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「おしん」 描きたかったのは「辛抱」ではなく「身の丈に合った生き方」、奥底に見える精いっぱい生きれば十分という優しさ(夕刊フジ)

 【もう1回みたい!橋田壽賀子ドラマはこれだ】

 NHK朝ドラ第31作として放送された『おしん』は日本だけでなく、世界で愛される橋田ドラマの代表作だ。明治、大正、昭和の激動を生き抜くヒロインのおしんを、子役の小林綾子、娘時代の田中裕子、老年期の乙羽信子の3人が演じた。

【写真】「渡鬼音頭」を橋田さんと歌うピン子

 明治の終わり。山形の寒村の小作農の娘おしん(小林)は、わずか7歳で父(伊東四朗)に奉公に出るようにいわれる。学校に行きたいおしんは悲しむが、母(泉ピン子)が凍える川で流産しようとするのを目撃。「おれ、奉公さ行く」と決意する。やがて早世した姉の志を継いで髪結いとなったおしんは親の反対を押し切って竜三(並樹史朗)と結婚。子を授かるも関東大震災で財産をすべて失う。身を寄せた佐賀の夫の実家を飛び出し、やっと落ち着いた矢先、戦争の暗い影が。

 瞬間最高視聴率は日本のドラマ史上最高の62・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)、平均視聴率52・6%という驚異的な数字を記録。「おしんドローム」といった言葉も流行した。

 人気の理由は貧困、いじめ、嫁しゅうとめ問題など、きれいごとではない現実を真正面から描いたこと。佐賀でのしゅうとめ(高森和子)の嫁いびりは壮絶だ。おしんを「ごくつぶし」「厄介者」と呼び、娘や兄嫁にだけ、ぜんざいや餅を食べさせる。ケガや死産までしたおしんに冷たく当たるのである。視聴者は、伊東四朗や高森和子に苦情をぶつけたり、「おしん一家に」と米俵や現金を送ってきたりしたという。

 反戦の気持ちもしっかりと盛り込まれた。与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」を詠んでくれた恩人、俊作あんちゃん(中村雅俊)は脱走兵として射殺され、息子は戦争のために命を落とす。戦後、夫も壮絶な最期を遂げるのである。

 完結編では行商から息子とともにスーパー経営で成功したおしんと家族が描かれる。しゅうとめのことも「自分が至らない嫁だった」と言い切る彼女もまた、息子の嫁世代とはうまくいかないものだ。それでも最終回「精いっぱい生きてきました」と語る。

 橋田さんがこのドラマで描きたかったのは「辛抱」ではなく、「身の丈に合った生き方」だという。今も共感を呼ぶのは思い通りにいかない人生も精いっぱい生きれば十分という優しさが奥底にあるからに違いない。(コラムニスト・ベリー荻野)

 ■おしん 1983年4月4日から84年3月31日放送。NHKテレビ放送開始30周年記念作品であり、朝ドラの1年間放送は『鳩子の海』(74~75年)以来。

提供元:Yahooニュース
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