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作家・綿矢りさ 芥川賞から15年、書けないスランプ…たどり着いた「生のまま」(夕刊フジ)

チャーミングな人だ。茶色っぽい長い髪に大きなイヤリング。大胆に肩を出した黒のノースリーブ。オシャレな姿は、デビュー当時から変わらない愛らしいルックスとあいまって、30代半ばになったとは思えない。はんなりとした関西弁が柔らかみを加えている。
「なかなか関西弁が抜けませんよね。(標準語は)イントネーションが難しいでしょう」
京都に生まれ、早稲田大学進学時に上京。作家となってからは関東と関西を行ったり来たり。今は結婚、出産を経験し、子育てに追われるようになって生活も変わった。
「(小説を)書く時間は、子供を保育園に預けたり、夜に寝かしつけたときしかなくなった。家事もあります。だから時間が貴重だと思えるようになったし、(家族と過ごす時間が)いい気分転換にもなりますよ」
15年前、史上最年少の19歳で芥川賞を受賞した。受賞作はベストセラーとなり、同時受賞の金原ひとみ(当時20歳)とともにメディアの脚光を浴び、一躍、文壇のシンデレラに。
ところが、下積み経験がまったくないままのデビューは、やがてプレッシャーとなってのし掛かる。書かなきゃ、と思って夜に執筆すると、昼間の講義は眠たくてしかたがない。昼夜逆転の生活が続き、もうふらふら。勉強も仕事も恋愛もうまくいかなくなった。
「すべてに元気がない。太陽を浴びないような生活だから当然ですよね」
書けないスランプは大学卒業後4、5年間も続く。
「書いてもボツになったり、話がまとまらない。インタビューなどでは『違うジャンルの作品にチャレンジされるのですか?』なんて聞かれるから、そのうちに何が書きたいのか、自分でも分からなくなって…」
吹っ切れたのは、「読者を『感動させよう』と“狙う”のではなく、自分が書けるもの、自分が面白いと思ったものを書くしかない。それで読者に楽しんでもらえるようになればいい」と思えるようになったからだ。
そして6月末、ずっと「書きたかった」テーマの新作を上梓できた。
大人の女性同士の狂おしい恋愛を描き、話題沸騰の『生(き)のみ生(き)のままで』(集英社)である。
過激なセクシー描写や女性同士の隠微なムードを期待した向きには、少しアテが外れるかもしれない。若い2人の女性が真摯に相手に向き合う「美しい恋愛物語」というべきか。
きっかけとなった作品がある。20代で書いた『ひらいて』(2012年)。主人公の女子高生は、好きな男性を振り向かせる目的で、交際相手の女性に近づき、“関係”を持つ。
「このときは高校生同士の恋愛でしたし、そもそもの目的が“さや当て”。いつか、大人の女性同士の恋愛を、もっと深めて書いてみたいと思うようになったのです」
■作品には「少しずつ、私が投影されている」
タイトル(『生のみ生のままで』)は、自身で考えた。「むき身」「ありのままの姿で」「真正面から向き合う」という思いが込められている。2人の女性は美しく魅力的だ。ともに男性の恋人がおり、同性愛の性向があったわけではない。「好きになった人」「出会ってしまった」のが女性だったのだ。
「時代とともに世の中も変わっていますが、(同性愛のカップルには)まだ困難な問題はあるでしょう。それに抗(あらが)うのではなく、必死で生きようとする2人の姿を描きたかったのです」
これまでの作品では、学校や会社になじめず、“ひとりで生きてゆく”女性や、どこか屈折している姿など、揺れる内面を描いたものが多い。その多くのキャラクターには自身の年代に合わせて「少しずつ、私が投影されている」という。
「一人で充実した人生を送るのか、それともパートナー(他者)が必要なのか…。いろんなタイプの人生を描くことで、自分の人生を考えていたのですね」
近年は、本がなかなか売れない時代だ。紙媒体や活字文化の衰退も叫ばれて久しい。
「幼いころから、紙・活字に親しんできたので、やっぱりデジタルよりも愛着があるし、こだわりもあります。でもね、最近は、電子媒体の良さも分かるようになってきたのです。長いものが読みやすいし、画面が明るいから夜でも苦にならない、とか」
ただし、時代や媒体が変わっても、書くという仕事は変わらないと思っている。
「今回の小説もそうですが、長いものでも、すいすいと(読者の)頭に入ってくるような、気付いたら読んでしまっているような文章を私は書きたいと思うのです」
(ペン/梓勇生 カメラ/桐山弘太)
■綿矢りさ(わたや・りさ) 1984年2月1日、京都市生まれ。35歳。早稲田大学教育学部卒。2001年、紫野高校在学中の17歳のとき、『インストール』が文藝賞を受賞。2004年、『蹴りたい背中』で芥川賞。19歳での受賞は史上最年少記録。同作は文庫も合わせ約150万部のベストセラーとなった。10年、『勝手にふるえてろ』で織田作之助賞大賞候補、12年、『かわいそうだね?』で大江健三郎賞。他に故郷・京都を舞台にした『手のひらの京』『ひらいて』などがある。
提供元:Yahooニュース