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年に一度の「顔見世」で光った“プロデューサー”猿之助の企画力(中川右介)(日刊ゲンダイDIGITAL)

 今月の歌舞伎座は年に一度の顔見世。演劇として面白いのは第三部「花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)」。題から分かるように、若手による忠臣蔵なのだが、単なる2時間のダイジェスト版ではない。松の廊下も判官の切腹も城明け渡しも、舞台の上では描かれないし、お軽と勘平も出てこない。そういう名場面とは別の、いろいろな忠臣蔵外伝をないまぜにして、討ち入りまでを描いた。

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 猿之助は演出も担い、高師直ら3役、幸四郎も大星ではなく、桃井若狭之助と清水大学で、主役は若手に譲り、中村歌昇が大役の大星由良之助、尾上右近が顔世御前(のちの葉泉院)と大鷲文吾、中村隼人が塩冶判官と槌谷主税。

 どの役も通常の歌舞伎座ではこの世代が演じることはない大役なのでいい勉強の機会だが、演劇としても見応えのあるものに仕上げている。

 このご時世にわざわざ歌舞伎座まで来る人は、忠臣蔵を何回も見ている人たちだ。普通の名場面を外しても、ストーリーは分かる。猿之助の企画力の勝利。大幹部たちは自分の芸を極めようとしていて、それはそれでいいのだが、猿之助はプロデューサーとして、客が何を望んでいるかを考えている。しかしそうなると、役者としての猿之助の出番が減るせいか、猿之助が「主役」の時より空席が多い。興行の難しさを感じる。

 第一部は片岡愛之助と中村壱太郎の「神の鳥」と松本白鸚の「井伊大老」。愛之助と壱太郎は兵庫県豊岡市にある芝居小屋・永楽館で毎年のように公演していたが、そこで2014年に初演された舞踊劇。永楽館へはなかなか行けないので、歌舞伎座での上演はありがたい。小さな芝居小屋を前提にして書かれたものだが、大劇場の歌舞伎座に移してもすきはない。狂言師として登場する愛之助と壱太郎が、やがてコウノトリとなり、最後、愛之助は山中鹿之介として登場。

「井伊大老」は、緊迫した政治情勢の中での側室とのやすらぎのひとときを40分ほどで描くもの。事件が起きるわけではないので筋の面白さではなく演技力で見せるしかないが、白鸚、中村歌六、中村魁春が破綻なく演じきる。

 第二部「寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)」は、坂東三津五郎の七回忌追善で、息子の巳之助が曽我五郎を初役で務め、中村時蔵が十郎、尾上菊五郎が工藤祐経で支えている。

 仁左衛門は「連獅子」を孫の千之助と。とにかく、華がある。

(作家・中川右介)

提供元:Yahooニュース
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