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お兄ちゃんが好き。 part ?
-
1:
お兄ちゃんが好き。part ?
http://bbs.yoasobiweb.com//test/read.cgi/yomimono/1117473268/1-52005-06-13 03:45:00 -
101:
『先輩!どーしたんッスか?!』
階段を下りた所で、秋吉があたしを引き止めた。
『だから…タコ焼き買いに行くんだってば』
『うそだぁ。先輩、明らか、テンション低くなりましたよね?皐月さんって人が来てから』
………こいつ……いらん所で鋭いな………
『皐月さん美人ッスよね〜。大人のエロさっつーか♪』
『………………。』
秋吉の言葉に、あたしが堪えていたものが溢れだした。2005-06-16 05:57:00 -
102:
『せ…先輩…?!』
ポロポロポロ……
あたしの目から涙が流れ出した。
『え?!先輩?!』
秋吉が、あたしのあられもない姿に焦っている。
《くそー…こいつの前でだけでは、泣きたくなかった……》
けど、限界だった。
皐月が憎くて、兄貴に腹立って、自分が情けなくて。2005-06-16 05:58:00 -
103:
『あ…先輩…!さっきのウソ!!俺、典子先輩の方がタイプだし!…その…ちょっと典子先輩に意地悪言ってみたくて……。な…泣かないでくださいよ………』
自分の所為で、あたしが泣いたと思ったのか、秋吉は焦ってあたしをなだめようとしてきた。
『…ほっといて…一人にしてくれないかな…悪いけど……』
《あたしが秋吉を引っ張ってきたんだけど…》
…けど…涙は止まりそうになかった。
『一人にしてくれって…泣いてる女を一人には…』
…………………………。
しばらく、あたしが泣いてる横で、秋吉は座っていた。
――――が。2005-06-16 05:59:00 -
104:
『あ〜〜〜っもう!!』
秋吉が急に叫んだ、と思いきや、
『きゃッ―――』
あたしは、秋吉に腕を引っ張られ、気付けば秋吉に抱きしめられた。
――――――はぁ??!
2005-06-16 06:00:00 -
105:
『さぁッ思う存分、俺の胸で泣いてください!!何で泣いてるのかよくわからんけど!!』
そう言うと、秋吉は、ぎゅぅぅと腕に力を込めた。
『ちょっと待って。なんであんたの胸で泣かなきゃいけないのよ?!』
グググ……ッ
あたしは、秋吉の胸を押した。
『いや、やっぱり男の胸の中のほーが、泣きやすいかなぁって……』
グググ……ッ
秋吉も、あたしを離してくれない。
グググ……ッ2005-06-16 06:02:00 -
106:
『いや…気持ちは有り難いけど、遠慮するわ……ッ』
負けじとあたしは秋吉から離れようとする。
ググググ……ッ
『いやいや…今だけ典子先輩の彼氏になった気持ちになりますから、遠慮なく……』
そう秋吉が言った瞬間―――
ぎゅぅぅぅうッ
『???!』
男の力にはかなわない。あたしはガッツリ秋吉の腕の中へ引き戻された。2005-06-16 06:03:00 -
107:
『さ、遠慮なく、じゃんじゃんバリバリ泣いて下さい!!』
秋吉があたしの背中をポンポンと叩いた。
……な……泣いて下さいって……泣いて……
じわぁぁッ―――
何故だろうか。
秋吉の言葉にあたしの涙腺は緩んでしまった。
《不覚………》
秋吉の胸で、ズルズルと泣いてしまった。2005-06-16 06:04:00 -
108:
5〜6分、そうしていただろうか……。不意に、秋吉の手が、あたしの顔に触れた。
《…………ん?》
秋吉の息があたしの顔にかかる……と思った瞬間―――
―――秋吉の顔があたしに近づいた。
―――――!!
『きゃぁぁぁ!!』2005-06-16 06:05:00 -
109:
バチ―――――ンッ!!
気付けば、あたしは秋吉の顔をおもいっきり叩いていた。
『いってぇ〜〜〜…』
秋吉はあたしに叩かれた顔を押さえている。
『おいコラ!あ…あんた今…何しようとした?!』
あたしは咄嗟に秋吉から離れたため、地べたにシリモチをついたまま怒鳴った。
『あ、ノリでやっちゃいそうでした…』2005-06-16 06:06:00 -
110:
ノ、ノリ?!
秋吉はテヘッと苦笑いをしている。
『だって…いつも気丈な先輩がイキナリ泣いたりして男心をそそるから…』
『つーかあんた、彼女いるって言ってたよね??!浮気だろそれ!!』
……と、秋吉に言葉を吐いた瞬間気付いた。
《…あ。あたしも………浮気したんじゃ……?!》
『…ですよね。浮気ですよねコレ』
秋吉がゆっくり立ち上がった。
『ま、でも未遂だったし………それに、俺ん中ではエッチしないと浮気にはならないんッスけどね』
そう言うと秋吉はニッコリ笑った。2005-06-16 06:06:00 -
111:
『き…キスなら良いの…?…彼女がかわいそうじゃん?!』
あたしは、秋吉に言った。
兄貴と付き合う前のあたしからは絶対出てこなかっただろうな、こんな言葉。
『けど、エッチは絶対しないッスもん、俺』
秋吉はアッサリ答えた。
『…うそだぁ』
『ほんとッスよ』
『裸の女が横に寝てたら?エッチしちゃうでしょ?』
『しないっスよ。つーかそんな状況にならないようにするし』
……こいつ、いい男なのかチャライんか訳わからん……2005-06-16 06:08:00 -
112:
『でも先輩が、ど〜〜〜してもってゆーなら、抱いてあげますよ♪』
『はぁ?!誰があんたなんかとエッチするか!!』
『あははッ冗談ですって!!』
………こ……こいつ、あたしの事おちょくろうなんて、いい度胸じゃんか……
ブニッ
秋吉が、不意にあたしのホッペをつまんだ。
『よかった。先輩、元気になった』2005-06-16 06:09:00 -
113:
――――――!
秋吉は、ニッコリあたしに微笑んだ。
《…こいつ…いい奴じゃん………》
女にやたらモテるんだろうな…コイツ。
あたしはフト、秋吉のあどけない笑顔を見て、思った。2005-06-16 06:10:00 -
114:
《こいつが惚れた彼女って、どんな子なんだろ……》
そんな興味が、あたしの中で初めて湧いた。
その彼女と、後日対面することになるんだけど。
―――とりあえず、あたしと秋吉はタコ焼き6人前程を買い、秋吉にヨーヨー釣りとダーツまで付き合わされ、その後、兄貴達の場所まで戻った。
2005-06-16 06:11:00 -
116:
『おい、お前は飲むな。酒弱いだろーが』
兄貴があたしのチューハイをとりあげようとした。
『ちょっとだけなら大丈夫だよ!』
あたしは慌てて、兄貴からチューハイを守りぬいた。
『えー典ちゃん酒弱いの??明日の打ち上げ、だいぶ飲ますよ??』
てっちゃんがニヤニヤとあたしを見ている。
『はぁ?お前も打ち上げ来る気か?』
兄貴が大分、不機嫌そうにあたしに言った。
『何よ!行っちゃダメなの?!』
皐月がいる以上、行くに決まってるじゃん!2005-06-16 06:14:00 -
117:
『典子先輩、酒苦手だったんだ!へぇ〜意外!』
また、秋吉が隣からチャチャを入れてくる。
『でも安心してくださいね!先輩が酔ったら、俺が介抱してあげますから♪』
『いらんッつの!』
…だから!兄貴の前でそんな事言わないで!!
アハハハハ……
あたしと秋吉の掛け合いに、笑いが起こった。2005-06-16 06:15:00 -
118:
…その時。
『ふーん。だいぶ仲良さそうだな……』
――――――――え?!
ボソッ――っと、兄貴があたしに囁きかけた。
誰にも聞こえない、限りなく低い声で…。
《え…ち、違うよ兄貴…秋吉は誰にでもこんな感じで……!》
―――口に出して、言い訳できるわけもない。2005-06-16 06:16:00 -
119:
『うッ…』
あ…あれ…なんか、微妙に気分悪い……!空きっ腹に酒飲んだから?!
吐きそう…と言えば、明日の打ち上げは、もちろん連れてってもらえない。
『ちょっと、トイレ…』
あたしはソソクサとその場を離れた。2005-06-16 06:17:00 -
120:
ジャー…
多少、吐いてしまった後、あたしはトイレから出た。
…はぁ。あたしって何でこんな酒弱いんだろ……。しかもあたし、グループの中にいるの、苦手なんだよね……。
しかも秋吉の事で兄貴に気遣うし、皐月もいるからイライラするし……。
ハァ……。
《一服でも、してから戻ろう》
あたしは煙草に火をつけた。2005-06-16 06:18:00 -
121:
『典子ちゃん!』
ビクッ―――
その瞬間、あたしの肩を誰かが叩いた。
『さ…皐月…さん?』
突如、現れた皐月が、あたしが座っているベンチの横に座った。
『煙草一本ちょーだいっ』
皐月は、あたしの煙草ケースから、KOOLマイルドを一本抜いた。2005-06-16 06:19:00 -
122:
…な…何?何であたしの所に来たの、この女??
あたしはかなり皐月を、 警戒した。
『典子ちゃんって、人見知り?』
皐月が煙草の煙りを吐きながら言った。
『…え。どうしてですか?』
『だってさぁ。典子ちゃん、あんまりあたしに話しかけてくれないじゃん?徹夜の弟クンとは仲良いみたいだけど…』
―――ハァ?秋吉と?やめてよ!!
『付き合ってるんでしょ?徹夜の弟クンと?』
皐月は、ニコッと微笑み、あたしの顔を覗きこんだ。2005-06-16 06:20:00 -
123:
『付き合ってません!』
あたしは皐月にキツク言い放った。
『えー、そーなんだ?てっきりアタシ、君達付き合ってるって思ってた!…………じゃ、他に彼氏いるんだ?』
ドキッ―――
『え?!』
…………彼氏?!
2005-06-16 06:21:00 -
124:
《兄貴が彼氏です!》
……って、めっちゃ言いたい!!言いたい!!……言えないけど………。
ズキン…ズキン…ズキン…
『…いないです。彼氏なんて……』
あたしは咄嗟に言ってしまった。
ズキン…ズキン…ズキン…
本当の事、言いたい。皐月にだけでもいーから、言いたい。けど、兄貴まで苦しめてしまうから、言えない。胃がキリキリ痛んだ。2005-06-16 06:22:00 -
125:
『え〜〜!いないの?うそだぁ!典子ちゃん、モテるでしょぉ?!』
『べつに…皐月さんこそモテるんじゃないですか』
あたしは無愛想に言った。
『………んー、あたしの彼氏ね。33歳なの。社長さん』
―――えっ?33?!……この女、オジ専?!2005-06-16 06:23:00 -
126:
『お金持ってて、優しくて、すっごくカッコイイんだけど…』
皐月は煙草の煙りを吐くのと同時に溜め息をついた。
『大人すぎて、刺激がないんだよね。ヤキモチも妬いてくれないし。怒らないし。しかも仕事仕事で、あんまり会えないし。………エッチも、淡泊だし』
《―――だから、兄貴にチョッカイ出したの?!》
あたしの心の中で、怒りが込み上げる。2005-06-16 06:24:00 -
127:
『それでね、』
フゥ…
皐月が煙りを大きく吐く。
『彼氏と別れて、圭吾と付き合おうって思ってるの』
……………は?
この女……………今、なんて言った………?2005-06-16 06:25:00 -
128:
ドクンドクンドクンドクン
『典子ちゃんも知ってるかもしれないけど、圭吾とあたし、昔付き合ってたの。…別れてからも、ずっと……関係続けてたんだよね』
ドクンドクンドクンドクン
『あたしから、圭吾フッたんだけど…何回も何回も圭吾に「やり直してくれ」って言われてて…』
ドクンドクンドクンドクン
『だから、典子ちゃん、仲良くしてね♪』
皐月は、ニッコリあたしに微笑んだ。2005-06-16 06:26:00 -
129:
あたしは、血の気が引く思いで皐月の話を聞いていた………………
……皐月からフッた……?
「やり直してくれ」って、兄貴が言ってた…………?
………なに…?それ…………
だって……「彼女いるから」って皐月に言ったって…兄貴が……ッ2005-06-16 06:27:00 -
130:
『兄貴、彼女いるって、言ってましたよ?!』
あたしは皐月に言い放った。
『ああ、言われたよ。彼女いるから、もう関係やめるって。……けど、あたしが、ヨリ戻すなら、その彼女とも別れるって』2005-06-16 06:28:00 -
131:
――――――ハァァ?!
な…………………………
なにそれ…
なにそれなにそれなにそれ
『あ、典子ちゃんなら知ってるんじゃない??圭吾の彼女?どんな子?かわいい?』2005-06-16 06:29:00 -
132:
削除削除されますた
あぼ~ん -
133:
削除削除されますた
あぼ~ん -
134:
『あたし……ッ帰ります………ッ』
『え?典子ちゃん?』
あたしは、これ以上皐月といるのが堪えられず、皐月を置いて、階段を下りた―――――。
……そして、そのまま、あたしは一人で、大学を出た。2005-06-16 06:32:00 -
136:
プーパッパー…―――
ガヤガヤガヤガヤ…
夜の街は賑やか。
仲良さそうなカップル……仕事帰りのおじさんやら、飲んだ帰りっぽい酔った若者。
キャッチしてるボーイや、おねーさん。
あたしは、ケンタッキーの二階の窓ガラスから、ボーッと街の風景を眺めていた。2005-06-16 06:35:00 -
137:
ブブブ…ブブ……
あたしの携帯が鳴った。
【着信 ★兄貴★】
ピッ
…あたしは反射的に保留を押してしまった。2005-06-16 06:35:00 -
139:
【もしもし、じゃないだろ?お前!】
兄貴の声は怒っている。
【今、どこだ?!】
『今…もう帰ってる』
【はぁ?何で勝手に帰ってるんだ?一言も無しに】
……ズキン…ズキン…
兄貴の声を聞くたび、皐月の言葉を思い出す。
兄貴を疑ってるわけじゃない……。けど、今は一人になりたかった。
兄貴とこうして喋っていても、兄貴を責めてしまいそうなあたしがいた。2005-06-16 06:38:00 -
140:
《皐月さんの言ってる事、本当なの?!》
…って。
真実だったら、どうしよう。恐くて聞けない。
ウソだって言われても…
《証拠は?!》
…って、あたしは兄貴を責めてしまうだろう―――。
嫌な女になってしまう……
ああ、 もぅどうしていいかわからない………2005-06-16 06:39:00 -
141:
【…何かあったのか?】
兄貴は、電話越しに、あたしの不自然さを察知したらしい。
『別に…』
【ウソつくな。こうゆう時、お前はいつも何かあるからな。どーした?大学で何かあったんだろ?】
『………。』
【おい。黙ってたらわからないぞ。何とか言えよ】
『………。』2005-06-16 06:40:00 -
142:
兄貴の問いに、あたしはずっと黙っていた。
……何て言ったらいいか、分からなかったから……。
【……何も話したくないんだな。わかった。気をつけて帰れよ】
―――!!
……やだ。切らないで!2005-06-16 06:41:00 -
143:
『ま…待って…!』
あたしは、思わず兄貴を引き止めた。
【何だ?】
『あ…あの…兄貴……い…いつ、帰るの?』
【今から、皆とメシ食って帰るから遅くなる】
《……え?皆とメシ…?》
『皐月さんも…いるんだよね…?』
【ああ。…なんだお前。まだ皐月の事、言ってるのか?】
兄貴は呆れた声で溜め息をついた。2005-06-16 06:42:00 -
144:
ムカッ―――
あたしの中に、イライラが募ってくる。
『……だって。皐月さん、兄貴のこと好きっぽいじゃん』
あたしは、かなり皮肉っぽく言葉を投げ掛けてしまった。
【あのなぁ。ヤキモチも大概にしろよ?皐月とはもう何もない。さっき話したばっかだろ。…お前、まさかそれで先帰ったのか?!】
…兄貴も、微妙にイラつきだしたのか、声が冷たく聞こえる。2005-06-16 06:43:00 -
145:
ムカムカムカ―――
あたしも更にイラだつ。
『兄貴だって、気付いてるんでしょ?!皐月さんが自分に気があるって!!』
【だから…。皐月には男がいるって言っただろ】
『あーゆー女は、男がいてもいなくても関係無いの!!』
【……じゃあ、お前は俺に、どうして欲しいんだ?】
……兄貴の言葉に、あたしは止まった。2005-06-16 06:45:00 -
146:
『か…彼女が、嫌がるから…、もう俺に触ってくるな、電話もしてくるなって皐月さんに、言って…ッ』
―――皐月は大学のサークル仲間。そんな事、無理だってわかってる。
めちゃくちや、兄貴を困らす事言ってる…あたし―――!嫉妬で、嫌な女になってる……!2005-06-16 06:46:00 -
148:
『ほ…本当に言うの…?』
【ああ。今から言いにいく】
『…え…でも、』
まさか、「わかった」って言われるとは思わなかったあたしは、動揺した。
【何だ?それでも、まだ足りないのか?!】
『ち…違う…ッ』
【じゃあ、何だ?!】
ビクッ―――
兄貴が急に声を荒らげたので、あたしは黙ってしまった。2005-06-16 06:48:00 -
149:
『……もう……いい』
【え?】
ブチッツーツー…
電話を切ってしまった。
もう頭の中がグチャグチャだった。皐月の話を兄貴に確かめたいけど、聞くのが怖い。
兄貴を信じきれない自分の弱さ。嫉妬と不安で悲観的な考え方しかできない……。
こんな気持ち、初めてだ……。
『うぅ…ッ』
また涙…泣いてばっかだ……2005-06-16 06:49:00 -
151:
ブブブ…ブブ…
再び兄貴から。
ブチッ
また保留。
ブブブ…ブブ…
また…兄貴から。
今まで、色んな男にしつこく着信されて、ウザいとしか思えなかったけど…兄貴からは、嬉しい。
2005-06-16 06:52:00 -
153:
シ―――ン…
…あれ?
兄貴から、かかって来なくなった。
―――ヤバイ…調子に乗りすぎた―――
あたしは、慌てて兄貴に電話した。
……カッコ悪い…あたし…
『も…もしもし…』
【はい】
兄貴の声はかなりそっけない。2005-06-16 06:54:00 -
154:
【おまえ、何で電話とらないんだ?】
『ご…ごめ…』
兄貴の声を聞いて、あたしは泣いてしまった。
『う…っひっくッ……』
あたしの泣き声をしばらく黙って聞いていた兄貴は、
【……何があったか言えよ。おまえのその態度、尋常じゃないもんな…】
…そう、優しい声で言った。
2005-06-16 06:55:00 -
155:
『あ…あたし…』
そう、言いかけた時、
【ちょっと待て。会ってから聞く。今、大学出たところだから。お前、今どこだ?】
…その兄貴の言葉に驚いた。
『え――?兄貴、今から皆でご飯食べに行くって…』
【ああ。断った】
―――ええ?!
【今からお前んとこまで行くから場所言え】2005-06-16 06:56:00 -
156:
……こ…断った…??
あ…あたしに会いに来てくれるために?!
『い…今、〇〇駅前のケンタッキーの…2階にいる…』
【わかった。あと10分くらいで行くから、そこ動くなよ?】
―――そう言って、兄貴の電話は切れた。2005-06-16 06:57:00 -
157:
ドキン ドキン ドキン
携帯をジッ―と見つめながら、あたしの胸はただ緊張していた。
《あ…兄貴が、今からココに来る……!》
ドキン ドキン ドキン
―――やだ…めちゃくちゃ緊張してきた……ッ
《だって…あたしの為に、会いに来てくれるんだよ???》
この時、自分が本当に兄貴と付き合っている事を今更ながら、実感した。2005-06-16 06:58:00 -
158:
……こ…恋人同士なんだ、あたしたち……ッ
今まで、恋愛らしい恋愛をしたことがないあたしは、男とケンカしたことも無かった。
《ケンカして、彼氏が迎えに来てくれる―――》
そんなシチュエーションを、兄貴相手に夢見たこともあった。
《それが…今、現実に…》
―――この時、あたしの中で、皐月の話はどこかへ飛んでいっていた。
《やっぱり、兄貴を信じたい》
そう思う、単純なあたしがいた。2005-06-16 06:59:00 -
159:
あれやこれや考えている内に、窓の外を見ると―――
《―――あ…!兄貴……!》
こっちに向かってくる、兄貴の姿が見えた。
―――はっ!!泣いて化粧ボロボロかも……!!
あたしは慌ててバッグからポーチを取り出し、軽くファンデを塗り直したりして、化粧直しをした。
カンカンカン――
階段をのぼって来る音がする。2005-06-16 07:01:00 -
160:
『典子!』
2階に来た兄貴が、あたしの姿を見つけ、あたしの名前を呼んだ。
『………。』
《ほ…本当に、兄貴、来た………》
あたしは緊張で、喋れず、うつむいてしまった。
『何だ?まだ怒ってるのか?』
兄貴は、あたしの方を向いたまま、隣の席に座った。
《ち、違う…妙に緊張して話せないだけ……》2005-06-16 07:02:00 -
161:
ドキン…ドキン…ドキン…
兄貴を近くに感じて、余計ドキドキしてきた。
あ〜ッなんなのよ、コレ?
『…で?お前がそんな風になったワケは何だ?話せよ』
カチッ
兄貴は、タバコに火をつけた。
『そ…れは……』
『何?』
……皐月さんの話、兄貴から真実を確かめたい。2005-06-16 07:03:00 -
162:
『…あたし、さっき、皐月さんと話してたの』
ドキン ドキン
『それでね、皐月さんが……彼氏と別れて、兄貴と付き合おうと思ってるって……言ってた』
ドキン ドキン
『…皐月が?そー言ったのか?』
コクン――
兄貴の問いに、あたしは小さく頷いた。
『……それで?』
フゥ―――
兄貴が煙りを吐く。2005-06-16 07:04:00 -
163:
『あ…兄貴に、何回もヨリ戻そうって言われたって!』
『それで?』
『彼女いるけど、皐月がヨリ戻してくれるなら、彼女と別れるって…!兄貴がそー言ってきたって!!』
『…それで?』
……………………。
『ほ…本当なの…それ…?』
…………………………。
しばし、沈黙が流れた。兄貴は、あたしをジーッと見つめている。
『……で?』
兄貴が灰皿にタバコの灰を落とし、言った。2005-06-16 07:05:00 -
164:
『お前は、皐月の言葉を信じたワケだな』
ズキィ―――ッ……
兄貴の言葉に、あたしの胸が痛んだ。
『……ッ!!そ…それは…ッ』
『俺の事を、信じようとする気持ちは無かったワケだ』
兄貴の顔が、怒っている。2005-06-16 07:05:00 -
165:
『あったよ!!兄貴を信じてたよ…ッけど……ッ何か…あたし…ショックで…冷静に何も考えれなくて……ッ』
じわっ…
あたしの目頭が熱くなる。
『あ・兄貴を…皐月さんに取られちゃうかもって…思ったら…ッあたし…ッ 不安で…不安で…ッ………ッツ』
最後の方は、殆ど声にならなかった。あたしは、その場で泣き崩れた。
『………。』
兄貴は何も言わない。
ポンポン―――
兄貴の手が、あたしの頭を撫でた。2005-06-16 07:06:00 -
166:
『……前から思ってたけど…』
兄貴が思い出したかのように呟いた。
『お前、気丈そうで、脆いよな。よく泣くし…』
――――――――!!
『き、嫌いになった?!』
あたしは、慌てて兄貴に聞き返した。
―――やだッ……もしかして…兄貴は気が強そうだからあたしの事、好きになったの??!
今になって、幻滅したとか……?!!2005-06-16 07:08:00 -
167:
あたしの必死な形相に、兄貴は、クックックッ…と、笑いだした。
『いや…見た目とギャップありすぎて、おもしろいけど?』
………は?おもしろい?
『どーゆー意味よそれ?!』
『可愛いって事だよ』
―――そう言って、兄貴は、席を立ち上がった。
ドキン…
え? 今、か…可愛いって言わなかった??
え? え? ぅえ?2005-06-16 07:09:00 -
168:
『出るか』
兄貴は、あたしが飲んでいたコーヒーと、トレーを片付けて、階段を下りてゆく。
………あ…兄貴に、可愛いってゆわれた…………(良い意味かわかんないけど)
あたしは、何だか妙に嬉しくて、半スキップで階段を降りた。2005-06-16 07:10:00 -
170:
名無しさん
今日はここで終わりですね
2005-06-16 07:11:00 -
171:
ケンタッキーを出た後、あたしと兄貴は駅に向かっていた。
『はやくしないと終電きちゃう!!』
早足で歩きながら、あたしは兄貴の腕を引っ張った。
『あんま急ぐとコケるぞ!お前どんくさいから』
兄貴が改札口の横にある切符売り場で止まった。2005-06-16 07:13:00 -
172:
『11:58分、終電の電車が到着します――』
改札口の前で、車掌さんが、叫んでいる。
『兄貴!はやく!』
あたしと兄貴は、切符を改札に差し込み、ホームへの階段をかけあがった。2005-06-16 07:14:00 -
174:
シュー…
電車の扉が開く音がする。
『きゃー!間に合うかな?!』
―――兄貴、早く!!
そう言おうと振り向いた瞬間―――
【 グイッ 】
あたしの腕が、引っ張られた。
…………え?!
2005-06-16 07:15:00 -
175:
兄貴の手が、あたしの動きを止めた。
『え?兄貴……?』
ガタン…ガタン…ガタン…
電車は行ってしまった。
グイッ―――
兄貴は、そのままあたしの腕を掴んだまま、無言で階段を降りてゆく。
『え?ちょっと…兄貴……?!』
兄貴に引っ張られるまま、あたしも階段を下りる。2005-06-16 07:16:00 -
176:
そのまま、あたしと兄貴はさっき入ったばかりの駅を出た(駅員さんに変な顔された)。
『ちょっと…兄貴??走ってたら、間に合ったよ??』
あたしは、歩きながら、兄貴の顔を覗いた。
―――兄貴は、何も言わない。
『終電無くなったし…どうやって、帰るの?!……あ。もしかして!皆の所、行くんだ??』2005-06-16 07:17:00 -
177:
『…お前、皆の所、行きたいのか?』
兄貴が、あたしに目をやった。
『……?え…別に、行きたくないけど…。え?違うの?じゃあ、どこ行くの?』
『内緒』
兄貴は、ニッコリあたしに微笑んだ。
…………?????
その時、兄貴がタクシーを停めた。
タクシーの扉が開き、兄貴が乗り込む。
『え?!何でタクシー?』
『早く乗れ』2005-06-16 07:18:00 -
178:
あたしは、訳がわからないまま、兄貴と一緒にタクシーに乗り込んだ。
『兄貴?どこ行くの?マジで!』
『いや、飲みにでも行こうかって思って。お前元気無いしな』
『…え!』
……そのまま、あたしと兄貴はタクシーを降りた。降りた場所は、一度も来た事がない場所だった。
『この辺に結構いいバーがあるから、一回お前を連れて来ようと思ってたんだ。』
『へ…へぇ』
ドキン…ドキン…
な、なんか、嬉しい…嬉しすぎる…2005-06-16 07:20:00 -
179:
手を繋いだまま、普段は来る事の無い街を通りぬける二人…。
《あたし達、恋人同士って感じじゃん……ッ》
そう思うと、めちゃくちゃ嬉しくて、ドキドキして……兄貴が好きで。
あたしは、スッと兄貴の横顔を見上げた。
《この人が、ホントにホントにあたしの彼氏なんだ。いっぱい、いっぱい女の子はいるのに、妹の…あたしを選んでくれた》
なんか、嬉しくて胸がしめつけらて、幸せで…涙がでそうになった。2005-06-16 07:22:00 -
181:
急にあたしの動きが止まったので、兄貴も足を止めて、あたしの方を振り向いた。
『あ…あのさ…兄貴…』
あたしは、小声で呟く。
『どうした?』
兄貴が不思議そうに、あたしに問いかけた。2005-06-16 07:24:00 -
182:
ドキン…ドキン…ドキン…ドキン…
『べ…別に、さぁ…バーで、お酒飲まなくても…いーんじゃない…?』
『はぁ?』
兄貴は、あたしの言葉が理解できない顔をしている。
『だ…だから……』
スゥ―――
あたしは息を吸って言った。2005-06-16 07:25:00 -
183:
『ホ…ホテル…とかでも、お酒飲めるじゃん…?コンビニで、お酒買って…………』
そう言った瞬間、あまりの恥ずかしさに、あたしは兄貴の顔が見れず、うつむいてしまった。2005-06-16 07:26:00 -
184:
『いや、今更、冗談はないだろ』
……………え゙?
兄貴がニッコリ微笑んだ。
『前言撤回は無しだからな』
そう言って、兄貴はあたしに再び手を差し出した。
…え……
…………………え?!!2005-06-16 07:29:00 -
185:
ウィーン―――
自動ドアの開く音が響いた。
入るとすぐに、色んな部屋の写真が見える。
ドキン ドキン ドキン
き…来て………しまった…
……………ラブホテル………2005-06-16 07:31:00 -
186:
『どの部屋か決めろよ』
兄貴が写真を見ながら、あたしに言った。
『ど……ッどれにしよぅかなぁ??!』
―――あたしの声は半ば裏返っていた。
ピンク一色の部屋やら、前面鏡バリの部屋……え…SMちっくな道具がある部屋……。
そんな部屋の写真ばかりあたしの目に飛びこんで来る。2005-06-16 07:33:00 -
187:
―――もちろん。
あたしがラブホに来るのは、初めてな訳がない。むしろ何十回と来ている。
他の男と来た時なんて、部屋は写真も見ずに
「テキトーに選んどいてよ」
………と、男に決めさせていた………。2005-06-16 07:34:00 -
188:
――――――が。
今のあたしの心境……。もう尋常なモノじゃない。
ドキン ドキン ドキン ドキン ドキン ドキン
《だめだ……緊張しすぎて 卒倒…しそう……》
あ…兄貴と、ラブホに来てるなんて、昨日まで…いや、つい数十分前のあたしに想像出来たか?!!2005-06-16 07:35:00 -
189:
他の男と来てた時は、感じた事なかったけど…。
ラブホって……………なんか妙に、エッチな雰囲気かもしだしてるよな………ッ。よく考えたら、エッチする為だけの場所なのよね…ラブホって……。
《……って事は……あたしと兄貴は、今から………》
きゃあああぁぁあ!!
あたしは、心の中で激しく叫んだ。2005-06-16 07:37:00 -
190:
『おい、どれにするんだ?』
あたしがあまりにモジモジしていたので、兄貴があたしをせかす言葉をはいた。
『あ…え、えーと!!ココにしよっと!!』
ポチッ
あたしは、焦ってあまり写真を見ずに、315号室の部屋のボタンを押してしまった。2005-06-16 07:38:00 -
191:
あたしと兄貴はエレベーターに乗り込んだ。
…………………………。
エレベーターの中で、あたしは息ができないほどの緊張を味わった。
『……おとなしいな』
兄貴が一言も喋らないあたしを見て、クスッと笑う。
ドクン… ドクン…
……やばい。兄貴をまともに見れない……。2005-06-16 07:40:00 -
192:
ガチャ―――
部屋の扉を開くと、ラブホテル独特の空気があたしを包んだ。
『うわっ目茶苦茶、部屋キレイじゃん!』
あたしはワザと緊張を誤魔化そうと、大声を出した。
『てゆーか…』
上着をソファーにかけながら、兄貴が呆れた声を出した。
『お前のシュミ、凄いよな』
『は?』
兄貴は、タバコに火をつけながら、部屋の中央にあるベッドの真上を見上げた。2005-06-16 07:41:00 -
193:
『え?何?』
あたしも兄貴と同じくベッドの上を見た。
―――――げ!!!
…ベ…ベッドの真上の天井だけ、鏡になってんじゃん!!?2005-06-16 07:42:00 -
194:
……………!!
《は…初めてで、こんな部屋選ぶなよあたし……!!》
カァァァッ―――
一気に恥ずかしくなった。
『お前、妙に緊張してるよな。この前のカプセルホテルん時はイケイケだったくせに』
兄貴はあたしの様子を見てニヤニヤしている。
『だ…だって!この前ん時と今回とじゃ、状況が違うじゃん!』
…この前ん時は……ッ…あたしと兄貴は…まだ、ただの兄妹で……でも…
『今は…、男と、女として来てるでしょ…?!』2005-06-16 07:45:00 -
195:
…うぅ。
あたしはまた何て恥ずかしい事を……。
『そうだな』
フゥ…
タバコの煙りを吐きながら、兄貴は言った。
…そんな兄貴が、めちゃくちゃカッコよく見えて…
ドキン ドキン ドキン
《やばいよ…あたし、兄貴とまともに話せないし、兄貴をまともに見れないし、……どうしよう……》2005-06-16 07:46:00 -
196:
ハッ―――
…そ・そうだ!!
『兄貴!お酒飲もーよ!』
あたしはさっきコンビニで買ったお酒を、袋から出した。
『…本当にこんなとこで飲むのか?』
兄貴が呆れてあたしからビールを受け取った。
……だって。お酒の力をかりないと、とてもじゃないけど緊張しすぎて普通じゃいれませんから!!2005-06-16 07:48:00 -
197:
…そしてあたしはあまりの緊張のあまり、アホな事を口に滑らせてしまった……。
『あれ〜兄貴、ラブホでお酒飲んだりしない人?!あたしは飲む人だよ??』
あたしは絶好調で兄貴に言い放った。
…すると、兄貴が急に不機嫌そうにあたしを見た。2005-06-16 07:49:00 -
198:
『……ふーん。他の男ともラブホ来て酒飲んだことあるんだな』
『………え゙』
あ゙。……しまった………。
『い…いや、兄貴ッ』
『そーゆー事は軽く口にすんなよ?あんまいー気しねーから』
………う………
『ご…ごめんなさい…』
あたしはシュンとして俯いた。2005-06-16 07:51:00 -
199:
『うそだよ。んな落ち込むなっての』
兄貴はあたしの口に、ポテトチップスを差し込んだ。
『お…怒ってない?!』
『怒ってないけど、いい気はしてない』
『怒ってるじゃん!』
あたしは、膨れっ面でポテチをポリッと噛んだ。
『わかった!!ヤキモチやいてるんだ、兄貴!』
あたしはニヤ〜ッとソファーに座る兄貴の顔を覗きこんだ。2005-06-16 07:52:00 -
200:
『ヤキモチとゆーか…普通に良い気しないだろ』
『いーや!ヤキモチだ!そっかぁ〜そんなに兄貴はあたしの事が好きかぁ〜』
…酒が入ったせいか、だんだん緊張が溶けてきて兄貴に普通に話せる。
『はいはい』
兄貴は再びタバコに火をつける。
『あ!あたしも吸う!ちょーだい!』
あたしは兄貴のタバコを奪い取った。
『お前!だから未成年が吸うな!』
フゥ…兄貴と間接キス…
そんな事を思いながらタバコを吸った。2005-06-16 07:53:00