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初代・森川栄の包丁の技をフィルムに残した吉村公三郎監督(夕刊フジ)

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【あの人も愛した 京ぎをん浜作】
関西財界の雄から菊池寛、川端康成ら文人に至るまで各界を代表する人物が集うサロンとなった祇園町の割烹料亭「浜作」。京都は映画の都でもあったので、日本映画全盛期の大スターや名監督たちも多く訪れた。
京都の女を描き続けた溝口健二監督の作品でも、祇園町を舞台にした『祇園の姉妹』(1936年)はとりわけ傑作の誉れ高い。撮影では今の浜作の主人である三代目森川裕之さんの祖母が、花街の言葉を脚本家の依田義賢と溝口監督に毎晩遅くまで浜作の座敷で指導した。ところが山田五十鈴と梅村蓉子演じる芸妓の姉妹が男にだまされ翻弄される様があまりにリアルだったので、森川さんの祖母は「先生、あそこまでほんまのこと書いたら、あきまへんがな」と怒って、しばらく溝口監督らを出入り禁止にしたとの逸話も残る。
洛中で幼少期を過ごし、京を描いた作品も多い、映画監督の吉村公三郎の著書『京の路地裏』(岩波現代文庫)には、浜作での溝口のエピソードが出てくる。ある冬の日、みぞれの降る底冷えする晩に、吉村は大先輩の溝口に連れられて初めて浜作を訪れた。かの巨匠は同席していた、ひそかに思いを寄せる田中絹代への照れ隠しからか、国際政治問題の話題をしきりに語り続けたが、吉村も田中も無関心で「唯ひたすらに、淡白でコクのあるふぐの刺身と酢醤油、薬味のアサツキとの微妙な味覚の調和に感激し食べ続けていた」。
以来、吉村は浜作の初代主人、森川栄氏と親交を結び、京都での撮影では初代が風俗考証を協力した。吉村の代表作『偽れる盛装』(51年)は古い因習の残る京都の花街で、京マチ子演じる芸妓が美貌を武器に男を手玉に取る。この中で進藤英太郎演じる料亭「伊勢浜」主人のモデルは浜作の初代であり、当代によると映画で進藤が身につけるベストやメガネはすべて初代のものだそうだ。祇園町の本店でのロケでは、映画全盛期ゆえスタッフも100人を数え、警察は冨永町通を通行止めにした。初代は、包丁を握る場面では手のアップで出演もしていて、伊勢エビを鮮やかにさばくクローズアップがたっぷりある。
食通の吉村は、どうしてもその包丁の技をフィルムに残しておきたかったのだろう。やはり京都の味を知っている人にしか撮れない絵だ。おかげで初代のさえわたる技を今も見ることができる。
■大野裕之(おおの・ひろゆき) 脚本家、演出家。1974年、大阪府生まれ。京都大学在学中に劇団「とっても便利」を旗揚げ。日本チャップリン協会会長。脚本・プロデュースを担当した映画に『太秦ライムライト』(第18回ファンタジア国際映画祭最優秀作品賞)、『葬式の名人』。主著に『チャップリンとヒトラー メディアとイメージの世界大戦』(岩波書店)など。
提供元:Yahooニュース