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冷たい月
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1:
るみ
(旧掲示板のコピペ)
月は暗い空の上からいつもあたしを見ている。
悲しい時、あたしは孤独に怯えながらいつもただ月を眺めていた。2005-08-02 16:22:00 -
21:
るみ
それを聞いて、母親は激怒した。
「今までなにひとつ不自由せずに暮らしてきて、それがどんなに幸せなことか、今に気付くわ。ほんとにやれるか、その貧乏な男とくらしてみればいいわ。」そう言い残すと母親は帰って行った。
まだ子供だったあたしは、それからも幸せが続くと信じていた。そこからが、転落の始まりとも知らずに。2005-08-02 16:43:00 -
22:
るみ
慎吾が帰ってくるのは、いつも朝の九時過ぎてからだった。
あたしは、慎吾のいない長い夜がとっても嫌いだった。ひとりは嫌い。淋しい時は月を見上げた。幼い頃からいつもそうだった。
慎吾との幸せを壊したのはあたしだったのかもしれない…。2005-08-02 16:44:00 -
23:
るみ
慎吾は、あたしにもっといい暮らしをさせてやりたいと言って、仕事をがんばっていた。しかし、その裏で起きていることなど、あたしには想像もつかなかった。ただ、帰ってこない日が増えて、あたしはだんだん壊れそうになっていた。慎吾が帰ってきたら、泣いてわめいてあたりちらした。ただ、そばにいてほしかった。ただそれだけでよかった。
2005-08-02 16:45:00 -
24:
るみ
夜ひとりで家にいるのが嫌なのと、服も買えないことが嫌になり、あたしはキャバに勤めることにした。もちろん慎吾には内緒で始めた。キャバの仕事にはすぐに慣れた。しかし、キャバに勤めて十日目の夜、慎吾の働いているミナミはさけてキタにしていたのに、出勤前にお客さんと同伴の慎吾に出くわせてしまった。
2005-08-02 16:46:00 -
25:
るみ
慎吾はあたしの姿を見つけると、一瞬固まったように立ち止まり、あたしのほうへ、駆け寄ってきた。
「お前、こんなとこで何してんねん。」
横にいた二十代後半の派手な女の人は、大きな声で慎吾を読んでいる。
慎吾は一旦女の人のところに戻り、なにやら話をして女の人は怒ったように去って行った。2005-08-02 16:47:00 -
26:
るみ
「ちょっと来い。」
大きな声で言うとあたしの腕をぐいぐい引っ張って行く。
あたしは恐かった。それまで、慎吾のそんな恐い顔を見たことがなかった。
地下鉄の階段の踊り場まで連れていくと、慎吾は尋ねた。
「お前、どこ行こうとしてんねん。いったい、俺に隠して何してんねん。」2005-08-02 16:48:00 -
27:
るみ
あたしは、上手い嘘が見つからず、しどろもどろな口ぶりになった。
その時、いきなり慎吾の手があたしに飛んできた。
何かすごい激痛を、鼻のあたりに感じた。
慎吾はキレて止まらない。「男と会うんか?あー?なんやねん。言うてみぃや。」
今度はお腹のあたりに、拳が飛んできた。
あたしはあまりの恐怖に、「助けて!」と通りすがる人に叫んだが、みんな関わりたくないのか、足早に去っていく。2005-08-02 16:49:00 -
28:
るみ
「ごめんなさい。慎吾にばっかり迷惑かけられないと思って、キャバでバイトしてた。」泣きながら、あたしが言った。慎吾は恐ろしい顔で「俺は、キャバ嬢のお前とつきあったんちゃう。そんな奴どこでもおんねん。お前は俺の嫁しとったらええねん。」そういうと、あたしのヒールをとりあげて、踵の部分であたしの太ももを強く打ち付けた。あたしは悲鳴を上げて、その場にうずくまって泣いた。
2005-08-02 16:50:00 -
29:
るみ
しばらくその場で泣き続けていた。慎吾はあたしを抱き上げると、「ごめんな。俺、お前のことほんまに好きやねん。
2005-08-02 16:51:00 -
30:
るみ
そう言いながら、あたしの頬を撫でた。
あたしはその手にびくっと体が硬直した。慎吾はあたしのカバンを取り上げ中から、ティッシュを取出しあたしの顔を拭いた。
無言で、慎吾の顔を見つめていた。慎吾はあたしの手を引くと笑顔で「今日は俺仕事休むわ。お前と一緒に家帰るわ。」と言った。
あたしは慎吾がわからなかった。2005-08-02 16:51:00