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あなたの傍に居られる方法
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1:
柚子
赤い糸ってあるじゃない?
なら友達の糸は何色なんだろ?
そんな事を考えた日。2007-01-07 00:56:00 -
2:
柚子
窓ガラスが曇ってしまうほど、寒い寒い冬の日。
私は流れ行く冬景色を眺めていた訳じゃなかった。
曇ったガラスに映る、運転席のアタルを見つめていた。
「家に送っていけばいい?」
2007-01-07 01:02:00 -
3:
柚子
アタルは私の方を見ずに、小さな声でそう言った。
悲しい様な…苦しい様な…そんな気持ちになって、私は相変わらずの無愛想な顔でガラスを見つめていた。
「ん。どこでもいい。」
「どこでもって…それは困る」2007-01-07 01:06:00 -
4:
柚子
『困らせたい』
と、本当はそう思っていた。
このまま離れるには、まだ少し寂しい気がしたから。
でも、そんな事は言えなくて
「冗談。家の前でいい。」2007-01-07 01:10:00 -
5:
柚子
私はそう答える。
いつもの自分。いつもの関係。いつもの空気。
3時間前まで普通に出来ていた事が、急に困難に感じた。2007-01-07 01:13:00 -
6:
柚子
―5時間前―
「何分待たせるつもり?化粧はそこそこでええから、はよして下さい。」
2007-01-07 01:22:00 -
7:
柚子
スピーカーにして机の上に置いてあった携帯電話から、少し苛立ったアタルの声が聞こえていた。
「あと3分!!」
そう言いながらも、鏡を覗き込みアイラインを丁寧にゆっくりと引く私。
2007-01-07 01:25:00 -
8:
柚子
アタルはこんな事で怒ったりはしないと、私は知っていた。
「出来た出来た!!もう出来た!!ほんまに!!!」
「嘘つけ!!ゆったり化粧してんとちゃうぞ、お前」
「ばれた??」2007-01-07 01:34:00 -
9:
柚子
10分間もそんな様な会話を繰り返しながら、やっとこさ準備を済ませて立ち上がった時に気が付いた。
―新着メール1件―
「今から下に下りるから」とアタルにそう伝えて電話を切り、私はそのメールをそそくさと開いた。
2007-01-07 01:44:00 -
10:
柚子
送信者の欄を見て、一旦は見るのをやめようかと思った。
それは『アタルの彼女』からのメールだったから。
でも、開く。
やましい事は何も無い。。だから開く。2007-01-07 01:49:00 -
11:
柚子
FROM:瀬名ちゃん
本文:
急にゴメンねー(;д;)さっきアタル君と喧嘩しちゃって…私が悪いのは分かってるんだけど…謝った方がいいのかなぁー。今電話してもいい???
読みながら、自分の顔が歪んでいくのが分かった。2007-01-07 01:56:00 -
12:
柚子
「分かってんなら電話してこなくてええやんか」
携帯の画面に向かって、誰に言うでもなくそう小さく呟いた。
でも送り返したメールは
『今出かける所だから、また後で電話するね!それまでに仲直りしといてくれるのが1番なんだけど(^∀^)』2007-01-07 02:03:00 -
13:
柚子
私は2重人格なんじゃないかと、時々思う。
でもこうでもして人間を作っていかなければ、人間関係は保てないとも思う。
パタンと閉じた携帯に向かって最後に一言
「まっ、アタルは電話取らないと思うけどね」2007-01-07 02:07:00 -
14:
柚子
「お前、今から降りる言うて何分かかった?その分数分殴ったろか!」
運転席から身を乗り出して助手席のドアを開き、アタルは怒った顔を作ってみせた。
薄笑いを浮かべた私は、黙ってその助手席に乗り込む。
それからアタルがサイドを上げたと同時に
「おたくのお嬢様からメールでね。」2007-01-07 02:15:00 -
15:
柚子
わざと…面倒くさそうにそう言った。
「瀬名?なんて?」
アタルはそう言いながらも、何事もなかったかの様に車を発進させた。
「喧嘩したから逃げてきた訳?なにそれ、暇つぶしぃ?急いで来て損したわ」2007-01-07 02:21:00 -
16:
柚子
運転席のアタルをチラっと覗くと、それに気が付いた彼も私を見る。
「可愛げのカケラもない女やな、お前。待たせてごめんね☆くらい言えんのか?」
そう言った彼の顔は笑っていたけど、多少なり私は傷ついていた。
彼が想像した『可愛げのある女』は『瀬名ちゃん』だと、知っていたから。2007-01-07 02:28:00 -
17:
柚子
私の方が瀬名ちゃんよりもずっとずっと前から、アタルの事を知っているのに。
いや、違う…。
『ずっとずーっとスキだったのに………――』2007-01-07 02:35:00 -
18:
??◆O/.O2jTWfw
おもしろそォ?
完結まで頑張ッてください???2007-01-08 04:05:00 -
19:
柚子
>18サン
ありがとうございます。頑張ります。
今日は携帯からの更新ですが、お気になさらず2007-01-09 02:05:00 -
20:
柚子
車のエンジンが止まって、ふと我に返る。
『とりあえず飯でも食いましょ』
アタルはそう言って車のキーを抜いた。2007-01-09 02:09:00 -
21:
柚子
物思いにふけっていた私はきょろきょろと辺りを見回して、やっとそこが居酒屋の駐車場だと言う事を理解した。
それからそう待つ事もなく席に着いて、一杯目のビールを飲む頃にはまた
『アタルと友達の自分』
に戻っていた。2007-01-09 02:11:00 -
22:
柚子
「でねー、ナルト君がねー」
時間は午後6時過ぎと早い為か、その店内はまだ閑散としていた。
でもそんな事はお構いなしと話し続けるアタル。
「おい、お前!聞いてんのー?」2007-01-09 02:12:00 -
23:
柚子
「ん?聞いてる聞いてる。……すいません!水割りくださーい」
「ちゃんと聞けよ、バカ女!あっすいません、俺も同じでぇ」
そうやって時間を潰して、いつの間にか自分達も潰れていく。2007-01-09 02:14:00 -
24:
柚子
「で?…お前等は馬鹿なの?」
それから1時間がたちすでに泥酔状態にあった私とアタルを見下ろして、カッターとジーパンと言うシンプルな出で立ちのナルト君はそう言い放った。
「なるとッッ!やっと来たッッ!!」2007-01-09 02:15:00 -
25:
柚子
デロデロのアタルは机に片肘をついて、なると君をつついて笑う。
「なるとくーん!え?アタルに呼び出されたのー?」
同じく酔っ払いの私も椅子にダランともたれたまま、そんな彼を見上げて笑った。
「ああ、うん。…って言うか、これは良くないだろ?」2007-01-09 02:17:00 -
26:
柚子
ナルト君は呆れた顔をしながら、アタルの隣の席にゆっくりと腰を下ろす。
「なにが?なにがー?」
楽しそうに身を乗り出して、アタルはナルト君にそう尋ねる。
その弾みで、テーブルの上一杯に広がっていた食器の幾つかがガチャンと大きな音を立てぶつかり合った。2007-01-09 02:20:00 -
27:
柚子
「瀬名ちゃんから電話あったよ」
ナルト君のそんな言葉に、私は少しうんざりした。
男ってのはすぐ騙される。2007-01-09 02:23:00 -
28:
柚子
『ナルト君は利用されてるだけ。あんな下手な演技に騙されるなよ』
喉まで出かかったそのセリフを私は小さな深呼吸と一緒に飲み込んで、アタルの顔色をうかがいながら彼に笑いかけた。2007-01-09 02:26:00 -
29:
柚子
「あー…何?俺がこいつと浮気するって?」
明らかに不機嫌になったアタルは、私を指差してナルト君にそう言う。
誰も…―何も答えない。2007-01-09 02:28:00 -
30:
柚子
せっかくの酔いが、冷ややかに抜けていくのが分かった。
「……な訳ないって」
にこりともせず、そう答えたのは私。2007-01-09 02:32:00 -
31:
柚子
手元のグラスに半分ほど残っていた焼酎を飲み干して
「ねっ?」
アタルにそう言って相槌を求めた。
その時もきっと、私は笑ってなんていなかった。2007-01-09 02:36:00