-
夜遊び夜遊び
-
お水お水
-
ホストホスト
-
風俗風俗
-
ビューティビューティ
-
ファッションファッション
-
悩み相談悩み相談
-
モデルモデル
-
芸能芸能
-
雑談雑談
-
食べ物・グルメグルメ
-
生活生活
-
恋恋
-
インターネット・ゲームネット・ゲーム
-
ギャンブルギャンブル
-
過去ログ倉庫過去ログ倉庫
-
運営運営
俺の話
-
1:
暢生
俺の話を書こうと思う。ほんま頭悪いし小学生の作文以下やけど、書きたいので読む人は読んで下さい(旧掲示板コピペ)
2005-12-14 06:14:00 -
2:
でもこのキャッチのバイトは思うように行かずに、お水系の女の子に『お兄さん(俺)が遊んでくれるんなら行くぅ』とか言われて、お水系の女の子に免疫のない俺はかなりタジタジやった。
仕事が終わって先輩とメシ食べに行った時に相談してみたら、『のぶ、そんなん言ってくるんやったらこっちのもんやんけ。「色」使ったらええねん。』2005-12-14 06:17:00 -
3:
「色?」
俺は色鉛筆とかクーピーを思い浮かべた。
そう、この頃の俺はかなり純粋で女の子と付き合ったり、ヤったりはそりゃあ有ったけど、それは自分が付き合いたいから付き合ってたしヤりたいからヤってた。
何らかのメリットの為にっていう発想が俺にはなかった。
キャッチしだして一ヶ月、俺はこの日に「色」の存在を知って1つ汚く成った。2005-12-14 06:18:00 -
4:
==お願い==
この話は旧掲示板の人気作でした。話も長いので少しずつしかコピペ出来ませんが、読みやすくするためにも感想、しおりやレスアンカーなどのカキコはなるべくしないで下さい。荒れたら削除も考えます2005-12-14 06:22:00 -
5:
俺は何かがぷっつん切れたかの様に売り上げをあげまくった。どうやら俺は「色」を使うのが上手かったらしい。先輩に「すばらしい才能や」と言われて更に調子に乗った。
色を使いはじめて三ヶ月、俺は女の子に罪悪感なんか全く感じなく成って居た。寧ろ「女ってほんまに頭悪いし」ぐらいまで思ってたと思う。2005-12-15 00:15:00 -
6:
俺がキャッチのバイトに入って半年ぐらいたった日の事。
事務所の上の人に俺を含む三人が呼ばれた。
俺は色を覚えた最初の頃は売り上げ上げてたけど、最近はかなりサボり気味でしかもキャッチした女に色かけて直引きしてたからバレたんちゃうかと思ってかなりビビってた。
『実は三人のうち誰か一人、商店街の方のな、営業所に行って欲しいんや』
俺はバリ行きたかった。絶対アメ村よりも商店街の方が水、風が多いと思ってたから。でも誰が行くかは向こうの上の人が来て決めるらしい。2005-12-15 00:16:00 -
7:
うわっ何かキザやなこの人!と思ったけど商店街に行けるしやったぁー!と思った。
『名前は何てゆうねん?』『あっ、児島暢生です』
『ノブキか。俺はこおゆうもんや』と渡された名刺には『クラブ○○春風拓哉』と書いて有った。2005-12-15 00:18:00 -
8:
とりあえず俺と拓哉さんは喫茶店に行って具体的な話をする事になり、道頓堀の青山に行った。俺は名刺にもの凄い違和感を感じたので思いきって聞いた。
『あの、うちの上の人は商店街の営業所や言うてたんスけど拓哉さんの名刺にクラブ○○って書いてますよね?もしかして俺が行くんてキャバかラウンジっスか?』俺は今まで何度かアメ村の営業所の所長に意味分からん事で騙されてたから、またかよと思って聞いた。拓哉さんの答えは
『えっ?ちゃうよ!うちホストクラブやで?聞いてないんか?』2005-12-15 00:23:00 -
9:
やられた。何やそれ!
『嫌なら辞めてもええんやで。ただ俺はホストしたいやつが三人おるから一人選んでくれ言われたから選びに行ったんや。』拓哉さんはそう言ってくれたけど、俺はホストっちゅー職業にちょっと興味が沸いて来てた。既に色で引っ張ってる女も居てる。
『やります。やらせて下さい。』俺は口走ってた。俺はこうしてホストに成った。2005-12-15 00:23:00 -
10:
その月いっぱいまで俺はキャッチのバイトをやって、6月からホストクラブで働き出した。
ホストって俺は具体的にどんなんか全然しらへんかったから驚いた。まず、しんどい。眠い。キツイ。ありえん。
『みんなどぉやって生きてるんやろ?』と本気で思った。夜、10時ごろに出勤、掃除、キャッチ、接客、キャッチ、ヘルプ。あほみたいに酒を呑まされ、吐き、またキャッチ。朝に成ってやっと終わった思ったらアフターやら営業電話、営業メール。
客に昼間遊ぼって言われたら行くしかないと思ってたから、きっちり遊びに行ってたし、ほんまいつ寝たらええの?って生活。ほぼ店か一人暮らしの女の子の家に転がり込んで寝たりで実家にはあまり帰らなく成って居た。2005-12-15 00:24:00 -
11:
そして壮絶な一週間が終わり、やっと休み。この日ばかりは眠りたかったからお客さんや女の子とは約束せずに寝まくる予定やった。
が!しかし!夜10時ごろにに拓哉さんから電話。「ノブキ、ミナミでてこい!飲みに連れてったろー」「えっ?あ、はい!わかりましたぁ〜」
最悪だ。せっかく休みやのに。実家まで帰って来たのに。
「おかん〜上の人に呼ばれたから行ってくるわぁー」「えっ!暢生、次いつ帰ってくるの?」「多分来週!」
そう言って俺は家を出た。おかんはしんどそうやったけど、俺はこの時そんなこと気にも止めへんかった。風邪でも引いたか?って位にしか、思ってなかった。2005-12-15 00:26:00 -
12:
俺はミナミに向かう電車の中でぽけーっと考えてた。ある客の事だ。俺には「りん」と名乗っている子だ。りんは俺がホストになってからのキャッチで知り合った風俗の子だ。道頓堀のTSUTAYA前に一人で座ってたりんに俺が声かけた理由はかわいいからと、キャッチするんがしんどかったから相手してもらう為やった。
2005-12-15 00:29:00 -
13:
「それでりんはお水の世界に入ったってわけ。今考えたらいきなりセクキャバってのもどうかと思うよなぁ。でもその時りんはキャバの存在知らんかったしセクキャバで働かないと住む所ないわって思って、頑張ってん。ほんでりんはそのボーイと一緒にすみだして好きになって付き合っててんけど、一ヶ月前に色で引っ張られてたって発覚して店やめて、風俗で働く事にしてん。」
りんは酔ってたのもあってか少し涙が出てた。俺は内心ちょっとこいつ可哀想やんけと思ったけど、だからなんやねん、そんな奴腐るほどおるわ。とか思ってもた。2005-12-15 00:31:00 -
14:
「でもセクキャバから風俗に行ったら大変なんちゃう?」って俺はりんの頭撫でながら言った。りんは「最初はな。めっちゃ気持ち悪かったでぇ。客のんしゃくってる時、気持ち悪くて、何でこんなんしてるんやろって泣きそうなったりね。でももう慣れたよ。もう平気。ごめんな変な話聞いてもらって。でもノブくんには何か話しやすいわ。」俺はまた女って頭悪いし。と思った。
2005-12-15 00:32:00 -
15:
その日りんは、友達が来てからその友達と一緒に店に来てくれて、ボトルも卸してくれた。さすがは風俗。お金を持ってた。しかも使い道のない金やからケチケチせずに使ってくれた。
金も持ってるし普通に飲みに来てくれる。俺が家に帰るのがめんどくさい時は泊めてくれた。やけどもHはしてなかった。正直だいぶヤりたかったけど、すぐにやったら引っ張られへんくなる、っちゅーのがあったからヤれなかった。風俗やし絶対テクあるやろーなぁーと思ってるうちにミナミに着いた。2005-12-15 00:33:00 -
16:
拓哉さんには大分気に入られてた。拓哉さんは特に俺の「目」が好きらしい。別に普通の目だ。二重まぶたでちょっと人より大きめで強い印象があるみたいだ。
拓哉さんは青山に居ると言うので青山に行った。
休みやのに拓哉さんはスーツ。俺はストリート系の私服で来てしまった。
「おっ!じゃあ今日は俺の仲良い奴が店長してるキャバに飲みに行こうぜ」俺はキャバクラかょーと思った。内心、風俗に行けるかなと思ってたから。2005-12-15 00:33:00 -
17:
行った先は某安キャバ。女の子も10人足らずで俺らの他に二組入ってたくらいだ。拓哉さんはそこの店長、アキラくんを席に呼び、話してた。「拓哉ぁー!一昨日振りやな!レイラ指名でいいかぁ?お連れさんがもしかしてノブキくん?」一昨日振りって…拓哉さん通ってんのかい!と思いながら「あっ!はい、はじめまして暢生っす」と挨拶しといた。「ノブキ、アキラっちに敬語なんかいらんで!こいつアホやからな」拓哉さんが言った。
「女の子失礼しまーすレイラさんです」アキラっちの声。レイラちゃんは拓哉さんが好きそうな美人系のオネイサンだった。かなりオキニの様でかなりニタニタしてる。
「ノブキくん、お隣失礼しまーす。サクラさんでーす」2005-12-15 00:34:00 -
18:
俺の横に付いた桜は色が白くて髪の毛も黒よりの茶髪、目がくりくりしてて化粧も薄くて美人系というよりはかわいらしい系。スレてない雰囲気が漂ってて俺はちょっと釘付けになってしまった。
何してる人?って聞かれてホストやで、って言ったら桜は「私、ホストクラブって行った事ないしホストの人と喋るのん拓哉くん以外でノブキくんが初めて!」と言った。桜のおっとりしたしゃべり方にはまったんか何かわからんけど俺は桜には色をかける気も起こらず、むしろ桜には何でも話してしまった。少し自分がりんに成った気分やった。2005-12-15 00:36:00 -
19:
結局俺らは吉四六を3本卸した。いかにも酒が強そうなレイラさんはかなり飲んでたけど顔が赤くなる程度で余裕な雰囲気。拓哉さんもさすがはうちの店のNO.1!余裕じゃぁと言ってる。レイラさんと拓哉さんに飲まされまくってたアキラっちは既に撃沈。『やばいってぇやばいってぇ』を連発。そんなアキラっちを心配してる桜はか〜な〜り酒がよわいらしく、激うすの水割り一杯でノリノリになってしまって、モー娘。や、きのこのうた(きのこのっこぉのこげんきのこぉマイタケ、エリンギ、ぶなしめじぃとゆうやつ)なんかを歌っていてごっついハイテンション。俺も少し酔ってて、大分愛しく思ってしまった。
2005-12-15 00:37:00 -
20:
俺は酔うと誰かれかまわず色をかけてしまう癖があって、天性の色ホストと言われてるぐらいやった。だけど今日はそんな事したくない、こいつにはそんな言葉かけたくないと思った。桜がきのこのうたを歌い終わった。俺は気に成ってたから「桜って本名?」と聞いた。桜は「本名は本名やけどっ☆」と言った。(俺には☆が最後についてる様に聞こえた)「どうゆう意味?」「本名は桜井裕子ってゆうねんっ?」(俺には?がついてる様に聞こえた)「桜井裕子かぁ!綺麗な名前やな!」「ありがとぉ〜っ?」(俺にはほんまに?がついてる様に聞こえた!)マジでかわいいなとか俺と付き合わん?とか言いそうになったけど必死に抑えた。ほんで俺は『裕子はほんま、妹みたいやな』と言ってもた。
2005-12-15 00:38:00 -
21:
裕子はその言葉を何故か大分喜んで、『じゃあ裕子今日からノブキくんの妹なるわ!ノブ兄って呼んでいい??裕子兄弟下ばっかりやからお兄ちゃん欲しかってん!』俺は一瞬マジかよ!?と思ったけど、この際妹でもしゃーないと思った。むしろ、その方が俺もいい気がした。俺は色ホストやから。
2005-12-15 00:39:00 -
22:
結局その後レイラちゃんの陰謀でカフェパリ2本卸してアキラっちは死亡寸前。裕子はそんなアキラっちに冷しぼとか持って来てて『大丈夫かなぁ?』と心配してた。俺はほんまに裕子は優しくていいこや!と感動した。ラストぐらいまでおって俺は拓哉さんに連れて来てもらってんのに接待もせず、ずっと裕子と話してた。好きな芸能人、(オダギリジョー)趣味、(見掛けによらず絵を描く事)将来の夢、(絵描き)最近気になるニュースとか、そんな事を色々話して時間が来た。俺は『また来るわ!』と言ってエレベーターに乗った。
2005-12-15 00:40:00 -
23:
『拓哉さん、ごちそうさまっす!』『えーよえーよ!かなり気に入ってたんとちゃうかー?また来たい時いつでも連れて来たるからな!よし!もう一軒行くか!』はぁ?もう朝やんけ。小鳥もピヨピヨ鳴き終わりましたよ。と思いながらも付き合いやしもう一軒行った。風俗。俺はパネル見てどれにしようか悩んだけどなぁんとなく『ゆうかちゃん』って子を指名した。けど結局抜かんかった。そんな気分に成れんかった。抜いたフリして時間に出て、拓哉さんと二人で朝飯食って拓哉さん家で寝て、夜仕事に行った。
2005-12-15 00:41:00 -
24:
仕事でキャッチ中、裕子からメールが来た。『ノブ兄元気〜?昨日はありがとう!仕事中かぁ?裕子は今から休憩やからナカヌキヤに行くよん』俺は一人でキャッチ中やったのをいいことにナカヌキヤ付近に急いだ。ほんで裕子に電話して『俺もナカヌキヤの近くおんでー』ってしらこく言って会う事に成った。
『ノブ兄おはよおー』酒の入ってないおっとりな喋り方。俺は99で缶コーヒーを買ったって二人でコーヒー飲んで煙草吸った。『今日はA指名取ってるかぁ?』『まだ一本やねんー!ほんでB指が二本。ダメダメやわ』『また俺がA指したるやん』『ノブ兄にA指もらうとかいらんわぁー』そんな会話をした。でもすぐ裕子の電話が鳴って『お客さん来たから店戻るわ!』そう言って戻って行った。俺も裕子に負けんとがんばらなと思ってキャッチ&客電でとりあえず二組ぐらい呼んで飲みまくって死亡寸前に成った。2005-12-15 00:42:00 -
25:
その日俺は店泊して夕方裕子に電話した『今から暇あったらメシ食いに行かん?』でも裕子は『ごめん!今日同伴やねん。』『そっかぁわかった』決死の覚悟で電話したのに振られてしまった。『でも…でも、明日やったらイケるで!』と言ってくれた。
明日の約束を取りつけた!ので俺も頑張ろうって気になって、りんに電話した。『今から暇やったらメシ行かん?』『暇やしいいよー!同伴?』『どっちでもいいよ。りんがいいんなら同伴しよ。』『今仕事終わったしいいよ、じゃ同伴な。』と、俺も同伴する事に成った。
メシを食いながら俺はりんを見た。確かにりんはかわいい。ヤりたいなぁとも思う。でも何やろ、この違和感は。『暢生、どしたん?何見てるん?』『いや、別にかわいいなと思って。』りんは照れて顔が赤くなった。2005-12-15 00:43:00 -
26:
その日はりんしか客呼べんかった。けど後からりんが枝を二人連れて来てくれたから売り上げはまぁまぁ助かった。りんが帰ってからはヘルプに明け暮れた。拓哉さんの客にヘルプで着いて、その枝のミエちゃんが俺を気に入ってくれてアフター誘われたから行く事になった。行く前に拓哉さんが俺に『ミエちゃんはヤったら来てくれるからヤってこい』と言った。俺はマジかよ!?はぁ?と思いながらアフターに行った。
2005-12-15 00:44:00 -
27:
俺はミエちゃんとヤった。色ホストから枕ホストに成った。枕をしたんは初めてやった。ヤったってゆうよりヤられた感じや。ミエちゃんもりんと同じで風俗嬢やった。お世辞にもかわいいとは言えないけど愛嬌のある顔に、ガタイのいい俺と同じくらいの太さの腕。ミエちゃんはヤり終わって、『給料日まだまだ先やろ?』といって5万俺のズボンのポケットに入れた。俺は初めて体を売ってしまった。
2005-12-15 00:45:00 -
28:
そのまま寝ずに夕方、裕子とメシ食いに行った。あいかわらず裕子はかわいらしい。そんな深い話しをするわけでもなく世間話程度だった。『ノブ兄、何か暗いで?疲れてんの?何かあった?』やっぱり裕子はするどい。一瞬俺は何かを言いかけた。けど『いや、別に何もないよ』と言った。ほんまの事なんか言っても裕子に嫌われるだけや。
2005-12-15 00:46:00 -
29:
それから俺は何回も、ミエちゃんが店に来る度にヤった。完璧に枕ホストに成った。ヤり終わって一人になってから泣いた日もあった。でもヤるしかなかってん、俺はホストやから。
裕子とは二人とも同伴がない日は出勤前に一緒にメシ食いに行ってたし、拓哉さんに連れてってもらって何回か店にも飲みに行ってほんまに仲良くなった。その日も出勤前にメシ食いに行ってて、家族の話に成った。前に裕子は兄弟が下しかおらんって言ってたから下に弟か妹おるん?と普通に聞いただけやった。けど裕子は一瞬黙ってしまった。2005-12-15 00:47:00 -
30:
10秒くらい裕子は黙って、やっと言葉を発した。『妹と、弟がいるねん。弟な、しんくんってゆうねん。まだ小学生でな、めっちゃかわいいねん!妹もかわいいしな!』と兄弟をベタ誉めした。
『でもな、もう大分会ってないねん…』そこから俺は聞いた事無かった裕子の過去の話を聞いた。2005-12-15 00:48:00 -
31:
『お前、そのアザは!?』裕子は明らかに驚いてひきつった顔をした。『あぁ、これはな、あの、こないだな、あれやん、階段で打ってん。』嘘つくんが大分下手や。『嘘つくな!みしてみろや』おれは裕子の左腕を引っ張って、アザを見た…
そこに有ったんはアザだけじゃなかった。手首や腕の内側に大量の切り傷。【リストカット】だ。2005-12-15 00:49:00 -
32:
俺は今まで【リストカット】の存在は知って居たけど、実際に【リストカット】をしてる子を目の前にするのは初めてだ。いや、もしかしたら客の中にもいるのかもしれない、けど俺が気付いてないだけかもしれない。だってこんなに愛しい俺の妹分の裕子の【リストカット】さえ、今まで気付かなかったんだから。
俺は気が動転して何を話していいのかわからなかった。でも俺は【リストカット】なんて裕子にはして欲しく無い、と思った。だから『お前、何なんこれ?何で切ってんねんな!』と怒ってしまった。2005-12-15 00:50:00 -
33:
裕子は何も言わない。『何か言えや!』と俺は言ってしまった。『ノブ兄、こんくらいそんなに気にする事じゃないよ…』『いや、でもこの傷の数は多すぎやで。何でこんなんしてん?』『だってこんくらい、誰でもしてるもん、特に夜の子で寂しい子やったらしてるもん』『裕子は寂しいんか?何で寂しいん?』『…裕子、だって…裕子はな、家族に酷くされたけどやっぱり家族と暮らしたいわぁ。パパもママもマリナもしんくんも会いたいょぉ。家帰ったら一人で、朝起きても一人で、辛い事あっても一人で、淋しくて何で存在してるんかわからへんくなるねん…』
裕子は泣いた。俺はこの子には泣いて欲しくなかった。俺は裕子を抱き締めた。『何でやねん、裕子には俺がおるやんか、どんな時も俺がいてるから、淋しくないんやで』めっちゃ強く抱き締めた。自分が言った心から発したセリフは拓哉さんのキザなセリフに似てた。でも本当に心から思った言葉だ。
2005-12-15 00:51:00 -
34:
裕子は何も言わない。『何か言えや!』と俺は言ってしまった。『ノブ兄、こんくらいそんなに気にする事じゃないよ…』『いや、でもこの傷の数は多すぎやで。何でこんなんしてん?』『だってこんくらい、誰でもしてるもん、特に夜の子で寂しい子やったらしてるもん』『裕子は寂しいんか?何で寂しいん?』『…裕子、だって…裕子はな、家族に酷くされたけどやっぱり家族と暮らしたいわぁ。パパもママもマリナもしんくんも会いたいょぉ。家帰ったら一人で、朝起きても一人で、辛い事あっても一人で、淋しくて何で存在してるんかわからへんくなるねん…』
裕子は泣いた。俺はこの子には泣いて欲しくなかった。
俺は裕子を抱き締めた。『何でやねん、裕子には俺がおるやんか、どんな時も俺がいてるから、淋しくないんやで』めっちゃ強く抱き締めた。自分が言った心から発したセリフは拓哉さんのキザなセリフに似てた。でも本当に心から思った言葉だ。
2005-12-15 00:52:00 -
35:
俺はその言葉を告白のつもりで言った。もうこいつを放っておかれへんと思った。自分の彼女にして守りたいと思った。何でやろ。キャバ嬢や風嬢、いや、女はみんな諭吉にしか見えへん俺やのに。
けども、裕子から帰って来た言葉は『ノブ兄、ありがとう。裕子な、ノブ兄に出会えて良かった。ノブ兄がほんまに心の支えやわ。ほんまのお兄ちゃんみたい。ほんまのお兄ちゃんやったらイィのに…』俺はあの時『妹みたいやな』と言ってしまった自分を怨んだ。2005-12-15 00:56:00 -
36:
俺はそれ以上は何も言えなかった。俺は『ノブ兄』。お兄ちゃんだ。それ以下ではないけどそれ以上ではないんだろうと思った。でも俺がノブ兄で居る事で裕子が少しでも楽に成るのなら俺はノブ兄で居たいと思った。
…今日はミエちゃんが店に来る。2005-12-15 00:57:00 -
37:
その日の二時頃、ミエちゃんが来た。いつもより一層、愛嬌のある顔に見えた。多分クラブのホステスの雪江と被ってたからだと思う。
雪江はめちゃめちゃ美人で俺口座のクセに俺に全くなびかない客だ。髪の毛も綺麗にセットされている。そんな雪江を俺の客と知り、ヤキモチを妬いたのか、不細工なりのプライドなのか、ミエちゃんはカフェパリだがシャンパンを卸した。シャンパンコールだ。『ミエちゃん、ありがと、これからも、暢生を、よろしく、よろしく、よろしく!』2005-12-15 00:58:00 -
38:
雪江は最後のそのフレーズが気に入った気に入ったと言って、『私もするわ』と標準語で言った。雪江の場合はミエちゃんと違って俺の気を引くため何かじゃない。ただ、自分が楽しみたいからだ。
雪江は『自分が飲みたいから』とドンペリを卸した。『雪江ちゃん、ありがと、これからも、暢生を、よろしく、よろしく、よろしく!』雪江は満面の笑み。ミエちゃんはムカついた顔で踊る俺を見てる。2005-12-15 00:59:00 -
39:
その日は店が休みなので、ミエちゃんに買われた体を綺麗に洗い流して俺はりんの家に行こうとしてた。でも無性におかんに会いたくなった。『家に帰ろう』そう思い、俺は地下鉄に乗った。おかんに『次いつ帰るの?』と聞かれて『多分来週!』と答えてからどんくらいたったやろう。数えてみると、ゆうに三ヶ月と少しがたって居た。おかんとはたまに連絡は取るけど会うのは久しぶりだ。
俺は乗り換えて地元の駅に向かった。2005-12-15 01:02:00 -
40:
地元の駅を降りてコンビニに寄った。『児島!』と声をかけられた。中学の時の同級生、美穂だった。『久しぶりやん美穂!元気してた!?最近どうしてんのー!?』『美穂は真面目に学生やで!児島こそ今何してるん!?』『俺、今ホストしてるねん名刺いる?』俺はCLUB○○児島暢生と書いた写真入りの名刺を渡して『これでも今月No.3成れそうやねんぞ』と言った。『へぇ〜本名でやってるんやぁ。ミナミ?真佑と香月もミナミでキャバ嬢やってやるよ☆』『そうなん!じゃあ今度三人でおいでや!初回くらいならおごったるし!』『マジ?ありがとう。でも児島、ちゃんと家帰ったってる?児島ママ大丈夫なん?あの、その、病気の方は…』
俺は一瞬止まった。『…え?……え?病気って?何のこと?』2005-12-15 01:03:00 -
41:
『あんた児島ママの病気の事しらんの!?』美穂の父親は総合病院の医者だ。専門分野は…どこやろう。わからん。
『美穂、え?俺のおかん病気なん?俺、もう三ヶ月ちょい会ってないねん…』俺は声にならんような声で言った。
『美穂もパパに聞いただけやからあんまわからんけど。すぐにでも入院せなあかんみたいやよ。』何を考えていいかわからんかった。『俺、とりあえず家に帰るわ…日曜やしおかんおるやろし。』美穂はその後『大丈夫か?』と言ってた気がしたけど俺にはよくわからんかった。とにかく早くおかんに会わなあかん。それだけが頭の中にあった。俺は家まで走った。
2005-12-15 01:04:00 -
42:
家に帰るとおかんは夕食の支度をしていた。『何や暢生か!びっくりしたぁー!』『おかん…』俺はおかんを凝視した。今は元気そうに振る舞っているけど間違いなく痩せていた。そしてやつれている。『どしたんそんなに見て。もしかして暢生、おかんに惚れたんか?』俺は笑われへんし無視した。『おかん、病気らしいやん。何の病気よ?さっき鈴木美穂に会って聞いてもたんや。長いこと帰って来んでごめん…』
2005-12-15 01:06:00 -
43:
俺とおかんは話し合った。おかんは自分の病気を知らないと言う。医者にはちゃんと検査するために検査入院をしてほしいと言われて『仕事があるから絶対無理!』と言い放ったとの事だ。でも俺は無理矢理入院させる事に決めた。『俺だって今はちゃんと稼ぎあるから、大丈夫や。』『暢生の金なんてアテにしやんわ!貯金がちゃんとあるよ…』とにかく次の日の月曜はおかんに仕事を休ませて一緒に病院に行く事にして、二人で夕食を食べて眠った。
2005-12-15 01:07:00 -
44:
次の日、午前中から病院に行った。美穂の所の病院。病院に行くタクシーの中でおかんは俺に、自分は肺ガンなんじゃないかと思って居ると言った。俺は震えてしまった。
母は、せき、たん、血たん、それに胸部痛、背部痛があったりたまに呼吸困難に陥る事がある、と医者に話した。
診断の為、まず胸部X線撮影や断層写真などが行われた。やはり母はとりあえず検査入院に成った。その日に荷物を取りに帰り、俺の母は入院した。会社は一週間の休みを取った。俺は仕事があったのでひとまずミナミに出なければならなかった。今日は同伴も何もなかった。裕子に会いたい。裕子に電話しようとしたら、ピロリロピッピロリロリロ〜♪知らない番号からの電話だ。『はい?もしもし?』『あっ初めまして!暢生くんですかぁ?』美穂の声だ。『雑誌見て、かっこいいなぁって思って電話したんだけどぉ…』『わかってるよ、美穂やろ。』『あっバレてた?』『おかん入院させたわぁー』『うん。あんた毎日見舞い行けんの?児島家って二人家族やんなぁ?』『うん、仕事あるから毎日は無理やわ…』2005-12-15 01:08:00 -
45:
『あのさぁ、美穂も児島ママには良くしてもらったし行ける時は行くわぁ。』美穂の言葉が凄いありがたかった。電話を切って駅のホームで俺は裕子に電話した。『はい〜もしこ?ノブ兄おはよぉ』『おはよ。今日仕事前ヒマ?』『行けるよ!どこに何時?』『じゃあーゆめ八に5時45分!』『わかったよん♪』
俺は5時40分に着いたけど、裕子は既に来て居た。『おはよぉ〜』オットリ・マッタリだ。癒される。裕子はスケッチブックを取り出してビリっと一枚破いた。『はい。これあげる。ノブ兄やで♪』俺の似顔絵だった。自然に笑ってて幸せそうな俺。いろんな色が折り重なってて凄く綺麗だ。『ありがとう!マジありがとう!』俺は裕子に言って、泣きそうになった。そして、おかんの事を話した。別に裕子に聞いて貰って何を求めるわけでもなかったんやけど、ただ聞いて欲しかったんやと思う。2005-12-15 01:10:00 -
46:
『裕子もお見舞い行ける時、いつでも行くわ。裕子も手伝うし。』そう言ってくれた。けど『いや、俺も帰るし、地元の連れもおかんと仲良いヤツおってくれるし裕子はいいよ』と断った。『じゃあそのかわり』裕子が言った。『そのかわり、手繋ご?』俺の右手に裕子の左手が触れた。そして、そっと包んだ。俺も包み返して、恋人つなぎをした。ゆめ八を出るまでずっとそのままだった。
俺は全神経が右手に集中してるのか、凄くむずがゆかった。中学生の頃に戻ったみたいだった。2005-12-15 01:11:00 -
47:
裕子に会った事で俺は平常心を取り戻す事が出来て、俺はその日の営業をちゃんとこなして次の日ミーティングが終わるや否や地元に飛んで帰った。おかんは今日も検査だそうだ。ファイバースコープによる気管支内視鏡検査―気管支にファイバースコープを挿入して、可視範囲にある癌を直接見て診断することができ、生検(ファイバースコープを通して鉗子を入れ、組織の一部をとって顕微鏡で検査する)もできる。
という検査をした。俺も完璧にはわかっていない部分もあるから言葉が間違っていたりしたらごめんなさい。
そんな検査をしてるおかんを見て俺はまた平常心を失いかかっていた。2005-12-15 01:12:00 -
48:
次の日は美穂に任せて俺は仕事に専念した。でも頭の中から離れない。『おかんが肺ガンだったら…おかんが肺ガンだったら…』
次の日、そんな俺に宣告が下った。2005-12-15 01:14:00 -
49:
肺がん─肺ガンはこの十年間に四倍という、世界一の増加率で増えていて、年間約二万人がそれによって死亡しているらしい。肺ガンは気管支の表面の粘膜から発生するらしい。本屋で立ち読みして読んだ内容だ。裕子と一緒に読んだ。裕子はかわいい。りんもかわいい。ミエちゃんだって、雪江だって、みんな。俺はりんとヤった。ヤってしまってから後悔なんてしなかった。別に買われたわけじゃない。ヤったからもう来なくなるなら来なくなればいい。飽きたなら飽きたでそれでいい。
─『児島さん、お母さんは肺がんです。それも末期の。』─
俺はりんの腕の中で泣いた。2005-12-15 01:15:00 -
50:
肺ガンの治療法には、手術による肺切除療法、放射線療法、化学療法、免疫療法の4つがある。初期なら手術が出来た。でもおかんの癌はかなり進行していて、病巣が胸膜にも及んで居たので化学療法か免疫療法しか行えなかった。手術が出来ればまだ五年の生存は期待できた。でも他の治療法では長期生存はあまり期待できないとの事だ。
─早期に手術が受けられるかどうかが非常に重要だった─
おかんの命はあと三ヶ月〜半年。2005-12-15 01:16:00 -
51:
俺にはおかん以外に家族はいない。おかんは一人っ子でおかんの父親は俺が産まれてすぐ位に、おかんの母親も俺が三歳位の時に他界しているから親戚もいない。誰も頼る人が居なかった。頼れる『大人』が欲しかった。自分はなんて子供なんだろう。
そんな時一人の人間が頭に浮かんだ。おかんの昔の親友─俺が茂子ねぇちゃんと呼んで居た人だ。ねぇちゃんと言っても、もう40代後半のおばちゃんだ。
俺は寝ずにおかんに会いに行き、一旦家に帰っておかんの電話帳をひっくり返した。
あった。沢田茂子066… プルルルル…茂子ねぇちゃんの声がでたので俺は『もしもし、裕奈の息子の暢生ですけど…』と言った。『…ユウナ?ノブキ?えっ!あっ、暢生くん!?えーっ!久しぶり!どうしたの?』俺は茂子ねぇちゃんに全部話した。2005-12-15 01:17:00 -
52:
事情を知った茂子ねぇちゃんはおかんの世話をしによく来てくれたし、俺のわからない事とかを手伝ってくれたりしたし、美穂も色々助けてくれた。
でも俺はまだなお追い詰められていた。精神的にも肉体的にも…仕事にもそれがダイレクトに反映して俺は成れるはずだったNo.3に成れなかった。No.3どころかNo.5だ。
俺はミーティング後にオーナーのヒカルさんと拓哉さんに呼び出されて腹を殴られた。拓哉さんは華奢なのであまり痛くはなかった。身体的には。でも心は思い切り痛がっていた。2005-12-15 01:18:00 -
53:
『お前、最近どうしてん?何かあったんやろ。それを自分一人でしょいこんでるんと違うか?仕事の態度見ててもおかしいで?』『はい、すいません。』俺は謝った。ヒカルさんが口を開いた。『お前な、辛い時は黙ってたらあかん。俺らがおるんちゃうん?俺らただの仕事場の同僚とちゃうんやで。俺らは仲間やねんから』
2005-12-15 01:19:00 -
54:
ちゃんと仕事がんばらな。お客さんに営業電話、営業メール、昼間に遊びに行ったりアフター行ったり徹底してやらなあかん。
俺は自分を悲劇のヒロインと勘違いしてたみたいや。俺ががんばらな誰が頑張るねん。ほんまにここん所の接客とか客に対する態度はおかしかったと思う。その時は『オラ営』と言う言葉を知らなかったけど、俺はオラオラ営業してしまってた。現にクラブのホステスの雪江は切れてしまった。電話で『ええから来いや!売り上げないねんからお前どないかせえや!』とキレて怒鳴ってしまったからだ。オラオラする相手を間違えた…
その電話で雪江にキレられて以来電話してなかったから謝りの電話を入れた。でも『別に許すけど、もう店は行かないからね』惨敗だ。2005-12-15 01:20:00 -
55:
でもその日、雪江は来てくれた。男の人と一緒に。クラブでのお客さんだろう。この男の客、『福田さん』がかなりくせ者で、俺らはかなり飲まされ、酔わされ、踊らされ、吐かされで、りんが来てくれてたのにまともに相手してやれんかった。
りんとは一回ヤったけど、それでも俺から離れて行くことはなかった。寧ろ余計に俺にくっついて来てくれた。りんにはおかんの話はしてなかったけど泣いてる俺を見て何かを察してくれたんやと思う。『来てくれ』って言わんでも3日に2日は来てくれるように成った。今では俺のエースだ。2005-12-15 01:21:00 -
56:
ヤって伸びる女、ヤったら切れる女、ヤらな来ない女、色々居てるけど俺にはまだその見分けがつかなかった。たまたまやけどりんとヤった事がプラスに成って良かった。
…そしてこの日俺に初めて男のお客さんができた。『福田さん』。俺と福田さんは番号を交換した。2005-12-15 01:23:00 -
57:
次の日もその次の日も俺はおかんの病院に行った。おかんは日に日に痩せ細って行く。でも瞳だけは今でもキラキラしていた。おかんは今でも煙草を辞めれずにいた。死が近付くだけなのに。
福田さんが来た次の次の日、俺は福田さんに電話した。ボウズだったから誰かれかまわず電話したのだ。すると福田さんはミナミに居た。また飲んでるんかい!と俺は思った。安キャバで飲んでるからキャバ嬢を連れて、行けたら行く…との事だ。よっしゃぁ!このおっさん絶対来いよー!こっちは売り上げゼロなんじゃ!
『ぃらっしゃいやせぇ〜!』福田さんとキャバ嬢二人が来た。よく見るとレイラちゃんと裕子だった。2005-12-15 01:24:00 -
58:
裕子は俺の方を向いてやたらとニタニタしてる。俺は福田さん御一行をBOXに案内し、裕子の隣を死守した。拓哉さんもレイラちゃんと福田さんの間に入り込んだ。『えっ?裕子、何で?』俺は小さい声で裕子に聞いた。『今は裕子じゃないょ☆桜って呼んでっ☆』『うん、わかった。桜、何で来てるん?』『福田さんがノブ兄の店行くってゆぅから。福田さん、レイラちゃんのお客さんやねん』
レイラちゃんのお客さんかよ!?ミナミの街は狭いなぁと思った。2005-12-15 01:25:00 -
59:
俺は忙しい日々に追われた。毎日毎日の仕事、仕事の後のアフター、眠くてもお客さんとの長電話もしたし、昼間だって営業に出掛けた。病院は、美穂と茂子ねぇちゃんが居てくれたから地元に帰っておかんの顔を見に行くのは2日に一回。おかんは本当に痩せてしまった。昨日見てないだけなのに、一昨日より一回り小さくなり、また一回り小さくなった。既に仕事は辞めていた。会社からの退職金も貰えたので入院費の足しに成った。(入院費用は保険やら何やらでもまかなえた。)バリバリのキャリアウーマンだったおかんの面影はもう、ない。
2005-12-15 01:27:00 -
60:
俺は茂子ねぇちゃんと話をした。茂子ねぇちゃんに本当にありがとうございます、とお礼を言った。茂子ねぇちゃんは当たり前の事を当たり前にしているだけだ、と言ってくれた。そして俺はどうしても聞きたかった事を聞いた。
『茂子ねぇちゃんは俺の父親を知っていますか?』2005-12-15 01:30:00 -
61:
『うん、知ってるよ。凄く良い人だった。暢生くんの目はお父さんの目やで。』『えっ?』『暢生くんは昔から裕奈にうりふたつやったやん?でも目はな、お父さんにそっくりやで』俺は自分の目ん玉を触った。痛かった。──拓哉さんがイイと言ってくれた目。俺をホストの道へと導いた目。
『おかんは、最期に会いたいかな?その…俺の父親に、知らせんでいいんかな?』
茂子ねぇちゃんは静かに言った。『私にはわからへん。裕奈に聞いてみてあげて。』2005-12-15 01:31:00 -
62:
俺はおかんに『俺の父親』の事を切り出すのを躊躇ってた。ほんまに聞いた方がいいのか、きかへん方がいいのか。聞いたらおかんは何て答えるのか。
裕子に相談したら『会いたいって言うかはわからんけど、心の中では少しは会いたいって思ってるハズやで。だってノブ兄のお父さんやで。』と言われた。そして『ノブ兄も会いたいんじゃないの?』そう言ってくれた裕子はなんとなくやつれて見えた。『ただ、最近忙しいから疲れてるだけやで』と言ってたけど、手首を見るとリストカットが増えてた。俺は何か言おうとしたけど、辞めた。そのかわり、裕子の頭を撫でた。
そして俺は決めた。明日おかんに切り出そう。早くしんと時間がなくなってしまう。余命が宣告されてから、もう三ヶ月が経ってた。2005-12-15 01:32:00 -
63:
『おかん…』俺は病院に居た。今日はミーティングは出やんとお母さん所行ったれ、と拓哉さんと代表が言ってくれたから、俺は朝から病院にいる。『ん…?』一時期は抗がん剤でボロボロになっていた母だけど、今は抗がん剤も辞めて穏やかな顔をしている。そんな母を見てたら、ただ死ぬのを待ってるだけ…みたいに見えて涙が溢れそうになった。でもあかん。俺は絶対おかんの前では泣かんって決めてんねん。絶対や。
2005-12-15 01:33:00 -
64:
『あんな、おかん…俺の父親に、会わんでいいんか?』一瞬黙って母は『父親かぁ…』と言った。そして穏やかな痩せこけた顔を俺に向けてしばらく黙った。そして『こんな姿見せられへんやん。』と言った。『でも、暢生にはお父さんの話、全然してないもんなぁ。私一人で十分やと思ってたからなぁ…』『俺はおかん一人でほんまに幸せやし全然十分すぎるくらい十分や!』
しばらく沈黙があっておかんは息をついた。『暢生の「暢」はお父さんから取ってんで。』唐突に言った。『どんな…ヒト?』2005-12-15 01:34:00 -
65:
『暢生、男は泣いたらあかんとは言わん。逆に辛い時は泣かなあかん。でもその涙は一人の女性にしか見せたらあかんよ。』『うん…』『暢生にはそんな女性はおるん?』俺は考えた。おかんの病気が発覚した時、俺はりんの腕の中で泣いた。でもやっぱり頭に浮かぶのは──裕子。
俺は頷いた。『うん、居てるよ。俺の片想いやけどな。』おかんはニコっとして『そっか。』と言った。ほんまに良い人でな、お互いほんまに好き合ったよ。でもな私は一般庶民。お父さんはある財閥の長男。跡取り息子やってん。そんな身分の差とか言ってる様な時代じゃなかったよ。でもな、お父さんは財閥の為に結婚せなあかん女性がおったんよ。仕方ない事やってん。別れて私もいほんまに良い人でな、お互いほんまに好き合ったよ。でもな私は一般庶民。お父さんはある財閥の長男。跡取り息子やってん。そんな身分の差とか言ってる様な時代じゃなかったよ。でもな、お父さんは財閥の為に結婚せなあかん女性がおったんよ。仕方ない事やってん。別れて私もいい男性を探そうって思ってた。でもな、別れてから気付いてん。暢生、あんたが私のお腹の中にいてんで。』2005-12-15 01:36:00 -
66:
削除削除されますた
あぼ~ん -
67:
『私はめっちゃ嬉しかったよ。心の底から喜んだ。茂子や両親は心配しやったけどな。彼と一緒になられへんかった私への神様からの贈り物やと思ってん。』俺は嬉しかった。神様からの贈り物、俺の事をそう言ってくれた。
『でもな、一度は考えたよ。私が産んでもこの子を不幸にするだけちゃうかなって。でもそんな気持ちはすぐに吹っ飛んだよ。私が目一杯愛してあげればいいねんってすぐにわかったから。』
俺はベットに寝てるおかんの手をにぎりしめてた。ほんで知らんうちに泣いてた。息もできひんくらい泣いてた。俺は昔からおかんの事が好きで好きでしゃーないガキやった。おかんの事、尊敬してたし愛してた。
『ぉ゛がん…俺゛を…産んでぐでて…ぁ゛ぢがどぉ゛…』俺は出ない声を無理矢理出して言った。『だから涙は一人の女性にしか見せたらあかんって言ってるやろ…』おかん、めっちゃ愛してる。
2005-12-15 01:37:00 -
68:
俺はおかんにそぉ言われて泣き止まなあかん思って、多分十分くらいかかったけど、しばらくしてどうにか泣き止んだ。ほんで俺は、まだちょっとかすれた泣き声で聞いた。『おとんの名前、なんてゆうん?』
『櫻井暢彦やで。』あまりにも幸せそうに言うので、痩せこけたおかんが少しふっくらした様に見えた。
『櫻井暢彦…』俺は声に出して言った。何でかわからんけど凄い嬉しかった。「暢生」の「暢」は「暢彦」の「暢」。俺の分身がいるみたいだった。「櫻井」という姓。漢字は違うけど裕子と同じ姓という事がめちゃめちゃ嬉しかった。(裕子の姓は「桜井」のはずだ。)
『櫻井暢彦か…』俺はもう一回言った。俺はおかんに、会わせてやりたいと思った。2005-12-15 01:39:00 -
69:
俺はおかんの病室を出て廊下の椅子に座って考えた。「どうやったら見つけられる?」タウンページで「櫻井」って姓の家に片っ端から電話してみるか?
そして俺はその答えに辿り着いた。──福田さんだ。俺はすぐに病院を出て福田さんに電話して事情を話した。『お前の話こんがらがってわかれへん。とりあえず今から会って話そう。うちの事務所に来るんでもいいし、どっかの喫茶店で話すか?』俺らはミナミの青山で話す事になった。2005-12-15 01:40:00 -
70:
俺は一回おかんの病室に戻って、少しおかんと喋ってミナミに向かった。
『暢生、もし私がおらんくなっても暢生は一人じゃないからな。』『俺はおかんを失いたくない。』『暢生がそう思ってくれてる限り、暢生は私を失う事はないよ。』俺は何も言えんかった。
『暢生、気を強くもちなさい。自分に正直に生きなさい。』俺は涙をこらえて『うん』とだけ言った。2005-12-15 01:41:00 -
71:
青山に着くと福田さんと福田さんの会社の探偵らしい人はちょっと待ちくたびれた様に待ってた。
一通り話すと『名前だけやと難しいとこもあるけど、多分すぐ見付かる筈や。絶対見付けたる!』福田さんは言い、『はい、すぐに見付けます』と横の探偵さんが言った。『金はいくらかかっても構わないんで…』構わない事はないけど、俺は今そんなんより早く見付けておかんに会わせてやりたい気持ちがデカかった。『そんなん心配すんな。タダとは言わんが半額ぐらいに安したるわダボ!』俺はほんまいい人に出会った。2005-12-15 01:42:00 -
73:
おかんが亡くなったのは俺の仕事中、真夜中二時頃だった。仕事中の俺の携帯に病院から『危篤だ』と電話がかかってきて、俺はよくわからんかった。拓哉さんに『すぐ母親とこ行ったれ!』と言われてタクシーに押し込まれた。でも、病院に着いた時にはもう、俺のおかんは死んでた。死んでたけど温かかった。寝てるんやろ?って思った。『おかん、おかん』って呼んだ。でもおかんは起きひんくて。おかんは朝は強い人やのに。昔、夜中にトイレ行きたくて起こしたらいつでもすぐに起きてくれたのに。何で起きひんのやろって思っておかんの肩を揺さぶった。細い肩。そしてもっかい言った。『おかん、起きや!…起きてやぁ。。。起きてやぁ…』
俺は言いながら思い出してしまった。おかんは寝てるんじゃない…
茂子ねぇちゃんも居てた。美穂も居てた。美穂が何か言った。何て言ったか、わからへん。俺はおかんの痩せこけた頬に触れた。あったかい。
この日、俺のおかんは死んだ。2005-12-15 01:44:00 -
74:
その日にお通夜するんかなって思ってたけどその日には、しやんかった。そうゆうもんらしい。俺は家に居る。もう冷たく成ったおかんは布団で寝てる。寝息はない。さっきまで茂子ねぇちゃんと美穂が居てくれた。でも今は二人っきり…いや、一人っきりなんかな。
『おかん…』話しかけても返事は返って来やんけど、俺らは二人やと思った。2005-12-15 01:45:00 -
75:
ピロリロリ〜携帯が鳴った。『もしこ、ノブ兄、今どこ?家?』『家やで…』誰ともまともに話せる気がせんかったのに裕子とは普通に話せた。『拓哉くんに聞いて…その、ノブ兄のお母さんの事。それで今病院まで来ちゃって…』『裕子、ありがとう。タクシー乗って。ほんで乗ったら運ちゃんに代わって。』
──15分位して裕子が来た。そんなに久しぶりでも無いのに凄い久しぶりな気がした。俺はタク代を運ちゃんに渡して道端で裕子に抱きついた。まだ夕方やった。俺はスーツのまんま。しわしわ。髪の毛のセットもどうなってたかわからんけど多分ボサボサ。でもそんなん関係なかった。
裕子は俺を抱き締めてくれた。俺は泣いてた。2005-12-15 01:46:00 -
76:
裕子は泣いてる俺の頭を撫でてくれた。そして一緒に泣いてくれた。同情の涙じゃなかったと思う。心からの涙 に俺は見えた。今思うと『死』というモノを目の前にして、どうにも成らん感情が涙で出て来たんかなとも思う。
俺は泣いてる裕子にキスをした。裕子も応じてくれた。俺は産まれて初めて本当のキスをした気がした事を覚えてる。
2005-12-15 01:47:00 -
77:
気付いたら俺は、もう冷たく固まってしまったおかんの横で寝てた。精神的にも肉体的にもいっぱい×2がんじがらめやった俺の体は裕子に会った事でほどかれたらしい。
俺は夢を見た。裕子が肺ガンになって死ぬ夢だった。裕子は肺ガンになったからもうノブ兄とは会えないと言って走って逃げて行く。俺は追い掛けたけど、追いかけても追いかけても追いつけない。ようやく追いついた時、裕子はグッタリして死んでた。肺ガンの裕子を追いかけまわしたせいだ。
俺のせいで裕子が死んだ。りんが後ろで嬉しそうに笑ってた。2005-12-15 01:49:00 -
78:
俺は朝方に起きた。現実の世界の裕子が『おはよぉ』と言った。あ、裕子が生きてる。夢やったんや。あ、そうか。肺ガンで死んだのは俺のおかんやん。
『裕子、ごめん、仕事は?』『無欠したょ。』『えっ?…ほんまごめん。無欠さしてもて。』『いいねん。もうアノ店辞めるし…』『そうなん?』『うん。』
俺は『なんで?』と聞かんかった。俺やったら聞かれるよりも自分の言いたい時に打ち明けると思ったから。
俺は寝惚け眼で裕子にもう一回軽くキスした。おかんの横で。おかんの言葉を思い出した。『裕子、俺は裕子が好きや。俺の彼女に成って欲しい。』2005-12-15 01:50:00 -
79:
裕子は一瞬困った様な表情をした。
『俺はやっぱりお兄でしかないん?彼氏には成られへんの?』『そんなんじゃない。でもいきなりやし…』『いきなりじゃないねん、俺は、ずっと、裕子を愛してた。』今の俺はキザな言葉も普通に言えた。本当に思ってるからだ。
『ほんまに、大切にするから。』しばらく黙った後、裕子は『うん。』と言ってくれた。
俺と裕子は兄妹から恋人同士になった。俺の愛する母が少し笑ってくれた気がした。2005-12-15 01:51:00 -
80:
その日の夜に通夜が、次の日に葬式が行われた。俺は何もわからんかったから茂子ねぇちゃんが段取りしてくれた。来てくれたのはおかんの元同僚の人達と少しの知り合いぐらいで血の繋がってる人間は俺だけだった。茂子ねぇちゃんが残された俺の事を考えてくれて、葬式は質素なものに成った。100万ぐらいかかるものかと思ってたのに30万で済んだ。おかんの貯金で全然まかなえた。更に保険金も入って来ると言う。
おかんが俺の為に入っていてくれた。
金か…金なんかいらん。必要ない。俺にはおかんが必要やったのに。2005-12-15 01:52:00 -
81:
おかんは骨に成った。白くて綺麗やった。けど、どう見てもおかんには見えへんかった。
焼く前の、『カタチアルオカン』とのお別れの時、俺はおかんの痩せこけた頬にキスをした。おかんの頬は少し赤みかかってた。昔から人前に出る時はきっちり化粧をしないと気が済まないおかんに、茂子ねぇちゃんが『最期の顔も綺麗にしないと』と言って化粧をしてくれたからだ。
骨に成ったおかん。俺には凄い小さく見えた。この小さいおかんの中から俺は産まれて来たんかなぁ。
凄い不思議やった。おかんの小さな骨を俺は拾って、おかんはおじいちゃん、おばあちゃんの元に還った。2005-12-15 01:53:00 -
82:
その日から俺は仕事に戻った。俺が休んで店にも迷惑かけてたから、葬式やったから今日まで休むとはとても言えなかった。仕事前に冷静になって携帯を見ると、不在着信30件が見事に埋まってた。
不在着信りん17:34
不在着信りん17:33
不在着信りん17:33
不在着信りん17:32
2005-12-15 01:54:00 -
87:
30件の内、見事に29件がりん。1件がミエちゃん。
メール受信54件。りんから48件。内容は『なにしてるん?』からはじまり、『何で電話でやんの?』『りんの事何やと思ってるん』『やっぱり、りんは色カノなん?』『今から自殺するから』『絶対殺してやる』『さっきのメール嘘やから電話出て?』『何でもいいから話したい、お願い』
俺は吐きそうになった。色カノも何も付き合うなんて言ってない。でもエースやってくれてるし、切る事も出来ない。2005-12-15 02:00:00 -
88:
あとの6件は、拓哉さんから2件。『大丈夫か?』と『葬式時、お前泣かんかったな。惚れたわ』という内容だった。俺は通夜でも葬式でも泣かんかった。おかんと約束したから。
そして店の後輩ダイちゃんから1件。『オーナーから聞きました、暢生さん大変でしたね、俺、何て言ったらいいかわからんけど…』という長文メール。ダイちゃんと俺はそこまで仲良かったわけじゃないけど、何かダイちゃんのアツさにジーンと来た。2005-12-15 02:01:00 -
89:
そしてミエちゃん、蘭ちゃん、樹里ちゃんの俺がいっつもメール送ってる客三人から『今日はメールしてきてくれへんなぁ』みたいなメールが来てた。
拓哉さん、ダイちゃんに迷惑かけてごめんなさい系のメールを送り、りん以外の客には、ちゃんとリピートで来た事もない客も含めて全員にメールを送って、仕事が始まるまでメールラリーを頑張った。途中、美穂に電話して『ほんまにありがとう』とお礼を言った。美穂は葬式の時、俺より泣いてた。涙を拭きに行った裕子までもらい泣きしてたぐらいだった。メールラリーをしながら家で髪の毛をセットした。おかんのヘアスプレー、ムース。カーラー、歯ブラシ。
捨ててしまいたくはなかった。俺はおかんのカーラーで髪を巻いたけど、きもく成ったからまた1からやり直した。2005-12-15 02:02:00 -
90:
りんには後で電話しようと思ってた。そん時は何て話したらいいかわからんかったから。
でも俺はそのまま忘れて仕事に行った。仕事前に裕子に電話したら裕子は寝てた。疲れてたんやろう。『うん、ノブ兄仕事頑張ってなぁー』俺の呼び名はノブ兄のまんま。裕子は今日も無欠するという。『大丈夫なんか?アキラっち怒らんの?』『うん…大丈夫。でも風邪ひいたみたいで体調悪くって。』『じゃあ薬飲んで寝ときや』と言って電話を切った。
そして俺は店に向かった。ちょっと久しぶりの店。久々に出勤しといて客呼びもなかった俺はヘルプをしてた。SMAPの話をしてて、うちの店やったらキムタクは拓哉さんやな、とか言ってた時、
『暢生出しぃやぁ〜』という半狂乱な声と『ちょっと、ほんま落ち着いて!』というなだめる声が聞こえた。2005-12-15 02:03:00 -
91:
店に流れる音楽と音楽の切れ目やったからその言葉だけは聞こえたけど、また音楽が流れ出したから聞こえやんくなった。『店の外かな?』代表が言った。そして拓哉さんが『暢生って言ってなかった?』と俺に言った。『あ、ちょっと見てきます。ちょい失礼しまぁーす』と席を立って入り口に向かった。
2005-12-15 02:04:00 -
92:
俺がドアに着く前にドアが開いた。
金髪の女の子が入って来た。金髪の女の子が走って来る。金髪の女の子はりんやった。
あ、りんやん。と思った瞬間、俺は顔を殴られてた。続いてチ○コを蹴られて俺はうずくまった。マジ痛い。
2005-12-15 02:05:00 -
93:
うずくまってる俺にりんはもう一発蹴りを喰らわせて、後から追い掛けて来たダイちゃんにおさえられた。
あぁ〜さっきの声ダイちゃんとりんやったんかぁ〜と思いながらうずくまってた。りんは泣いてた。ダイちゃんがまたなだめてくれてた。
俺はアソコがめちゃめちゃ痛かった。2005-12-15 02:06:00 -
94:
他にもお客さんが居たのにりんは泣き喚いてて、他のお客さんは唖然としてた。俺はアソコが痛いながらも『りん、ちょっと落ち着こ。な、泣きやんで。ほらソファー座って』と優しくした。店の中やし、他のお客さんの目もあるからキレたりしたら終わりだと思ったから。
もしこれが店じゃなくて、りんの家とかで一対一やったとしたらりんを殴るか蹴るかしてたかもしらん。アソコの一番痛い所を素晴らしいくらいピンポイントで思いっ切り蹴られた痛さは言い表す事もできないくらい、尋常じゃない。
りんはまだ泣いてたけど、とりあえずソファーに座ってくれた。俺を睨みながら。2005-12-15 02:07:00 -
95:
とにかく俺はりんの横に座って『どうしたんや!?』って聞いた。さっきまでの出来事が意味わからんかった。
『どうしたんって何なん?りんをナメてるん?電話も出やんと何してたんさ!!』俺は何も言えんかった。とゆうか電話に出ないだけでこんなに怒るりんを見て、どうかしてると思った。
『何も言えんねやったらもういい!どっか行って!』と俺の顔を手の甲でバシン…と払い除けた。俺は『わかった』とだけ言って席を立って、さっきまで居たヘルプの席に戻った。2005-12-15 02:08:00 -
96:
『なになにっ?アレ暢生の本カノ!?』
『いやぁーあの暴れ様は色カノじゃないの〜?前来た時もあの子居てたし!』とか色々言われた。
『違うよ、俺のエースの子やねん。ちょっと精神不安定みたいやわ。』と、とりあえず言った。りんはヘルプのダイちゃんと啓介になだめられてる。2005-12-15 02:09:00 -
97:
そのままりんを放置して30分ぐらいたった頃、ダイちゃんが俺の席に来て耳打ちした。『りんちゃんがごめんって言ってるんスよ…一応、俺と啓介で事情とか話してりんちゃんには解ってもらいました。暢生さんとお母さんの事話しちゃったんスけど…ごめんなさい。りんちゃんトコ戻って貰えませんか?』
俺はおかんの話をりんにするつもりはなかったけど、ダイちゃん成りにりんと俺が仲直りするように頑張ってくれたんやなって伝わって来たから『ありがとう』と言って、りんの席に行った。2005-12-15 02:10:00 -
98:
りんの席に戻ってしばらくはお互い無言だった。
『暢生、ごめんな。』『ん?うん。』『痛かったやろ?ほんまごめん…』りんは少し泣きそうに成ってた。
『ほんまになぁ!めっちゃ痛かったわぁ!俺、死ぬんちゃうかなって思ったしなぁ!意識が薄れたしなぁ!ほんまもぉりんなんか嫌いやっ!』俺は気を遣って冗談っぽく言った。けど本心やった。エースじゃないなら、りんが細客なら出禁にしたい位やった。
でもりんは俺が冗談でテンション上げる為に言ったと認識してくれて、『ほんまごめんってぇ〜』と言って笑顔に成った。2005-12-15 02:11:00 -
99:
『暢生ぃ、お詫びにシャンパン卸すわぁ。』おしきたぁ!シャンパン!久々の出勤日やから売り上げが欲しい所だった。でも俺は『え?でも大丈夫なん、金。飲みに来るつもりで来たんじゃないやろ?』と優しさをみせた。
『うん、今は持ち合わせないからカフェパリでいい?』…カフェパリかよ。うん、でも全然オッケー。卸してくれるだけ嬉しいよ。心の中で思いつつ『ありがとう』と言った。
マイクパフォーマンスは拓哉さん。男の俺からしてもドキドキする様な甘い声で『一番テーブル、カフェドパリいただきました〜』……
2005-12-15 02:12:00 -
100:
『飲〜んで飲〜んでチビッコ!飲んで飲んでチビッコ!』背の小さいダイちゃんが飲んでる。九州産まれのダイちゃんは酒が強い。半分以上減ったところでりんに渡した。
『飲〜んで飲〜んでベッピン!飲んで飲んでベッピン!飲〜んで飲〜んで痛い子!飲んで飲んで痛い子!』りんは痛い子と言われて嫌がるどころか喜んで飲んでいた。2005-12-15 02:14:00 -
101:
『はぁい♪痛い子っ』シャンパンコールが終わって俺はりんの席に戻って言った。
『もぉーそんなん言わんといてよー』りんは苦笑いした。そして『ほんまごめんな、りん、何も知らんかって勝手にキレて…前に暢生が泣いてた意味も解ってなかった。ホストの仕事がしんどいからかなって思ってた。そんな辛い事あったのに、何で言わんかったん?りんには言って?勝手に不安になって勝手に暴れて、こんなんなりたくないからなんでも言ってな…』2005-12-15 02:15:00 -
102:
俺は泣きそうになった。嬉しかった。でも嬉しい反面むかつきもした。
何で俺の事何も知らんお前にそんなん言われなアカンねん。何でそんな事言えるねん。
店での営業で喋ってる俺しか知らんのに…2005-12-15 02:17:00 -
103:
そんな中、裕子から電話があった。席を抜けてかけなおした。『どうしたん?』『今起きたぁ。』『気分大丈夫?』『うん、大分マシやで。』
そんな会話を2、3分てたらいきなり電話口から、バンバンバン!と何かを叩く音と誰かの叫び声が聞こえた気がした。裕子は『ごめん、またかけなおす』と言って電話を切った。
俺は何事!?と思って電話をもう一回かけたけど、裕子は出なかった。
りんをあまり待たせてまた爆発されたらマズイと思ったから俺はりんの所に戻った。2005-12-15 02:18:00 -
104:
裕子の事が気になりながらも、りんと笑顔で話した。泣いた後だったのでマスカラが取れて目の下が少し黒くなって居て、これが不細工な子なら汚く見えるんだろうけど、元の顔が綺麗なりんは、それが色っぽかった。
『暢生、りんは色カノじゃないやんなぁ?』
会話と会話の切れ目にりんは聞いて来た。俺はその話が出なかったから安心してたから、いきなり聞かれて頭の中がパニックになった。こうゆう時ってどう対処したらいいんやろ!?頭の中で革命が起こった。そして俺の口から出た答えは『違うよ』の一言だった。2005-12-15 02:25:00 -
105:
『色カノなん?』『違うよ』
俺は正直に、色カノじゃない、色を使うつもりはない、客とホストだ、と言ったつもりだった。また泣かれる?…そんな覚悟もあった。でもりんは『よかったぁ』と笑顔。
『ほんまはりんの事好きじゃないとか、色やったとか言われたらどぉしようかと思っててんー』
頭の中、真っ白とはこの事だな。俺はほんまに頭の中真っ白に成った。2005-12-15 02:27:00 -
106:
『色カノ。』
色カノを作ったのは初めてだった。ちょっと色を入れるぐらいの事はするけど彼女にする事はなかった。後々面倒だからだ。
りんは俺の横で眠ってる。俺は先に起きていそいそと用意してる。りんはラストまで居て、俺は家に行く事になっていた。ミーティングが終わって、りんを外で待たせている間に裕子に電話した。2005-12-15 02:28:00 -
107:
『もしこ、さっきごめんなぁ』『心配してんぞ?何があったん!?』『別に何もないでー』
何も無いことは無いやろう、今から行くから!と言いたい所やったけど、りんの家に行かなあかんから言えなかった。自分で最低な男やと思った。
変わりに『とりあえず今日、出勤前に会おう。メシでも食べよ?…な?』と言った。『うん、わかったょ』そして電話を切って、俺はりんとタクに乗り込み、りんの家に帰ってりんとSEXした。求められたから…
こんな事があった今日やし、するしかなかった。2005-12-15 02:29:00 -
108:
スーツを着て、髪の毛も整った。りんに置き手紙をして家を出た。昼ごろに裕子から3件の不在着信があったから、りんの家を出てからかけなおした。
『かけて来てたやろ?ごめんな、寝てたわ。どしたん?』『んーあんなぁ…やっぱ今日、無理…』『なんでなん?』『裕子な、階段から落ちて顔打って、顔やばいねん…外でられへん。』俺は裕子の家に行く事にした。タクに乗って住所を告げた。2005-12-15 02:30:00 -
109:
裕子の顔を見て俺は泣きそうになった。顔の左上を強く打ったらしく、お岩さんみたいに腫れあがっていて、少し青くなっていた。
『ほんま、あんま見んとって…中入る?』裕子は言った。あまり左目が開いて無い。痛々しかった。
裕子の家に来たのは初めてだった。キャバの寮の、狭いワンルーム。物も少なくて小綺麗にしていた。でも灰皿が引っくり返って居たし、雑誌がぐちゃぐちゃに投げられた跡みたいなん、ペットボトルのミネラルウォーターが倒れてこぼれて居た。何かおかしい。2005-12-15 02:31:00 -
110:
『ノブ兄、ごめん、片付けるわなぁ』と言って裕子は片付け始めた。俺も手伝った。吸い殻がいっぱい入った灰皿がひっくり返ってたから俺は吸い殻を拾った。裕子の【KOOL】。その中に何本か、【CAMEL】の吸い殻があった。
何気なく『このCAMEL誰のん?』と俺は聞いた。すると裕子は『え?あ、あぁ、あの…』と言葉を濁した。
『え?誰のんなん?』今度は目を見て言った。裕子は目をそらしながら『アキラっちのやと思うよぉ』と言った。『ふーん、アキラっち家来るんやー』俺はちょっとやきもちを妬いたから言ってみた。『まぁお店の寮やしね。裕子最近無欠しまくりやから…』
そう言ってるのを聞いて俺は安心した。2005-12-15 02:32:00 -
111:
片付けが終わって二人でコーヒーを飲んだ。『裕子?』『ん?』『また切ったん?』裕子の腕には真新しいリストカットの傷痕があった。
『ほんまは何があってん?顔、階段とか嘘やろ?誰かが来て、暴れたかなんかか?』裕子は質問に答えずに黙って居た。『誰かに殴られたんか?』裕子が泣きそうな顔をするから、俺は裕子を抱き締めた。裕子は俺の腕の中で黙って泣いていた。
『裕子、俺はな、職業もホストやしな、女を金としか見てへんしな、ほんま最低な男なんやん。どんなに仲良い客でも所詮客は客としか見れへんと思ってるしな。でもな俺、裕子の事はホンマに大事にしたいねん。初めて会った時からと思う。ずっとほんまに愛しててん。俺が守るからな。』2005-12-15 02:33:00 -
112:
『裕子。』『ん?』『店辞めるんか?』『うん。』『じゃあ寮でなあかんやん』『うん。』
『家どうすんねん?』『決めてない。』『…でももぅ、お店は辞めるねん』
『…俺がマンション借りたるわ。』俺は裕子を愛してたし、彼氏やったらそれくらいしたいと思ってたから、そう言おうと決めて居た。裕子は何も言わなかったけど俺をじっと見てた。半分腫れた顔で。この色の白い、小さな女の子は、何を思ってるんやろう?2005-12-15 02:40:00 -
113:
裕子とあまり話す暇もなく俺は出勤した。仕事中、地元の鈴木美穂から電話がかかって来た。『今な、真佑と香月と三人でミナミ居るねんけど、児島の店行っていぃ!?』
いきなりやから面喰らった。三人が来ると言うので分かり易い、ひっかけまで迎えに行く事に成った。案の定ホストに次々キャッチされて居たので暫く見て居ると、うちの店のダイちゃんが美穂をキャッチしだしたから思わず笑った。
『おいおいダイちゃん潰しはやめてやぁー』と、俺は割って入って『真佑っち、香月っち久しぶり!』と挨拶した。2005-12-15 02:41:00 -
114:
『児島、大丈夫なん?』美穂が言った。ダイちゃん口座のお客さんが来たのでダイちゃんが席を離れた。やっと美穂と二人で話せる機会が来た。
俺はとにかく全部話した。おかんとの事、裕子との事、りんとの事。美穂はりんに激怒したし、りんとSEXをした俺にも激怒した。
裕子の怪我について無関心過ぎる、とも言われた。無関心なわけじゃない。ただ、聞けないだけ…
『とにかく、今の児島は美穂の知ってる児島暢生じゃないわ。』
美穂にそう言われて俺は言葉が出なかった。何て言ったらいいかわからんかったし、本当の意味で理解出来なかった。何でこの時俺は美穂の言葉をちゃんと聞いておかなかったんやろう、ちゃんと理解して、元の『俺』に成ろうとしなかったんやろう…今に成って後悔する…2005-12-15 02:43:00 -
115:
その日の営業中に、福田さんから電話があった。
『もう遅いかもしれんけどや、暢生、お前の父ちゃん見付かったわ。』
営業が終わったら福田さんと会う事に成ったことを美穂、真佑、香月に言った。三人共小学校の時から知ってるから親身に成ってくれた。
『見付かったんなら見付かっただけで終らんと、ちゃんと会いに行かなあかんよ。』真佑が言ってくれた。2005-12-15 02:44:00 -
116:
『見付かったなら、ちゃんと会いに行かなあかんよ。』美穂、真佑、香月の三人はその言葉を残して帰った。初回料金やったから俺がおごった。金なんて、何て事なかった。
三人が帰った後、りんが来たから俺は『りんに恋愛感情はない』と言おうと思った。でもその言葉を発する事はできなかった。
このエースの『りん』を繋いでおけば、NO.1の拓哉さんには届かなくても、確実にNO.2には成れる。
彼女である裕子の事、俺の彼女だと騙されてるりんの事よりも、俺はホストである俺の事が一番大事だった。NO.2に成る事が、大事だと思った。2005-12-15 02:45:00 -
117:
『ラストまで居るから、暢生、りんの家来てよ〜』言うと思ってたよ。言うと思ってたからちゃんとセリフ考えてたよ。でもこのセリフは嘘じゃないで。本当の事やで。
そう思いながら言った。『俺のな、おかん死んだんダイちゃんと啓介に聞いたやろ?んでな、俺ん家母子家庭で、親父の顔なんか見たこと無かったんやん。おかんが死ぬ前に会わしてやりたい思ってな、探偵に依頼したんや。そんでもおかんは死んでもうたけど、親父が見付かったらしいから、営業終わったら探偵の人に会いに行かなあかんねんや…』
決めてたセリフやった。決めてたセリフやったけど、涙が出そうになった。
【親父に会えるかもしれへん…】2005-12-15 02:46:00 -
118:
でもおかんの言葉を思い出した。
『涙は誰にでも見せたらあかん』
結局りんはラストまで居て帰った。泣きそうに成ってた俺を気にしてくれたんやろう。
ミーティングが終わった。福田さんに会いに、青山に行かな。2005-12-15 02:48:00 -
120:
名無しさん
懐かしい☆続き読みたいけど作者はどうしてるんやろ
2005-12-15 11:27:00 -
121:
名無しさん
めっちゃいいとこで切れたんですね?残念です。
2005-12-17 07:47:00 -
122:
名無しさん
?
2005-12-17 22:14:00 -
123:
名無しさん
あげ
2005-12-21 10:59:00 -
124:
名無しさん
うわっ!気になる?
2005-12-22 19:22:00 -
125:
名無しさん
あげ
2005-12-22 19:44:00 -
127:
名無しさん
あげ
2006-12-11 01:42:00