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?あいあい傘?
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1:
さる◆pxZzyekBIs
こんな冷たい雨が降りしきる寒い冬に僕たちは出会った。 曇ったショーウインドーに二人で書いた、あのあいあい傘がもし消えるのなら…。 何度でも書くよ。消えないように何度でも…。
2006-11-25 17:33:00 -
2:
さる◆pxZzyekBIs
「週末ですけどこの雨じゃダメかもしれないですねぇ。」 隣で和哉がボソッとつぶやいた。さすがに僕も同じような気持ちだった。 「そうだね。さすがにこの雨じゃちょっと厳しそうだね…。」 ガラスを伝う雨の雫に目をやりつつ僕は腕時計に目を落とした。時計の針はちょうど8を指していた。 「まぁ時間が時間だから今から動いてくれるといいんですけどね…。」 そう言うと和哉はハンガーに掛けていた上着を着ると店を出た。いつものように客引きに行ったのだろう。
2006-11-25 17:48:00 -
3:
サル◆pxZzyekBIs
今ではギラギラと様々なライトをたくさんつけた無料案内所がこの街には溢れ返っている。 僕の働いている店はその数ある案内所の中の一つ。『Night Garden』という案内所だ。長い名前なので業界の中では通称ガーデンと呼ばれていた。 ガーデンの正宗といえばこの街の人間はたいてい知ってるだろう。別に有名だったわけではなくて知り合いが多いだけだったのだけど…。
2006-11-25 18:12:00 -
4:
さる◆pxZzyekBIs
「正宗くん今日はかなり厳しいですよ。ほら裾までビチャビチャになっちゃいました。」 出ていって5分も経っていないのに、雨で裾を濡らした和哉がドアの前に立っていた。 「そうか。じゃあ今日は仕方ないね。」 そう言って僕は小さく一つため息をついた。曇った窓ガラスから見える大通りには人影も少なかった。カラフルな看板や、キラめくライトの光がやけに目立つような…そんな日だった。
2006-11-25 18:29:00 -
5:
さる◆pxZzyekBIs
「それじゃあ先に帰りますね。お疲れさまです。」 そう言って和哉はカラフルなネオン街に消えていった。僕は電気を消して暗くなった店のガラス越しに人気のない大通りをただ茫然と眺めていた。 この街に来てもう三年経っただろうか。この街には酒・女・博打。すべてが揃っていた。欲にまみれたこの街に嫌気がさしていたのも確かだった。 好きではないけど嫌いでもない。僕にとってはそんな街だった。
2006-11-25 18:42:00 -
6:
さる◆pxZzyekBIs
カギをかけて店を出た時には、さっまでの雨は上がっていた。いつの間にか街からカラフルなネオンが消えてしまっていた。 大通りには、黒いスーツを身にまとったホストが指で数えれるほどいるだけでかつての賑わいはそこにはなかった。 僕は大きな水溜まりをよけながら帰り道を急いだ。冬が近づいているせいか、雨上がりの街は驚くほど寒かった。
2006-11-25 18:55:00 -
7:
さる◆pxZzyekBIs
ポケットに両手を突っ込んで急ぎ足で歩く僕の目の先に、自動販売機が青白く無機質な光を放っていた。 その自動販売機の隣に彼女はいた。まるで捨てられた子猫のように…。 その目に光はなくて触れただけで壊れてしまいそうな、そんな雰囲気だった。でもこの街ではそんな光景は当たり前だった。 誰もが傷つけ傷つけられる。そんな街だから。
2006-11-25 19:12:00 -
8:
さる◆pxZzyekBIs
いつもの僕なら素通りしてただろう。ただ僕は彼女を放っておけなかった。理由はたった一つだけだった。僕は彼女と同じ目をした人を知っていた…。いや…好きだった。 「大丈夫?行くところはあるの?」 僕はしゃがみこんで彼女の顔を覗き込むように話しかけた。整った顔立ちに大きな目。ただ、そこに光はなかった。 彼女は虚ろな目で僕の顔を見ると、小さく二回顔を横に振った。
2006-11-25 19:30:00 -
9:
さる◆pxZzyekBIs
「カゼ引くよ?じゃあ家に来る?」 僕は自分の口から出た言葉に正直驚いた。ただ、何も考えずに無意識に出た言葉だったのは間違いなかった。彼女にアイツの姿を重ねていたからかも知れないけれど。 すると彼女は、小さく顔を縦に一回降るとゆっくり立ち上がった。 僕は何も言わずにゆっくりと歩きだした。途中に何度も振り返りながら。
2006-11-25 19:42:00 -
10:
さる◆pxZzyekBIs
マンションの前に着くと僕は振り返った。彼女はうつむいたままだった。僕と彼女はエレベーターに乗り込んだ。 動きだしたエレベーターの中はほんのり暖かくて冷たくなった手を少しだけ暖めてくれた。 ふと彼女に目をやると今まで暗くて気付かなかったけれど、雨でビッショリ濡れていた。そして小さく震えていた。 エレベーターを降りると僕は部屋のカギを開けた。エレベーターに一番近いこの501号室が僕の部屋だった。
2006-11-25 20:03:00 -
11:
さる◆pxZzyekBIs
ステンレスか何かの金属で作られたドアノブは手で触れるとひんやりと冷たかった。僕はドアを開けると薄暗い部屋の中に入った。 玄関のカベにある電気のスイッチをかじかんだ左手で押しながら靴を脱いだ。雨水を吸い込んだ革靴はいつもより重く感じた。 電気の明かりで照らされた部屋の中は僕がいうのも何だがキレイに片付いていた。片付けるほどの物もなかったというほうが正しいのだろうけれど。
2006-11-28 15:34:00 -
12:
さる◆pxZzyekBIs
僕は上着を脱ぎながらドアの方を振り返った。彼女はまだドアの前に立ち尽くしていた。暗くてよくわからなかったけれど彼女は小さく震えていた。確実に。 「そんなとこに立ってたらカゼひくよ?」 僕の言葉に小さく首を縦に振ると彼女は玄関に足を踏み入れた。そしてその場にしゃがみこんでしまった。まるで僕が声をかけた時と同じように。
2006-11-28 15:42:00 -
13:
さる◆pxZzyekBIs
僕は小さくひとつため息をついてクローゼットの中から真っ白な大きめのバスタオルを取り出した。そしてそのまま雨に濡れた彼女に手渡した。 「ありがと。」 彼女は細く小さな声で答えた。うつむいていたから顔は見えなかったけれど。 「そのままシャワー浴びなよ。好きに使っていいから。」 僕はそう言って脱衣室のドアを開けた。僕の部屋はセパレートだったから風呂とは別に脱衣所があった。
2006-11-28 16:04:00 -
14:
さる◆pxZzyekBIs
彼女は、ヨロヨロと力なく歩きながら脱衣所に入っていった。その横顔は鳥肌が立つぐらい綺麗だった。 『パタン』と乾いた音を立てて脱衣所のドアは閉まった。 僕は頭をかきながら部屋に戻った。そして部屋の隅に置いてある冷蔵庫の中からビールを取り出して、クリーム色の安物のソファに腰を降ろした。今日はやけに喉が乾いていていた。
2006-11-28 16:24:00 -
15:
さる◆pxZzyekBIs
『プシュッ』と缶ビールが空く音が静かな部屋に広がった。そして僕の喉をほろ苦く冷たいビールが滑り落ちていった。 僕はなぜ彼女を家までつれて帰ってきたのだろう?酔ってもいないのに頭の中がぐるぐる回った。 可哀想に思えたから? …そうじゃない 好きになった? …いいやそうじゃない。 放っておけなかった? …きっとそうじゃない。 じゃあなぜ? …わからない。
2006-11-28 16:44:00 -
16:
さる◆pxZzyekBIs
『カチャッ』とドアの開く音で僕は我に返った。振り替えるとバスタオルを首に巻いたスウェット姿の彼女がいた。 髪は濡れて化粧は落ちていたけれど、整った綺麗な顔をしていた。僕は少し見とれてしまっていた。 綺麗な顔をしてたからではなくて、アイツの面影をがそこにあったから…。
2006-11-28 16:59:00 -
17:
さる◆pxZzyekBIs
懐かしいというか何というか。言葉にできない感情だった。髪型も顔も体型もそっくりだった。なによりあの光のない目が…。 ふと目が合うと僕はなぜか恥ずかしくなった。思わず目をそらしてながら僕は言った。 「そんなとこに立ってないで座りなよ。」 すると彼女はまた小さく首を縦に振ると僕のちょうど向かいのソファーにちょこんと腰掛けた。
2006-11-28 23:43:00 -
18:
さる◆pxZzyekBIs
それからふたりの間に言葉はなかった。沈黙がふたりを包んでいった。 …どれくらいたったのだろう?僕はこの沈黙に耐え切れなくなっていた。それは少しの間だったかもしれないし、もしかしたら長い間だったかもしれない。 「名前は?」 少し冷たい言い方だったかもしれないけれど今の僕には精一杯だった。
2006-11-28 23:49:00 -
19:
さる◆pxZzyekBIs
彼女はうつむいたままで何も話そうとしなかった。こうなってしまえばもう仕方なかった。 「ベット使っていいよ。おれはこのソファーで寝るから。」 そう言って僕は、残った缶ビールを飲み干してソファーに転がった。Yシャツのまま寝転んだ安物のソファーは、あまり心地のいい物ではなかったけど寝るのに問題はなかった。 寝転んだものの寝れずにうっすらと開いたまぶたの先に彼女はいた。相変わらずうつむいたままだった。
2006-11-29 00:00:00 -
20:
さる◆pxZzyekBIs
『ピリリリッ・ビリリリッ・ピリリリッ』携帯の音で目が覚めた。いつの間にか眠ってしまったみたいだった。携帯のディスプレイには【着信 和哉】。 「もしもし。おはよう」 寝起きだったせいか上手く口が回らなかった。 「おはようございます。起きました?」 うるさいくらい和哉の声が携帯から響いていた。 「うん。今起きた。」 いつもの目覚まし時計がわりのモーニングコールだった。 「いつもみたいに遅刻しちゃだめですよ。じゃあまた店で。」 そういって電話はプツリと切れた。
2006-11-29 00:12:00 -
21:
さる◆pxZzyekBIs
「それ本当ですか?ほんとに正宗くんは色男だなぁ。それで、どこまでしちゃったんですか?」 隣で和哉が目を輝かせていた。いくつになっても男はこんな話が好きだ。 「何にもしなかった。これは本当。」 僕は淡々と答えた。本当に何もしなかったのだから他に答えようがなかった。 「またまた冗談ばっかり。この前だってアリュールの舞ちゃんと何かあったんでしょ?」 アリュール【Allure】はこの街でも割と大きなキャバクラで、舞はそこのNo3だった。 和哉はニタニタしながら話し続けた。和哉の笑った顔は少し子供っぽくて僕は好きだった。
2006-11-29 12:56:00 -
22:
さる◆pxZzyekBIs
「やっぱり代表になれば女の子にもてるんですねぇ。なんか正宗くんがうらやましいなぁ。」 そう言うと和哉は少しすねた顔をした。そんな顔も僕は好きだった。笑ったりすねたり。子供のような和哉は僕にとって弟のような存在だった。 「そんなの関係ないよ。和哉だってよく女の子に声かけられてるだろ?」 機嫌を伺うように僕は答えた。 「そりゃそうですけど…。でも聞かれるのは正宗くんの事ばっかりですよ。本当に…。」 そう言うと和哉はうつむいてしまった。
2006-11-29 13:09:00 -
23:
さる◆pxZzyekBIs
「でも和哉には瞳ちゃんがいるだろ?女の子と喋ってるとこ見られたらまた怒られるよ?」 瞳はアリュールの新人嬢だった。店長の誠さんに連れられて挨拶に来た時に和哉が一目惚れしてしまった女の子で、和哉の猛アタックで付き合ったらしい。 「まっ、正宗くん。瞳に変なこと言っちゃだめですよ。ただでさえすぐに怒るんだから。」 和哉は顔を真っ赤にして答えた。そして上着を着ると店を飛び出してしまった。本当に可愛いやつだった。
2006-11-29 13:17:00 -
24:
さる◆pxZzyekBIs
冬は夜の訪れが早くて、あたりは次第に濃紺のカーテンに包まれていくように暗くなっていった。 「おはよう。今日は忙しくなりそう?」 これぞ黒服。といったオーラを身にまといながらアリュールの誠さんが笑いながら店のドアを開けた。 「おはようございます。どうですかね…。まだわからないですよ。」 僕はそう答えた。平日の夜はどこもヒマだった。まぁ誰もが分かり切った事だったけれど。 「そっか…。あっそうそう。正宗くんうちの舞といい感じらしいって聞いたけど…。どうなの?」 誠さんのいつもの柔らかい目が少し鋭くなった。 「えっ…。どうってゆわれても…。」 僕は言葉に詰まってしまった。
2006-11-29 13:32:00 -
25:
さる◆pxZzyekBIs
「別に何もしてないですよ。一緒に飯食いに行っただけなんですけど…。」 すると誠さんはニヤッと笑った。表の顔と裏の顔。氷のような冷たい心と炎のような激しい心。夜の世界で生きる男のこのギャップに女の子は引き付けられるのかもしれない。 「まぁ、舞が勝手に勘違いして突っ走ってるって感じだろ?そんなもんだと思ったよ。」 そう言うと上着の内ポケットからセブンスターを取出しジッポで火をつけた。 誠さんは僕がこの街で信頼できる数少ない人間の一人だった。
2006-11-29 13:46:00 -
26:
さる◆pxZzyekBIs
僕は女の子の事で何かあるたびに誠さんに相談していた。さすがに女の子を商品にしてるだけあって、誠さんのアドバイスはいつも的確だった。 「まぁ舞はああ見えて精神的にもろいとこがあるからなぁ。気をつけてやってくれよ。正宗くんなら信頼できるし。」 誠さんは白い歯を見せて笑った。 「はぁ…。わかりました。」 僕は力なく答えた。正直その話にはうんざりしていた。誰かに好きになってもらうのは嬉しい事なのだけど、それは誰だっていいわけではないから…。
2006-11-29 14:08:00 -
27:
さる◆pxZzyekBIs
「そっか。じゃあ今日も頑張って。」 そう言って誠さんは店を出た。そのオーラをまとった後ろ姿に僕はみとれていた。 「誠さんかぁ。本当に絵になる人ですよねぇ。おれ惚れちゃいそうです。」 和哉はうっとりしながらつぶやいた。本当にいい男の背中というのは、性別を問わず人を引き付ける力があるような気がした。 その日は平日の夜ということもあり静かに時間が過ぎていった。
2006-11-29 14:31:00 -
28:
さる◆pxZzyekBIs
「正宗くん。おれ帰りますね。お疲れさまです。」 上着を着ながらうれしそうに和哉は慌ただしく店を出ていった。きっと瞳とデートの約束でもしてたのだろう。 その日の夜は雨が降った昨日のように寒かった。本格的な冬の訪れだった。 僕は契約しているすべての店に本数確認の電話を入れ終え店を出た。 何も変わらないいつもの帰り道のはずだった。違ったのはひとつだけ。青白く光を放つ自動販売機のとなりに。昨日と同じように。…そこに彼女はいた。
2006-11-29 14:54:00 -
29:
さる◆pxZzyekBIs
「大丈夫?今日も行くとこないの?」 僕は彼女の前で立ち止まり声をかけた。彼女は僕の顔を見上げると、昨日と同じように首を小さく縦に振った。相変わらずその綺麗な顔に表情はなかった。 「そっか…。じゃあ家に行こっか。」 すると彼女はまた小さく首を縦に振った。 僕らは昨日と同じように歩いた。時々後ろを振り返りながら。
2006-11-29 16:48:00 -
30:
さる◆pxZzyekBIs
昨日と違って栗色の髪はは綺麗に巻かれ、雨に打たれてない分顔色もよかった。相変わらずうつむいたままだったけれど。 「お腹減ってない?」 僕は立ち止まり振り替えって声をかけた。彼女は同じように立ち止まりうつむいたまま首を横に振った。 「そっか。」 無言のまま僕らは帰り道を歩いた。
2006-11-29 17:01:00