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BAD TRIP

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  • 1:

    薫◆PJECfxpafU

    夢を見ていた…。
    暗い闇の中で蹲って、温かい波に揺られる夢を…。
    辺りには何も見えない。
    けれど、その水の中はどこか懐かしくて…心地いい。

    2007-01-25 02:23:00
  • 2:

    薫◆PJECfxpafU

    『…ぉる…。薫。』


    何処かで俺を呼ぶ声が聞こえる。

    2007-01-25 02:25:00
  • 3:

    薫◆PJECfxpafU


    やめてくれ。
    俺を呼ばないで…。
    このまま此処に居させて欲しい…。

    2007-01-25 02:28:00
  • 4:

    薫◆PJECfxpafU

    俺は必死でその声に願った。
    それでもその声は止む事はない。

    『かおる…。薫…。』

    2007-01-25 02:31:00
  • 5:

    薫◆PJECfxpafU

    俺は耳を塞いだ。

    此処から出たくない。此処にいたい。
    俺は現実を知ってる。現実は暗くて、冷たくて、汚くて…。
    此処にいる方が幸せなんだ。

    2007-01-25 02:36:00
  • 6:

    薫◆PJECfxpafU

    『薫…。薫…。』

    やめてくれ!
    ほっといてくれ!!

    無茶苦茶にその声を拒否して、耳を塞ぎ、声を荒げたその時だった。

    2007-01-25 02:39:00
  • 7:

    薫◆PJECfxpafU

    『ごめんね…。』


    え…?

    2007-01-25 02:40:00
  • 8:

    薫◆PJECfxpafU

    ハッキリ聞こえたその声と同時に、銀色の金具がこの心地いい海に荒波を立てながら侵入してくる。

    「ギャアアアッ!!」
    思わず叫んだ。

    2007-01-25 02:45:00
  • 9:

    薫◆PJECfxpafU

    『逃ゲナケレバ殺サレル』
    俺は本能的にそれを察知した。

    「助けてっ!」
    叫んでも誰の耳にも届くことはない。

    2007-01-25 02:48:00
  • 10:

    名無しさん

    子供はおろすな

    2007-01-25 02:48:00
  • 11:

    薫◆PJECfxpafU

    金具は容赦なく俺の腕を千切っていく。

    「ギャアアアアッ!助けて!誰か!助けてっっ!!」

    そして金具はまた俺に近付き…俺はギュッと目を閉じた。

    2007-01-25 02:51:00
  • 12:

    名無しさん

    お願いだから子供おろさないで

    2007-01-25 02:54:00
  • 13:

    薫◆PJECfxpafU

    >>10サン
    そうです?主もそう思います?
    子供を堕胎に関係するスレが乱立していたので子供をテーマにして今回は書いていこうと思っています??最後までどうぞおつきあい願います??

    2007-01-25 02:55:00
  • 14:

    薫◆PJECfxpafU

    >>12サン
    こんな時間に読んでくれてる人が居るなんて嬉しいです??
    最後までおつきあいくださいね????

    2007-01-25 02:58:00
  • 15:

    薫◆PJECfxpafU

    ガバッ!!

    俺は勢いよく体を起こした。
    全身に汗を吸った衣服がまとわりつく。

    2007-01-25 03:00:00
  • 16:

    薫◆PJECfxpafU

    「ゆ…め?」

    辺りを見回す。
    ただ月明かりが俺を照らすだけの何の変哲もないいつもの整然と片付いた俺の部屋。

    2007-01-25 03:03:00
  • 17:

    名無しさん

    読んでます
    子供は好きじゃないけど自分の子供は可愛くてそれが死ぬなんてたえれないでもそれより嫁がもっと大事で嫁の体の為にも心の為にもおろされたくない
    今そんな状況にいるから読みます

    2007-01-25 03:04:00
  • 18:

    薫◆PJECfxpafU

    俺はキッチンに向かうため部屋から出た。
    汗をかいたせいか酷く喉が渇いている。
    隣で眠る妻と子供を起こさぬ様にそっと…。

    2007-01-25 03:08:00
  • 19:

    薫◆PJECfxpafU

    >>17サン
    何だか大変なんですね??事情は分からないですけど産んでくれるといいですね??

    2007-01-25 03:11:00
  • 20:

    薫◆PJECfxpafU

    ジャーッ
    バシャバシャッ
    ゴクッゴクッ

    寝覚めの悪い夢を見たせいか、喉の渇きはなかなか満たされなかった。

    2007-01-25 03:14:00
  • 21:

    薫◆PJECfxpafU

    何であんな夢を見たんだろう。
    あれは堕胎される子供の様だった。
    堕胎された子供はあんな風に苦しんでいるのだろうか。
    そんなことを考えながら寝室に戻る。

    2007-01-25 03:18:00
  • 22:

    名無しさん

    本当にね…
    もしまた新しい子と家族皆でやり直せるならきっともうこんな事起こさないです
    主さん書き上げて下さい
    ハッピーエンドになりますように

    2007-01-25 03:18:00
  • 23:

    薫◆PJECfxpafU

    「薫。どうしたの?」
    眠い目を擦りながら妻が半身を起こす。
    「嫌な夢を見たんだ。苦しくて、痛くて、何より怖かった。」
    力なく呟く俺に妻は優しく微笑みかけた。

    2007-01-25 03:21:00
  • 24:

    薫◆PJECfxpafU

    >>22サン
    ありがとうございますっ??頑張ります???

    2007-01-25 03:23:00
  • 25:

    薫◆PJECfxpafU

    「薫。貴方には私達家族が居るわ。貴方が辛いとき、苦しいとき、その全てを受け止めて支える家族が。だから何も怖がることはないのよ。」
    妻の言葉に俺もつられて微笑む。
    「ありがとう。俺は幸せだよ。」
    心からそう思った。

    2007-01-25 03:29:00
  • 26:

    薫◆PJECfxpafU

    まりあ。
    妻としては勿論、母としてもまりあは申し分のない女だ。
    容姿、中身、家柄とその全てが完璧で、どうして俺なんかと結婚したのかと思う程、俺にはもったいないくらいの妻。

    まりあの存在は周囲を優しい気持ちにする。そう、まるで本当のマリアの様に…。

    2007-01-25 03:39:00
  • 27:

    薫◆PJECfxpafU

    「さあ、明日も薫は仕事なんだから早く寝ましょう。」
    「うん。」
    ベッドに横たわった俺にまりあが布団を掛ける。
    そして、軽く俺にキスをして俺の隣に潜り込んだ。
    「おやすみなさい。」

    2007-01-25 03:46:00
  • 28:

    薫◆PJECfxpafU

    ベッドの中でまりあの手を探った。
    俺は幼い頃から不安になると手を握らないと眠れない。
    まりあはそれに気付いて俺の手をギュッと握り、微笑んだ。
    「大丈夫よ、薫。私達はいつも貴方の隣に居るわ。」
    そう言うと、まりあは俺に寄り添い、眠りに就いた。

    2007-01-25 03:52:00
  • 29:

    薫◆PJECfxpafU

    それを確認してから俺も目を閉じて…。

    気が付くと朝がもうきていた。
    昨日の夢なんて無かったかのように、晴れ渡った空。
    明るい光が差し込んでくる。

    2007-01-25 03:56:00
  • 30:

    薫◆PJECfxpafU

    俺はまだ寝起きの体を引きずりキッチンに行った。
    テーブルの上にはもう朝食が出来ている。

    「おはよう、薫。ご飯にしましょう。」
    まりあがにっこりと微笑み、言った。

    2007-01-25 04:00:00
  • 31:

    薫◆PJECfxpafU

    「純を起こしてくるから、少し待ってね。」
    そう言ってまりあは寝室に向かった。
    俺はまりあと純を待ちながら新聞を広げた。
    朝食にと用意された焼き魚と玉子焼きのいい匂いがする。

    2007-01-25 04:06:00
  • 32:

    薫◆PJECfxpafU

    まりあと純を待ちながら広げた新聞の記事がふと目に留まる。

    『一家誘拐事件。夫に殺人強要。』

    2007-01-25 04:11:00
  • 33:

    薫◆PJECfxpafU

    内容は
    昨日、O府で被害者であり加害者となる夫と、その家族三人(母、妻、子)が誘拐され、犯人に家族のうちの一人を殺害する様に強要される。
    夫は拒否したが、ならば全員を殺すと脅迫され、悩んだ末、母を殺害し、その後に自首。妻と子は無事保護されたが、夫が母を殺す姿を目の当たりにした妻は精神病院に入院、子供は暫く親戚が預かることになった。
    犯人はまだ捕まっていない。
    というものだった。

    2007-01-25 04:25:00
  • 34:

    薫◆PJECfxpafU

    「あら、何を真剣に読んでるの?面白い記事でも有ったの?」
    突然降ってきた声にビックリして顔を上げると、純を抱いたまりあが立っていた。
    「パパおぁよぉ」
    くるくるした目で純が俺にだっこを求める。「おはよう。」
    俺は純をだっこして微笑みかけた。

    2007-01-25 04:33:00
  • 35:

    名無しさん

    なんで標準語なん?

    2007-01-25 11:14:00
  • 36:

    薫◆PJECfxpafU

    >>35サン
    ミステリー小説で関西弁って変じゃないですか???主はそう思ったのでわざと標準語をもって使っています??

    2007-01-25 12:05:00
  • 37:

    名無しさん

    嫁か子供なんて選べない嫁が一番大事だけど犯人を殺す
    夜も書き込みしたものです
    主様完成まで頑張って下さい

    2007-01-25 12:10:00
  • 38:

    薫◆PJECfxpafU

    >>37サン
    また来てくれたんですね????ありがとうございますっ????主ももしそんな事件があるとしたらそうすると思います??今後の展開にまた期待しておいてください??

    2007-01-25 12:17:00
  • 39:

    名無しさん

    楽しみです
    本音はもしかしたら私はどうしても片方なら嫁を助けるかもしれません
    私も書いてる二つを両方完成させます

    2007-01-25 12:24:00
  • 40:

    薫◆PJECfxpafU

    純。俺とまりあの大切な一人息子。宝物。
    もうすぐ二歳になるが、言葉はまだ舌ったらずで、甘えた。
    子供嫌いの俺だったが、純好き。
    俺はまりあと純を守るためなら強くなれるし何だって出来る。
    純が産まれてから父親とはそういうものだと身を持って実感した。

    2007-01-25 12:28:00
  • 41:

    薫◆PJECfxpafU

    >>39サン
    愛妻家なんですね??家族は大事にしてください??そして、小説頑張ってお互いにいい物を完成させましょうね?????

    2007-01-25 12:48:00
  • 42:

    名無しさん

    そんな綺麗な言葉に当て嵌まらないしただの自己満足ですけど
    嫁がもし居てくれるなら生きてれる理由になりますね
    頑張って下さい

    2007-01-25 13:22:00
  • 43:

    薫◆PJECfxpafU

    >>42サン
    ん〜…よくわからないですけど42サンも頑張ってくださいね??

    2007-01-25 13:41:00
  • 44:

    薫◆PJECfxpafU

    「さぁ、ご飯にしましょう。冷めちゃうわ。」
    そういってマリアはご飯と味噌汁をよそった。
    俺は純をベビー椅子に座らせる。
    「ごぁん。ごぁん。」
    純はお腹が空いているらしく、それをワクワクした目で待っている。

    2007-01-25 14:35:00
  • 45:

    薫◆PJECfxpafU

    「いただきます。」
    挨拶と共に箸を付ける。
    まりあの作る食事は美味しい。
    空腹の純はまりあがほぐした焼き魚をぎこちない手付きでこぼしながらも一生懸命に食べている。
    その隣で箸の先しか汚さないまりあが、純に「上手、上手。」と微笑みかけながら行儀よくご飯を食べる。

    2007-01-25 14:41:00
  • 46:

    薫◆PJECfxpafU

    いつもと何も変わらない家族。
    いつもと何も変わらない食卓。
    昨日の悪夢なんて忘れて、俺はその幸せに酔いしれていた。
    ずっとこの家族と居たい。
    ずっとこの家族の幸せを守りたい…と。

    2007-01-25 14:43:00
  • 47:

    アッシュベイビィ

    主様今夜も頑張って書いて下さい昨日から楽しみにしています

    2007-01-25 21:23:00
  • 48:

    薫◆PJECfxpafU

    アッシュベイビィサン
    応援ありがとうございますっ????今夜も書ける限り書きますのでおつきあい願います???

    2007-01-25 22:39:00
  • 49:

    薫◆PJECfxpafU

    朝食を終え、俺は会社に行く用意をし始める。
    純との歯磨き。
    その間にまりあが食器を片付ける。
    それが毎朝の日課だった。

    2007-01-25 22:42:00
  • 50:

    薫◆PJECfxpafU

    歯磨きを終えると、俺はスーツに着替える。今日も俺のYシャツにはきちんとアイロンがかけられていて、襟と袖にはノリが効いている。
    流石、の一言に尽きる出来栄えだ。

    ネクタイを締め終わり時計を着ける。
    見た目の通りの営業職だ。

    2007-01-25 22:54:00
  • 51:

    薫◆PJECfxpafU

    着替えを終え、軽く髪を櫛で整えリビングに行くと、まりあが眉間に皺を寄せてテレビを見ている。
    「どうした?」
    「今やってるニュースがとても怖いの。誘拐犯が家族の殺人を強要したんですって。」
    どうやら俺がさっき見ていた新聞の記事の事件が報道されているらしい。
    「怖い世の中ね。」

    2007-01-25 23:04:00
  • 52:

    薫◆PJECfxpafU

    まりあが悲しそうに言った。
    俺は、そんなまりあの頭をクシャクシャと撫で、ギュッと抱き締めた。
    「大丈夫。俺がまりあと純を守るから。心配しなくてもいいんだよ。」
    「ありがとう。期待してるわよ?パパ?」
    まりあが俺を見上げ微笑む。

    2007-01-25 23:11:00
  • 53:

    薫◆PJECfxpafU

    「純君も〜っ!」
    純もよちよち歩きで寄って来て俺のズボンにしがみつく。
    「家族の幸せは俺が守るから。」
    幸せを噛み締めながらもう一度言った。
    そう。俺は本当に幸せだ。

    2007-01-25 23:18:00
  • 54:

    薫◆PJECfxpafU

    「それじゃあ、いってくるよ。」
    名残惜しいが、俺はまりあから体を離していってきますのキスをする。
    「純、今日もママの言うこと聞いていい子にしてるんだぞ。」
    俺は純と目線を合わせるためにしゃがんで言った。

    2007-01-25 23:25:00
  • 55:

    薫◆PJECfxpafU

    「はぁい!」
    純が元気よく言う。
    そんな純の頭を撫でると、純は機嫌良さそうに笑った。
    「はい、薫。」
    まりあがジャケットを差し出す。

    2007-01-25 23:28:00
  • 56:

    薫◆PJECfxpafU

    「ありがとう。」
    俺はそのジャケットに袖を通した。
    「お弁当、鞄に入れておくから残さず食べてね。」
    テキパキと出勤の準備をするまりあ。
    「あぁ。分かってるよ。」

    2007-01-25 23:31:00
  • 57:

    薫◆PJECfxpafU

    ジャケットの着くずれを直すと、俺は玄関に向かった。
    その後ろをまりあが鞄を持って歩く。
    そのさらに後ろを純がついてくる。
    「じゃあ、今日も気を付けてお仕事頑張ってね。」
    靴を履き終えた俺に、まりあが鞄を渡した。

    2007-01-25 23:41:00
  • 58:

    薫◆PJECfxpafU

    「いってきます。」
    鞄を受け取り、俺は言った。
    玄関を開けると、外はとても明るかった。
    「いってらっしゃい。」
    「いってらっちゃぁい!」

    2007-01-25 23:47:00
  • 59:

    薫◆PJECfxpafU

    まりあと純が笑って俺を送り出してくれる。
    当たり前の日常
    当たり前の幸せ

    それがこんな形で崩れるなんて思ってもみなかった。

    2007-01-25 23:49:00
  • 60:

    名無しさん

    さあ今夜も頑張って下さい

    2007-01-26 01:03:00
  • 61:

    薫◆PJECfxpafU

    >>60サン
    昨日は夜疲れて寝てしまって更新出来ませんでした??今から更新していきますね??

    2007-01-26 13:00:00
  • 62:

    薫◆PJECfxpafU

    俺は、この日も営業回り。
    楽しくも何ともない、上司と先方に媚を売る毎日。
    元々人に媚るのは得意じゃない。
    だけど、まりあと純のために俺は必死だった。

    2007-01-26 13:07:00
  • 63:

    薫◆PJECfxpafU

    夜七時。
    へとへとに疲れて俺は帰路につく。
    家に帰ると、まりあと純が変わらない笑顔で俺の帰りを迎えてくれて、まりあの作ったご飯を食べて…。
    そんなことを考えながら駅からの道を早足で急いだ。
    途中、ケーキ屋が目に留まったので、ケーキを買った。

    2007-01-26 13:12:00
  • 64:

    薫◆PJECfxpafU

    まりあの好きなスフレチーズケーキ。
    まりあと純の喜ぶ顔が目に浮かぶ。
    今夜は一緒にケーキを食べよう。
    俺に心からの幸せをくれる家族と一緒に…。

    2007-01-26 13:15:00
  • 65:

    薫◆PJECfxpafU

    「ただいま。」
    ドアを開けた。
    いつもなら夕食のいい匂いがして、「おかえりなさい。」と、まりあと純が俺の帰りを出迎える。
    そう。
    いつもなら…。

    2007-01-26 13:18:00
  • 66:

    薫◆PJECfxpafU

    けれど、この日は違った。
    整然と並べられたまりあと純の靴。
    磨かれた廊下。
    けれど、夕食のいい匂いはしない。
    それどころか物音一つ…。

    2007-01-26 13:21:00
  • 67:

    薫◆PJECfxpafU

    「まりあ?」
    急に不安に駆られて、靴を脱ぎ捨て居間に急ぐ。

    「まりあ!」

    2007-01-26 13:22:00
  • 68:

    薫◆PJECfxpafU

    バンッ!!

    ドアを開ける。

    2007-01-26 13:23:00
  • 69:

    薫◆PJECfxpafU

    そこにはまりあの姿も、純の姿もなかった。
    からっぽの部屋。

    テレビの音だけがやたらと響く。

    2007-01-26 13:25:00
  • 70:

    薫◆PJECfxpafU

    「え…?」

    全く状況が理解出来ない。
    散らかった純の玩具。
    きっとお気に入りの車の玩具で今日も遊んでいたのだろう。

    2007-01-26 13:29:00
  • 71:

    薫◆PJECfxpafU

    もしかして寝ているのかもと思い、寝室に行ってみる。

    しかし、あるのはきちんと直されたベッドだけ…。

    2007-01-26 13:31:00
  • 72:

    薫◆PJECfxpafU

    キッチンにも行ってみる。

    切りかけの人参と、床に落ちた包丁。
    床に散らばった鍋と割れた皿。

    2007-01-26 13:33:00
  • 73:

    薫◆PJECfxpafU

    「何…で…?」

    やっぱり状況が飲み込めない。

    まさか…誘拐?

    2007-01-26 13:38:00
  • 74:

    名無しさん

    続きが楽しみぃ???

    2007-01-27 03:50:00
  • 75:

    薫◆PJECfxpafU

    >>74サン
    楽しみにしてくれてありがとうございます??頑張って完結させますのでお付き合いくださいね???

    2007-01-27 12:36:00
  • 76:

    薫◆PJECfxpafU

    「まりあ!純!」

    必死になって家中を捜しまわった。
    風呂、トイレ、ベランダ、クローゼット、ベッドの下から箪笥に至るまで全て…。
    入るわけがないのに引き出しや食器棚の中まで…。

    2007-01-27 12:42:00
  • 77:

    薫◆PJECfxpafU

    けれど、二人の姿は影も形もない。

    「あぁぁぁっ!」

    俺は頭を抱えてその場に蹲った。

    2007-01-27 12:44:00
  • 78:

    薫◆PJECfxpafU

    蘇る幼い頃の記憶。

    独りのぼっちの家。
    繰り返される親からの虐待。
    汚い物を見るような世間の目…。

    2007-01-27 13:00:00
  • 79:

    薫◆PJECfxpafU

    気付かぬうちに体が震え涙が溢れ出す。

    俺に暴力を奮い続けた父さん。
    俺を見ようともしなかった母さん。
    幸せそうな家族と、俺に向けられた白い目…。

    2007-01-27 13:04:00
  • 80:

    薫◆PJECfxpafU

    そして…



    全ての幸せな人に嫉妬し、憎み、恨んだ自分。

    2007-01-27 13:05:00
  • 81:

    薫◆PJECfxpafU

    頭が痛い。

    思い出したくもないのに記憶の暴走は止まらない。

    2007-01-27 13:08:00
  • 82:

    薫◆PJECfxpafU

    痛かった。
    苦しかった。
    辛かった。
    少しでいいから俺のことを見て欲しかった。
    少しだけで良いから愛して欲しかった…。

    2007-01-27 13:10:00
  • 83:

    薫◆PJECfxpafU

    『貴方には私達家族が居るわ。辛いとき、苦しいとき、その全てを受け止めて支える家族が。』

    まりあの優しい声が聞こえた気がした。

    2007-01-27 13:16:00
  • 84:

    薫◆PJECfxpafU

    そう。
    暗闇から俺を救いだしてくれたのは…


    まりあ。

    2007-01-27 13:17:00
  • 85:

    薫◆PJECfxpafU

    『パパだぁいすき!』



    純。

    2007-01-27 13:18:00
  • 86:

    薫◆PJECfxpafU

    俺は涙を拭いて立ち上がった。
    こんなところで泣いてる場合じゃない。

    探しに行こう。
    守るって決めたんだ。
    俺の大切な家族を。

    2007-01-27 13:19:00
  • 87:

    薫◆PJECfxpafU

    俺は涙を拭いて立ち上がった。
    泣いてる場合じゃない。

    2007-01-27 13:29:00
  • 88:

    薫◆PJECfxpafU

    まず警察に電話をかけた。
    家に帰ったらまりあと子供の姿が無かったことと、所持品は何もなく、靴も履いていないこと、誘拐かもしれないことを伝えた。
    すると、警察は俺に帰宅した時間や、犯人からの電話は無かったかなどいくつか質問した後、誘拐だと断定できないと言った。
    それどころか、家出かもしれないから、まりあの実家や友人の家等行きそうな場所を捜してからもう一度連絡をくれと一方的に言われ、何も言い返せないまま「ありがとうございました。」とだけ言い、俺は電話を切ってしまった。
    警察は事件にならないと頼れないことを悟った瞬間だった。

    2007-01-27 13:46:00
  • 89:

    薫◆PJECfxpafU

    その後、まりあの両親や友達にも連絡をした。
    返ってくるのは同じ返事ばかり。

    「ここには来ていない。」

    2007-01-29 10:31:00
  • 90:

    薫◆PJECfxpafU

    ある程度予想の出来る答えだった。

    俺は、電話の相手全員にまりあと純が居なくなったこと、誘拐かもしれないこと、もし連絡があればすぐに電話をくれるよう携帯と番号を伝えた。
    皆、まりあと純の事を心配してくれて、一緒に捜すと言ってくれた。
    そんな風に言ってくれる家族や友人がいることを羨ましく思った。

    2007-01-29 10:37:00
  • 91:

    薫◆PJECfxpafU

    電話を切ってすぐ、俺は財布と携帯だけをポケットに入れて外に飛び出した。
    まりあと純を捜すために、スーツも着替えずに。

    2007-01-29 10:42:00
  • 92:

    薫◆PJECfxpafU

    「まりあーっ!じゅーんっ!」
    大声を出して叫び、近所を走り回った。
    そんな俺を変な目で見る人もいた。
    だけど、そんなことは全く気にならなかった。
    世間の目なんかより、まりあと純のほうが何倍も大切だって俺には分かっていたから。

    2007-01-29 10:47:00
  • 93:

    名無しさん

    頼むから無事でいてくれ…。

    ただそんな思いで捜した。
    疲れからか足がもつれる。
    自分の体力の無さに情けなくなる。

    2007-01-29 17:45:00
  • 94:

    薫◆PJECfxpafU

    ↑名前入れ忘れた???

    2007-01-29 17:46:00
  • 95:

    薫◆PJECfxpafU

    ある公園に差し掛かった時、俺を呼ぶ声が聞こえた。

    「薫さん!」

    2007-01-29 17:47:00
  • 96:

    薫◆PJECfxpafU

    まりあの幼馴染みの智也だった。
    まりあの両親から話を聞いて一緒に捜してくれているようだ。

    「まりあ、見付かりました?」

    2007-01-29 18:11:00
  • 97:

    薫◆PJECfxpafU

    俺は力なく首を横に振った。

    ドカッ!!

    その途端、俺の頬に衝撃が走る。

    2007-01-29 18:14:00
  • 98:

    薫◆PJECfxpafU

    「痛…。」
    思わず頬を押さえた。まだ熱を帯びた頬はジンジンと痛みを訴えてている。
    「何で…何でまりあがいなくなるんだよ!!何で!!薫さんはまりあを守るってあの時言ったじゃないか!!絶対に幸せにするって!!」
    悲痛な声と共に智也が俺の胸ぐらを掴み、大きく揺する。

    2007-01-29 18:18:00
  • 99:

    薫◆PJECfxpafU

    「俺、まりあがずっと好きだった!だけど、まりあが私を幸せにしてくれるのはこの人しか居ないし、あの人を幸せに出来るのは私しか居ないって言ったから!薫さんも同じだったから!それに、薫さんならまりあの幸せを一生守っていけるって思ったから!だからあの時諦めたのに!!あんなに苦しい思いをして諦めたのに!!」

    智也が声を荒げる。

    2007-01-29 18:23:00
  • 100:

    薫◆PJECfxpafU

    「ごめん…。」
    何も言えなかった。
    智也の言葉が突き刺さって、何も言い返せないことが悔しくて、情けなくて…涙が出た。
    「ごめんなさい…っ。」

    2007-01-29 18:26:00
  • 101:

    薫◆PJECfxpafU

    ふっ…と智也の手が緩み、俺から離れた。

    「泣くなよ。」

    俺は黙って涙を拭いた。

    2007-01-29 18:28:00
  • 102:

    薫◆PJECfxpafU

    「とにかく、もう一度手分けして捜そう。見付かったら俺も連絡するから。」
    「うん。」
    智也は冷静だった。

    足早にその場を去ろうとした智也が、ふと足を止めた。

    2007-01-29 18:31:00
  • 103:

    薫◆PJECfxpafU

    「本当は、俺だって薫さんが悪いわけじゃないって分かってるんだ。薫さんも辛い思いしてる事も。」
    智也はギュッと拳を握り締めた。
    「まりあ、いつも幸せだって笑ってた。薫さんと純がいるから幸せなんだって。だから、俺は安心して薫さんにまりあを任せることができた。きっと俺じゃあんな風にまりあを笑わせることは出来ない。」

    泣いてる…?

    2007-01-29 18:43:00
  • 104:

    薫◆PJECfxpafU

    智也はゴシゴシと顔を擦って振り返った。
    「だから、まりあと純が無事に帰って来たら本当に幸せを守ってやってくれよな。じゃないと俺、薫さんのこと許さないから。」
    ニカッと智也が笑った。
    「じゃ、俺あっちを捜すから。見付かったら連絡するよ。」
    サッと右手を上げて智也はまた俺に背を向けて走り出した。

    2007-01-29 18:48:00
  • 105:

    薫◆PJECfxpafU

    「ありがとう!」

    俺はその背中に向かって叫んだ。
    まりあは本当にいい幼馴染みを持ったなと、微笑ましいと同時に有難かった。
    さぁ、俺も捜しに行かないと。こんな所で立ち止まってる場合じゃない。

    2007-01-29 18:52:00
  • 106:

    薫◆PJECfxpafU

    もう一度俺は走り出した。
    まりあと純の為、そして二人のことを想ってくれる皆の為に。

    2007-01-29 21:43:00
  • 107:

    薫◆PJECfxpafU

    捜索は深夜に及んだ。
    こんなに捜しても二人は見つからない。
    もちろん、誰からも見付かったと連絡はなかった。

    やっぱり誘拐なのか?

    2007-01-29 21:46:00
  • 108:

    薫◆PJECfxpafU

    けれど、これで警察は事件として公開で捜査してくれるだろうと、内心少しホッとした。

    とにかくまりあと純が無事ならそれでいい。

    俺はそれだけを強く願いながら警察署へ向かった。

    2007-01-30 12:56:00
  • 109:

    薫◆PJECfxpafU

    体はもうピークを越えていた。
    警察署までは此処から約10分。

    俺が重い体を引きずるようにさっきの公園を通り過ぎようとしたその時だった。

    2007-01-30 12:59:00
  • 110:

    薫◆PJECfxpafU


    ガツンッ!!


    2007-01-30 13:00:00
  • 111:

    薫◆PJECfxpafU

    抵抗するどころか、何も考える余裕さえ無かった。

    後頭部に走る何処か懐かしい衝撃…。

    何故だろう…。

    2007-01-30 13:02:00
  • 112:

    薫◆PJECfxpafU

    あぁ…そうか…。

    この痛みは…父さん…。

    2007-01-30 13:03:00
  • 113:

    薫◆PJECfxpafU

    目の前が白く霞んでいく。

    薄れていく視界の隅に誰かの足が写ったような気がしたが、俺はそれが誰かをを確かめる事も出来ないまま…静かに意識を失った。

    2007-01-30 13:06:00
  • 114:

    薫◆PJECfxpafU


    2007-01-30 13:50:00
  • 115:

    薫◆PJECfxpafU

    えーん…えーん…。


    遠くで子供の泣き声がする。
    幼い子供の泣き声が…。

    2007-01-30 13:51:00
  • 116:

    薫◆PJECfxpafU

    此処は何処だろう。
    懐かしい見慣れた街並み。

    あぁ、そうだ。
    此処は幼い頃俺が育った街。

    2007-01-30 13:53:00
  • 117:

    薫◆PJECfxpafU

    えーん…えーん…。

    近くを散策してみる。
    泣き声はまだ止まない。

    2007-01-30 13:55:00
  • 118:

    薫◆PJECfxpafU

    そして、俺はある家の前で足を止めた。

    禍々しい思い出しか残っていない俺の家。

    そして、その家の前でドアに向かいながら泣いている少年。

    2007-01-30 13:58:00
  • 119:

    薫◆PJECfxpafU

    この寒い中、トレーナーと半ズボンで外に追い出されたようだ。

    そう。
    多分あれは幼い日の俺だ。

    2007-01-30 14:00:00
  • 120:

    薫◆PJECfxpafU

    俺は、俺に話しかけることにした。

    「どうしたの?」

    少年はビクッとして泣くのを止めて振り返る。

    2007-01-30 14:01:00
  • 121:

    薫◆PJECfxpafU

    その顔や足には生々しい痣が無数に付けられていた。

    「大丈夫?」

    大丈夫なわけないのに、白々しく聞いてしまう。

    2007-01-30 14:03:00
  • 122:

    薫◆PJECfxpafU

    少年はこくんと頷いた。

    「誰にやられたの?」
    誰にやられたかなんて分かってる。
    父さんだ。

    2007-01-30 14:04:00
  • 123:

    薫◆PJECfxpafU

    「自分で転んだの。」

    幼い俺はそう言った。
    そうだ。
    あの頃、俺も父さんにやられたなんて一度も言ったことは無かったっけ…。

    2007-01-30 14:06:00
  • 124:

    薫◆PJECfxpafU

    あの頃、父さんが怖くて仕方なかった。
    直ぐに手を上げる父さんが。

    「助けて」なんて言えなかった。
    助けてくれた誰かに迷惑がかかるんじゃないかと思って。

    2007-01-30 14:09:00
  • 125:

    薫◆PJECfxpafU

    でも、それより怖かったのは『家族が居なくなる』こと。
    児童の保護体制が発展した今なら、そんな家族居ないほうがいいって思って保護されたかもしれない。
    だけど、俺にとってはたった一つしかない家族で…。
    その家族から離れてしまうことが怖くて怖くて仕方なかったんだ。

    2007-01-30 14:15:00
  • 126:

    薫◆PJECfxpafU

    その頃の俺は、学校から、虐待を受けている可能性があると学校から児童相談所に連絡されていて、何度も職員室に呼び出されていた。
    だけど、その度に『転んだ』の一点張り。
    先生は困った顔を見せながらも、それ以上は追求しなかった。
    今なら、間違いなく強制で保護され、父さんは捕まっていただろう。
    その時の切り傷や火傷の痕と恐怖は、今でも消えることはなく俺の体と心に深く刻みつけられている。

    2007-01-30 14:22:00
  • 127:

    薫◆PJECfxpafU

    これは後に聞いた話だが、虐待を受けている子供は、虐待を受けてもその親を嫌いになれず、離れたくないからと虐待を受けているとはなかなか言わないらしい。
    俺もその内の一人だった。
    父さんだって四六時中俺に暴力を奮っているわけじゃない。
    優しい時だって楽しい思い出だってある。
    だから、それに希望を持ってしまうんだ。

    2007-01-30 14:26:00
  • 128:

    薫◆PJECfxpafU

    暴力を奮われてるのは俺が悪いからで、俺がいい子になれば父さんは俺の事を愛してくれる。
    いつかは暴力なんか奮わなくなって家族皆で幸せに暮らせるんだって…。
    父さんも母さんも俺も、皆で笑って暮らせるんだって…。

    2007-01-30 14:29:00
  • 129:

    薫◆PJECfxpafU

    だけど、そんな俺の考えは正直甘かった。
    暴力は日に日に増すばかり。
    母さんも関わって暴力を奮われたくないからと俺には見向きもしなくなり、最終的には鬱状態になって睡眠薬と安定剤に浸かり、生きたまま屍になった。

    2007-01-30 14:38:00
  • 130:

    薫◆PJECfxpafU

    壊れていく母さん。
    壊れていく家族。
    壊れていく理想。
    そして…
    壊れていく…俺。

    2007-01-30 14:40:00
  • 131:

    薫◆PJECfxpafU

    そうこうしているうちに、母さんが自殺した。
    中学二年の冬だった。
    もう二度と家族が戻る事は無かった。
    父さんはすぐに新しい女と再婚した。

    2007-01-30 14:56:00
  • 132:

    薫◆PJECfxpafU

    それから二年、新しい母さんとの間に子供が産まれ、父さんは暴力を奮うことは無くなった。
    俺の欲しかった当たり前の幸せを、父さんは手に入れたんだ。

    俺の居場所はどんどんなくなっていった。
    それから、俺が家を出るのに時間はかからなかった。

    2007-01-30 14:59:00
  • 133:

    薫◆PJECfxpafU

    目の前の少年はこれから俺と同じ道を歩いていく。
    純が産まれた今の俺は、その苦しさと異常さに気付いている。

    子供は親が守ってやらないと何も出来ない。
    安心して眠ることも、安心して遊ぶことも。

    2007-01-30 15:08:00
  • 134:

    薫◆PJECfxpafU

    あの頃、それを放棄した親を持つこの少年を一体誰が守ってあげられただろう。
    いつも暗い部屋で脅えて、幸せな家族を夢見ただけのこの少年を誰が救ってあげられただろう。
    これから辛く、苦しい道のりを歩いていくこの少年に敷かれたレールを誰が組み変えてあげられたんだろう。

    そして、この少年を誰が抱き締めて温もりを与えてあげられたんだろう。

    2007-01-30 15:13:00
  • 135:

    薫◆PJECfxpafU

    えーん…えーん…。

    少年はまだ泣き続けている。
    痛いのは体の傷じゃなくて心の傷。
    そんな少年を俺は思わず抱き締めた。

    2007-01-30 15:22:00
  • 136:

    薫◆PJECfxpafU

    端から見れば、見ず知らずの少年に抱きつく変質者。
    だけど、少年は拒まなかった。
    だって、少年が欲しかったものは温もりだったから…。

    2007-01-30 15:25:00
  • 137:

    薫◆PJECfxpafU

    「大丈夫だよ。痛かったね。辛かったね。苦しかったね。薫は何も悪くなんてないんだよ。自分を責めなくていいんだよ。」

    自然と涙が溢れた。
    小さな俺がどんなものより欲しかった温もりと言葉。
    少年もまた、小さな体を震わせて泣いていた。

    2007-01-30 15:28:00
  • 138:

    薫◆PJECfxpafU

    「おい!何してるんだ!」
    急に怒鳴り声が聞こえて玄関から男が出てくる。
    少年は体を強ばらせて振り返った。
    「お父さん…。」

    2007-01-30 15:34:00
  • 139:

    薫◆PJECfxpafU

    「薫!中に入れ!」
    体の芯から響き渡るような声で父さんは言った。
    少年は俺の後ろにサッと隠れた。
    怖い!
    自然に俺の体も震えだす。

    2007-01-30 15:36:00
  • 140:

    薫◆PJECfxpafU

    少年は今にも泣き出しそうな顔で俺を見上げている。
    ここで引き下がっちゃいけない。
    ここで退いたら誰がこの子を守ってあげられるんだ。
    俺は勇気を振り絞り、震える声で言った。

    2007-01-30 15:39:00
  • 141:

    薫◆PJECfxpafU

    「貴方のやっていることは虐待です。こんな寒い中にこんな子供を放り出して何を考えているんですか?」

    すると、父さんは俺を睨みつけこう言った。
    「これは躾だ。あんたには関係ない。」

    2007-01-30 15:42:00
  • 142:

    薫◆PJECfxpafU

    躾?俺の味わってきた苦しみを『躾』の一言で終らせるのか?
    じゃあ俺の体と心の傷は?
    その全てが父さんの中では正当化されているというのか?
    躾にしては度が過ぎている。
    そんな事は誰が見ても分かることだった。

    2007-01-30 17:44:00
  • 143:

    薫◆PJECfxpafU

    「もう一度言うぞ。薫。中に入りなさい。」
    少年は小さく首を振って俺の服をギュッと掴んだ。
    中に入ればどんなことになるかは目に見えている。
    小さな俺の小さな小さな抵抗だった。

    2007-01-30 17:46:00
  • 144:

    薫◆PJECfxpafU

    「貴方のやってることは躾のレベルなんかじゃない。立派な虐待だ!」

    父さんはジッと俺の顔を見据えて、チッと舌打ちをすると真っ直ぐに歩み寄ってきた。

    「これは家の問題だ。他人は口を出さないでもらおうか。」

    2007-01-30 17:50:00
  • 145:

    薫◆PJECfxpafU

    恐怖で体が動かなかった。
    「さぁ、薫。家に入りなさい。」
    父さんが小さな俺の腕を掴み無理矢理俺から引き離した。
    「嫌だ…っ。」
    「薫!」

    2007-01-30 17:54:00
  • 146:

    薫◆PJECfxpafU

    パンッ!

    小さな俺に平手が飛ぶ。
    それでも抵抗を止めない。
    「嫌だ!お兄ちゃん!お兄ちゃんっ!!!」

    2007-01-30 17:56:00
  • 147:

    薫◆PJECfxpafU

    抵抗虚しく、小さな俺は父さんに引きずられるようにして家の中に入れられた。

    俺は暫くその場から動くことが出来なかった。

    2007-01-30 17:59:00
  • 148:

    名無しさん

    あげ

    2007-01-31 13:38:00
  • 149:

    薫◆PJECfxpafU

    >>148サン
    あげありがとうございます??
    ちまちまですが続き書いていきますね??

    2007-02-01 14:09:00
  • 150:

    薫◆PJECfxpafU

    やがて聞こえてくる大きな音。

    ズキンッ!

    同時に俺の体に走るどこか懐かしい痛み。

    2007-02-01 14:10:00
  • 151:

    薫◆PJECfxpafU

    ガシャーン!

    「痛っ!!」

    俺は思わずその場で蹲る。

    2007-02-01 14:12:00
  • 152:

    薫◆PJECfxpafU

    それでも止まらない衝撃。

    腕、頬、頭、腹、背中、足…。

    全身に言い知れぬ痛みが走り続ける。

    2007-02-01 14:14:00
  • 153:

    薫◆PJECfxpafU

    「痛い!やめて!お父さん!やめてぇぇぇっ!!!」

    微かに聞こえる小さな俺の声と罵声。
    俺は必死にその痛みに耐えるしかなかった。

    2007-02-01 14:16:00
  • 154:

    薫◆PJECfxpafU

    あの時、誰かがドアを破って助けてくれることを何度も願った。
    もちろん、誰も助けには来なかったけれど…。

    「ごめんなさい!ごめんなさいぃっ!」
    そうだ。あの頃俺は謝るしか出来なかったんだ。

    2007-02-01 14:19:00
  • 155:

    薫◆PJECfxpafU

    怖くて怖くて…。
    謝る以外に方法なんて見つからなかった。

    嵐が過ぎ去るのを待つしかなかったんだ。

    2007-02-01 14:22:00
  • 156:

    薫◆PJECfxpafU

    俺はあの時どうすればよかったんだろう…。

    今なら分かる。

    こうすれば良かったんだ。

    2007-02-01 14:23:00
  • 157:

    薫◆PJECfxpafU

    俺は息もままならないまま叫んだ。


    「助けて!」と。
    たった一言を今までに出したことのないほど大きな声で。

    2007-02-01 14:26:00
  • 158:

    薫◆PJECfxpafU

    「生意気な…。」
    父さんの声が聞こえた気がした。

    それでも続く痛みに耐えながらも俺は叫び続けた。

    2007-02-01 14:27:00
  • 159:

    薫◆PJECfxpafU



    「助けて!誰か…!助けて!助けてっ!」

    2007-02-01 14:28:00
  • 160:

    薫◆PJECfxpafU



    助けて…!

    2007-02-01 14:35:00
  • 161:

    薫◆PJECfxpafU

    はっ!

    気が付くと見覚えのない所に居た。

    唸されていたのかシャツが体に張り付いている。

    2007-02-01 14:41:00
  • 162:

    薫◆PJECfxpafU

    ゆっくりと辺りを見回す。

    廃材やガラクタが転がっている。
    倉庫のようだ。

    2007-02-01 14:44:00
  • 163:

    薫◆PJECfxpafU

    ズキンッ!

    「うっ…。」

    後頭部に激痛が走る。

    2007-02-01 14:46:00
  • 164:

    薫◆PJECfxpafU

    そうだ。
    あの時、何者かに後頭部を殴られて気を失ったんだ。

    そして気が付いたら倉庫にいる。
    俺は『誘拐』されたことを悟った。

    2007-02-01 14:48:00
  • 165:

    薫◆PJECfxpafU

    「目が覚めたか?」

    ふいに聞き覚えのない声が降ってくる。

    「誰だ!」

    2007-02-01 14:50:00
  • 166:

    薫◆PJECfxpafU

    体を起こすと、『そいつ』はパイプ椅子に座ってこっちを見ていた。

    覆面を被った不気味な姿で不敵に右の口端だけを吊り上げて…。

    その視線はまるで父さんの様に俺に冷たく突き刺さる。

    2007-02-01 14:57:00
  • 167:

    薫◆PJECfxpafU

    「いい夢見れたかよ?」

    『そいつ』は低い声で俺に言った。

    まるで嘲笑うかの様に…。

    2007-02-01 14:59:00
  • 168:

    薫◆PJECfxpafU

    「でも…悪夢はこれからだ。」

    不気味に目を細め、『そいつ』はニタリと笑った。

    「まりあと純もお前が拐ったのか!?」

    2007-02-01 15:02:00
  • 169:

    薫◆PJECfxpafU

    『そいつ』はゆっくりと俺の後ろを指差した。

    『そいつ』の指差した先には…

    「まりあ!純!」

    2007-02-01 15:06:00
  • 170:

    薫◆PJECfxpafU

    まりあと純が手錠と足枷、それに猿轡を付けられた姿で倒れていた。

    俺は目を疑った。

    まりあと純は痣だらけ。更にまりあの服はビリビリに引き裂かれている。

    2007-02-01 15:12:00
  • 171:

    薫◆PJECfxpafU

    俺は慌てて二人に駆け寄った。

    「まりあ!」

    俺はまりあを抱き起こし、猿轡を解いた。

    2007-02-01 15:17:00
  • 172:

    薫◆PJECfxpafU

    続けて純の猿轡も外した。

    手錠と足枷は鍵が無いと外せない。

    おそらく鍵は『あいつ』が持っているんだろう。

    2007-02-01 15:20:00
  • 173:

    薫◆PJECfxpafU

    「まりあ。純。」

    「ぅ…ん…。」

    微かにまりあが声を上げる。

    2007-02-01 15:36:00
  • 174:

    薫◆PJECfxpafU

    「薫…私…。ごめんなさい…。」

    まりあはそれだけ言うとまたぐったりと倒れてしまった。

    同時に、俺の中に沸々と怒りが沸き上がる。

    2007-02-01 16:45:00
  • 175:

    薫◆PJECfxpafU

    「お前…まりあと純に何をしたっ!!」

    俺はまりあをそっと地面に寝かせて立ち上がった。

    すると、『そいつ』はニヤリと笑いながら言った。

    2007-02-01 16:48:00
  • 176:

    薫◆PJECfxpafU

    「聞きたいのか?」

    プツン…

    何かが切れた音が聞こえた気がした。

    2007-02-01 16:49:00
  • 177:

    薫◆PJECfxpafU

    「絶対に許さねぇっ!!!」

    もう止まらなかった。
    俺は『そいつ』に向かって走り出した。

    2007-02-01 16:50:00
  • 178:

    薫◆PJECfxpafU


    殺してやる
    殺シテヤル
    コロシテヤルッ!!!

    2007-02-01 16:52:00
  • 179:

    薫◆PJECfxpafU

    怒りに任せて突っ走る俺を見て、『そいつ』はフーッと煙草の煙を吐いて上着の内側に手を入れた。

    そして…

    ソレを取り出し俺の方に向け…

    2007-02-01 16:54:00
  • 180:

    薫◆PJECfxpafU

    ゆっくりと
    引き金を弾いた…。


    バンッ!!!

    2007-02-01 16:56:00
  • 181:

    薫◆PJECfxpafU

    「ギャアッ!!」

    右足をえぐられる様な痛みに俺は思わず倒れ込み、あまりの痛さにのたうち回った。
    右足を見ると、信じられない程の血が吹き出していた。
    肉を持っていかれたようだ。

    2007-02-01 17:00:00
  • 182:

    薫◆PJECfxpafU

    『そいつ』は煙草を足で揉み消し、俺に近付いてくる。

    そして俺の前でピタリと足を止め、突き放す様にこう言った。

    2007-02-01 17:03:00
  • 183:

    薫◆PJECfxpafU

    「コレはゲームなんだ。お前はプレイヤー。俺はマスター。女と子供は差し詰め囚われの姫君と王子と言うところか。」

    「ゲームだと!?家族を誘拐することがゲームだとっ!?」

    俺は噛みつくように言った。

    2007-02-01 17:07:00
  • 184:

    薫◆PJECfxpafU

    「弱い犬ほどよく吠える…。」
    『そいつ』は面倒くさそうに言うと、しゃがみこみ俺の髪を掴み顔を近付けた。
    「勘違いするなよ。俺は何時でもお前達を殺すことが出来る。ただ、楽しみたいんだよ。このゲームを。人間の本性を晒け出すこの薄汚れたゲームをな。」

    2007-02-01 17:12:00
  • 185:

    薫◆PJECfxpafU

    「はっはっはっ」と耳障りな男の笑い声が響く。

    「異常者が!俺はお前を許さない!絶対にお前を殺してやる!」

    怒りが俺を支配する。

    2007-02-01 17:16:00
  • 186:

    薫◆PJECfxpafU

    「いいね、その表情!前の男もそうだったよ!その表情を絶望で染めた時ほど快感なことはないね!想像だけでイッちまいそうだ!ヒャハハハハハハッ!!」

    男は舌を出して嘲笑った。

    ヘドが出そうだ。

    2007-02-01 17:21:00
  • 187:

    名無しさん

    作者さん書いて下さい
    待ってますこの話しの続き

    2007-02-04 09:03:00
  • 188:

    薫◆PJECfxpafU

    >>187サン
    誰も読んでないと思って更新サボってました???
    今から更新していきますね???

    2007-02-04 18:17:00
  • 189:

    薫◆PJECfxpafU

    「ルールは簡単だ。ここから無事に帰して欲しければ家族を一人殺せ。出来なければ全員を殺す。自殺は、家族を殺すことが出来ないと見なし、お前が死んだ後に全員を殺す。俺に殺されるくらいならお前が息の根を止めてやる。それが家族愛ってもんだろ?」

    ニタリと『そいつ』は笑った。
    右の口端だけをあげて。
    ゾッとするような笑みだった。

    2007-02-04 18:35:00
  • 190:

    薫◆PJECfxpafU

    『そいつ』は俺にナイフを握らせる。
    これでまりあか純を殺せと言うのか?

    「そんなこと…っ。出来るわけないだろっ!」

    2007-02-04 18:41:00
  • 191:

    薫◆PJECfxpafU

    「ならここで三人揃ってのたれ死ぬんだな。」

    ヒャハハッと胸くそ悪い笑い声を響かせて『そいつ』は俺に背を向けた。

    2007-02-04 18:45:00
  • 192:

    薫◆PJECfxpafU

    ドクン…

    俺の手にはナイフ。
    男は俺に背を向けている。

    ドクン…

    2007-02-04 18:46:00
  • 193:

    薫◆PJECfxpafU

    イマナラコロセル。

    コイツヲコロセバニゲラレル…。

    マリアモジュンモオレモ、ダレモシナズニニゲラレル…!

    2007-02-04 18:49:00
  • 194:

    薫◆PJECfxpafU

    あいつを殺せ。

    頭の中で誰かの声が聞こえた瞬間、俺は走り出していた。

    足の激痛なんてもう関係なかった。

    2007-02-04 18:50:00
  • 195:

    薫◆PJECfxpafU

    「うぉおおおっ!」

    「薫!止めて!薫―――っ!!」

    まりあの声が聞こえる。

    2007-02-04 18:52:00
  • 196:

    薫◆PJECfxpafU

    けれど俺は止まらなかった。

    こいつが死ねば俺達は助かるんだ!

    勢いをつけて俺はそいつにナイフを突き刺した。

    2007-02-04 18:54:00
  • 197:

    薫◆PJECfxpafU

    ザクッ!!

    キンッ…

    「え…?」

    2007-02-04 18:54:00
  • 198:

    薫◆PJECfxpafU

    手応えは全くなかった。

    それどころか、何か硬いものがナイフの侵入を阻んでいる。

    手にはビリビリと電流が走ったような感覚が広がっていく…。

    2007-02-04 18:57:00
  • 199:

    薫◆PJECfxpafU

    「何か…やったか?」

    『そいつ』はくるりと振り返った。
    あの寒気が走るような笑みを浮かべたままで…。

    2007-02-04 18:59:00
  • 200:

    薫◆PJECfxpafU

    「まだ自分の立場が解っていないらしいな。」

    その言葉を聞いた瞬間、俺は地面に倒れていた。

    「薫――っ!!」

    2007-02-04 19:04:00
  • 201:

    薫◆PJECfxpafU

    まりあの声を無視するかのように、倒れ込んだ俺に容赦なく浴びせられる蹴り。蹴り。蹴り…。

    ようやく嵐が過ぎ去った時には俺はもう抵抗する気力を失っていた。

    「プレイヤーがマスターに逆らうことは言語同断。殺されてないだけマシだと思うんだな。」

    2007-02-04 19:08:00
  • 202:

    薫◆PJECfxpafU

    「ギャアァァァッ!!」

    とどめに『マスター』が俺のえぐれた足をにじる。

    言い知れぬ激痛に襲われ、俺は思わず悲鳴をあげた。

    2007-02-04 19:13:00
  • 203:

    名無しさん

    見てますよ毎日楽しみにしてました

    2007-02-04 19:35:00
  • 204:

    ゅとッッ◆L37b0uWeqQ

    続きお願いします??
    忙しぃんゃろなぁ??

    2007-02-07 10:23:00
  • 205:

    名無しさん

    もぉ書かないんですか?・゚・(Pд`q。)・゚・続きが気になって?(>_

    2007-02-12 04:04:00
  • 206:

    名無しさん

    これってもぉ書いてくれへんのかな?メチャ好きなんやけどな…

    2007-03-09 05:00:00
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