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“ジャニーズの子”から文壇を担う作家となった加藤シゲアキが明かす 作家デビューから9年感じていた「ある思い」(Book Bang)

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単行本刊行から5年、『チュベローズで待ってる』二部作が文庫化! 大幅な改稿作業で作家としての成長を実感し、「小説を盛り上げたい」と語る加藤シゲアキが、作家デビューからの9年間を振り返りながら、物書きとしてのプライドと展望を語った。――二〇一七年に刊行した『チュベローズで待ってる』がいよいよ文庫となりましたね。
自分ではあまり文庫化のタイミングを考えていなかったので、単行本を刊行してから時間が経ってしまいました。文庫にするなら手直しが必要だなと思っていたんです。そのためのまとまった時間や、小説を書くための筋肉をつける必要もあったので、時間がかかりました。
――筋肉ができた、と感じたのはいつだったのですか。
二〇二〇年に出した『オルタネート』を書いた時が、自分の文章の変わり目だったと思います。自分の中では『オルタネート』以前、以後という感覚があります。その頃にようやく、小説は全編力んで書くものではないんだとわかってきたんですよ。肩の力を抜いて書いた『オルタネート』で吉川英治文学新人賞を受賞したので、その感じ方は正しかったんだと思いました。それで、今なら「チュベローズ」も書き直せるなと思って取り掛かりました。
――本作は二部構成。第一部「AGE22」で主人公の金平光太は二十二歳。就職活動に失敗して自暴自棄になっていたところ、ホストにスカウトされ働き始める。クセのある夜の世界の人々や年上の女性、美津子との出会いを経て成長していく。第二部「AGE32」はその十年後の話で、驚くべき展開が待ち受けていますね。第一部は「週刊SPA!」に連載され、第二部は書き下ろしです。そもそも、この企画が持ち上がった経緯は。
「SPA!」から連載の依頼があったんです。その時はKADOKAWAさん以外で連載を書いたことがなかったので、まず試しに短篇を掲載することになって。「SPA!」はサラリーマンの読者が多いというけれど自分は会社勤務の経験がないな……などと考え、脱サラする人の話を書いたんです(『傘をもたない蟻たちは』収録の「Undress」)。それが評判がよかったので、長篇をやることになりました。
脱サラの話はもう書いたので、次はサラリーマンになれなかった人にしようと考えたんですね。それと、「SPA!」って昼の雑誌じゃないな、って(笑)。夜のイメージならホストかなと発想していきました。ホストの経験はありませんが、僕も女性ファンの方と接するし、自分を商品にするところは近いので、換骨奪胎して描けるんじゃないか、というのが最初の動機でした。第一部は連載、第二部は書き下ろしにすることもはじめから決めていました。
――第二部で光太は三十二歳となり、ゲーム会社に就職していますが、やがて衝撃的な真実が浮かび上がりますね。
ホストとしての経験がサラリーマンとしても役立つという、青春成功小説が面白いだろうと考えていました。でもそれだけだと予定調和じゃないですか。それを壊したくて、第二部はああした展開にしました。
最後に驚きがあったり、主人公が自分のこれまでを辿り直すところはデビュー作の『ピンクとグレー』の頃から同じなんですよね。自分は同じ構造を繰り返しやっている気がします。
――伏線の回収も見事です。連載を始めた時点で、どこまで細かなプロットができていたのですか。
短いプロットは作りましたが、そこまでは具体的に決めていませんでした。一番驚く真相はなんだろうと考えながら書き進めました。
――光太は母と妹との三人家族。学生時代は経済的に苦しく、バイトと家事と妹の世話に追われている。今思えばヤングケアラーの話でもあったな、と。加藤さんの、時代に対する観察眼を改めて実感した次第です。
意図していませんでしたが、なにか実感があったんでしょうね。でも、作中に書いた圧迫面接なんかはあの時代の一瞬だけの傾向だった気もして、文庫ではもう少しリアリティのあるレベルに直しています。
――文庫化に際して、かなり改稿されていますよね。
全体的に調整しました。当時は話がどこに向かうか、何が伏線になるのかもわからないように書くのが面白いだろうと思って、かなりいろんな要素を盛り込んだんです。でも読み返して、もう少し綺麗に盛り付けてもいいかなと思って、道路を舗装したというか。後半の女子高生失踪事件なんかも編集者からの提案で削除しましたし。
――改稿では足す作業よりも引く作業が多かったわけですか。
そうですね。描写もスマートな短い表現に入れ替える作業が多かったです。ただ、失踪事件にしてもただ削除すればいいというわけではないので、その分書き足さなければならないところもあって苦労しました(笑)。
――作家に話を聞くと、キャリアを積むほどに文章を短くするようになったという人が多いのですが、加藤さんもそうなんだなと思って。
作家の方と話していると、みなさん「少ない言葉で書きたい」っておっしゃいますよね。中村文則さんなんて「俳句みたいな文章にしたい」と言っていました(笑)。最初は「それってどういうことだろう」と思っていましたが、ようやくわかってきました。でも、ただスルスル読めるだけの文章にもしたくないんですよね。リズムを作るためにひっかかりを作りたい場合もあるし、そういうことが作家性に繋がるとも思う。
でも肩に力が入っていた頃は、ひっかかりを作ろう、作ろうと思って書きこんでいたんです。それでつんのめってしまっていました。「オフロードって楽しいでしょう?」と思っていたけれど、やっぱりオフロードがずっと続くと疲れるんですよね。全体的に舗装しながらも、曲がり角があったりトンネルがあったりする楽しさもあるし、ここは砂利道で合っています、という時もあるから、その時々で適した道路を選ぶということがやっとわかってきました。わかるのに十年かかりました。
――改稿作業で、自身の成長を感じました?
すごく感じました。「チュベローズ」を読み返した時に、たった五年の間でも、文章ってこんなに変わるんだなと思いましたし。その間に何冊も出していたわけではないですけれど、連載などでポツポツ書いているうちにやっぱり変化するんですね。作家の人って、みんな自分の中に編集者がいると思うんですが、僕の場合、その編集者が育ってくれた感覚です。
――加藤さんの作品は、「チュベローズ」をはじめ、他の作品でも“人生の選択〟が重要なテーマになっているなと感じます。
そうですね。確かに「チュベローズ」を書いている間、人は自分で人生の大きな選択をしているつもりでいても、実は選択させられているんじゃないか、という思いがありましたし、今回読み返してもそう感じました。物語上の必要でそうなることも多いですね。主人公自身の動機だけでなく、そうせざるを得ない状況になったほうが物語が動く。僕の書く主人公って、自分からリーダーシップを取るというより、だいたい腰が重くて、何かに引っ張られて行動する人が多いんです。たぶん僕がそうなんだと思います(笑)。
――加藤さんご自身は芸能界で活動しながらも小説を書くと決意するなど、人生の選択をしてきたのでは?
選択をさせられているけれどやるのは自分、という感覚です(笑)。小説についても「書くの? 書かないの?」と訊かれて「書きます」となって。自分としては「書かない」と言うほうが難しかった。で、いざ書くとなったらもう大変で。
提供元:Yahooニュース

