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45年におよぶ「つながり」で樹木希林に学んだ素顔の生き方(レビュー)(Book Bang)

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女優・浅田美代子のデビュー作は、1970年代のヒットドラマ『時間ですよ』だ。舞台は東京の五反田にある銭湯「松の湯」。浅田は群馬出身の従業員、ミヨ子を演じた。
同僚であるケンちゃん(堺正章)、ハマさん(樹木希林、当時は悠木千帆)、ミヨちゃんの3人組は「トリオ・ザ・セント」と呼ばれ、かま場での抱腹絶倒の掛け合いが名物シーンとなった。さらに劇中歌『赤い風船』が大当たりした浅田は、このドラマで全国的な人気を得る。
やがて21歳で吉田拓郎と結婚して芸能界と距離を置くが、離婚後に『さんまのからくりTV』などで復帰。その後は女優として着実な歩みを重ね、今や円熟の60代を迎えている。そんな浅田が、16歳で出会った樹木希林との45年におよぶ「つながり」を明かしたのが本書だ。ここには浅田しか知らない素顔の樹木がいる。他者とのベタついた関係を嫌い、一人で立って生きることを大切にしていた樹木。持論は「歳をとることを面白がらなきゃ!」である。また、良き女優であるための貴重なアドバイスも惜しまなかった。たとえばワイドショーは人間観察の場であり、「表情とか立ち振る舞いをよく見てごらん」と。それでいて、自分では女優と名乗ることを嫌がった。「女優って“優れた女”って書くんだよ。恥ずかしいよねぇ」
本書には樹木をめぐる回想だけでなく、自身の秘事を語った部分も多い。しかも「私にとって30代は寝ても覚めても恋をしている、“恋の季節”だった」と率直だ。樹木は「(結婚とか)無理に形にこだわらずとも良いのよ」と言いながら、「でもね、つがいではいたほうがいいとは思うなぁ」と語っていたという。
2018年9月15日、樹木は75歳で旅立った。この本は、「美代ちゃんが私の人生の語り部になってね」という生前の言いつけを形にしたものだ。そして、これからも彼女と共に生きていく約束の書でもある。
[レビュアー]碓井広義(メディア文化評論家)
1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年にわたりドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。著書に「少しぐらいの嘘は大目にー向田邦子の言葉」(新潮社)、「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」(同)、「ドラマへの遺言」(同)ほか。毎日新聞、北海道新聞、日刊ゲンダイなどで放送時評やコラムを連載中。[公式サイト]碓井広義ブログ
新潮社 週刊新潮 2021年10月7日号 掲載
提供元:Yahooニュース

