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川本三郎「私が選んだベスト5」(レビュー)(Book Bang)

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一九七五年のベトナム戦争終結から早いもので四十年以上たつ。アメリカではベトナム系作家の活躍が目立つようになってきた。
オーシャン・ヴオンの『地上で僕らはつかの間きらめく』は、一九八八年にホーチミン市に生まれ幼い頃にアメリカに渡った作者による自伝的小説。
母親は離婚しネイルサロンで働きながら「僕」を育てた。祖母は戦争中、米兵相手に夜の仕事をした。
男の影が薄い、女だけの家族。「僕」は成長して自分がゲイであることに気づく。
時系列に沿った物語というよりあふれるイメージで綴ってゆくのが新鮮。作者は詩人としても評価が高い。 小津の本はおびただしく書かれていて新味を出すのが難しい。そんななか尾形敏朗『小津安二郎 晩秋の味』は、従軍して中国戦線で戦いながら生還した小津の、生存罪責感に注目していて読みごたえがある。
小津の盟友ともいうべき、『人情紙風船』の山中貞雄監督との対比で語ってゆく。
自分は生き残ったのに年下の山中は戦病死した。そのことの申訳なさ。
小津作品には山中に対する罪責感が随所に読み取れるという指摘に粛然とする。 日本政治思想史の研究者で鉄道好きの原武史『最終列車』は、平成から現在にかけて鉄道の現状を語る。
新幹線が増えるのと逆にローカル線が衰退してゆく。豪華列車が登場するのとは逆に地方で廃線が増える。
“鉄学者”の著者はこうした現状を憂える。しかもこれに加えコロナ禍が鉄道を襲う。仕事がオンライン化し鉄道に乗らなくなる。
こうした鉄道の危機にあって著者は鉄道を「黒字か赤字か」「速いか遅いか」とは違った価値観で考えるべしと訴える。共感する。
まだ車社会になる前の昭和三十年代は鉄道が社会の基本的なインフラだった。 J・ウォーリー・ヒギンズ『総天然色 ヒギンズさんの北海道鉄道旅1957――70』は、北海道の広大な大地をくまなく鉄道が走っていた時代の懐しい鉄道写真集。
鉄道好きのヒギンズは米軍の軍属として来日し、まだ健在だった鉄道を撮った。
新幹線よりローカル鉄道が好きだというヒギンズはいまや消えてしまった北海道の路面電車、簡易軌道にカメラを向けている。思い出として資料として貴重。
消えてゆくものを愛する。その点で鉄道ファンは古本屋ファンと重なる。
提供元:Yahooニュース

