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日常のモヤモヤを昇華してくれる、美味しい料理と店主の言葉──心がほぐれる美味しい連作短編集シリーズ(レビュー)(Book Bang)

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せっかちな性分で同僚に苛立ち、急ぐあまり仕事でミス……。子どもはいらないという道を選んだものの、周囲からのちょっとした言動に傷ついて……。日常に潜むモヤモヤや悩みは、おひとりさま専用カフェ「喫茶ドードー」のご褒美メニューで癒されませんか? あなたの悩みに効くメニューを店主そろりがご用意し、お待ちしております。美味しい料理に心がほぐれる連作短編集。
書評家・松井ゆかりさんのレビューで『こんな日は喫茶ドードーで雨宿り。』の読みどころをご紹介します。 前作『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』で、読者の心をほっとさせてくれたのは、店主そろりと彼の作るおいしい料理。第2作となる『こんな日は喫茶ドードーで雨宿り。』でも、「喫茶ドードー」は訪れる者をゆったりと迎えてくれる。
本書も連作短編集。何かに傷ついたり他人の言葉に落ち込んだりした各話の主役たちは、引き寄せられるように「喫茶ドードー」に足を向ける。個人的に最も印象に残った短編は、第3話「時を戻すアヒージョ」。自然素材の雑貨やコスメの会社のネット通販担当である徳永夕葉は、夫の大志とふたり暮らし。コロナ以降は巣籠もり需要で注文も増え、オーガニック商品への注目が集まっていることもあり、仕事面はまずまず順調だった。
大志とはお互いに30代半ばでの結婚で、それぞれの暮らしの基盤が固まっていたことや仕事の多忙さなどから、子どもは作らないという選択をしている。しかしながら、母親やそろそろ7か月になる娘を持つ幼馴染の梓などからは、子どもがいないことについて干渉されることも。
ごくプライベートなことに関して言及してくる相手に、悪意があるとしたらとんでもないことだが、まったく悪気がないというのも別のつらさがある。相手は自分の考えを正しい意見と捉えているし、心からの善意でアドバイスしてくるのだから。揺るぎない信念を持つ相手に、不満を表すのは難しい。その後夕葉は仕事でトラブルに見舞われ、社長や子どもがいる同僚との間にわだかまりが生じてしまい……。
ここで効いてくるのが喫茶ドードーのおいしい料理だ。おいしいものを食べることでやる気が戻ったり、ちょっと冷静になってみようと気を取り直したり、前向きな気持ちになれたりするものではないだろうか。しかも、店主・そろりからの言葉が添えられているとなれば。
そろりのキャラクターで素敵だなと思うのは、彼がアドバイスしすぎないところだ。ああしろこうしろと相手のアクションを限定するのではなく、ヒントになるような声かけをすることによって相手の本心やポテンシャルを引き出していくのがとてもいい。
「ぼっち」などという言葉で揶揄する人も少なくないし、誰かと一緒なのも楽しいものだけれど、ひとりで過ごすのも大切な時間だ。おひとりさま専用カフェで我が身と向き合うのは、実は他者との関係を考え直すことにもつながるに違いない。ひとりひとりがそれぞれの足で立っているからこそ、他の人との話し合いや助け合いができるのだと思う。悩みを抱えた来店者たちを料理とさりげない声かけでアシストできるそろりって、ただ者じゃないな。
[レビュアー]松井ゆかり(書評ライター)
書評ライター。1967年、東京都生まれ。法政大学文学部卒。現在、「WEB本の雑誌」にて「今週はこれを読め! 【エンタメ編】」を担当。
COLORFUL 2023年3月25日 掲載
提供元:Yahooニュース

