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「夫よ死んで」と思っていたら本当に失踪した…女優・中江有里が読む結婚の本質をめぐるミステリ(レビュー)(Book Bang)

 結婚とは、他人の二人があらたな家族となるもの。幸せな家庭を築くはずが「夫が元気なまま死んでくれないかしら」と妻は思うようになる。結婚の本質をめぐるミステリ。

 結婚5年目の麻矢は大学時代の友人で専業主婦の友里香、離婚経験のある璃子と夫の愚痴を言い合うことでストレスを発散している。

 ある日、友里香から助けを求められ、璃子とともにかけつけた。偶発的に起きてしまったある事態が、その後三人に重くのしかかってくる。

 一方、麻矢の夫・光博が何の前触れもなく失踪した。一体なぜ、どこに消えたのか、見当がつかない。一緒にいても夫婦らしい生活はしていない。このまま戻ってこなければ、揉めることなく別れられるかもしれない―そんな考えがよぎる。

 婚姻という制度はもともと「家制度」から始まった。その名残りなのか結婚することを「嫁ぐ」「入籍」と言い換えたりする。「男女同権」の観点からどちらを名乗っても構わない苗字も、いまだ夫側を名乗る人が圧倒的に多い。また仕事をする女性にとって、子どもを持つタイミングは慎重になる。麻矢の夫のように「そろそろ」と押し切ろうとしたら、夫婦の信頼にひびが入るだろう。

 多くのわだかまりを抱えながら夫婦関係を続けることに、どんな意味があるのか? 夫の失踪の謎と並行して、結婚の意味も探っていく。

 そして固い絆で結ばれたはずの友人たちは、夫への不満を抱える同志だったのに、いつのまにか裏切りの感情が忍び寄っていた。

 家庭と仕事の両立はできても、家庭と幸せ、仕事と幸せはなかなか両立しない。我慢し、堪えていくのが常態になって、自分の幸せより現状の生活を維持する方を無意識に選んでしまうからだろう。

 謎が解けていくのに従って、麻矢が自らの心に向き合っていく。その過程が悲しくも衝撃的で、不思議と静謐なラストが印象に残った。

[レビュアー]中江有里(女優・作家)
1973(昭和48)年、大阪生れ。法政大学卒。1989(平成元)年芸能界デビュー。数多くのTVドラマ、映画に出演。2002年「納豆ウドン」で第23回「BK ラジオドラマ脚本懸賞」最高賞を受賞し、脚本家デビュー。2006年、初の小説『結婚写真』を刊行。ほかの著書に『わたしの本棚』『残りものには、過去がある』『トランスファー』『万葉と沙羅』などがある。

協力:新潮社 新潮社 週刊新潮

Book Bang編集部

新潮社

提供元:Yahooニュース
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