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異例の大ヒット『侍タイムスリッパー』で話題の監督「安田淳一」がブレイクするまでの「10年間の足跡」(現代ビジネス)

全国各地で大ヒット公開中の自主映画『侍タイムスリッパー』。安田淳一監督と未来映画社の作品をブレイク前から追いかけ、応援してきた映画ライターのBazil氏が、その足跡を振り返る。『拳銃と目玉焼』に『ごはん』、そして『侍タイ』……ブームに乗じた付け焼き刃では決して書くことができない、10年の道のりをご覧あれ。今日がその日である。

【漫画】「しすぎたらバカになるぞ…」母の再婚相手から性的虐待を受けた女性幕末の侍が現代の撮影所にタイムスリップ、激変した環境に戸惑いながら、生業として選んだのは時代劇の斬られ役!?

監督が一人11役を務める超小規模・低予算作品ながら、キャッチーな題材からは想像できないエモーショナルな展開に、泣いて笑った観客がSNSを中心に大絶賛の口コミを広げている映画が『侍タイムスリッパー』だ。

池袋シネマ・ロサの単館公開からみるみるうちに全国300館以上へと拡大、海外の映画祭では時代劇に馴染みの薄い観衆から大喝采を受け、果てはユーキャンの新語・流行語大賞にノミネートされるなど、今なお勢いが止まらない。本作が長編第3作となる安田淳一監督と、その製作・配給会社「未来映画社」。『侍タイムスリッパー』の奇跡に至る10年間の足跡を、一観客の視点からたどってみたい。地元京都で結婚式やイベントなどのビデオ撮影を手掛けてきた安田淳一が、初めて取り組んだ本格的な自主映画が『拳銃と目玉焼』(2014年)だ。新聞配達員として働き、夜はアパートの一室でバイクのプラモデルを組む地味な男・志郎(小野孝弘)。彼の密かな楽しみは、朝の仕事を終えた後で立ち寄る喫茶店で、アルバイトのユキ(沙倉ゆうの)が焼いてくれる目玉焼のモーニングを食べることだった。

折しも周辺では女性を襲う変質者の出没が不安のタネになっていた。誰かが退治してくれないかな……ユキの独り言にその気になった志郎は、偶然出会った零細バルブ会社の老社長(田中弘史)とともに、痴漢ならぬ「『オヤジ狩り』狩り」の自警行為に没頭するようになる。

それまでのうだつの上がらない人生に活力を感じ始める志郎だったが、実はユキには誰にも言えない秘密があった──。

本作のために安田淳一がつけたキャッチコピーは「見よ、ハリウッド。これが日本のヒーロー映画だ！」。これはアメコミ超大作『アベンジャーズ』の「日本よ、これが映画だ。」に対するアンサーであるのだが、予告編では「8万円のカメラと750円のライトで撮った」「平均スタッフ数3.5人」「会社潰れる(監督談)」と自虐テロップが乱れ飛ぶ。

いったいどこまで本気か、悪い冗談か。大阪・高松で期間限定上映されたあと「街のビデオ屋が撮った映画が凱旋公開」の記事を見つけ、今はなき京都・木屋町の立誠シネマの初日に駆け付けたが観客は2人。もう1名はご常連で、初見は筆者だけという体たらく。

どうするんだコレ…と思ううちに幕が開き、半ば斜めに見始めたが、やがて高クオリティの映像と練りに練られたストーリーに引き込まれることになる。幕後の舞台挨拶に立った少し謙虚な安田監督と明るさ全開の沙倉ゆうの。たった2人の客席に向けての全力トークは、メディアで引っ張りだこになった今も変わらないスタンスだ。

提供元：Yahooニュース

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