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破滅的なるも気高く美しき母を支える少年、自伝的な愛の物語(レビュー)(Book Bang)

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〈毎日、アグネスは化粧をし髪を整えて、墓から起きあがって頭を高くあげる。酒で不名誉なことをしてしまっても翌朝は起きて、お洒落なコートを身にまとい、世間と向き合う〉
アルコール中毒に苦しむシングルマザーのアグネス・ベイン。本書は、彼女を支えようとする末の息子シャギーの、五歳から十七歳までの日々を描いている。
舞台は、八〇年代のイギリス、グラスゴーの貧しい元炭鉱町。
エリザベス・テイラー似の美女で常に周囲を魅了するアグネスは、最初の夫を見限り、タクシー運転手と駆け落ちして再婚した時から、運命の歯車が狂いだす。浮気性な上に暴力的な彼はアグネスとわが子シャギーを捨て、別の女の元へと去る。寂しさから酒に溺れるアグネスに、最初の夫との間に生まれた長姉と長兄は愛想を尽かし、やがて家を離れるが、シャギーは一途に寄り添い続ける。「ママのためならなんでもするよ」と。
心優しきシャギー。だが、人形が好きで、周囲の粗野な子たちとは違った話し方をする彼は、いじめられ、大人からは性的なイタズラをされそうになる。兄に教えられた男らしい歩き方を一人、黙々と練習する健気さが報われる日は、なかなか来ない。
シャギーにとって、母は全てだ。十歳になった彼はある日、母の喜ぶ顔が見たくて「男の子らしくない」腰の振り方をして夢中で踊っているところを、近所の子供たちに見つかり笑われてしまう。動揺するシャギーにアグネスは、負けずに踊り続けることを促す。「頭を高くあげて。元気を。出して」と。再び踊り出したシャギーの中からエネルギーが溢れ出す。母と息子は互いに一番の理解者だ。そのことがシャギーの踊りに結実するこの場面の美しさに、息を呑む。
アグネスは、常に酒に溺れているわけではない。断酒を試み、何度も再起を図る。闘うその姿を間近で見続け、心配するシャギーだが、それでも母のそばにいることが、一番の幸せだ。
市からの給付金さえ酒代にあて、食費が底をついても、ミンクのコートを手放さず、堂々と道を歩く美しい母。世間から見れば立派な母親ではなくても、誇りを持って生きることを息子に教えた。その一点の輝きが、シャギーの未来を照らすことになってほしいと切に願う。
「貧困」「格差」「アルコール依存症」「ヤングケアラー」「虐待」「同性愛」。そうした言葉の陰に隠れそうな当事者たちの繊細な心の揺れを、本書は見事な筆致で描き切っている。
そして何より、親子の愛を。
[レビュアー]小橋めぐみ(女優)
こばし・めぐみ
新潮社 週刊新潮 2022年9月1日号 掲載
提供元:Yahooニュース

