-
夜遊び夜遊び
-
お水お水
-
ホストホスト
-
風俗風俗
-
ビューティビューティ
-
ファッションファッション
-
悩み相談悩み相談
-
モデルモデル
-
芸能芸能
-
雑談雑談
-
食べ物・グルメグルメ
-
生活生活
-
恋恋
-
インターネット・ゲームネット・ゲーム
-
ギャンブルギャンブル
-
過去ログ倉庫過去ログ倉庫
-
運営運営
お兄ちゃんが好き。 part ?
-
1:
お兄ちゃんが好き。part ?
http://bbs.yoasobiweb.com//test/read.cgi/yomimono/1117473268/1-52005-06-13 03:45:00 -
2:
名無しさん
ほう
2005-06-13 03:46:00 -
3:
理加子は私服だった。あたしの顔を見ず、無言で病室の入口に立っている。
『……典子に謝りたいから会わせてくれって』
ママは、不機嫌そうにあたしに言った。
『典子……あたし……』
理加子の小さな声が、部屋に響いた。
あたしは、兄貴に目をやった。兄貴は、何も言わない。けど……
《忘れないんじゃないか?ちゃんと今、解決しないと―――》
さっきの兄貴の言葉が、あたしの頭の中に響いた。
『……ママ。理加子と二人きりにして』
あたしの言葉に、ママの顔色が曇った。2005-06-13 03:49:00 -
4:
『…え…だけど…大丈夫なの?』
『大丈夫だよ。お願い。』
それでもママは心配なんだろう。…また二人きりになって、何か起こらないか……。中々、外に出ようとしない。―――その時、兄貴がママの背中を押した。
『母さん。典子が大丈夫って言ってるんだから、俺らは外に出よう』
…そう言って、ママを説得してくれた。
『典子。何かあったら呼べよ。前のソファーに座ってるから。』
そう言って、兄貴はママを連れ、部屋を出た。
パタン…
『……………………。』2005-06-13 03:50:00 -
6:
名無しさん
今日はたくさんありがとう?
2005-06-13 03:53:00 -
8:
名無しさん
前スレ1000のめめとかいう奴ここで感想書けば良かったんじゃないの。スレが1000いったらスレ消えるんじゃ?もし消えたらめめのせいだな
2005-06-13 05:18:00 -
9:
8番さん、コピペして下さっている方、著者様、皆様、知らなかったもので。。。すみません。感想は話の途中でなるべく書かないでおこうと思い、きりよくパート1の最後に書き込ませていただいたのですが。。。すみませんでした。迷惑になるといけないので、もう書き込みません。失礼しました。
2005-06-13 16:10:00 -
10:
名無しさん
主さん今度はいつカキコミしますか?
2005-06-13 16:18:00 -
13:
名無しさん
あげ☆
2005-06-13 23:24:00 -
15:
兄貴とママがいなくなって、あたしと理加子はお互いしばらく何も言わず、沈黙していた。
理加子は、さっき、あたしに暴力を奮った時とは別人のように、大人しい。
…いや。理加子は二重人格だ。いつキレるかわからない。
兄貴の言葉がなかったら……兄貴が近くにいてくれてなかったら、顔を合わせて話すのも恐い。
『……何?』
あたしは冷たく理加子に言い捨てた。
……今更……謝られても……てゆーか、また何か企んでるんじゃ……?
あたしの胸に不安がよぎる。
2005-06-14 02:59:00 -
16:
『…今さら』
理加子が口を開いた。
『今さら…謝ったところで…信じて貰えないと思うけど………』
理加子の声は酷く弱々しい。
『ごめん…』
……騙されない。あんたは一体何回あたしに謝って、裏切った?
『……でも、もう、終わりだから…』
………?どーゆー意味?2005-06-14 03:00:00 -
17:
『あたし、学校辞めるから…』
『…………え?』
……辞める?
『退学に、なったの?』
あたしの問いに、理加子は首を横に振った。
『…あたしの処分は…まだ決まってない。あたしから、辞めるの』
理加子は、ゆっくりと、あたしに近づき、
『本当に…ごめんなさい……ッ』
―――あたしに頭を下げた。2005-06-14 03:01:00 -
18:
……なに……あたしは、目の前のコイツの何を信じたらいいわけ…?
『……やめてよ。あんたが学校辞めようがあたしに謝ろうが、どーでもいーの。とにかく、もうあんたの顔なんて見たくない。あたしが言いたいのはそれだけだよ。さよなら』
あたしは、それだけ言い放つと、理加子に背を向け、ベッドに寝そべった。
『………………。』
……理加子は何も、言い返してこない。けど、去っていく気配もない。2005-06-14 03:03:00 -
19:
『………典子。あたしね。レイプされてからずっと…精神病院通ってたの』
理加子は、限りなくか細い声で言った。
『……安定剤飲まないと…自分の感情、自制きかなくて……前の学校でね、典子と同じように、暴力奮ってしまった子がいて…。その子、あたしの彼女だったんだ。別れたいってゆーから、ボコボコにした』
2005-06-14 03:05:00 -
20:
『やっぱり男がいいって言われたの。…それで腹立って……腹立って……』
あたしは、ゆっくりと理加子の方を向いた。理加子はきつく歯を食いしばっている。
『あたしね、典子。精神科医の先生に言われたんだ。…同性を好きなのは、レイプされたショックからだって』
理加子の目から、涙が零れた。
『…あたしは、そうじゃないって思ってる。
あたしは……。
本当に典子が好きだった―――』
2005-06-14 03:07:00 -
21:
『……理加子……』
『でも、典子のゆーとーり。あたしは男のクズ以下だった。自分ばっかりが被害者ぶってた。ごめんね典子……。ごめん…』
……………………………理加子は。
どうしようもなく弱い子なんだ。
それがレイプされたショックかどうかは知らない。けど、さっき夢で見た何十人にもまわされる夢。
あたしの中にも、理加子が住んでたのかもしれない。
そう思うと、理加子が可愛そうに思えて仕方なかった。2005-06-14 03:09:00 -
22:
『さっきの、お兄さんだよね…?』
『え…』
『かっこいいじゃん。頑張ってね!』
…そう言って、理加子は扉の方へ歩いた。
『理加子!』
なぜだろう。あたしは、理加子を呼び止めた。理加子は、振り返らずに、足を止めた。
『………頑張るよ、あたし。血がつながってても、好きだから』
あたしの言葉に、理加子はニッコリ微笑んで、そのまま病室を出ていった―――。2005-06-14 03:11:00 -
23:
………………フゥ…………
理加子が去った後、あたしは言いようもなく、力が抜けた。
………解決…したのかな……。……兄貴のゆーとーり、理加子と話して良かった……。
そう思うと、涙がとめどなく流れた。
『う……ッ―――』
自分がレイプされた事。理加子がレイプされた事を考えて、あたしは泣いた。
…もう……好きじゃない男と寝るのは、二度と嫌だ……。
あたしはそう心に刻んだ。2005-06-14 03:12:00 -
24:
ヒヤッ
『―――?きゃっ!』
あたしの頬に、冷たい物体が当たった。
『喉渇いただろ』
いつの間に入ってきたのか、兄貴が冷たいコーヒーを持ってあたしの横にいた。
『…ありがとう…』
『母さんは、先に帰ってメシの用意してるってさ。帰るか』
兄貴は、あたしの頭を撫でながら言った。
『……その前に……タバコ吸いたい』2005-06-14 03:14:00 -
25:
あたしは、兄貴の服の裾を引っ張った。
『だから未成年だろ、お前……』
………これからは………女として、兄貴の側にいれるんだよね……?
あたしは、嬉しくて、嬉しくて、仕方なかった。
……そんな、人生は甘くないって、わかってたのに。
2005-06-14 03:16:00 -
27:
『ただいまぁ』
――我が家に到着。
家に入った瞬間、シチューの香りがした。
ドカドカドカ
2階から慌ただしく恭平が下りてきた。
『ねーちゃんリンチされたんだって?!…うわっ!マジ、包帯だらけじゃん!』
恭平はマジマジとあたしの全身を見た。
『…大したことないって』
あたしは、ハハッと苦笑いだけしておいた。
『典子。圭吾。2階で着替えてきなさい。ご飯の支度できたから!』2005-06-14 03:19:00 -
28:
『はーい。ママ』
あたしと兄貴は、恭平の質問攻めから逃れ、2階へ上がった。
『……………。』
部屋の前で、ふとあたしは緊張に襲われた。
……家族は、皆、あたしと兄貴が…、こんなことになったなんて、知らないもんなぁ…。
兄貴とあたしだけの………秘密なんだよね。
『あ……兄貴……』
『ん?』
あたしは部屋に入ろうとする兄貴を呼び止めた。2005-06-14 03:20:00 -
29:
『…あ…あたし…やっぱ、まだ信じられないよ…。…兄貴と…両想いだったなんて……』
『もっかいキスでもすりゃ信じるか?』
…………カァッ―――兄貴の言葉にあたしの顔が熱くなった。
『……俺は、今までだいぶ自分の気持ちを押さえてきた。けど、今日弱ってるお前を見て、俺は男としてお前を守りたいと思った。だから、自分の気持ちを告げたんだ』
………兄貴の言葉があたしの心に響く。
また泣きそうになる。
『……うん』
あたしは、満面の笑みで頷いた。2005-06-14 03:22:00 -
30:
『……あたし、兄貴の事が、好き。めちゃくちゃ好きだよ』
あたしの言葉に、兄貴も微笑んだ。
『あ…明後日、兄貴の学祭行くから!』
そう言って、あたしは自分の部屋へ戻った。
今日もまた、寝れそうにない……。
2005-06-14 03:24:00 -
31:
『典子先輩おはようございまっす!』
午前11:00。
あたしの目の前に秋吉携碁が現れた。
『……あんた……私服ハデすぎじゃない?』
ピアスやらアクセやらじゃじゃら、かなりの腰パン、しかもスカジャン。ヤンキーかよ?!あたしは、秋吉のあまりのファッションセンスに突っ込んだ。
『そーっスか?あ、典子先輩は私服のほーが大人っぽいっスね!』
…ちょっと待って……こんな、ハデな奴と兄貴の学祭行くの?!あたしまで目立つじゃんか?!!
ハァ―――ッ………
あたしは溜め息をついた。今日は祭日。駅前はかなりの人ゴミだ。2005-06-14 03:25:00 -
32:
『俺らカップルに見えてたりして!』
『やめてよ。本気で迷惑だから』
あたしはなるべく秋吉から離れて歩いた。
秋吉が、切符を買いに並ぶ中、あたしは兄貴の大学までの駅の数を数えていた。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、ななつ、やっ………。
『じゅ…じゅうに?!』
そんなに長い間、こいつと電車に乗るわけ?!
ハァァァ―――ッ……
…あたしはさっきよりもデカイ溜め息をついた。2005-06-14 03:27:00 -
33:
プルルルルル―――
『先輩早く!』
『ちょ…!あたしヒールだから走れないってば!』
あたしは秋吉に手を引っ張られながら電車に乗り込んだ。
…と、同時にドアが閉まった。
『間に合ったぁ〜ッ』
あたしと秋吉は、安堵の息を漏らした。
電車は満員で、かなりギュウギュウ詰め。よく見ると若い奴らが多い。2005-06-14 03:29:00 -
34:
『…こいつら、全部兄貴の学祭行くやつらッスかね?』
秋吉が、あたしの耳元で囁いた。
『ちょっと。耳元でしゃべらないでよ』
『この人口密度で、んな無茶な!』
秋吉とあたしの体はかなり、密着していた。
…あ………。
あたしは、ある重大な事実に気付いてしまった。
『秋吉。あんた、何の香水つけてる?』2005-06-14 03:30:00 -
35:
『へ?ブルガリブルーッスけど』
秋吉が、あたしの唐突な質問にキョトンとして答えた。
…………やっぱり。
《兄貴と同じ香水だ――》
『典子先輩は、グッチですよね』
『…え?何でわかったの?』
『俺の前の女と同じだからすぐわかったッス』
そう言って秋吉は、あたしの顔の近くでニッコリ笑った。2005-06-14 03:31:00 -
36:
『…あれ。そーいやあんた、彼女いないの?』
あたしは、フッと秋吉に言った。
『居ますよ。付き合ってもう2年っス』
『へぇ…』
……興味ないけど。
……ん?じゃあ何で彼女じゃなくあたしを誘ったんだ?
『あ、典子先輩今ガッカリしたでしょ??』
『はぁ?!』
『残念!俺は彼女一筋なんで、俺を狙っても無駄ッスから♪』
………こ…こんガキャ…………!!!2005-06-14 03:32:00 -
37:
『誰があんたみたいなクソガキ狙うか!あたしは年上タイプなの!!』
あたしは、思い切りそっけなく言い返してやった。
『またまたぁ〜。あ、でも典子先輩が痴漢に合ったりしたら俺、全力で守ってあげますよ♪俺ケンカには自信あるッスから♪』
……………ガキ………。
ガキは無視しよう。
――――そう、なんだかんだ言ってるうちに、兄貴の大学の駅についた。
2005-06-14 03:33:00 -
38:
扉が開いた瞬間、電車に乗っていたほとんどが下車していく。
……やっぱり、皆、学祭行く奴らばっかだったんだ…。
―――ドンッ
『きゃっ』
あたしは誰かに押され、人の流れに押し潰されそうになった。
その時。
――――――?!
誰かがあたしの手を掴んだ。
『先輩!大丈夫ッスか?案外どんくさいんですね』
秋吉があたしの手を引っ張り、人の流れから連れ出してくれた。2005-06-14 03:36:00 -
39:
『あーー!いたいた!携碁と典ちゃん!!』
………?!
あたしと秋吉を呼ぶ声に、あたし達二人は後ろを振り返った。
『てっちゃん!』
―――振り替えった先には、大きな木材を抱えた秋吉の兄、秋吉徹夜が立っていた。
……が。
てっちゃんは眉間にシワを寄せ、妙〜な顔をして、あたしと秋吉に言った。
『つーか…お前らさぁ。…いつの間に…そんな関係になったんだ?』2005-06-14 03:39:00 -
40:
……………………?
てっちゃんの目線の先が、あたしと秋吉の手元に集中している。
『――――あ?!』
あたしと秋吉の手が、駅を出たときからずっと、しっかりと繋がれていたのだ!
『ぎゃ!!』
あたしは慌てて秋吉の手から、自分の手を外した。
『い…いつまで握ってんのよ?!』
あたしはあせって秋吉を怒鳴りつけた。
『いや…先輩が何もゆわないから…はは♪』
秋吉は悪気なく笑った。2005-06-14 03:40:00 -
41:
『あのね、てっちゃん、違うの、これは…』
『いやぁ〜そっかぁ〜お前ら付き合ってたのかぁ〜ッ!どーりで典ちゃん、俺をフッた訳だぁ〜っ!………なぁ、圭吾!』
……………………………………………え?!
てっちゃんが持ってる木材の後ろから、兄貴が現れた。
あ・あにき??!
いたの?!!
いつから???!2005-06-14 03:41:00 -
42:
『そうだな』
兄貴は無表情で答えた。
………あ…秋吉と手繋いでたの……み……みら……れ………た?
《ガ――――――――ン》
あたしの中で、ベートーベンの「運命」が流れた。2005-06-14 03:42:00 -
43:
や……やばい……!
やばいやばいやばいやばい!!!!!
弁解しなきゃ!!……弁解?!手繋いでたのは事実じゃん??
あたしの頭はパニックになっていた。
『ち…違うよぉ〜?こいつが勝手に…』
あたしが必死で弁解しようとした瞬間―――
『ごめんなぁ兄貴ぃ!おれら付き合ってましたぁ〜!』
―――――秋吉のアホがいらん事を言いやがった。2005-06-14 03:44:00 -
44:
………………《殺ス》
あたしの中に、秋吉に向かって殺意が目覚めた。
『違うわよ!!誰がこんな奴と付き合うかっ!!第一こいつ彼女いるって……!!』
『彼女と別れて典子先輩と付き合う事にしましたぁ♪あはは♪』
―――――――こいつ!!いい加減にしろよ??!
『はいはい。ラブラブでいーですね。俺にも女紹介しやがれ』
てっちゃんは木材を地面に置き、ブツブツ言っている。
兄貴は………2005-06-14 03:45:00 -
45:
『俺、先に3階行ってるわ』
……そう言って、校舎の中に入っていってしまった。
《ま……待って兄貴ぃい!!!》
あたしは心の中で叫ぶしかなかった。
だって……妹が兄貴に必死で弁解するのも、追い掛けるのも、……はたから見れば…おかしい。
《兄貴……絶対怒ってた……ど・どうしよう…ちゃんと…話ししなきゃ…》2005-06-14 03:46:00 -
46:
『秋吉!あんた、どーゆーつもり?!』
あたしは秋吉に怒鳴りつけた。
『え?だって。付き合ってるって言ってたほーが何かと便利でしょ?』
何が便利なんだ?!何が?!
兄貴には、てっちゃんの弟と来るって言っておいた。でも、まさかこんな事態になるなんて!!
あ〜〜〜〜〜あたしの馬鹿馬鹿バカバカバカ秋吉のバカッ!!
『あ…もしかして…典子先輩……』
ドキッ―――
秋吉の言葉にあたしは止まった。
『な……何?』2005-06-14 03:47:00 -
47:
『もしかして、好きなんッスか…?』
『え……?!』
ば……バレた……?!
『俺の兄貴の事…』
……は?てっちゃん?
『フッた後で、後悔してたとか……?だから俺がさっき言った事に怒ってるんじゃ…?』
秋吉がマジマジとあたしに聞いてくる。
『やめて…。違うわよ。怒ってないわよ…。だけどちゃんと二人に弁解しといてよね。さっきのは冗談だって』2005-06-14 03:49:00 -
48:
……あたしも兄貴に…… 言い訳(?)しに行かなきゃ……。
学祭早々、ブルーだ………………。
『おい!そこの二人!いちゃついてないでコレ運ぶの手伝え!スタッフだろ!』
てっちゃんがふくれながら木材を指さして、あたしと秋吉に言った。
そのまま三人は、三階にある『お化け屋敷』へと向かったのだった。2005-06-14 03:50:00 -
49:
『すっげー!』
『すごーい!』
あたしと秋吉は再び感嘆の声を上げた。
『お化け屋敷ってダサッって思ってたけど、スッゴイ本格的だねぇ!』
『だろ??…ダサいは余計だけど』
てっちゃんは笑いながら 入口に柳の葉を吊している。
『敢えて暗くなってからオープンするから、それまでにお前らちゃんと準備手伝えよ?』
『えー!ちょっとだけ他まわってきていーだろ?俺、腹減ったッ』
秋吉が手をお腹に当てながら不満げに言った。2005-06-14 03:51:00 -
50:
『手伝ってからだ!…あ、典ちゃんは何か食べてきていーよ!』
『あッヒイキじゃねーか!セコ!』
てっちゃんと秋吉の会話をよそに、あたしはキョロキョロと辺りを見回した。
『…あの、てっちゃん……兄貴は?』
辺りに兄貴の姿は見えない。
『圭吾?ああ、あいつなら違うサークルの奴らん所行ってるけど?』
『違うサークル?』
『タコ焼きんところ!』
………そこに兄貴がいるのね。2005-06-14 03:52:00 -
51:
『あたし、ちょっとだけ行ってくるねッ』
あたしはすぐさまその場を離れようとした。
『あ!先輩俺も行くッス!』
秋吉があたしを呼びとめた。
―――冗談じゃない!これ以上二人で行動できるか!
『あんたの分のタコ焼きも買ってきてあげるわよ!おとなしくてっちゃんの手伝いしといて!』
ポカーンとする秋吉をほって、あたしはタコ焼きの出店に向かった。2005-06-14 03:54:00 -
53:
さすが大学の学祭。もんの凄い数の出店…。
ただでさえこの大学は広い。タコ焼きの出店も一つじゃない。
『あちゃ〜…てっちゃんに具体的な場所、聞いときゃよかった』
兄貴の携帯に電話してもつながらない。…あたしは、もの凄い人ゴミをかきわけ、タコ焼き屋を全部あたる事にした。
『んも〜!兄貴どこよー?!』
2005-06-14 04:28:00 -
54:
………………いた。
《あそこのタコ焼き屋にいた――――っ!!》
両目 視力1.5で良かった!!(涙)
人の塊の中に、兄貴の姿が見えた。
…なんなのよ!あたしをほったらかして!!
あたしはふくれっ面で、兄貴のいる場所まで近づいた。
そして、かなりのバカでかい声で叫んだ。
『兄貴――――!!』2005-06-14 04:29:00 -
55:
『……典子?』
兄貴が、あたしの方を振り返ったのと同時に、兄貴の周りにいる人達も全員、あたしの方を見た。
………う………。注目されてる……。
『あれ?この子、圭吾の妹?!』
兄貴の隣にいたチョット小肥りの男の人が、兄貴に言った。
『ああ。…どした?』
兄貴はあまりにも普通にあたしに聞いてきた。
《…どしたって…兄貴を探してたんだけど……》2005-06-14 04:30:00 -
56:
『えー圭吾の妹??マジで?可愛いじゃん、紹介してよ!!』
『あーー!この子かぁ、徹夜が振られたって言ってた子!!』
『えー相沢くんに似てないねー!』
『本当?雰囲気そっくりじゃない?!』
兄貴と一緒にいた男やら女やらが、一気にあたしをとり囲んだ。
…こ…この人達、全員この大学の人達かな……。
周りからの質問攻めに、あたしは、ひたすら苦笑いをしていた。
《ちょっと兄貴!助けてよ!あたしは兄貴と話したいのに!》
あたしは、兄貴にサインを出すべく、兄貴の方を見た。2005-06-14 04:33:00 -
57:
――――――あれ? あたしの眉間にシワが寄った。
…………兄貴の隣に、やたら可愛い女がいる…………。
……しかも、どっかで見たことある女……。
パキ――――ン
あたしの心の中で、何かが弾けた。
《お…思いだした!!兄貴の隣にいる女、この間ウチに来た女だ!!!兄貴の、元カノ!!》
2005-06-14 04:35:00 -
58:
《皐月》
って、名前だった――。
兄貴と………彼氏いるのにも関わらず、エッチしてた女!!(兄貴も悪いが、この場合、女のほうが腹たつ!)
なんで?!!
《なんで、兄貴そんな女と一緒にいるの?!!》
あたしの体中から、血の気が引いてきた。
2005-06-14 04:36:00 -
59:
しかもしかもしかも!!兄貴と皐月は、普通に楽しそうに話している。
ムッカァァァァ〜ッ
あたしはイライラとムカツキと嫉妬で狂いそうだった。
『兄貴!!ちょっと!!』
あたしは、兄貴の袖を引っ張り、皐月とその他の人間から引き離し、人気がない建物の裏まで兄貴を連れ出した。2005-06-14 04:38:00 -
60:
『なんなんだ?何でそんな機嫌悪いんだ、お前?!』
兄貴が、ワケが解らない顔で、あたしに言った。
《な…何で、だってぇ?》
ムカァァッ
あたしの頭に血が上る。
『兄貴…皐月さんって人と、何で喋ってるの?!』
『は?皐月?』
……嫉妬してる女は醜い。…けど、言わずにはいれない……ッ
2005-06-14 04:39:00 -
61:
『……お前、ヤキモチか?』
『はぁ?!』
……………兄貴がニヤッと微笑んだ。
『そ……そうだょ!他の女ならともかく、兄貴と…エッチしてた女とのツーショットなんて、普通に見たくないわよ!』
『…そりゃそうだな』
しれっとした兄貴の言葉に、あたしの怒りはピークに達した。
『兄貴のバカ!あたしを悲しませて楽しいんだ?!!』
あたしはその場に泣き崩れた(フリをした)。
フゥ…
兄貴が溜め息をついて、うずくまるあたしの前に、しゃがんだ。2005-06-14 04:41:00 -
62:
削除削除されますた
あぼ~ん -
63:
『そ…それで、兄貴、何て言ったの?!』
『もちろん、断ったけど?』
………そ……それなら、いいんだけど……何?
何か、引っ掛かるんだけど??
『兄貴は、どうして…皐月さんとズルズル関係続けてたの……?』
そう。あたしが引っ掛かっているのはソコ。
そんなの兄貴らしくないっちゅーか…。
前聞いた時は、《大人の事情》で片付けられたけど……。2005-06-14 04:44:00 -
64:
『……俺は、妹が好きなんだって気付いたとき、一生叶わない相手だって腹くくったんだ。自分の気持ちを、お前に告げる事は一生ないだろうって。』
………あ……兄貴もあたしと同じ気持ちだったんだ。
『他のどんな女と付き合っても、…お前の事ばっか考えてた』
そう語る兄貴の顔が、さりげなく照れているのが解る。兄貴の口からそんな事ゆわれたら、あたしも照れる。
『…で、そんな時、皐月に再会して、………男がいるから、割り切った関係ができるからって。他に本気になれないのに女作っても仕方ないだろ。だから…』
……はぁ??
それって、それって。
『兄貴、皐月さんを、性欲処理に使ったって事??!』
『だから、声がデカイって、お前は!』
兄貴があたしの口を摘んだ。2005-06-14 04:46:00 -
65:
『……皐月も俺も、お互いを利用してたのは確かだ。…結果、それがお前をキズつける事になったな。悪い…』
兄貴が、あたしの肩を掴み、頭を下げた。
『……ううん。もう、いーよ…』
だって。
あたしが兄貴を責める資格なんか、無いよね。
あたしだって、兄貴を好きだって気持ちを誤魔化す為に、色んな男と……。
血が繋がってるって事が、一番悪いんだ。2005-06-14 04:47:00 -
66:
ギュウ―――……
兄貴が、あたしの体を急にきつく抱きしめた。
『あ…兄貴?』
ひ……人が来たら……。
ドキン…ドキン…
あたしの心臓の動きが激しく鳴る。
『これからは、俺は典子に好きなだけ触れるもんな』
兄貴が、あたしの耳元で囁いた。
2005-06-14 04:50:00 -
67:
ゾクゾクゾク――!!
兄貴の言葉と、耳にかかった兄貴の吐息に、あたしの体中に、鳥肌が立った。
……そ…そうだ……。
あたしと兄貴は、まだキス以上は……してないケド……
……これから先……………それ以上も、するって…事だよね……―――?!
カァァアァァァッ
あたしの顔が、一気に熱くなった。2005-06-14 04:51:00 -
68:
『……おまえ、今何か変な事想像しただろ?顔が赤い』
兄貴はあたしの思考を察知したかのように余裕の笑みで、あたしの顔を覗き込む。
『ち…違うわよ!!』
『…お前、絶対エロいだろ。前から思ってたけど』
『え…えろ?!エロくないっての!!』
面白そうにからかってくる兄貴の頭を、あたしはポカポカ叩きまくった。2005-06-14 04:52:00 -
69:
パシッ―――
不意に、兄貴があたしの腕を掴んだ。
『…兄貴?』
『………………次はお前が俺に弁解する番だな』
…………え?
兄貴はニッコリ微笑みながら言った。いつもの如く、目は、笑ってない…。
『徹夜の弟と、手ぇつないでたよな。さっき』
――――兄貴の声、果てしなく低いんですけど?2005-06-14 04:53:00 -
70:
『あ…あれは、ちょっとした手違いで…ッ』
『手違い?しっかりつながってたけど?』
『だからッ!あいつが勝手に!!』
『付き合ってるらしいな。お前ら…』
『だからッそれも秋吉のアホが勝手に言ってるだけ!!』
ハァハァハァハァ……
―――あたしは兄貴の誤解をとこうと必死。なんか情けなくなってきた。
……ほんっと…秋吉のアホ……後で覚えとけよ………
―――そんなあたしの必死な姿に、兄貴がククッと微笑をもらした。2005-06-14 04:56:00 -
71:
『嘘だよ。お前のこと信じてるし。………けど、』
―――兄貴の顔が、あたしの顔に近づいた。
『次、俺にヤキモチ焼かせたら、泣かすからな』
……そう、優しい口調で、恐ろしい言葉を吐いた、兄貴の唇は、あたしの唇を奪った。
『ん…ッ』
あたしの体は、兄貴の体重が掛かり、後ろの壁に押しつけられる。
…あ、やばい。
何回兄貴とキスしても、慣れない……。
溶けそう……………。2005-06-14 04:58:00 -
72:
ザワザワザワザワ…
耳の向こうで、人込みの音がする―――
いま、兄貴といる、この二人の空間だけが、止まっているように感じる……………
兄妹なのに、いけない事、してる……。
そんな気持ちに襲われてしまう………………
………………………………2005-06-14 04:59:00 -
73:
不意に、兄貴の唇が離れた。
『そろそろ、行くか。徹夜がキレ出す頃だしな』
そう言って、腰砕けになっているあたしを引き起こしてくれた。
……えぇ、何か、このまま兄貴とトンズラしたい気分なんだけど………。
そうは思っても、口には出せない。
仕方なく、あたしと兄貴はてっちゃんのところまで戻った。
2005-06-14 05:00:00 -
75:
名無しさん
コピペおつかれさまです☆☆めっちゃ進むんうれしいケド略が多いからちょっと大変かも…ワガママ言ってすまそm(__)m
2005-06-14 12:14:00 -
76:
名無しさん
↑意見・要望・相談スレ in小説板?みなよ
2005-06-14 15:07:00 -
77:
名無しさん
次ゎぃっ更新ですかぁ?
2005-06-15 21:27:00 -
78:
名無しさん
明日ってかいてるよぉ
2005-06-15 21:28:00 -
79:
名無しさん
75に書いてある明日はもう過ぎているのだが(今日の朝)
2005-06-15 21:32:00 -
80:
いや…実は昨日の深夜〜今日の朝方に更新予定だったんスけど、夜遊び止まってて…?
今日できるかわからないから、沢山更新するつもりだったんスけど…。
恨むなら管理者のメンテ告知が無いのを恨んで下さい???????
今日は多分できない…鴨。すまぬ!2005-06-15 21:41:00 -
81:
名無しさん
そんな…?困ります??
2005-06-15 21:49:00 -
82:
名無しさん
中途半端に書くなゃ?
2005-06-15 21:52:00 -
83:
名無しさん
上の二人、コピペしてくれてる人にそれはないわ!
2005-06-15 22:44:00 -
84:
名無しさん
すいませんでした??
2005-06-15 22:45:00 -
85:
名無しさん
ぢゃぁ今日ゎ無理ですかぁ?明日になりそぅですか??
2005-06-15 22:57:00 -
88:
『お前ら!!どこ行ってたんだよ?!!』
兄貴の予想通り、てっちゃんは相当怒っていた。秋吉と二人で全ての準備を終わらしたらしい。
『典子せんぱぁ〜い!』
秋吉が甘えた声であたしに近づいいてきた。
……ちょっと…お願いだから兄貴の前であたしに話しかけてこないで……。
『なに?!』
あたしは超無愛想に、秋吉に返事した。2005-06-16 05:43:00 -
89:
『なにって……。先輩、タコ焼き買ってきてくれるって言ってたじゃないっスかぁ〜!』
…………………あ。
『忘れてた…』
『え―――?!!俺、待ってたのに〜!!』
秋吉が悲鳴に近い声をあげてしゃがみこんだ。
『ご…ごめんってば…。今から買いに行ってくるから…』
『やだ。俺も行く!』2005-06-16 05:44:00 -
90:
………げ。
……またこいつ余計な事を………!
あたしは兄貴の顔をチラっと見た。…兄貴は普通にてっちゃんと話している。
その時―――
『あ!いたいたぁ〜!!圭吾〜!徹夜〜!』
黄色い女の声が、あたしの耳に飛び込んだ。
―――……出た!!!―――皐月!!!2005-06-16 05:45:00 -
91:
お前は今から、出勤するのか??ってなくらいハデな格好をした皐月が、兄貴とてっちゃんの名前を叫びながら、こっちに来た。
『おー!皐月!相変わらず可愛いなぁ!遊びに来てくれたのか??』
てっちゃんが皐月にご機嫌で話しかけた。
『ん〜さっきまで、圭吾と一緒にタコ焼きんとこいたんだけど〜。圭吾が急に妹さんとどっか行っちゃったから!』
プゥっとふくれた顔で、皐月は兄貴の服のソデを引っ張った。2005-06-16 05:45:00 -
92:
ズキン…ズキン…ズキン…
《やだ。やめて―――》
ズキン…ズキン…ズキン…
《兄貴に触らないで》
ズキンズキンズキンズキンズキンズキン
あたしの胸が、キリキリ痛んだ。
《兄貴が違う女と話してるの見るのも嫌…!!》2005-06-16 05:47:00 -
93:
本当はあたしが彼女なんだって、言いたい………
…………でも言えない………言いたい……………
…………言えない…………言いたい………………
…………言えない…………2005-06-16 05:48:00 -
94:
『お前らぁ!昔付き合ってたからって、いちゃつきすぎだっつの!!』
てっちゃんが、兄貴と皐月にヤジを飛ばした。
『い〜じゃん♪圭吾だって、まだあたしに未練あるもんねぇ♪』
皐月が楽しそうに、兄貴の顔を覗き込む。
『ねぇよ。お前、こんな事ばっかしてると男にフラれるぞ』
兄貴が、自分の腕から、ベリッと皐月を引きはがした。
『いーの!あたしの彼氏、ヤキモチとか焼かない人だから♪』
皐月は、しつこく兄貴の腕に引っ付いた。
『え〜じゃあ、俺と浮気しよーぜ?刺激ありまくりだぜ俺??』
てっちゃんが茶化すように、皐月に迫る。2005-06-16 05:49:00 -
95:
『やだ。あたしの浮気相手は圭吾って決まってるの♪ごめんねぇ♪』
皐月は、キャハっと笑った。
―――あたしはただ、黙って皐月の話しと行動を見ているしかなかった。2005-06-16 05:50:00 -
96:
―――なにコレ。
めちゃくちゃ辛いんですけど。
この場から逃げたいんですけど。
……でも、逃げたら、皐月に負けてるような気持ちになるから、この場にはいなきゃ。
あたしは、立っているのがやっとなくらいだった。平然を装うのがやっとだ……。
泣きそう―――。
2005-06-16 05:51:00 -
97:
「あたし、兄貴の彼女なんだけど??兄貴に触んなクソ女!!」
……めっちゃ言いたい……
自分が彼女だって言えないことが、こんな辛いなんて……。
あたしは、ふと、キャバクラで店内恋愛をしている友達の話を思い出した。
【うちの店、店内恋愛禁止だから、自分の彼氏に店の女が寄って来ても、何も言えないんだよね。腹立つよ〜!!マジで!!】
ああ……なんか今、気持ちが凄いわかった……。
……くそー…。兄貴のアホーッ……。2005-06-16 05:52:00 -
98:
『先輩?』
あたしの様子が変だと思ったのか、秋吉があたしに話しかけた。
『どーしたんッスか?急に大人しくなって』
『…別に……』
あたしは、力の無い声で答えた。
『え―――?君、徹夜の弟クン??』
皐月が、あたしと秋吉の方を見て話し掛けてきた。
《……話しかけてこないでよッ 》
あたしは無愛想にソッポを向いた。2005-06-16 05:53:00 -
99:
―――自分が卑屈になってるのは解ってる。けど、皐月に対しての苛立ちはピークに達している。
あたしも、確かに女受けが良い方じゃない(レズには受けたけど)。
―――けど、皐月みたいなここまで受け付けない女は初めてだ!!
別れたにしろ、こんな女と、兄貴が付き合ってたなんて、吐きそうになる!!
……つーか野郎ども!全員、この女がブリッコだって気付かないのかよ?!
……特に兄貴!!大人しく皐月に触られてるんじゃない!!さっきあたしに謝ったばっかだろ?!!
《あ゙〜〜〜〜〜!!》
なんか頭がグチャグチャになってきた………!!2005-06-16 05:55:00 -
100:
『秋吉!!』
あたしは、咄嗟に秋吉の名を呼んだ。
『はい?』
『タコ焼き買いに行くわよ!!』
『え?!先輩?!』
あたしは秋吉の腕を掴んで、そのままその場を離れた。あたしの強行に、てっちゃんと皐月はポカンとしていた。
―――兄貴は…
《知らない!!!兄貴なんか!!》2005-06-16 05:56:00 -
101:
『先輩!どーしたんッスか?!』
階段を下りた所で、秋吉があたしを引き止めた。
『だから…タコ焼き買いに行くんだってば』
『うそだぁ。先輩、明らか、テンション低くなりましたよね?皐月さんって人が来てから』
………こいつ……いらん所で鋭いな………
『皐月さん美人ッスよね〜。大人のエロさっつーか♪』
『………………。』
秋吉の言葉に、あたしが堪えていたものが溢れだした。2005-06-16 05:57:00 -
102:
『せ…先輩…?!』
ポロポロポロ……
あたしの目から涙が流れ出した。
『え?!先輩?!』
秋吉が、あたしのあられもない姿に焦っている。
《くそー…こいつの前でだけでは、泣きたくなかった……》
けど、限界だった。
皐月が憎くて、兄貴に腹立って、自分が情けなくて。2005-06-16 05:58:00 -
103:
『あ…先輩…!さっきのウソ!!俺、典子先輩の方がタイプだし!…その…ちょっと典子先輩に意地悪言ってみたくて……。な…泣かないでくださいよ………』
自分の所為で、あたしが泣いたと思ったのか、秋吉は焦ってあたしをなだめようとしてきた。
『…ほっといて…一人にしてくれないかな…悪いけど……』
《あたしが秋吉を引っ張ってきたんだけど…》
…けど…涙は止まりそうになかった。
『一人にしてくれって…泣いてる女を一人には…』
…………………………。
しばらく、あたしが泣いてる横で、秋吉は座っていた。
――――が。2005-06-16 05:59:00 -
104:
『あ〜〜〜っもう!!』
秋吉が急に叫んだ、と思いきや、
『きゃッ―――』
あたしは、秋吉に腕を引っ張られ、気付けば秋吉に抱きしめられた。
――――――はぁ??!
2005-06-16 06:00:00 -
105:
『さぁッ思う存分、俺の胸で泣いてください!!何で泣いてるのかよくわからんけど!!』
そう言うと、秋吉は、ぎゅぅぅと腕に力を込めた。
『ちょっと待って。なんであんたの胸で泣かなきゃいけないのよ?!』
グググ……ッ
あたしは、秋吉の胸を押した。
『いや、やっぱり男の胸の中のほーが、泣きやすいかなぁって……』
グググ……ッ
秋吉も、あたしを離してくれない。
グググ……ッ2005-06-16 06:02:00 -
106:
『いや…気持ちは有り難いけど、遠慮するわ……ッ』
負けじとあたしは秋吉から離れようとする。
ググググ……ッ
『いやいや…今だけ典子先輩の彼氏になった気持ちになりますから、遠慮なく……』
そう秋吉が言った瞬間―――
ぎゅぅぅぅうッ
『???!』
男の力にはかなわない。あたしはガッツリ秋吉の腕の中へ引き戻された。2005-06-16 06:03:00 -
107:
『さ、遠慮なく、じゃんじゃんバリバリ泣いて下さい!!』
秋吉があたしの背中をポンポンと叩いた。
……な……泣いて下さいって……泣いて……
じわぁぁッ―――
何故だろうか。
秋吉の言葉にあたしの涙腺は緩んでしまった。
《不覚………》
秋吉の胸で、ズルズルと泣いてしまった。2005-06-16 06:04:00 -
108:
5〜6分、そうしていただろうか……。不意に、秋吉の手が、あたしの顔に触れた。
《…………ん?》
秋吉の息があたしの顔にかかる……と思った瞬間―――
―――秋吉の顔があたしに近づいた。
―――――!!
『きゃぁぁぁ!!』2005-06-16 06:05:00 -
109:
バチ―――――ンッ!!
気付けば、あたしは秋吉の顔をおもいっきり叩いていた。
『いってぇ〜〜〜…』
秋吉はあたしに叩かれた顔を押さえている。
『おいコラ!あ…あんた今…何しようとした?!』
あたしは咄嗟に秋吉から離れたため、地べたにシリモチをついたまま怒鳴った。
『あ、ノリでやっちゃいそうでした…』2005-06-16 06:06:00 -
110:
ノ、ノリ?!
秋吉はテヘッと苦笑いをしている。
『だって…いつも気丈な先輩がイキナリ泣いたりして男心をそそるから…』
『つーかあんた、彼女いるって言ってたよね??!浮気だろそれ!!』
……と、秋吉に言葉を吐いた瞬間気付いた。
《…あ。あたしも………浮気したんじゃ……?!》
『…ですよね。浮気ですよねコレ』
秋吉がゆっくり立ち上がった。
『ま、でも未遂だったし………それに、俺ん中ではエッチしないと浮気にはならないんッスけどね』
そう言うと秋吉はニッコリ笑った。2005-06-16 06:06:00 -
111:
『き…キスなら良いの…?…彼女がかわいそうじゃん?!』
あたしは、秋吉に言った。
兄貴と付き合う前のあたしからは絶対出てこなかっただろうな、こんな言葉。
『けど、エッチは絶対しないッスもん、俺』
秋吉はアッサリ答えた。
『…うそだぁ』
『ほんとッスよ』
『裸の女が横に寝てたら?エッチしちゃうでしょ?』
『しないっスよ。つーかそんな状況にならないようにするし』
……こいつ、いい男なのかチャライんか訳わからん……2005-06-16 06:08:00 -
112:
『でも先輩が、ど〜〜〜してもってゆーなら、抱いてあげますよ♪』
『はぁ?!誰があんたなんかとエッチするか!!』
『あははッ冗談ですって!!』
………こ……こいつ、あたしの事おちょくろうなんて、いい度胸じゃんか……
ブニッ
秋吉が、不意にあたしのホッペをつまんだ。
『よかった。先輩、元気になった』2005-06-16 06:09:00 -
113:
――――――!
秋吉は、ニッコリあたしに微笑んだ。
《…こいつ…いい奴じゃん………》
女にやたらモテるんだろうな…コイツ。
あたしはフト、秋吉のあどけない笑顔を見て、思った。2005-06-16 06:10:00 -
114:
《こいつが惚れた彼女って、どんな子なんだろ……》
そんな興味が、あたしの中で初めて湧いた。
その彼女と、後日対面することになるんだけど。
―――とりあえず、あたしと秋吉はタコ焼き6人前程を買い、秋吉にヨーヨー釣りとダーツまで付き合わされ、その後、兄貴達の場所まで戻った。
2005-06-16 06:11:00 -
116:
『おい、お前は飲むな。酒弱いだろーが』
兄貴があたしのチューハイをとりあげようとした。
『ちょっとだけなら大丈夫だよ!』
あたしは慌てて、兄貴からチューハイを守りぬいた。
『えー典ちゃん酒弱いの??明日の打ち上げ、だいぶ飲ますよ??』
てっちゃんがニヤニヤとあたしを見ている。
『はぁ?お前も打ち上げ来る気か?』
兄貴が大分、不機嫌そうにあたしに言った。
『何よ!行っちゃダメなの?!』
皐月がいる以上、行くに決まってるじゃん!2005-06-16 06:14:00 -
117:
『典子先輩、酒苦手だったんだ!へぇ〜意外!』
また、秋吉が隣からチャチャを入れてくる。
『でも安心してくださいね!先輩が酔ったら、俺が介抱してあげますから♪』
『いらんッつの!』
…だから!兄貴の前でそんな事言わないで!!
アハハハハ……
あたしと秋吉の掛け合いに、笑いが起こった。2005-06-16 06:15:00 -
118:
…その時。
『ふーん。だいぶ仲良さそうだな……』
――――――――え?!
ボソッ――っと、兄貴があたしに囁きかけた。
誰にも聞こえない、限りなく低い声で…。
《え…ち、違うよ兄貴…秋吉は誰にでもこんな感じで……!》
―――口に出して、言い訳できるわけもない。2005-06-16 06:16:00 -
119:
『うッ…』
あ…あれ…なんか、微妙に気分悪い……!空きっ腹に酒飲んだから?!
吐きそう…と言えば、明日の打ち上げは、もちろん連れてってもらえない。
『ちょっと、トイレ…』
あたしはソソクサとその場を離れた。2005-06-16 06:17:00 -
120:
ジャー…
多少、吐いてしまった後、あたしはトイレから出た。
…はぁ。あたしって何でこんな酒弱いんだろ……。しかもあたし、グループの中にいるの、苦手なんだよね……。
しかも秋吉の事で兄貴に気遣うし、皐月もいるからイライラするし……。
ハァ……。
《一服でも、してから戻ろう》
あたしは煙草に火をつけた。2005-06-16 06:18:00 -
121:
『典子ちゃん!』
ビクッ―――
その瞬間、あたしの肩を誰かが叩いた。
『さ…皐月…さん?』
突如、現れた皐月が、あたしが座っているベンチの横に座った。
『煙草一本ちょーだいっ』
皐月は、あたしの煙草ケースから、KOOLマイルドを一本抜いた。2005-06-16 06:19:00 -
122:
…な…何?何であたしの所に来たの、この女??
あたしはかなり皐月を、 警戒した。
『典子ちゃんって、人見知り?』
皐月が煙草の煙りを吐きながら言った。
『…え。どうしてですか?』
『だってさぁ。典子ちゃん、あんまりあたしに話しかけてくれないじゃん?徹夜の弟クンとは仲良いみたいだけど…』
―――ハァ?秋吉と?やめてよ!!
『付き合ってるんでしょ?徹夜の弟クンと?』
皐月は、ニコッと微笑み、あたしの顔を覗きこんだ。2005-06-16 06:20:00 -
123:
『付き合ってません!』
あたしは皐月にキツク言い放った。
『えー、そーなんだ?てっきりアタシ、君達付き合ってるって思ってた!…………じゃ、他に彼氏いるんだ?』
ドキッ―――
『え?!』
…………彼氏?!
2005-06-16 06:21:00 -
124:
《兄貴が彼氏です!》
……って、めっちゃ言いたい!!言いたい!!……言えないけど………。
ズキン…ズキン…ズキン…
『…いないです。彼氏なんて……』
あたしは咄嗟に言ってしまった。
ズキン…ズキン…ズキン…
本当の事、言いたい。皐月にだけでもいーから、言いたい。けど、兄貴まで苦しめてしまうから、言えない。胃がキリキリ痛んだ。2005-06-16 06:22:00 -
125:
『え〜〜!いないの?うそだぁ!典子ちゃん、モテるでしょぉ?!』
『べつに…皐月さんこそモテるんじゃないですか』
あたしは無愛想に言った。
『………んー、あたしの彼氏ね。33歳なの。社長さん』
―――えっ?33?!……この女、オジ専?!2005-06-16 06:23:00 -
126:
『お金持ってて、優しくて、すっごくカッコイイんだけど…』
皐月は煙草の煙りを吐くのと同時に溜め息をついた。
『大人すぎて、刺激がないんだよね。ヤキモチも妬いてくれないし。怒らないし。しかも仕事仕事で、あんまり会えないし。………エッチも、淡泊だし』
《―――だから、兄貴にチョッカイ出したの?!》
あたしの心の中で、怒りが込み上げる。2005-06-16 06:24:00 -
127:
『それでね、』
フゥ…
皐月が煙りを大きく吐く。
『彼氏と別れて、圭吾と付き合おうって思ってるの』
……………は?
この女……………今、なんて言った………?2005-06-16 06:25:00 -
128:
ドクンドクンドクンドクン
『典子ちゃんも知ってるかもしれないけど、圭吾とあたし、昔付き合ってたの。…別れてからも、ずっと……関係続けてたんだよね』
ドクンドクンドクンドクン
『あたしから、圭吾フッたんだけど…何回も何回も圭吾に「やり直してくれ」って言われてて…』
ドクンドクンドクンドクン
『だから、典子ちゃん、仲良くしてね♪』
皐月は、ニッコリあたしに微笑んだ。2005-06-16 06:26:00 -
129:
あたしは、血の気が引く思いで皐月の話を聞いていた………………
……皐月からフッた……?
「やり直してくれ」って、兄貴が言ってた…………?
………なに…?それ…………
だって……「彼女いるから」って皐月に言ったって…兄貴が……ッ2005-06-16 06:27:00 -
130:
『兄貴、彼女いるって、言ってましたよ?!』
あたしは皐月に言い放った。
『ああ、言われたよ。彼女いるから、もう関係やめるって。……けど、あたしが、ヨリ戻すなら、その彼女とも別れるって』2005-06-16 06:28:00 -
131:
――――――ハァァ?!
な…………………………
なにそれ…
なにそれなにそれなにそれ
『あ、典子ちゃんなら知ってるんじゃない??圭吾の彼女?どんな子?かわいい?』2005-06-16 06:29:00 -
132:
削除削除されますた
あぼ~ん -
133:
削除削除されますた
あぼ~ん -
134:
『あたし……ッ帰ります………ッ』
『え?典子ちゃん?』
あたしは、これ以上皐月といるのが堪えられず、皐月を置いて、階段を下りた―――――。
……そして、そのまま、あたしは一人で、大学を出た。2005-06-16 06:32:00 -
136:
プーパッパー…―――
ガヤガヤガヤガヤ…
夜の街は賑やか。
仲良さそうなカップル……仕事帰りのおじさんやら、飲んだ帰りっぽい酔った若者。
キャッチしてるボーイや、おねーさん。
あたしは、ケンタッキーの二階の窓ガラスから、ボーッと街の風景を眺めていた。2005-06-16 06:35:00 -
137:
ブブブ…ブブ……
あたしの携帯が鳴った。
【着信 ★兄貴★】
ピッ
…あたしは反射的に保留を押してしまった。2005-06-16 06:35:00 -
139:
【もしもし、じゃないだろ?お前!】
兄貴の声は怒っている。
【今、どこだ?!】
『今…もう帰ってる』
【はぁ?何で勝手に帰ってるんだ?一言も無しに】
……ズキン…ズキン…
兄貴の声を聞くたび、皐月の言葉を思い出す。
兄貴を疑ってるわけじゃない……。けど、今は一人になりたかった。
兄貴とこうして喋っていても、兄貴を責めてしまいそうなあたしがいた。2005-06-16 06:38:00 -
140:
《皐月さんの言ってる事、本当なの?!》
…って。
真実だったら、どうしよう。恐くて聞けない。
ウソだって言われても…
《証拠は?!》
…って、あたしは兄貴を責めてしまうだろう―――。
嫌な女になってしまう……
ああ、 もぅどうしていいかわからない………2005-06-16 06:39:00 -
141:
【…何かあったのか?】
兄貴は、電話越しに、あたしの不自然さを察知したらしい。
『別に…』
【ウソつくな。こうゆう時、お前はいつも何かあるからな。どーした?大学で何かあったんだろ?】
『………。』
【おい。黙ってたらわからないぞ。何とか言えよ】
『………。』2005-06-16 06:40:00 -
142:
兄貴の問いに、あたしはずっと黙っていた。
……何て言ったらいいか、分からなかったから……。
【……何も話したくないんだな。わかった。気をつけて帰れよ】
―――!!
……やだ。切らないで!2005-06-16 06:41:00 -
143:
『ま…待って…!』
あたしは、思わず兄貴を引き止めた。
【何だ?】
『あ…あの…兄貴……い…いつ、帰るの?』
【今から、皆とメシ食って帰るから遅くなる】
《……え?皆とメシ…?》
『皐月さんも…いるんだよね…?』
【ああ。…なんだお前。まだ皐月の事、言ってるのか?】
兄貴は呆れた声で溜め息をついた。2005-06-16 06:42:00 -
144:
ムカッ―――
あたしの中に、イライラが募ってくる。
『……だって。皐月さん、兄貴のこと好きっぽいじゃん』
あたしは、かなり皮肉っぽく言葉を投げ掛けてしまった。
【あのなぁ。ヤキモチも大概にしろよ?皐月とはもう何もない。さっき話したばっかだろ。…お前、まさかそれで先帰ったのか?!】
…兄貴も、微妙にイラつきだしたのか、声が冷たく聞こえる。2005-06-16 06:43:00 -
145:
ムカムカムカ―――
あたしも更にイラだつ。
『兄貴だって、気付いてるんでしょ?!皐月さんが自分に気があるって!!』
【だから…。皐月には男がいるって言っただろ】
『あーゆー女は、男がいてもいなくても関係無いの!!』
【……じゃあ、お前は俺に、どうして欲しいんだ?】
……兄貴の言葉に、あたしは止まった。2005-06-16 06:45:00 -
146:
『か…彼女が、嫌がるから…、もう俺に触ってくるな、電話もしてくるなって皐月さんに、言って…ッ』
―――皐月は大学のサークル仲間。そんな事、無理だってわかってる。
めちゃくちや、兄貴を困らす事言ってる…あたし―――!嫉妬で、嫌な女になってる……!2005-06-16 06:46:00 -
148:
『ほ…本当に言うの…?』
【ああ。今から言いにいく】
『…え…でも、』
まさか、「わかった」って言われるとは思わなかったあたしは、動揺した。
【何だ?それでも、まだ足りないのか?!】
『ち…違う…ッ』
【じゃあ、何だ?!】
ビクッ―――
兄貴が急に声を荒らげたので、あたしは黙ってしまった。2005-06-16 06:48:00 -
149:
『……もう……いい』
【え?】
ブチッツーツー…
電話を切ってしまった。
もう頭の中がグチャグチャだった。皐月の話を兄貴に確かめたいけど、聞くのが怖い。
兄貴を信じきれない自分の弱さ。嫉妬と不安で悲観的な考え方しかできない……。
こんな気持ち、初めてだ……。
『うぅ…ッ』
また涙…泣いてばっかだ……2005-06-16 06:49:00 -
151:
ブブブ…ブブ…
再び兄貴から。
ブチッ
また保留。
ブブブ…ブブ…
また…兄貴から。
今まで、色んな男にしつこく着信されて、ウザいとしか思えなかったけど…兄貴からは、嬉しい。
2005-06-16 06:52:00 -
153:
シ―――ン…
…あれ?
兄貴から、かかって来なくなった。
―――ヤバイ…調子に乗りすぎた―――
あたしは、慌てて兄貴に電話した。
……カッコ悪い…あたし…
『も…もしもし…』
【はい】
兄貴の声はかなりそっけない。2005-06-16 06:54:00 -
154:
【おまえ、何で電話とらないんだ?】
『ご…ごめ…』
兄貴の声を聞いて、あたしは泣いてしまった。
『う…っひっくッ……』
あたしの泣き声をしばらく黙って聞いていた兄貴は、
【……何があったか言えよ。おまえのその態度、尋常じゃないもんな…】
…そう、優しい声で言った。
2005-06-16 06:55:00 -
155:
『あ…あたし…』
そう、言いかけた時、
【ちょっと待て。会ってから聞く。今、大学出たところだから。お前、今どこだ?】
…その兄貴の言葉に驚いた。
『え――?兄貴、今から皆でご飯食べに行くって…』
【ああ。断った】
―――ええ?!
【今からお前んとこまで行くから場所言え】2005-06-16 06:56:00 -
156:
……こ…断った…??
あ…あたしに会いに来てくれるために?!
『い…今、〇〇駅前のケンタッキーの…2階にいる…』
【わかった。あと10分くらいで行くから、そこ動くなよ?】
―――そう言って、兄貴の電話は切れた。2005-06-16 06:57:00 -
157:
ドキン ドキン ドキン
携帯をジッ―と見つめながら、あたしの胸はただ緊張していた。
《あ…兄貴が、今からココに来る……!》
ドキン ドキン ドキン
―――やだ…めちゃくちゃ緊張してきた……ッ
《だって…あたしの為に、会いに来てくれるんだよ???》
この時、自分が本当に兄貴と付き合っている事を今更ながら、実感した。2005-06-16 06:58:00 -
158:
……こ…恋人同士なんだ、あたしたち……ッ
今まで、恋愛らしい恋愛をしたことがないあたしは、男とケンカしたことも無かった。
《ケンカして、彼氏が迎えに来てくれる―――》
そんなシチュエーションを、兄貴相手に夢見たこともあった。
《それが…今、現実に…》
―――この時、あたしの中で、皐月の話はどこかへ飛んでいっていた。
《やっぱり、兄貴を信じたい》
そう思う、単純なあたしがいた。2005-06-16 06:59:00 -
159:
あれやこれや考えている内に、窓の外を見ると―――
《―――あ…!兄貴……!》
こっちに向かってくる、兄貴の姿が見えた。
―――はっ!!泣いて化粧ボロボロかも……!!
あたしは慌ててバッグからポーチを取り出し、軽くファンデを塗り直したりして、化粧直しをした。
カンカンカン――
階段をのぼって来る音がする。2005-06-16 07:01:00 -
160:
『典子!』
2階に来た兄貴が、あたしの姿を見つけ、あたしの名前を呼んだ。
『………。』
《ほ…本当に、兄貴、来た………》
あたしは緊張で、喋れず、うつむいてしまった。
『何だ?まだ怒ってるのか?』
兄貴は、あたしの方を向いたまま、隣の席に座った。
《ち、違う…妙に緊張して話せないだけ……》2005-06-16 07:02:00 -
161:
ドキン…ドキン…ドキン…
兄貴を近くに感じて、余計ドキドキしてきた。
あ〜ッなんなのよ、コレ?
『…で?お前がそんな風になったワケは何だ?話せよ』
カチッ
兄貴は、タバコに火をつけた。
『そ…れは……』
『何?』
……皐月さんの話、兄貴から真実を確かめたい。2005-06-16 07:03:00 -
162:
『…あたし、さっき、皐月さんと話してたの』
ドキン ドキン
『それでね、皐月さんが……彼氏と別れて、兄貴と付き合おうと思ってるって……言ってた』
ドキン ドキン
『…皐月が?そー言ったのか?』
コクン――
兄貴の問いに、あたしは小さく頷いた。
『……それで?』
フゥ―――
兄貴が煙りを吐く。2005-06-16 07:04:00 -
163:
『あ…兄貴に、何回もヨリ戻そうって言われたって!』
『それで?』
『彼女いるけど、皐月がヨリ戻してくれるなら、彼女と別れるって…!兄貴がそー言ってきたって!!』
『…それで?』
……………………。
『ほ…本当なの…それ…?』
…………………………。
しばし、沈黙が流れた。兄貴は、あたしをジーッと見つめている。
『……で?』
兄貴が灰皿にタバコの灰を落とし、言った。2005-06-16 07:05:00 -
164:
『お前は、皐月の言葉を信じたワケだな』
ズキィ―――ッ……
兄貴の言葉に、あたしの胸が痛んだ。
『……ッ!!そ…それは…ッ』
『俺の事を、信じようとする気持ちは無かったワケだ』
兄貴の顔が、怒っている。2005-06-16 07:05:00 -
165:
『あったよ!!兄貴を信じてたよ…ッけど……ッ何か…あたし…ショックで…冷静に何も考えれなくて……ッ』
じわっ…
あたしの目頭が熱くなる。
『あ・兄貴を…皐月さんに取られちゃうかもって…思ったら…ッあたし…ッ 不安で…不安で…ッ………ッツ』
最後の方は、殆ど声にならなかった。あたしは、その場で泣き崩れた。
『………。』
兄貴は何も言わない。
ポンポン―――
兄貴の手が、あたしの頭を撫でた。2005-06-16 07:06:00 -
166:
『……前から思ってたけど…』
兄貴が思い出したかのように呟いた。
『お前、気丈そうで、脆いよな。よく泣くし…』
――――――――!!
『き、嫌いになった?!』
あたしは、慌てて兄貴に聞き返した。
―――やだッ……もしかして…兄貴は気が強そうだからあたしの事、好きになったの??!
今になって、幻滅したとか……?!!2005-06-16 07:08:00 -
167:
あたしの必死な形相に、兄貴は、クックックッ…と、笑いだした。
『いや…見た目とギャップありすぎて、おもしろいけど?』
………は?おもしろい?
『どーゆー意味よそれ?!』
『可愛いって事だよ』
―――そう言って、兄貴は、席を立ち上がった。
ドキン…
え? 今、か…可愛いって言わなかった??
え? え? ぅえ?2005-06-16 07:09:00 -
168:
『出るか』
兄貴は、あたしが飲んでいたコーヒーと、トレーを片付けて、階段を下りてゆく。
………あ…兄貴に、可愛いってゆわれた…………(良い意味かわかんないけど)
あたしは、何だか妙に嬉しくて、半スキップで階段を降りた。2005-06-16 07:10:00 -
170:
名無しさん
今日はここで終わりですね
2005-06-16 07:11:00 -
171:
ケンタッキーを出た後、あたしと兄貴は駅に向かっていた。
『はやくしないと終電きちゃう!!』
早足で歩きながら、あたしは兄貴の腕を引っ張った。
『あんま急ぐとコケるぞ!お前どんくさいから』
兄貴が改札口の横にある切符売り場で止まった。2005-06-16 07:13:00 -
172:
『11:58分、終電の電車が到着します――』
改札口の前で、車掌さんが、叫んでいる。
『兄貴!はやく!』
あたしと兄貴は、切符を改札に差し込み、ホームへの階段をかけあがった。2005-06-16 07:14:00 -
174:
シュー…
電車の扉が開く音がする。
『きゃー!間に合うかな?!』
―――兄貴、早く!!
そう言おうと振り向いた瞬間―――
【 グイッ 】
あたしの腕が、引っ張られた。
…………え?!
2005-06-16 07:15:00 -
175:
兄貴の手が、あたしの動きを止めた。
『え?兄貴……?』
ガタン…ガタン…ガタン…
電車は行ってしまった。
グイッ―――
兄貴は、そのままあたしの腕を掴んだまま、無言で階段を降りてゆく。
『え?ちょっと…兄貴……?!』
兄貴に引っ張られるまま、あたしも階段を下りる。2005-06-16 07:16:00 -
176:
そのまま、あたしと兄貴はさっき入ったばかりの駅を出た(駅員さんに変な顔された)。
『ちょっと…兄貴??走ってたら、間に合ったよ??』
あたしは、歩きながら、兄貴の顔を覗いた。
―――兄貴は、何も言わない。
『終電無くなったし…どうやって、帰るの?!……あ。もしかして!皆の所、行くんだ??』2005-06-16 07:17:00 -
177:
『…お前、皆の所、行きたいのか?』
兄貴が、あたしに目をやった。
『……?え…別に、行きたくないけど…。え?違うの?じゃあ、どこ行くの?』
『内緒』
兄貴は、ニッコリあたしに微笑んだ。
…………?????
その時、兄貴がタクシーを停めた。
タクシーの扉が開き、兄貴が乗り込む。
『え?!何でタクシー?』
『早く乗れ』2005-06-16 07:18:00 -
178:
あたしは、訳がわからないまま、兄貴と一緒にタクシーに乗り込んだ。
『兄貴?どこ行くの?マジで!』
『いや、飲みにでも行こうかって思って。お前元気無いしな』
『…え!』
……そのまま、あたしと兄貴はタクシーを降りた。降りた場所は、一度も来た事がない場所だった。
『この辺に結構いいバーがあるから、一回お前を連れて来ようと思ってたんだ。』
『へ…へぇ』
ドキン…ドキン…
な、なんか、嬉しい…嬉しすぎる…2005-06-16 07:20:00 -
179:
手を繋いだまま、普段は来る事の無い街を通りぬける二人…。
《あたし達、恋人同士って感じじゃん……ッ》
そう思うと、めちゃくちゃ嬉しくて、ドキドキして……兄貴が好きで。
あたしは、スッと兄貴の横顔を見上げた。
《この人が、ホントにホントにあたしの彼氏なんだ。いっぱい、いっぱい女の子はいるのに、妹の…あたしを選んでくれた》
なんか、嬉しくて胸がしめつけらて、幸せで…涙がでそうになった。2005-06-16 07:22:00 -
181:
急にあたしの動きが止まったので、兄貴も足を止めて、あたしの方を振り向いた。
『あ…あのさ…兄貴…』
あたしは、小声で呟く。
『どうした?』
兄貴が不思議そうに、あたしに問いかけた。2005-06-16 07:24:00 -
182:
ドキン…ドキン…ドキン…ドキン…
『べ…別に、さぁ…バーで、お酒飲まなくても…いーんじゃない…?』
『はぁ?』
兄貴は、あたしの言葉が理解できない顔をしている。
『だ…だから……』
スゥ―――
あたしは息を吸って言った。2005-06-16 07:25:00 -
183:
『ホ…ホテル…とかでも、お酒飲めるじゃん…?コンビニで、お酒買って…………』
そう言った瞬間、あまりの恥ずかしさに、あたしは兄貴の顔が見れず、うつむいてしまった。2005-06-16 07:26:00 -
184:
『いや、今更、冗談はないだろ』
……………え゙?
兄貴がニッコリ微笑んだ。
『前言撤回は無しだからな』
そう言って、兄貴はあたしに再び手を差し出した。
…え……
…………………え?!!2005-06-16 07:29:00 -
185:
ウィーン―――
自動ドアの開く音が響いた。
入るとすぐに、色んな部屋の写真が見える。
ドキン ドキン ドキン
き…来て………しまった…
……………ラブホテル………2005-06-16 07:31:00 -
186:
『どの部屋か決めろよ』
兄貴が写真を見ながら、あたしに言った。
『ど……ッどれにしよぅかなぁ??!』
―――あたしの声は半ば裏返っていた。
ピンク一色の部屋やら、前面鏡バリの部屋……え…SMちっくな道具がある部屋……。
そんな部屋の写真ばかりあたしの目に飛びこんで来る。2005-06-16 07:33:00 -
187:
―――もちろん。
あたしがラブホに来るのは、初めてな訳がない。むしろ何十回と来ている。
他の男と来た時なんて、部屋は写真も見ずに
「テキトーに選んどいてよ」
………と、男に決めさせていた………。2005-06-16 07:34:00 -
188:
――――――が。
今のあたしの心境……。もう尋常なモノじゃない。
ドキン ドキン ドキン ドキン ドキン ドキン
《だめだ……緊張しすぎて 卒倒…しそう……》
あ…兄貴と、ラブホに来てるなんて、昨日まで…いや、つい数十分前のあたしに想像出来たか?!!2005-06-16 07:35:00 -
189:
他の男と来てた時は、感じた事なかったけど…。
ラブホって……………なんか妙に、エッチな雰囲気かもしだしてるよな………ッ。よく考えたら、エッチする為だけの場所なのよね…ラブホって……。
《……って事は……あたしと兄貴は、今から………》
きゃあああぁぁあ!!
あたしは、心の中で激しく叫んだ。2005-06-16 07:37:00 -
190:
『おい、どれにするんだ?』
あたしがあまりにモジモジしていたので、兄貴があたしをせかす言葉をはいた。
『あ…え、えーと!!ココにしよっと!!』
ポチッ
あたしは、焦ってあまり写真を見ずに、315号室の部屋のボタンを押してしまった。2005-06-16 07:38:00 -
191:
あたしと兄貴はエレベーターに乗り込んだ。
…………………………。
エレベーターの中で、あたしは息ができないほどの緊張を味わった。
『……おとなしいな』
兄貴が一言も喋らないあたしを見て、クスッと笑う。
ドクン… ドクン…
……やばい。兄貴をまともに見れない……。2005-06-16 07:40:00 -
192:
ガチャ―――
部屋の扉を開くと、ラブホテル独特の空気があたしを包んだ。
『うわっ目茶苦茶、部屋キレイじゃん!』
あたしはワザと緊張を誤魔化そうと、大声を出した。
『てゆーか…』
上着をソファーにかけながら、兄貴が呆れた声を出した。
『お前のシュミ、凄いよな』
『は?』
兄貴は、タバコに火をつけながら、部屋の中央にあるベッドの真上を見上げた。2005-06-16 07:41:00 -
193:
『え?何?』
あたしも兄貴と同じくベッドの上を見た。
―――――げ!!!
…ベ…ベッドの真上の天井だけ、鏡になってんじゃん!!?2005-06-16 07:42:00 -
194:
……………!!
《は…初めてで、こんな部屋選ぶなよあたし……!!》
カァァァッ―――
一気に恥ずかしくなった。
『お前、妙に緊張してるよな。この前のカプセルホテルん時はイケイケだったくせに』
兄貴はあたしの様子を見てニヤニヤしている。
『だ…だって!この前ん時と今回とじゃ、状況が違うじゃん!』
…この前ん時は……ッ…あたしと兄貴は…まだ、ただの兄妹で……でも…
『今は…、男と、女として来てるでしょ…?!』2005-06-16 07:45:00 -
195:
…うぅ。
あたしはまた何て恥ずかしい事を……。
『そうだな』
フゥ…
タバコの煙りを吐きながら、兄貴は言った。
…そんな兄貴が、めちゃくちゃカッコよく見えて…
ドキン ドキン ドキン
《やばいよ…あたし、兄貴とまともに話せないし、兄貴をまともに見れないし、……どうしよう……》2005-06-16 07:46:00 -
196:
ハッ―――
…そ・そうだ!!
『兄貴!お酒飲もーよ!』
あたしはさっきコンビニで買ったお酒を、袋から出した。
『…本当にこんなとこで飲むのか?』
兄貴が呆れてあたしからビールを受け取った。
……だって。お酒の力をかりないと、とてもじゃないけど緊張しすぎて普通じゃいれませんから!!2005-06-16 07:48:00 -
197:
…そしてあたしはあまりの緊張のあまり、アホな事を口に滑らせてしまった……。
『あれ〜兄貴、ラブホでお酒飲んだりしない人?!あたしは飲む人だよ??』
あたしは絶好調で兄貴に言い放った。
…すると、兄貴が急に不機嫌そうにあたしを見た。2005-06-16 07:49:00 -
198:
『……ふーん。他の男ともラブホ来て酒飲んだことあるんだな』
『………え゙』
あ゙。……しまった………。
『い…いや、兄貴ッ』
『そーゆー事は軽く口にすんなよ?あんまいー気しねーから』
………う………
『ご…ごめんなさい…』
あたしはシュンとして俯いた。2005-06-16 07:51:00 -
199:
『うそだよ。んな落ち込むなっての』
兄貴はあたしの口に、ポテトチップスを差し込んだ。
『お…怒ってない?!』
『怒ってないけど、いい気はしてない』
『怒ってるじゃん!』
あたしは、膨れっ面でポテチをポリッと噛んだ。
『わかった!!ヤキモチやいてるんだ、兄貴!』
あたしはニヤ〜ッとソファーに座る兄貴の顔を覗きこんだ。2005-06-16 07:52:00 -
200:
『ヤキモチとゆーか…普通に良い気しないだろ』
『いーや!ヤキモチだ!そっかぁ〜そんなに兄貴はあたしの事が好きかぁ〜』
…酒が入ったせいか、だんだん緊張が溶けてきて兄貴に普通に話せる。
『はいはい』
兄貴は再びタバコに火をつける。
『あ!あたしも吸う!ちょーだい!』
あたしは兄貴のタバコを奪い取った。
『お前!だから未成年が吸うな!』
フゥ…兄貴と間接キス…
そんな事を思いながらタバコを吸った。2005-06-16 07:53:00