
-
夜遊び夜遊び
-
お水お水
-
ホストホスト
-
風俗風俗
-
ビューティビューティ
-
ファッションファッション
-
悩み相談悩み相談
-
モデルモデル
-
芸能芸能
-
雑談雑談
-
食べ物・グルメグルメ
-
生活生活
-
恋恋
-
インターネット・ゲームネット・ゲーム
-
ギャンブルギャンブル
-
過去ログ倉庫過去ログ倉庫
-
運営運営
「後ろめたさ」こそが文学 鬼才・林真理子の真骨頂とは(松尾潔)(日刊ゲンダイDIGITAL)

-
【松尾潔のメロウな木曜日】#13
「日本の作家だと誰を読んでます?」
初対面の相手に趣味を問われて読書と答えた時の第2問として、最もポピュラーなもののひとつだろう。回答には、ある程度以上の著作数がある作家、さらに言えば現役作家であることが望ましい。
林真理子新理事長は日大を救えるのか?「絶大な宣伝効果」と早くも期待する声
だが、ときに自分も訊く側に立つからこそ、この質問を受けるたびにぼくは慎重になってしまう。何(愛読書)ではなく誰(作家名)と訊く場合、回答者のたんなる趣味というより、人となり、あるいはその先の生活や政治の信条をも問う意図が多分にあるからだ。
先日もそんな場面で口ごもっていると、思いがけず第3問が飛んできた。「じゃあ一年三百六十五日で最も多く触れている作家は?」。すると、自分でも拍子抜けするほどあっさりと名前が口を衝いて出てきたのだ。
「それなら林真理子さんですね」
理由は簡単。ぼくが数十年定期購読してきたいくつかの週刊誌で、林はエッセイや対談を長期連載している。定点観測と呼べる感覚で彼女の言葉に触れてきたのである。加えて今年7月には日本大学理事長に女性として初めて就任し、メディアに頻繁に登場しているという事情もある。ぼくにとって、林真理子ほど「触れる」機会の多い作家はいない。
──こう書くと、「ははーん。さては、でも小説は読んでいませんってオチか」と勘繰られるかもしれない。が、さにあらず。ぼくは彼女の小説もかなり読んできた。昨年は引きこもり問題に向きあった『小説8050』を、今年はこの国には珍しい実名の不倫小説『奇跡』を、といった具合。多くは自分で購入したものではなく、自宅、仕事先、ときには帰省中の実家で「そこにあった」から読んだ。いずれも女性のいる場所という共通点はあるが、随所にそんな出会いの場が転がっているのは人気作家(林の表現を借りれば「流行作家」)の証といえるだろう。
別の言いかたをするなら、これほど身近に触れていても、なぜか冒頭の問いには「林真理子」と即答できない。それにもやはり理由があるのだと、最新刊『成熟スイッチ』(講談社現代新書)を読んであらためて得心が行った。同書はベストセラー『野心のすすめ』から9年ぶりの人生論。もちろん日大理事長就任と大いに関わる出版だし、実際にその話は冒頭から写真つきで出てくる。
読者なら誰でも、林に他人の出自や経歴への旺盛な興味を失う気配がないのを知っている。名門や名家に対してはめっぽう寛容なことも。散財と節約、暴飲暴食とダイエット、暴挙と忘却、良心と悪意の間をゆれ動きつづける彼女は、一方でそんな自分を驚くべき冷徹さで俯瞰する超優秀なウォッチャーでもある。そして何より働き者(いわく「死ぬほど働かなくては」)。
最近おぼえた表現を使うなら「緻密などんぶり勘定」の鬼才なのだ。自伝的性格も濃い『成熟スイッチ』でも、ともすれば自画自賛だらけになりかねない成功譚に、自虐をひと刷毛入れる間合いが絶妙。美文の類ではないが、平易な日本語表現としてはこれが黄金比かもと思わせる語り口の巧みさは、小説同様にここでも健在だ。
ある種のトリップ状態で最後のページまで一気に辿り着けるだけに、陶酔から醒めたあとの反動も大きい。こんな下世話なハナシにひとりでつき合ってしまった、という恥ずかしさと虚脱感は、セックスではなくマスターベーションのそれに近い。ゆえにロマンスにも武勇伝にもならず、他者には秘すべき体験となる。そういう「後ろめたさ」こそが文学、とも思うけれど。
(松尾潔/音楽プロデューサー)
提供元:Yahooニュース

