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冷たい月

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  • 1:

    るみ

    (旧掲示板のコピペ)
    月は暗い空の上からいつもあたしを見ている。
    悲しい時、あたしは孤独に怯えながらいつもただ月を眺めていた。

    2005-08-02 16:22:00
  • 2:

    るみ

    あたしが生まれた時には、家に父親の存在などなかった。母は会社を経営していた為、かなり裕福な家庭ではあったが、いつもあたしは一人ぼっちで、通いの家政婦が作る飯を一人で食べた。もっていないおもちゃなどなく、家にはなんでもあった。あったが、心の中はいつもからっぽだった。

    2005-08-02 16:23:00
  • 3:

    るみ

    私立のエスカレーター式のお嬢様学校に通い、ただお行儀よくしていれば、親は満足していた。
    中学に上がる頃には、色んなことにとても冷めていた。
    家を抜け出しては友達と、街に遊びに出掛けた。
    クラブにいけば、みんなに会えた。友達なんて名ばかりの、単なる知り合い。

    2005-08-02 16:24:00
  • 4:

    るみ

    初めての男はクラブで働いている奴だった。
    あたしは、本気だったけど、向こうはただの遊びだった。
    母親が起きる頃には、きちんと家に戻っていたあたしはバージンじゃなくなった日、さすがに母親の顔を見るのが恐かったけど、何も気付かない母親を見て、なんだこんなに簡単なモノかと思った。

    2005-08-02 16:24:00
  • 5:

    るみ

    誰にも言えないことだって、里香にだけは話せた。昼ご飯は学校の中庭で、いつも笑い転げながら、時には牛乳を吹いたりしながら、とても楽しかった。
    しかし、夜になるとあたしは街にでて遊び仲間と夜遊びをした。夜遊びの帰り、ひとりで見上げる空には、寂しげにあたしを見つめる月が浮かんでいた。

    2005-08-02 16:27:00
  • 6:

    るみ

    卒業パーティーの帰り、みんなと別れたのは、夜の十一時をまわった頃だった。 ひとりで心斎橋筋を歩いた。 なんとなく帰りたくなくて、ただふらふらと…。

    2005-08-02 16:30:00
  • 7:

    るみ

    キャッチのホスがうっとおしかった。
    電話で誰かを呼び出そうかと、携帯で名前を検索していた。
    その時、目の前でいきなり男が倒れた。
    黒いスーツに身を包んだ、どうみてもホスト。

    2005-08-02 16:31:00
  • 8:

    るみ

    「大丈夫ですか…。」
    あたしは、声をかけたけど、返事がない。まわりを見渡して、そいつの知り合いを探したけど、みんな知らん顔をする。あたしは、とにかく携帯で、救急車を呼んだ。 しばらくして、救急車がきた。なんか、訳がわからない間に、あたしはそいつに付き添って、救急車に乗り込んだ。

    2005-08-02 16:31:00
  • 9:

    るみ

    救急車の中で、あたしは初めて男の顔を見た。
    アッシュに染めたストレートのロン毛に、焼けた肌。閉じた瞳は切れ長で、すーっと通った鼻筋。
    綺麗だなー。と思った。

    2005-08-02 16:32:00
  • 10:

    るみ

    病院に着くと、男が目を覚ますのを待った。
    病院の先生は、過労と栄養失調が原因だと言って、ぶどう糖を点滴した。

    何も知らない名前も知らない男の綺麗な寝顔をただ見つめて、数時間過ごした。
    目が開いた。
    「うわっ!自分誰?」
    驚いた男は、あたしに聞いた。

    2005-08-02 16:33:00
  • 11:

    るみ

    「誰ってとおりすがりやけど、あんたいきなり心斎橋筋であたしの前で倒れてんやん。しゃあないから、病院つれてきてん。あんたこそ誰よ。」 「まじで?それはごめんやなぁー。ありがとう。俺は、あーえっと本名は慎吾やで」
    慎吾は毎日、あまり寝てなかったのと、食べてなかったようだった。
    夜中を過ぎていた為、病院で朝まで過ごした。

    2005-08-02 16:34:00
  • 12:

    るみ

    よく寝たのがよかったのか、少し元気になった慎吾とたくさん話をした。
    なんだか、お互い前からの知り合いみたいに話が弾んだ。
    慎吾は21才で、ホストをして半年の奴だった。岡山からでてきて今はひとり暮しだった。

    2005-08-02 16:35:00
  • 13:

    るみ

    慎吾はあたしの話をじっと聞いてくれた。
    あたしは、もう帰りたくないけど行くところもないことを慎吾に話した。
    「いいよ!俺の家にきても。めちゃ汚いし、狭いけど。」
    こうして、あたしと慎吾の同棲生活が始まった。

    2005-08-02 16:36:00
  • 14:

    るみ

    病院を出たのは、朝の10時を廻った頃だった。
    朝の光に照らされた慎吾は髪も肌も目も茶色くて、なんだか笑えた。
    「自分、かっこえーけど、何人やねん。」
    「なんか、言われるわ。どこの国行っても外人いわれるんちゃう?とか。」
    二人は笑いながら、慎吾の家に向かった。

    2005-08-02 16:37:00
  • 15:

    るみ

    慎吾の家はタクシーに乗って、すぐに着いた。
    ワンルームのロフトの付いた、八畳の狭い部屋だった。それまで、そんな狭い部屋を見たことがなかったあたしは、かなりびっくりした。
    「すごいなー、めちゃせまいなぁー。」あたしは言った。
    「あほか!これでもせいいっぱいやわ。」
    男の部屋に入ったのは初めてやったあたしはかなりドキドキしてたけど、なんかここから始まる未来に、ワクワクしてた。

    2005-08-02 16:38:00
  • 16:

    るみ

    慎吾との生活はすごく楽しいものだった。慎吾に渡されたお金で、ご飯を作って一緒に食べて、一緒に眠った。あたしが、生まれて初めて幸せやと感じられた。
    気がつくと一週間が過ぎていた。家にもちろん連絡なんてしていない。
    ある朝、突然知らない男が、家に訪ねてきた。
    母に雇われた興信所の男だった。「お母さんに頼まれてきたんだ。一緒に帰るんだ。」
    無理矢理、手をひっぱられた。

    2005-08-02 16:38:00
  • 17:

    るみ

    あたしは焦って、大声で慎吾の名前を叫んだ。
    驚いた慎吾はあわてて、ロフトから降りてきた。
    「誰やねんお前。俺の女になにすんねん。」
    捕まれたあたしの手を、慎吾が引き離してくれた。

    2005-08-02 16:39:00
  • 18:

    るみ

    あわてて家の鍵をかけた。しばらくは、ドアを叩く音が鳴り響いていたが、あきらめたのか、男は帰って行った。
    しかし、一時間もしないうちに母親が訪ねてきた。
    最初は躊躇していたが、慎吾はドアを開けた。

    2005-08-02 16:40:00
  • 19:

    るみ

    ドアが開くと、いきなり母親はあたしの頬をひっぱたき、慎吾を睨み付けた。
    「あんたのしたことは、立派な犯罪よ。未成年を監禁して。訴えてやるわ。ホストをしてることも調べがついてる。うちの娘をどうするつもりよ。」
    「お母さん、ここにいたのは、あたしの意志よ。慎吾は悪くない。」
    「あんたは黙ってなさい。」
    「こんなことになって、申し訳ありません。だけど、僕は…、瑠美をだますつもりなんかありません。」

    2005-08-02 16:41:00
  • 20:

    名無しさん

    おもしろいっ?

    2005-08-02 16:42:00
  • 21:

    るみ

    それを聞いて、母親は激怒した。
    「今までなにひとつ不自由せずに暮らしてきて、それがどんなに幸せなことか、今に気付くわ。ほんとにやれるか、その貧乏な男とくらしてみればいいわ。」そう言い残すと母親は帰って行った。
    まだ子供だったあたしは、それからも幸せが続くと信じていた。そこからが、転落の始まりとも知らずに。

    2005-08-02 16:43:00
  • 22:

    るみ

    慎吾が帰ってくるのは、いつも朝の九時過ぎてからだった。
    あたしは、慎吾のいない長い夜がとっても嫌いだった。ひとりは嫌い。淋しい時は月を見上げた。幼い頃からいつもそうだった。
    慎吾との幸せを壊したのはあたしだったのかもしれない…。

    2005-08-02 16:44:00
  • 23:

    るみ

    慎吾は、あたしにもっといい暮らしをさせてやりたいと言って、仕事をがんばっていた。しかし、その裏で起きていることなど、あたしには想像もつかなかった。ただ、帰ってこない日が増えて、あたしはだんだん壊れそうになっていた。慎吾が帰ってきたら、泣いてわめいてあたりちらした。ただ、そばにいてほしかった。ただそれだけでよかった。

    2005-08-02 16:45:00
  • 24:

    るみ

    夜ひとりで家にいるのが嫌なのと、服も買えないことが嫌になり、あたしはキャバに勤めることにした。もちろん慎吾には内緒で始めた。キャバの仕事にはすぐに慣れた。しかし、キャバに勤めて十日目の夜、慎吾の働いているミナミはさけてキタにしていたのに、出勤前にお客さんと同伴の慎吾に出くわせてしまった。

    2005-08-02 16:46:00
  • 25:

    るみ

    慎吾はあたしの姿を見つけると、一瞬固まったように立ち止まり、あたしのほうへ、駆け寄ってきた。
    「お前、こんなとこで何してんねん。」
    横にいた二十代後半の派手な女の人は、大きな声で慎吾を読んでいる。
    慎吾は一旦女の人のところに戻り、なにやら話をして女の人は怒ったように去って行った。

    2005-08-02 16:47:00
  • 26:

    るみ

    「ちょっと来い。」
    大きな声で言うとあたしの腕をぐいぐい引っ張って行く。
    あたしは恐かった。それまで、慎吾のそんな恐い顔を見たことがなかった。
    地下鉄の階段の踊り場まで連れていくと、慎吾は尋ねた。
    「お前、どこ行こうとしてんねん。いったい、俺に隠して何してんねん。」

    2005-08-02 16:48:00
  • 27:

    るみ

    あたしは、上手い嘘が見つからず、しどろもどろな口ぶりになった。
    その時、いきなり慎吾の手があたしに飛んできた。
    何かすごい激痛を、鼻のあたりに感じた。
    慎吾はキレて止まらない。「男と会うんか?あー?なんやねん。言うてみぃや。」
    今度はお腹のあたりに、拳が飛んできた。
    あたしはあまりの恐怖に、「助けて!」と通りすがる人に叫んだが、みんな関わりたくないのか、足早に去っていく。

    2005-08-02 16:49:00
  • 28:

    るみ

    「ごめんなさい。慎吾にばっかり迷惑かけられないと思って、キャバでバイトしてた。」泣きながら、あたしが言った。慎吾は恐ろしい顔で「俺は、キャバ嬢のお前とつきあったんちゃう。そんな奴どこでもおんねん。お前は俺の嫁しとったらええねん。」そういうと、あたしのヒールをとりあげて、踵の部分であたしの太ももを強く打ち付けた。あたしは悲鳴を上げて、その場にうずくまって泣いた。

    2005-08-02 16:50:00
  • 29:

    るみ

    しばらくその場で泣き続けていた。慎吾はあたしを抱き上げると、「ごめんな。俺、お前のことほんまに好きやねん。

    2005-08-02 16:51:00
  • 30:

    るみ

    そう言いながら、あたしの頬を撫でた。
    あたしはその手にびくっと体が硬直した。慎吾はあたしのカバンを取り上げ中から、ティッシュを取出しあたしの顔を拭いた。
    無言で、慎吾の顔を見つめていた。慎吾はあたしの手を引くと笑顔で「今日は俺仕事休むわ。お前と一緒に家帰るわ。」と言った。
    あたしは慎吾がわからなかった。

    2005-08-02 16:51:00
  • 31:

    るみ

    家に帰ると、慎吾は浴室にお湯を貯めた。
    ぽつんと無言で座っているあたしのそばに近づいて、あたしの体を抱きしめた。
    「ごめんな。痛かったやろ。」頭を撫でながら、あたしにキスしてきた。

    2005-08-02 16:52:00
  • 32:

    るみ

    「あたし、さみしかってん。慎吾にそばにおってほしかってん。」泣きながらあたしは言った。慎吾は頷いて、傷だらけのあたしを抱いた。

    2005-08-02 16:53:00
  • 33:

    るみ

    眠ってる慎吾を起こさないように、ベットから起き上がり、浴室に向かった。
    鏡に写る自分の顔を見て、びっくりした。
    口は切れ、腫れ上がり、頬にも青あざができ、違う人の顔みたいになっている。

    2005-08-02 16:54:00
  • 34:

    るみ

    その顔を見ていると、泣けてきた。
    慎吾は悪い男かもしれへん。でも、もうあたし慎吾から離れられへん。
    お湯に浸かり、自分の弱さを呪った。

    2005-08-02 16:55:00
  • 35:

    るみ

    浴室から出ると、慎吾は目を覚ましていた。
    「俺、仕事行ってくるわ。」そう言って、スーツに着替えた。
    「瑠美、ちょっとこっち来て。」
    「うん。」

    2005-08-02 16:56:00
  • 36:

    るみ

    あたしがベットのほうに近づいて、慎吾のそばに寄ると慎吾はあたしの両手を掴みいきなり手錠をかけた。あたしはびっくりして手足をばたつかせて、わめいた。
    「とってー。なんでこんなことするん?」
    「お前が悪い。お前も他の女みたいに、逃げるんやろ。」

    2005-08-02 16:57:00
  • 37:

    るみ

    慎吾は悲しそうな顔であたしの顔を見つめていた。
    手錠をかけられた手首は、動かそうとするととても痛かった。
    「逃げたりなんかしない。あたしは、絶対に!だから、お願い。これをとって。」

    2005-08-02 16:58:00
  • 38:

    るみ

    慎吾は首を横に振ると家を出ていった。

    手錠をかけられたままあたしはベットに仰向けに横たわった。悲しいのかなんなのか分からない。ぼんやりとしながら目をつぶった。

    2005-08-02 16:59:00
  • 39:

    るみ

    目を閉じて、しんとした部屋にひとりぼっちでいると、ものすごい恐怖感が押し寄せてきた。
    窓の外から入ってくる月の光だけがあたしを照らしてくれた。
    手錠で繋がれた手はひっぱっても、びくともしない。

    2005-08-02 16:59:00
  • 40:

    るみ

    あがいても、どうすることもできない。
    あたしはどうなってしまうんだろう。
    唾を飲み込むたびに切れた口の中が痛んだ。

    2005-08-02 17:01:00
  • 41:

    るみ

    ブラインドの隙間からは、まぁるい月が見える。
    『そっかぁー今日は満月なんだ。』あたしは思った。満月のおかげで部屋の中は少し明るい。 悲しい時、月はあたしを見ていてくれる。月はあたしのことをなんでも知ってる。

    2005-08-02 17:01:00
  • 42:

    るみ

    あたしは突然、押さえ切れなくなって大声を上げて泣いた。体の中から込み上げる悲しみを吐き出すように…。
    なんか、もうどうでもよかった。あたしにはどこにも、逃げ場なんてない。

    2005-08-02 17:02:00
  • 43:

    るみ

    あたしはどうすることもできないまま、泣き疲れていつのまにか眠っていた。

    2005-08-02 17:03:00
  • 44:

    るみ

    目を覚ますと朝になり、酒に酔った慎吾が帰って来ていた。
    不気味な笑みを浮かべあたしに近づいてくる。

    2005-08-02 17:04:00
  • 45:

    るみ

    あたしは背筋が寒くなった。恐い…。
    「やめて。こっちに来んといて。」
    慎吾は無言のままあたしの首筋から顔を舐めた。
    あたしは抵抗したかったけど、なんだか体が動かなかった。

    2005-08-02 17:05:00
  • 46:

    るみ

    慎吾は興奮して、あたしの体の隅々まで舌を這わせた。
    「お前は俺のおもちゃや。」そういうと、どこからかバイブを取ってきて、あたしのあそこにあてた。
    あたしは長時間トイレに行ってなかった為、おもわずもらしそうになった。
    「もうやめて!こんなんいややぁー。」あたしは涙声で叫んだ。

    2005-08-02 17:06:00
  • 47:

    るみ

    「おしっこがもれるー。やめてぇー!」
    大声で叫んだ次の瞬間、あたしは失禁しながら、絶頂に達した。
    恥ずかしさのあまり、大声で泣いてしまった。
    慎吾はあたしの頭を両手で、だきしめ「かわいかったでー。」と言ってキスをすると、あたしの手錠を外して、自分のものをあたしの中に、差し込んだ。

    2005-08-02 17:07:00
  • 48:

    るみ

    慎吾はあたしの足を大きく広げて、ゆっくりと出し入れする。ぐっと突かれるとたまらずに悲鳴のような喘ぎ声が漏れた。
    「見て、入ってんで。」あたしは、狂ったかのように乱れまくった。

    2005-08-02 17:08:00
  • 49:

    るみ

    慎吾はあたしの体の向きを、返させ後ろから突いた。それからも、色んな体位であたしの体を突いたけど、あたしの意識は朦朧として、何も考えられずに声をあげることしかできなかった。何度も上ってくる快感に、あたしは何度も果てた。

    2005-08-02 17:09:00
  • 50:

    るみ

    いつのまにか、あたしは気を失っていた。目を覚ますと、汚してしまったシーツを慎吾が外してくれていた。
    「起きたか?今、中華の出前頼んだから。」
    いつもの優しい慎吾に戻っていた。

    2005-08-02 17:10:00
  • 51:

    るみ

    「うん。シャワー浴びてくる。」
    熱いシャワーを頭から浴びた。あたしはこれから、どうなるんだろう。そんなことをぼんやりと考えた。
    あんなことをされたのに、あたしは慎吾のことを愛してる。

    2005-08-02 17:11:00
  • 52:

    るみ

    浴室からでてくると、テーブルにラーメンや中華丼や野菜炒めがならんでいた。
    「ちょうど今来たとこや!あったかいうちに食べよや。」
    慎吾は笑顔で言った。

    あたしは哀しげに笑い、ふたりで中華を食べた。

    2005-08-02 17:12:00
  • 53:

    るみ

    ふたりでご飯を食べていると、何もなかったかのような感じがして、あたしは悪い夢でも見てたのかなって思った。
    「瑠美、おまえ仕事したいんか?」
    慎吾が聞いてきた。

    2005-08-02 17:13:00
  • 54:

    るみ

    なにか、胸騒ぎがしたけど、夜の世界のことは慎吾のほうがよく知っている。
    「うん。わかった。紹介して面接行ってみるわ。」
    「おう。言うとくわ。」

    皿をかたずけると、ふたりで眠った。慎吾の腕の中で眠る時間。
    あたしにとってそれはなにより幸せな時間だった。

    2005-08-02 17:15:00
  • 55:

    るみ

    目を覚ますと、外は暗くなっていた。時計を見ると七時を過ぎていた。慎吾の出勤時間は九時。あたしは慎吾を起こした。
    「あー。体痛いー。支度せなあかんなぁー。おまえ面接行くんやろ?俺、心配やからついて行くわ。」
    「子供ちゃうねんから、いいって。恥ずかしいわ。」「そうしたいねん。俺、店遅刻することなるから、誰かと同伴の手配するわ。えーっと、早い時間でてくるんは、主婦の…。このばばあでええわ。」
    そう言いながら、慎吾は携帯の電話帳を検索して電話をかけている。電話の音声感知するところを手で押さえて、「はよ支度しろ」と口ぱくで、あたしに言った。

    2005-08-02 17:16:00
  • 56:

    るみ

    身仕度を整えふたりで家を出た。タクシーに乗り、宗右ヱ門の辺りで降りた。
    「何処の店いくん?」
    「ええから。」
    あたしは黙って、早歩きの慎吾の後ろを小走りに追いかけた。
    心斎橋筋を北に歩き、不二家を右に曲がり少し歩くと、きれいなビルが左手に見えてきた。

    2005-08-02 17:16:00
  • 57:

    るみ

    大理石のビルの中に入り、エレベーターで四階まで上がった。
    扉が開くと、目の前に大理石の置物の上に、紅い薔薇が豪勢に飾られ、[斬]と書かれた看板が目に飛び込んだ。

    2005-08-02 17:17:00
  • 58:

    るみ

    慎吾は店に入っていき、挨拶をした。
    「ちぃーっす。」
    「おぅ!春樹!元気か。」三十代ぐらいの、体の大きな男が出迎えた。黒いスーツのイカツイ男だった。
    「はい。なんとか…。急なんすけど、面接したってほしいんですよ。女つれてきたんで。」

    2005-08-02 17:18:00
  • 59:

    るみ

    あたしは、あまりに大きくて綺麗な店の雰囲気に圧倒されて、緊張していた。そして、あたしの慎吾は他の人にとっては春樹なんだーっと一人で思っていた。

    2005-08-02 17:19:00
  • 60:

    るみ

    店長らしいその男は、あたしを上から下まで、舐めるように見ると、なにやら慎吾に耳打ちした。慎吾は笑いながら、違いますって感じで、手を横に振りその男にまたなにやら耳打ちして、その男は前で腕組をしてなにやら考えていた。 「まぁ、とりあえず、そこの席座って。」男は言った。

    2005-08-02 17:20:00
  • 61:

    るみ

    あたしは、無言で頭をぺこりと下げ、言われるままに席に座った。
    紙とボールペンをとってくると「これ書いて。」と言った。
    あたしは、名前や住所や年令などを書き込んだ。
    「経験は…?」
    と聞かれ、とっさにあたしは「半年ぐらいです。」と嘘をついた。
    それから、細かいことを二、三質問され、「いつから来れる?」と聞かれた。

    2005-08-02 17:21:00
  • 62:

    るみ

    美容院に言って明日から出勤することをその男に約束した。
    挨拶をして店を出ると、店の前で待っていた慎吾が「ちょっと待ってて。」と言い残して、店に入っていき、数分して外にでてきた。「何してたん?」あたしが聞くと「おまえのことよろしく頼んできた。」と笑顔で答えた。

    2005-08-02 17:22:00
  • 63:

    るみ

    エレベーターを降りて、外に出た。夜風が少し肌寒く、あたしはトレンチコートのまえをあわせて紐で結ぼうとしていた。
    「俺、同伴やから行くわ。おまえまっすぐかえれよ。」
    紐を結び終えて「うん…。」と返事した。
    慎吾は「じゃあな。」と言い残すと、ブルガリの香りだけを残して、足早に振り向きもせず夜の街の雑踏に消えていった。

    2005-08-02 17:23:00
  • 64:

    るみ

    あたしはひとりで、ぼんやりと心斎橋筋を歩いた。初めて慎吾と出会った辺りを過ぎて、大丸のあたりまでたどりついた。

    2005-08-02 17:23:00
  • 65:

    るみ

    地下鉄の駅が目に入ったけど、まっすぐ帰る気になれなかった。
    慎吾と一緒に暮らしているのに、慎吾の気持ちがわからない。慎吾はいったい店長となんの話をしていたのだろう。胸の奥が騒めいた。

    2005-08-02 17:24:00
  • 66:

    るみ

    駅からUターンして、ひとり歩いた。アセンスまで辿り着き、ファッション雑誌を買って、スタバに入った。ラテを飲みながら、雑誌をめくっていると、隣の席に二人組の女の子が座った。

    2005-08-02 17:25:00
  • 67:

    るみ

    見るからに、キャバ嬢って感じにセットした髪のふたりは、ドサッと荷物を降ろすと大きな声で話始めた。「しかし、だるいなぁー。あのキモオタ。」
    「ほんまそれ!」
    どうやら、客の悪口のようだった。

    2005-08-02 17:26:00
  • 68:

    るみ

    聞かないようにしょうと思っていても、声が大きいせいで、勝手に耳に入ってくる。ウザイなぁーと思いながら、ページをめくった。
    「ところでさぁー、最近春樹とどうなん?」
    ギクッとした。春樹って慎吾の源治名やん…。
    あたしは頭を上げてふたりの顔をちらっと見た。

    2005-08-02 17:27:00
  • 69:

    るみ

    ピンク色のファーにジーンズをはいたお姉系の綺麗な子やった。
    「あー、あいつなぁー、マジむかつくねん。何人付き合ってるんかわからんで。ホスやし、しゃあないけど。この前、イベントん時、勝手にルイ持ってきて、伝票つけられてん。もぅ目ぇー覚めたわ。キャバの店かわるし、未収とんだる。あんな奴らの為に風とか行く奴あほやん。」

    2005-08-02 17:28:00
  • 70:

    るみ

    「そら、そうやろ。」
    ふたりは、大きな声で笑っている。
    たまたま同じ名前なんやろうと思ったけど、なんか気分が悪くて、あたしはスタバを出た。

    2005-08-02 17:29:00
  • 71:

    るみ

    家に着くと、静まりかえった部屋の中でテレビもつけずにボーっとしていた。

    携帯には慎吾からメールがきていた。
    【家ついたかぁー?おとなしぃ寝とけよぉ?】

    2005-08-02 17:30:00
  • 72:

    るみ

    返信する気になれなかった。携帯を閉じて、ベランダに出た。青白い月がこっちを見ている。
    慎吾は悪い男かもしれない。そんな気がした。
    あたしはどうなるんだろう…。心が痺れるくらいに幸せを感じることができるのなら、あたしは落ちていくのも恐れない。そう思った。

    2005-08-02 17:31:00
  • 73:

    るみ

    「おい、起きろって。」
    不機嫌な慎吾の声で目覚めた。
    「どうしたん?」
    そばにあった目覚まし時計を手にとって見た。まだ朝の八時過ぎたとこやった。「俺、客に飛ばれたわ。」

    2005-08-02 17:31:00
  • 74:

    るみ

    ぼぉーっとしていた頭が急に、ビッとした。
    「いくら飛ばれたん?連絡つけへんの?」
    「まだわからんけど、電話つながらんくなったし、メールも送られへんし。」
    スタバの女の子の顔が浮かんだ。

    2005-08-02 17:32:00
  • 75:

    るみ

    「なぁ、いくら飛ばれたん?」
    慎吾とスタバの女の子は関係ないと思いたかった。
    「60万…。」
    慎吾は肩を落として言った。

    2005-08-02 17:33:00
  • 76:

    るみ

    言わないほうがいい…。 そう思ったけど、黙っとくこともなんか違う気がした。
    「あたしな、慎吾と面接行った帰りにスタバでお茶してん。隣座ってた子、春樹がどうとか、ルイ持ってこられたから飛ぶとか、おっきぃ声で話してたの聞いた。」
    みるみるうちに慎吾の顔が怒っていくのがわかった。

    2005-08-02 17:34:00
  • 77:

    るみ

    「お前なぁー、なんでそん時連絡せぇへんねん。」
    慎吾はそう怒鳴ると、その場に座り込んだ。

    あたしは無言で慎吾をただ見つめていた。

    「あきれるわ。お前。」
    なんで、あたしがあきれられるのか、あたしには理解できなかった。

    2005-08-02 17:35:00
  • 78:

    るみ

    「それやったら言うけど、そのスタバの子、慎吾の彼女みたいなこと言ってたし、ルイ持ってこられたとか言ってたし、あたしかってそんなん慎吾がしてるって思いたくなかってん。」

    「あんなぁー、はっきり言うけど、俺はホストやねん。女に惚れてもらって金つかってもらうのが仕事や。お前みたいに、金持ちの家の子ちゃうんじゃ。なんでもせな金なんか掴めるかぁー。」
    大声で怒鳴りながら、机を蹴っ飛ばした。

    2005-08-02 17:36:00
  • 79:

    るみ

    「お前なぁー、彼女やねんから、クラブで客つかんでアフター連れてこいよ。」
    「なんなんそれ。なんで、そんなこと言うん?今まで店来いとかいわんかったやん。」
    慎吾は、お腹を蹴りあげた。みぞおちのあたりに激痛が走った。

    2005-08-02 17:37:00
  • 80:

    るみ

    「誰がお前に金使え言うてん。客つれてくるぐらいできるやろ。俺が大変な時期なんわかってるんやろがー。あー?」
    襟首を捕まれ、ぶんぶん振られた。

    2005-08-02 17:38:00
  • 81:

    るみ

    「脱げや。」

    あたしは苦い顔で無視した。
    「聞こえへんのか。脱げゆうてんねん。」
    あたしは殴られるのが嫌で服を脱いだ。

    2005-08-02 17:39:00
  • 82:

    るみ

    自分の上で動く慎吾の顔を見ていた。

    ただ、されるがままに何の抵抗もせずやられていた。
    気持ちが違うとこんなにも何も感じないものか…。自分でもびっくりするくらい冷めていた。

    2005-08-02 17:39:00
  • 83:

    るみ

    自分がイクとあっさりと隣で寝てしまった。

    慎吾に抱かれた後、慎吾の寝顔を見ながら涙がでてきた。
    もう疲れた…。ほんとにそう思った。

    2005-08-02 17:40:00
  • 84:

    るみ

    なんでこんな事になったんだろう…。
    慎吾の傍にいられたら、それだけで幸せと思っていたのに…。
    どうして慎吾はあたしを殴る?
    それは愛とは違うよね…?

    2005-08-02 17:41:00
  • 85:

    るみ

    こんなに近くにいるのに、近くに感じない。

    別れたほうがいいよね…?もう…、逃げ出そう。ここから逃げ出そう。
    そう思った。

    2005-08-02 17:42:00
  • 86:

    るみ

    今日の夜、慎吾が仕事に行っている間に出ていこう。
    だから…、今だけは慎吾の寝顔を忘れないようにじっと見ていよう…。

    あたしは、寝息をたてている慎吾の顔をじっと見つめていた。

    2005-08-02 17:43:00
  • 87:

    るみ

    初めて慎吾に出会った日のことを思い出す。

    あの時もこんなふうにずっと寝顔を見ていたっけ…。あの時も綺麗な寝顔だなって思った。今も変わらずにとっても綺麗な寝顔をしている。
    茶色のまっすぐな細い髪は手を伸ばせば、すっと日の光の中に消えてしまいそうだった。それが、恐くてあたしは何度も慎吾の頭を撫でた。

    2005-08-02 17:44:00
  • 88:

    るみ

    「う〜ん…。」
    と言いながら、寝返りを打った慎吾が手を伸ばして、あたしを強引に抱きしめてむりやり腕枕をしてふとんの中に引き入れた。

    その腕に逆らうこともできず、あたしは隣に寝ころんだ。
    愛する人の腕の中がこんなに幸せと感じるのに…。
    それなのに…、どうして慎吾はこんなにあたしを傷つけるんだろ…。

    2005-08-02 17:45:00
  • 89:

    るみ

    少し眠ろう…。
    最後に幸せを感じながら。起きたら、ここからでていこう。

    暖かい腕の中であたしは眠った。

    2005-08-02 17:46:00
  • 90:

    るみ

    「お前、今日、初出勤やろ?仕事がんばれよ。」
    スーツに着替えて、髪を整えながら、慎吾は言った。
    「うん。もうすぐしたら家でるよ。」
    ほんとはもうあの店に働くつもりはない。
    前のキャバで知り合った、彩が店をうつっていて、そこには寮があると聞いたので、そこにうつるつもりでいた。

    2005-08-02 17:47:00
  • 91:

    るみ

    「ほな、俺さきいくわ。客と飯いかなあかんし。」

    身仕度の出来上がった慎吾は両手で自分の頬をパンパンと叩いた。 「今日もがんばってくるわ。」
    「いってらっしゃい。」
    いつもの様に送り出す。

    バタンと玄関のドアが閉まった。

    2005-08-02 17:47:00
  • 92:

    るみ

    慎吾が出ていった後、念入りに部屋を掃除した。
    それからあたしはヴィトンのボストンに服、化粧品、携帯の充電器。
    忘れてはいけないコテ。それらを無造作に放りこんだ。
    部屋の中を見渡したら、少し泣けてきた。

    そして、あたしは慎吾の部屋を出ていった。

    2005-08-02 17:48:00
  • 93:

    るみ

    慎吾の部屋をでて、一週間が過ぎた。
    あたしは、ようやく今の生活に慣れてきた。

    「春菜、送り待ちの間に一緒に下でお寿司食べようやぁー。」
    「またぁー。ほんまデブなるってぇー。」
    あたしは慎吾の源治名の春樹から、一文字とって春菜として働いている。
    仕事あがりに、店の下の回転寿司を食べるのが、今のゆいつの楽しみだった。 まだ、一人になると泣いたりするけど、ほとんど彩が泊まりに来てくれている。

    2005-08-02 17:49:00
  • 94:

    るみ

    お寿司屋さんに入り、彩と二人で馬鹿話しながら、お寿司を食べていた。

    トイレに行こうと席を立ち、店の入り口に歩いていった。

    その時…。店の自動ドアが開き、そこには慎吾が立っていた。

    「探したで。ちょう来い!」
    むりやりあたしの手を引っ張る。
    あたしは恐くなって大声で叫んだ。
    「あやぁー、助けてぇー。」

    2005-08-02 17:50:00
  • 95:

    るみ

    彩は、飛んできて怒鳴った。
    「あんたが、春菜の元彼かぁー。さんざん暴力ふるってまた何しにのこのこでてきとんねん。」
    「お前なんやねん。こいつは俺の女なんじゃ。」
    そう言うと、あたしの腕を引っ張ってつれて行こうとする。
    送りが来たのを知らせに、そこに店長がきた。

    2005-08-02 17:51:00
  • 96:

    るみ

    あたしは、店長には色々相談していた。
    状況を把握した店長は顔色を変えて、
    「お前が、慎吾かぁー。表でろや。」
    慎吾のジャケットを引きずって、店の外まで連れ出した。

    2005-08-02 17:52:00
  • 97:

    るみ

    「俺はぁー、女食いモンにしたり女に手あげるやでけは許されへんねやぁー。」

    バキッ、ボコッ。
    「うっ…。すいません。」「痛いやろ!どつかれたら痛いんじゃあ。」
    最初は、いいきみやと思って見ていた。でも、慎吾の顔が切れて、血がでている。
    慎吾が死んでしまう…。

    2005-08-02 17:53:00
  • 98:

    るみ

    「やめてぇー。」
    あたしはたまらず慎吾を抱きしめた。

    「春菜、こんな奴かばうな。根性叩き直したる。」

    2005-08-02 17:54:00
  • 99:

    るみ

    その時、あたしを振りはらって、慎吾がその場に土下座した。

    「ほんまにすいませんでした。俺は、恐かったんです。瑠美に離れて行かれんのが。俺は…、俺には、何にもありません。こいつはお嬢やし、俺なんかよりなんぼでもええ男つく思うんです。そんなん考えたらおかしなりそうで、不安でこいつに辛くあたることでこいつの愛情を試してたんやと思います。すみませんでした。」

    2005-08-02 17:54:00
  • 100:

    るみ

    慎吾はアスファルトの地面に頭を下げたままだった。 あたしはただそれを泣きながら見ていた。

    店長は呆れたように言った。

    2005-08-02 17:55:00
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