直人はよく「もし違う出会い方をしていたら」とか「もしもっと早くに出会うことが出来たら」といったよね?
    凄く遠くを見るようにして。

    2007-03-02 18:30:00
  • 11:

    諸星リナ。

    あたしはそういう「もしも」の話は好きじゃない。
    これからはもう言わないでね。
    愛しくて、カタチもまだないような小さな命を捨てたのは環境のせいじゃない。
    存在すらすることが出来なかった命に、「もしも」なんて言い訳ははしたくない。
    それは余りに彼/彼女がかわいそうだから。

    2007-03-02 18:33:00
  • 12:

    諸星リナ。

    直人に出会った頃のあたしは、誰かに見つけて欲しくて、わかって欲しくて、それでも自分自身、自分がなんだかわからなくて・・・
    一方で、直人は違った。
    自分がどういう人間で、何が売りなのか、どう自分を見せたらいいのかよく心得ていた。

    2007-03-02 18:39:00
  • 13:

    諸星リナ。

    同じような髪色をしているのに、あたしたちはまるで違った。
    あたしたちに共通点なんてなかった。
    出会うはずもなく、接するはずもなく、関わることもなかったはずのあたしたちの間に恋が芽生えた。

    2007-03-02 18:43:00
  • 14:

    諸星リナ。

    その頃の直人は三十路を越えたホストだった。
    あたしは有名大学の学生で、まだ10代だった。

    2007-03-02 18:46:00
  • 15:

    諸星リナ。

    地方から有名大学に入ったあたしは、一人暮らしをはじめた。
    片田舎に育ったあたしには知らないことが多すぎた。
    大学四年間で色んなものを見てみたいと思って、祇園のそばにマンションを借りた。

    2007-03-02 18:51:00
  • 16:

    諸星リナ。

    夢の中にホステスやキャバ嬢は入っていない。
    あたしのは勉強というルールと秩序のある世界でなら絶対に負けない。
    危ない世界にわざわざ入っていかずとも、あたしは守られたフィールドで勝てばいい。
    でも、ちょっぴり見てみたい世界・・・

    2007-03-02 18:53:00
  • 17:

    諸星リナ。

    堅実な両親は何度も「馬鹿なことをしたら許さない」とあたしに言う。
    だけど、どこからがバカなことで、どこからが成長とよぶのだろう。
    バカな行為もいつかは、成長に実を結ぶかもしれない。

    2007-03-02 18:59:00
  • 18:

    諸星リナ。


    箱入り娘だったあたしが、祇園のショットバーの店員になった。
    あの頃の自分が出来る精一杯の背伸びだった。
    酔っ払いのおじさんや、見慣れないお坊さんの集団、流行ることもないお店で、大きな出会いもイベントもなかった。

    2007-03-02 19:10:00
  • 19:

    諸星リナ。

    それでも、ショットバーの店員として働く日は、胸がドキドキした。
    夜の祇園をゆっくり歩くのが好きだった。
    まるで中学生のような感覚だろうが、自分が大人になったような気持ちになれた。

    2007-03-02 19:16:00
  • 20:

    諸星リナ。

    週1回出勤して、3、4時間働く。
    ツレのいるお客さんとは、話を振られなければ話さない。
    1人のお客さんはなるべくかまってあげる。
    でも、ウチの店は時間じゃないから、あまり話を弾ませすぎたらいけないとオーナーに言われた。
    「うちのとこは回転率が大切」とオーナーは言う。

    2007-03-02 19:21:00
  • 21:

    諸星リナ。

    当時は本当に呑気な学生だったと思う。
    お客さんの話で、自分になかった発想だと思えば、大学ノートに書き留めるなんていう作業を繰り返していた。
    あたしにとっては勉強の一環だったのだ。
    仕事が終わると、ゆっくりと祇園の街をあるいた。

    2007-03-02 19:25:00
  • 22:

    諸星リナ。

    地方からこのときに引っ越してきたあたしにとって、祇園はイメージとかけ離れた土地だった。
    舞妓さんが優雅に歩いて、学生のような素人の入ることの出来ない街
    そう思っていたが、実際には雑多な街だ。
    古いものも新しいものも、それから純粋なものからミックスまで。
    この街に統一感はない。

    2007-03-02 21:35:00
  • 23:

    諸星リナ。

    帰りが遅くなる仕事で、家の近いあたしはオーナーからタクシーで帰っていいといわれても、少し街を歩いた。
    何かが起こることを期待して。
    半年祇園で過ごしても、誰一人あたしの身には何も起こらなかった。

    2007-03-02 21:41:00
  • 24:

    諸星リナ。

    ある夜―

    カクテル以外のお酒が飲めなかったのに、お客さんに進められてビールを飲んだ。
    酔っ払って夜の街を歩くあたしに声をかけてきたのが直人だった。

    2007-03-02 21:46:00
  • 25:

    諸星リナ。

    その頃の直人は不動のナンバーワンで怖いものナシだった。
    30歳を超えているようには見えない端正な顔立ちで、キレイが似合う人だった。
    あたしたちは、2人が出会えた偶然を今でもよく話す。
    そして、いつもは通らないその細い路地を通るたびに、あの瞬間を思い出す。

    2007-03-02 21:53:00
  • 26:

    諸星リナ。

    あたしはホストが嫌いだった。
    女の子を騙してヘラヘラ笑ってる人たちを支援するようなお金は一円だって払いたくないと思っていた。
    でも−
    それ以上に、彼らをのさばらせるようなお金をはたく女の子が嫌いだった。
    だから、あたしはそうなりたくないと思った。

    2007-03-02 21:57:00
  • 27:

    諸星リナ。

    けれど、今のあたしは機嫌がいい。
    本当は誰かにかまわれたことが嬉しい。
    あたしが今日祇園という街に出てきた意味があったかもしれない。
    ホストみたいな格好しているのに、なんだろう・・この人なんか違う。
    何が・・・?

    2007-03-02 22:13:00
  • 28:

    諸星リナ。

    「なぁなぁ・・・」
    「ん?」(・・・ホストかなぁ?スカウト?ボーイさん・・・かな??)
    「それかして。」
    「・・・」

    2007-03-02 22:33:00
  • 29:

    諸星リナ。

    そのボーイさんのようなスカウトまんのような男はあたしの持っているトランクを指している。
    「いやや。パクられるし。」とあたし。
    「パクらへんって。そんなにデカかったら乗れるやん。」
    「イヤって。」(ずっとついてくるなぁ・・・この変な人。)

    2007-03-03 01:07:00
  • 30:

    諸星リナ。

    「貸してぇやって。」
    「イヤって。」(ベタな声のかけ方やなぁ。)
    「そんなもん持ち歩いて祇園歩くやつ初めてみたわ。」
    「荷物多いねん。」(初ホスト・・やんなぁ?どんな誘い方しよんねやろ。)
    「なんぼなんでも!」

    2007-03-06 01:51:00
  • 31:

    諸星リナ。

    期待と興味、それから酔っていることもあって直人と連絡先を交換した。
    携帯の番号は教えても名前を聞かないあたしに不思議そうな顔をする直人。
    「・・・あのー一応直人って名前あんねんけど?登録してや?」
    「・・・」(登録してないのばれたかなぁ?)

    2007-03-06 01:58:00
  • 32:

    諸星リナ。

    ホストに通うつもりはない。
    きっとこの人は1、2回電話をかけてきて客にならないと思ったら連絡もつかなくなるだろう。
    登録する必要もないと思った。
    直人はあたしが酔ってゆっくりと『なおと』と登録するのを確認してから「気ぃつけて帰れよ」といった。

    2007-03-06 02:55:00
  • 33:

    諸星リナ。

    それから数日後。
    大学生らしく円山公園で花見をした。
    あたしの人生で一番キレイな顔をした男の子があたしの隣に座り、あたしを選んで、あたしとずっといてくれた。
    大学に入学した日から友達だったユリは端正な顔立ちで愛嬌もあった。

    2007-03-06 03:01:00
  • 34:

    諸星リナ。

    そういうわけで、ユリは男女問わず凄くモテた。
    ユリと出かければ、必ずユリだけが声をかけられ、学内でもミスにノミネートされた。
    タケルはユリには目もくれず、あたしだけと話してくれた。

    2007-03-06 03:05:00
  • 35:

    諸星リナ。

    ユリと一緒なのに、ユリよりあたしを選んでくれたことが嬉しかった。
    鼻が膨らんでいるのが酔っていてもわかる。
    そのとき突然電話がなった。
    誰かの電話だろうと思っていたが、あたしの携帯だった。

    2007-03-06 03:08:00
  • 36:

    諸星リナ。

    着信「なおと」

    「何?」(今邪魔すんなって)
    「出るなり冷たッ。」
    「今円山公園で花見してるし。」(しかも男前と♪)
    「そうなんー・・」
    「で、何?」(早く戻りたいんじゃー。なんやねん、用件をはよゆえ)

    2007-03-06 03:12:00
  • 37:

    諸星リナ。

    「男友達多いひと?」
    「・・・?え?」(なぜに男友達?ナンて応える方がウケがいいん?・・・なぜウケをきにした、あたし・・・)
    「男紹介して。」
    「ん?」(やっぱ友達少ないっていったらモテへんみたいで営業されそうかなぁ?)

    2007-03-06 03:15:00
  • 38:

    諸星リナ。

    「フツーだと思うけど、何で男友達なん??」
    「従業員紹介して。人手不足やねん。」
    「男友達って地元多いねん。せやしムリやわ。」(そっか、そういうことですか・・・なんかつまらん。)

    2007-03-06 03:18:00
  • 39:

    諸星リナ。

    「ってかあたしもどるわ。ほな。」
    捲くし立ててしゃべって、勝手に電話を切った。

    電話のことはすぐに忘れて、輪の中に戻って騒いだ。
    当時、大きく勘違いしていたのは「飲める女=いい女」だったということ。
    強くもないのに煽るように酒を飲んだ。

    2007-03-06 03:23:00
  • 40:

    諸星リナ。

    下手なホストよりも端正な顔立ちに、日本人なのに驚くほどブルーのカラコンがしっくりはまっていた。
    今思えば、ホストの直人よりも、大学生のタケルの方がホストらしかった。

    2007-03-06 03:26:00
  • 41:

    直人から電話があったせいか、タケルが余りにホストらしかったせいか―

    この晩、あたしたちは終始ホストの話をして過ごした。
    直人のことなんて思い出しもしなかったけれど、タケルの偽りの瞳の色を見つめていた。
    ライトアップされて、恋色に輝く桜よりも―" " "07/03/06 03:29

    2007-03-06 03:29:00
  • 42:

    諸星リナ。

    終電も間じかになり、初めてあったもの同士なのに仲良く片づけをした。
    最後にお手洗いに行きたくなったので、「トイレ行くわ」というと、ユリ、タケル、社会人のタクロウくんも賛同し、
    ごった返した円山公園をみんなであるいた。

    タケルとしっかりと手を繋ぎながら。

    2007-03-06 03:32:00
  • 43:

    諸星リナ。

    この日から一ヶ月。

    タケルと過ごした短いこの期間、あたしはタケル見ていなかった。
    同じようにタケルもあたしを見ていなかった、と思う。

    2007-03-06 03:35:00
  • 44:

    諸星リナ。

    好きな人と気持ちが通じ合えなのは、心が引き裂かれそうで、辛くて苦しくて、自分のことしか考えられない。
    好きな人には幸せになって欲しい。
    不幸を望んだりなんかしていない。
    だけど、時に恋する自分が愛おしくてずるくなって、誰かを傷つけてしまうこともある。

    2007-03-06 03:38:00
  • 45:

    諸星リナ。

    単なる言い訳にすぎないが、厳しい両親と、1日12時間を越えるスパルタな学校で疲れた心を癒すのはささやかな恋心だけだった。
    17歳で浮気相手になった。
    全うな恋愛ができなかった。

    2007-03-06 03:54:00
  • 46:

    諸星リナ。

    フツーの人には当然のことでもあたしには大きな意味があった。
    「彼女」と単純に呼べる人間になれること
    誰かではなく、あたしがといえること、あたしであること
    一番になること

    2007-03-06 03:59:00
  • 47:

    諸星リナ。

    タケルがユリではなく、あたしを選んだこと
    「彼女」だとはっきり言ってくれたこと
    彼の一番である権利を得たことが幸せだと感じた。

    何よりやっと一人の人間として認められたようで安心した。

    2007-03-06 04:06:00
  • 48:

    諸星リナ。

    故意か偶然か、お手洗いを済ませたあたしたちはユリたちとはぐれた。
    ユリからは「彼氏のとこにいくわ。」とメールが届いた。
    残されたあたしたちは、手を握って円山公園を後にした。

    2007-03-06 13:52:00
  • 49:

    諸星リナ。

    東大路でタクシーを拾った。
    ワンメーターで我が家まで。
    最後まではしなかったけれど、酔っ払ったあたしたちは十分いちゃついて朝を迎えた。

    2007-03-06 13:59:00
  • 50:

    諸星リナ。

    今でもタケルを好きだったのかはわからない。
    あたしをすきだというタケルが好きだった。
    あたしに「今日から俺の彼女な。」というタケルが好きだった。
    タケルが本当にあたしを好きだったかどうかはわかるはずもない。

    2007-03-06 14:02:00
  • 51:

    諸星リナ。

    大阪に住むタケルを京阪の駅まで送った。
    それ以来、タケルが京都にくることはなかった。
    会いたいときはいつもあたしが会いに行った。

    2007-03-06 14:19:00
  • 52:

    諸星リナ。

    タケルは有名大学ではなかったが、中堅クラスの大学に通っていた。
    あたしよりも4つ年上で、大学院受験を控えていつも多忙だった。
    週1回会えればいい方で、毎日連絡をとるというわけにもいかなかった。

    2007-03-06 14:23:00
  • 53:

    諸星リナ。

    自分自身タケルが好きなのかもわからないまま、不安と疑いはつきなかった。
    「ホンマにあたしのこと好きなん??」
    「こんなんで付き合ってるん?」
    「もういいし、別れようや。」
    「何してたんよ」

    2007-03-06 14:27:00
  • 54:

    諸星リナ。

    そのたびにタケルは「そんなことない、好きやで。」と繰り返した。
    何も読み取ることの出来ないケータイの文字から、あたしはどう信用すればよかったのだろう。

    2007-03-06 14:31:00
  • 55:

    諸星リナ。

    そんなあたしに、タケルは疲れたように
    「不安、不安っていうけど、リナ自身なんか安心できるように努力したのかよ!」
    返す言葉がなかった。

    2007-03-06 14:36:00
  • 56:

    諸星リナ。

    カラダを重ねれば心も重なるかと思った。
    10代の単純思考回路。
    出会って2週間、2回目のデートで結ばれた。

    2007-03-06 14:39:00
  • 57:

    諸星リナ。

    食事をしているとき携帯がなった。
    着信「なおと」

    なおとの存在はすっかり忘れていたが、週に1度くらい思い出したように電話をくれた。

    2007-03-06 14:52:00
  • 58:

    諸星リナ。

    直人は店に着てなんていわない。
    むしろ話ベタなのか、たびたびこちらから話題をふってあげないと黙ることもあった。
    会ったときはそんな感じではなかったようが気がしたのに。
    意味のない電話をするのは直人だけで異色な感じがした。

    2007-03-06 14:58:00
  • 59:

    諸星リナ。

    正味今週は電話してきたけれど、来週にはなくなるかもしれない電話だ。
    どうでもよくて、いつも適当なことが言えた。
    素でいれて、時にはオチのない話も。

    でもなぜか、彼氏が出来たとか、存在そのものの話は出来なかった。
    あえて言わなかった。

    2007-03-06 15:01:00
  • 60:

    諸星リナ。

    「何してるん?」と直人。
    タケルの視線を気にしながら「ん?ご飯食べてる。」
    「そっか、そっか。ほな。」
    電話はそれで切れた。

    目的がわからなかった。

    2007-03-06 15:05:00
  • 61:

    諸星リナ。

    タケルは何も気にしてないようだった。
    タケルと結ばれたのを最後の彼と会うことはもう二度となかった。

    2007-03-06 15:53:00
  • 62:

    諸星リナ。

    ゴールデンウィーク、あたしは実家へと帰った。
    タケルは何も言わなかった。
    お互い「浮気するなよ」と笑いあった。

    夜中に着信が鳴り響く。

    2007-03-06 15:56:00
  • 63:

    諸星リナ。

    着信「ジュン」

    17歳で浮気相手になったまさにその相手だった。
    出てはいけない。
    それは頭のどこかでわかっていた。
    だけど・・・

    2007-03-06 16:07:00
  • 64:

    諸星リナ。

    あたしはジュンを忘れるためにタケルと付き合ったことがこの頃にはわかっていた。
    わかっていても、このままタケルと一緒にいれば忘れられるような気がした。

    だけど、近くにはいないタケル、ジュンはあたしを愛してはいないけどそばにいてくれる。
    この電話に出れば・・・

    2007-03-06 16:11:00
  • 65:

    諸星リナ。

    誰かに構ってもらいたかった。
    誰も気にかけてくれない毎日だなんて耐え切れなかった。

    「はい?」
    「リナーッ!飲むぞッ。来い。今すぐ。」
    「酔ってるん?」
    「んーちょこっと?てか帰ってきて暇ナンやろ?一緒に飲もうや。」

    2007-03-06 16:17:00
  • 66:

    諸星リナ。

    あたしが酒好きなのは、ジュンが酒好きだったからだ。
    ジュンは酔っ払うと電話をくれる。
    だから、あたしは酒が好きだったし、夜という時間が好きだった。

    2007-03-06 16:22:00
  • 67:

    諸星リナ。

    大学生になって、一番にあたしに気がついてくれたのはジュンだった。
    「最近めっちゃキレイになった女おんねん。」とジュン。
    「つれてきたわ。リナやで。」そういってみんなに紹介してくれたのがどれほど幸せだったか。
    それでも、あたしはジュンの一番にはなれなかった。

    2007-03-06 16:25:00
  • 68:

    諸星リナ。

    努力は認めてくれる。
    変われば気がついてくれる。

    それでもジュンはあたしを彼女には選ばない。

    2007-03-06 16:28:00
  • 69:

    諸星リナ。

    その日は珍しく2人だけで飲んだ。
    あたしは、ジュンの前で酔ったこともなければ、潰れたこともない。
    なぜかジュンの前ではいくら飲んでも酔わなかった。

    「相変わらず、オマエ強いなぁ。
    女でオマエより強いやつ見たことないわ。
    リナ、泊まってけよ。」

    2007-03-06 16:36:00
  • 70:

    諸星リナ。

    「さっきまでの話聞いてなかった?笑 
    あたし飼い主いるからムリって。」
    「何もしない。」

    今更そんなこと信じれるわけがない。
    「信じない。」
    そんなあたしの言葉を無視して、ジュンは電気を消す。
    そして、「はい、こここい。」

    2007-03-06 16:56:00
  • 71:

    諸星リナ。

    突っ立っているあたしを強引に引き寄せる。
    「なぁ、リナ?キスして。」
    「なんでやねん。ちょ・・帰るし離してって。」

    急に抱き寄せられたことより、ジュンにキスしてといわれたことの方が驚きだった。
    ジュンはあたしにお願いしたりなんてしなかった。

    2007-03-06 16:59:00
  • 72:

    諸星リナ。

    暗闇の中でジュンの表情は読めない。
    そして、あたし自身もどんな顔をしているのかわからなかった。

    ジュンは笑う。
    「リナ?俺がゆってんねんで?キスしてって。キスして。ちょっと会わん間に男って・・なぁ?俺は??リナッ」

    2007-03-07 20:33:00
  • 73:

    諸星リナ。

    一瞬だけジュンの瞳に映った自分が見えた。
    女の顔だった。

    その夜、ジュンに抱かれた。
    ジュンがあれほど優しかったことはあとにも先にもなかった。
    そしてあたしを引き寄せて優しい声で言った。

    2007-03-08 04:49:00
  • 74:

    諸星リナ。

    「浮気って言うのはバレた時にいう。」

    浮気相手になっても、自分が浮気をするとは思わなかった。
    でもなぜか、自分の感覚の中では、ジュンだけは別枠だった。
    付き合っているわけでもないのにカラダを許していたせいか線引きが出来なかったのだと思う。

    2007-03-08 04:55:00
  • 75:

    諸星リナ。

    罪悪感すら感じることが出来ずにいた。
    ゴールデンウィークが明け、祇園に戻った。
    不安定だった自分が、カラダのそこから沸きあがるような幸福感に満たされていくのがわかる。
    合わせる顔がない―というわけもなく、タケルに会えなくてもなんとも思わなかった。

    2007-03-08 05:00:00
  • 76:

    諸星リナ。

    付き合って1ヶ月を過ぎてもイマイチタケルの本心が見えてこなかった。
    ある日突然気がついた。

    あの幸福なセックスはもう二度と味会うことが出来ないということに。
    理由は簡単。
    あたしには、拘束する権利も求める権利もないから。
    それを持つのは「彼女」だけだ。

    2007-03-08 05:03:00
  • 77:

    諸星リナ。

    あたしは決していつも誠実な「彼女」だったとはもちろん言わない。
    だけど、権利どうのではなく、そうしたい・されたいとタケルは思ってくれたことがあっただろうか。
    その気持ちがないのであれば、このうわべだけのつながりは無意味に思えた。

    2007-03-08 05:06:00
  • 78:

    諸星リナ。

    タケルとあたしの関係は平行線のままだった。

    タケルからの連絡のない日曜日。
    着信「なおと」

    この電話を境に、あたしの生活はめまぐるしく変わってしまうことになる。

    2007-03-08 05:09:00
  • 79:

    名無しさん

    タケルは友達も多く忙しい人だった。
    だけど、不誠実な人間ではなかった。
    派手な見た目とは違って、人生経験も少ないように思えた。

    2007-03-09 23:07:00
  • 80:

    名無しさん

    「もしもし?なにしてるん?」と直人。
    最近では意図はわからないが、直人からの電話が慣れっこになっていた。
    「はいはい?部屋引きこもってるよ」とあたし。
    「うわっ最低〜。どんぐらいひきってるん?」
    「んー土曜日は出てないから・・・3日目?!」
    「は?!そらあかんやろ。今すぐ出てこいや!」

    2007-03-09 23:10:00
  • 81:

    諸星リナ。

    「ええねん、引きこもりで。そんな営業いいし。」
    「営業とかちゃうしー。とりあえず、外に出ろ。」
    「あたし引きるの好き。」
    「あ、うん。俺も好きやけども。10代でそれやばいし。店にこんでいいし、とりあえず部屋から出てこいや。しゃべろ。」

    2007-03-09 23:16:00
  • 82:

    諸星リナ。

    「いやや。絶対営業されるー。リナ貧乏だからムリ〜。」
    「わかってる。出てくるなら待ってるから。」
    さっきまでバカ言い合ってたのに、このときだけ、ふっと優しい声をした。
    その声の主に甘えるようにあたしも「出て・・いこうかなぁ?」と言ってみた。
    直人は、「ホンマに?!待ってるし。四条大橋ついたら電話して」という。

    2007-03-09 23:21:00
  • 83:

    諸星リナ。

    正直直人の顔なんてもう忘れていた。
    でも、無意味にくれた電話は気分転換に一役買ってくれた。
    タケルと付き合ってから、極力男性には会わないように気をつけてきた。
    ジュンを抜かしては。
    今夜、タケルが女の子と一緒なのは知っている。

    2007-03-09 23:37:00
  • 84:

    諸星リナ。

    サークルのコンパで飲んでいることは、同じサークルの子から調査済み。
    別に飲みに行ってくれたって構わない。
    秘密にしないで言って欲しい。
    「今から行って来る。」「ただいま。」
    その二言があれば十分なのに。

    2007-03-09 23:42:00
  • 85:

    諸星リナ。

    電話を置いて、「ホンマにいくん?」と独り言。
    「気分転換・・・いいかもしれない。」
    待ってもくるかどうかわからない連絡を待つような生活は自分らしくない。
    「別にどうこうしようとしてるわけじゃないんだから。」

    2007-03-09 23:47:00
  • 86:

    諸星リナ。

    1時間半かけて化粧をして、着替えた。
    鏡に映る自分はいつもの真面目な大学生と違うはずもないのに、どこかが違って見えた。
    素直の自分が可愛いと思った。
    ・・・今日は笑えたから。

    2007-03-09 23:51:00
  • 87:

    諸星リナ。

    四条大橋。
    じぶんから直人に電話するのはこのときが初めてだった。
    着信にリダイヤル「もしもし?ついたけど?」

    2007-03-09 23:54:00
  • 88:

    諸星リナ。

    「ってか化粧長ッ!そんな長いヤツ初めてやねんけど!」
    「はぁ〜?普通やって。めっちゃ急いだのに。」
    「んーまぁ出てきたから許し足るわ。もうちょいでつくしまっといてや?」

    2007-03-09 23:57:00
  • 89:

    諸星リナ。

    どこから来るのかもわからず、ボンヤリつったっていた。

    後ろから「オイ」と呼ばれ、振り返ると白スーツのホストが立っていた。
    「ホンマに出てきたなぁ。お待たせ☆」
    「・・・めっちゃホストだ。」
    「は?ホストやしな。」

    2007-03-10 00:04:00
  • 90:

    諸星リナ。

    「・・・。」直人。
    「ん?何?」無言でじっとみつめる直人に不思議に思った。
    「正直あんまりお前のこと覚えてなかってんけど、お前案外可愛いな。」
    「何やねん、それ!今さらどんなお世辞やねんな。」
    やっぱり直人はホストらしくない・・・。

    2007-03-10 23:59:00
  • 91:

    諸星リナ。

    5月末にしては冷える夜で、ジャケットの上からも加茂川の風邪は冷たかった。
    「寒ッ」小さくそういうと声を直人は聞き逃さなかった。
    「カネはいらんし店いこか。寒いやろ?」

    2007-03-11 00:24:00
  • 92:

    名無しさん

    「・・・。」
    興味はあるけどあんまり行きたくないなぁ。
    ホストかぁ。最初からそのつもりやったんかなぁ。。

    2007-03-11 01:53:00
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