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syudou、Chinozo、雄之助ら気鋭ボカロPも続々制作 花譜から生まれた音声合成ソフトウェア“音楽的同位体 可不”の魅力(リアルサウンド)

 バーチャル界屈指の魅力的な歌声の持ち主として知られる、KAMITSUBAKI STUDIOのバーチャルシンガー・花譜。彼女の声を使った音声合成ソフトウェア、CeVIO AI「音楽的同位体 可不(KAFU)」が今年7月に発売され、ボーカロイド界隈を中心に話題になっている。

【写真】ライブでの花譜

 名前に採用されている「同位体」とは化学における質量数の違う元素のこと。たとえば、一見ひとつに思える水にも実は質量数が異なるものが存在するように、花譜と可不の歌声は、同じ声帯から生まれたものの、「バーチャルシンガー」と「音声合成ソフトウェア」として各々が異なる魅力を持っている。ビジュアルイメージも花譜と同じPALOW.が担当しており、花譜本人監修のもと、AIの深層学習などで声質や癖、歌い方をリアルに再現している。

 KAMITSUBAKI STUDIOの統括プロデューサー・PIEDPIPER氏は、「可不」を「観測者(花譜リスナーの総称)の方々と作品を創る為のプロジェクト」と表現しているが、もともと花譜の楽曲は「命に嫌われている。」などのカンザキイオリが一貫して制作を担当し、世界観などを緻密に統一していた。今回、そこに音楽的同位体「可不」が生まれたことで、バーチャル界を代表する類稀な歌声が、あらゆるクリエイターたちに開かれた意味は大きい。

 2020年10月にプロジェクトの存在がアナウンスされた後、今年3月に開催された花譜のライブ『不可解弐Q2』で花譜と可不が共演してポリスピカデリーの「不埒な喝采」をデュエット。7月に製品版の販売がスタートした。すでに様々なクリエイターが楽曲を公開しており、可不を使ったヒット曲も多数生まれている。この記事では、そのいくつかを紹介したい。

 Adoの「うっせぇわ」の作詞作曲でも知られるsyudouが、初音ミクから可不に“浮気”したオリジナル曲。タイトルとは裏腹に、サウンド&歌詞は心の暗いところをえぐる彼らしいものになっており、初音ミクと“復縁”しての楽曲「カレシのジュード」と対になっている。YouTubeでの再生回数は執筆時点で1900万回以上。「可不」のスターターパッケージに同梱(現在は配信でもリリース)の『KAF+YOU KAFU COMPILATION ALBUM』の収録曲。

 花譜のリミックスアルバム『観測γ』に「過去を喰らう (ツミキ Remix)」を提供していたツミキによるオリジナル曲。五線譜を大胆に上下するメロディや絶望を感じさせる歌詞がテクニカルな形でちりばめられ、疾走感全開のサビも含めた絶妙なバランスで約3分のポップ曲として成立させている。可不を使用した楽曲の枠を越えて、ボカロシーン全体でもヒットしており、「歌ってみた」も急増している。可不を象徴する楽曲になっていきそうだ。

 TikTok経由で大ヒットし、今年8月にYouTubeのボカロ曲の歴代再生数でトップとなった「グッバイ宣言」で一躍時の人となったChinozoによるオリジナル曲。洒脱なピアノやグルーヴィなカッティングギター、コーラスなどが生むダンサブルなグルーブからは、現在のChinozoらしい魅力が感じられる。曲の最後にもう一段階ギアを上げるようなラストのギターソロも秀逸。『KAF+YOU KAFU COMPILATION ALBUM』に収録されている。

 ボカロとクラブミュージックの最先端を融合させた曲を発表している雄之助による「花となれ」は、フューチャーベースやトラップといった近年のビートも通過したうえでのモダンなエレクトロハウス。細切れにエディットしたトラックと、デジタル感を強調した歌声がマッチし、「花譜のため」ではない、「可不のため」の楽曲になっている。『KAF+YOU KAFU COMPILATION ALBUM』に収録。EDM/エレクトロ方面の可不楽曲の代表例のひとつ。

 昨年「IMAWANOKIWA」で初のVOCALOID殿堂入りを達成した気鋭のボカロP・いよわによる楽曲。普段は声やトラックを奇抜に編集している曲も多いものの、この曲は天然のゆらぎを持つ可不≒花譜の声を活かすような雰囲気だ。そのうえで、コロコロと忙しない音や不協和音、浮遊感のあるシンセ、逆再生風のエフェクトなど実験的な音が詰め込まれている。そうした要素が〈わたし/ちゅうぶらりん〉という歌詞の語感に繋がっていくラストも印象的。

 篠崎あやととのタッグによるアニメ『ダンベル何キロ持てる?』のオープニング曲「お願いマッスル」や「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」「Brand new!」といった『デレステ』楽曲など様々なアニメ/ゲーム曲を手掛けている烏屋茶房によるオリジナル曲。今回挙げた楽曲の中では最も「花譜」の歌声に近い質感が残されていて、ドロップを楽曲全体のピークに据えつつも、どこか哀しみを含んだ歌声が印象的な、都会の夜を連想させるメロウなポップチューンに仕上げている。

 他にもみきとP、ナユタン星人、かいりきベア、40mP、すりぃといった錚々たる面々が可不の楽曲を発表しており、「カンザキイオリ×花譜」の化学反応とはまた違った、「様々なクリエイター×可不」の音楽が次々に生まれている。花譜が可不の楽曲を歌うこともあり、音楽的同位体として異なる魅力を持った両者が重なる瞬間が生まれているのも印象的だ。

 現在のバーチャルタレント/アーティスト文化は、黎明期を経て認知を拡大し、徐々にバーチャル文化圏の外でも様々なアーティストやタレント、クリエイター、ユーザーとの接点を築きはじめている。「音楽的同位体 可不(KAFU)」もまた、花譜による音楽のパラレルワールドとして新たな魅力や可能性を見せてくれるだけでなく、あらゆる場所から気鋭のクリエイターたちが集まる実験の舞台として、次元を超えた人々の出会いを生んでいきそうだ。

提供元:Yahooニュース
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