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まるで禅問答…某女優との不倫疑惑があった梶原一騎を直撃【芸能記者稼業 血風録】(日刊ゲンダイDIGITAL)


【芸能記者稼業 血風録】#11


 今や熱愛記事は「泊まった」事実をもって初めて成立する時代だ。特に不倫となれば写真や詳細な目撃談が必要だが、昭和の頃はそこまで完璧ではなかった。張り込みや隠し撮りをする機動力もなく、目撃や証言で不倫を記事にした。


「巨人の星」「あしたのジョー」などスポ根漫画で一世を風靡した劇作家・梶原一騎氏。作家以外にも芸能プロや映画製作会社を設立するなど、脂が乗っていた頃、美人女優との関係がしきりに流れていた。


 相手が女優となれば芸能メディアの関心も高い。目撃談をもとに梶原氏に直撃したことがある。電話でアポイント。取材の意図を伝えると、あっさり「会おう」と受け入れた。


 指定された赤坂の事務所を記者2人で訪ねた。取材経験を積み、場慣れしてきたとはいえ、相手は数々の武勇伝のある梶原氏。緊張感はマックスだった。通された応接間で待った。梶原氏が悠然と入ってきた。初めての対面。短髪、トレードマークの薄茶のサングラス。鋭い眼光と鍛えられた巨体。想像以上の威圧感があった。


 さらに弟の格闘家・真樹日佐夫氏も証人として同席した。極真空手師範の真樹氏もワイシャツの間から褐色の引き締まった体がのぞいている。濃いめのサングラス越しに睨む目。まるで映画「仁義なき戦い」のワンシーンだ。先輩の言葉を思い出していた。


「この商売でいまだ殺された記者はいない。安心して取材しろ」


 目撃した女優との一部始終を話した。梶原氏はニヤッと笑い返してきた。


「おー、そうだったかな。来ていたかもしれん」と、完全に認めるわけではないが、間髪を入れずに「それがどうした?」と切り返してきた。一瞬、返答に困った。改めて尋ねた。


「いわゆる愛人関係ということでは……」


 今度は目がきつくなった。


「なんで愛人関係なんだ。俺の部屋に女が泊まると愛人関係になるのか!」


 すかさず言葉を返した。


「一般的に、男の部屋に女性が泊まればそういう関係と思いますが」


 梶原氏は即座に言った。


「愛人関係と言うなら俺と〇〇がセックスしているところを見たのか?」


 予想もしない返し。


「男と女が同じ部屋に泊まれば、そう思いますよ」


「俺は認めん。見られない限り認めん」


 禅問答のようになったが、最後にこう返した。


「愛人関係の決定的な証拠はありませんが、愛人関係ではないという証拠もありませんよね」


 話は物別れ。女優の名前を出さず、噂の域を出ない疑惑記事で終わった。


 梶原氏の愛人騒動から10年近い年月が流れた1996年。若手女優との不倫疑惑が発覚した俳優の三田村邦彦は囲み取材に応じ、「僕が女優とエッチしたかどうかを本当は聞きたいのでしょう。言わないけど」とかわしたことがある。そして現在、泊まった事実の前に芸能人は「不倫」を認めるようになった。=つづく


(二田一比古/ジャーナリスト)

提供元:Yahooニュース
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