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文芸評論家が選ぶミステリ作品 警察小説からSFアクション、戦国時代小説まで9作を紹介(レビュー)(Book Bang)

文芸評論家・細谷正充がセレクトして紹介する新エンタメ書評。現実を越えるミステリー作品とは? 

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 歴史に刻まれるであろう、重大な事件が起きた。今後の日本に、いろいろな影響が出ることは間違いない。そう思うと、心がザワザワとする。だからこそ、できるだけ日常を堅持していきたいものだ。ということで今月も、面白い本を紹介していこう。

 松嶋智左の『三星京香、警察辞めました』(ハルキ文庫)は、新たな警察小説の書き手として注目されている作者の最新刊だ。ただし本書は、県警本部刑事部捜査一課の三星京香が、刑事部長を殴って、警察を辞めるシーンから始まる。さらに夫とも離婚し、娘のつみきの親権をどちらにするか、弁護士を入れて話し合っていた。それを有利に進めるため、無職はまずい。幼馴染の弁護士・藤原岳人に相談したところ、彼が勤める「うと法律事務所」に、調査員として雇われる。さっそく岳人の担当する事件の調査をすることになった京香。行方が分からなくなった、傷害事件の情状証人を、パラリーガルの芦沢夢良と共に捜すことになる。だが、調査に出ている最中に、つみきの面倒を見ていた岳人が、何者かに殺されたのだった。

 猪突猛進なところのある京香は、警察を辞めても、刑事気質が抜けきらない。しかし立場は、法律事務所の新米調査員だ。そのギャップに戸惑いながら、事件を追っていく様子が楽しめた。また、パートナーになる夢良は、過去の件で警察を嫌っている。デコボコなふたりが、しだいに相棒になっていく過程も、読みどころになっている。

 もちろん、ミステリーとしての魅力も見逃せない。単純な傷害事件に、いかなる秘密が隠されているのか。岳人を殺したのは何者なのか。どちらも予想外の真相に驚かされた。これだけ面白いのだから、シリーズ化してほしいものだ。 宮澤伊織の『神々の歩法』(東京創元社)は、SFアクションの連作集。地球人に憑依した狂った高次元生命体との、地球を守ろうとする者たちの戦いが描かれている。絶望的な任務に従事しているのは、合衆国特殊作戦軍・陸軍特殊作戦軍団AOF。リーダーのオブライエンを始め、分隊のメンバーは全身を徹底的にチューンナップされた戦争サイボーグだ。しかし紫禁城を根城にして、広範囲の地域を破壊する、ウクライナ農夫の憑依体に手も足も出ない。そこに現れたのが、アントニーナ・クラメリウス(ニーナ)というチェコの少女だ。〈船長〉と呼ばれるセキュリティ多胞体(高次元生命体にも多様な種類がある)は、訳あって狂うことなく八歳のニーナに憑依。ニーナも狂わなかったが、〈船長〉によって十代半ば相当の肉体に成長させられる。過去の悲劇から、憑依体の暴威を止めようとするニーナは、オブライエンたちと協力して、憑依体と激しい戦いを繰り広げる。

 というのが第一話の粗筋だ。以後、オブライエンの分隊と共にニーナが、さまざまな憑依体と対決する。各話にSFのアイデアが盛り込まれており、ストーリーは予測不能。基本的に良い子だが、八歳児なので何をするか分からない、ニーナのキャラクターも魅力的だ。気宇壮大なエンターテインメントを堪能した。

提供元:Yahooニュース
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