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村上春樹が“妖精おばさん”と例えた、大好きな歌手とは…?(TOKYO FM+)

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめたラジオ番組「村上RADIO~今夜はアナログ・ナイト!~」が、2月10日(日)にTOKYO FMにて放送されました。この番組では村上さん自らディレクターもつとめ、リスナーに“聴いてもらいたい曲”をかけています。
第4回の放送となる今回は、村上さんが所有する膨大なレコードのなかから、“アナログ・レコードでしか聴けない楽曲”を中心に選曲し、お届けしました。そのなかから後半の1曲と番組に寄せられた「村上春樹さんへの恋愛相談」、エンディングテーマ、村上さんの“好きな言葉”についてお話された概要を紹介します。
◆「The Good Life」(Blossom Dearie)
僕が大好きな歌手、ブロッサム・ディアリーが歌う「グッド・ライフ」です。
1980年代の半ばにロンドンの小さなクラブで、僕は一度、彼女の生の歌声を聴いたことがあります。まさに至福ともいうべき時間でした。妖精みたいな、というか「妖精おばさん」という表現がじつにぴったりくる人なんです。声がとても可愛くて。
この曲は「Blossom Dearie Sings Rootin’Tootin’songs of 1963」というすごく長いタイトルのLPに入っていますが、このレコードにはレコード会社の名前もレコード番号も書かれていません。というのは、これはルートビールの会社の景品として制作されたもので、一般には売り出されなかったからです。だから、このレコードは長いあいだほとんど入手不可能な状態になっていて、かなり高値で取り引きされていました。今はもうCDなんかで再発されているので、内容的には珍しくはないですが、それでもオリジナルのLPはまず見かけません。僕はそのオリジナル盤を米国コロラド州デンヴァーの小さな中古レコード店でようやく見つけました。つけられた値段は60ドルでした。
60ドルなら相場としてずいぶん安いんですけど、当時僕は、一枚のレコードに50ドル以上は出さないという方針を貫いていました。べつにお金がないというわけではなく、「お金さえ出せばなんでも手に入るんだ」みたいになることは嫌だったんですね。あくまで楽しみで、ゲームとしてレコード集めをやってるんだから、そこには自分なりのルールみたいなものがあっていいだろうと。だから値切ったんです。「これ、50ドルになりませんか」と。でも、店主はすごく気むずかしそうな親父で、ひと言「ノー」。にこりともしない。しょうがないからあきらめて、後ろ髪を引かれる思いで店を出たんですが、どうしてもそのレコードが欲しい。だから一時間くらい経ってから店に戻って、「やっぱり50ドルになりませんか」と言って交渉したんだけど、答えはにべもない。「ノー」。僕もわりに頑固なほうなので、「じゃあ、いいや」と店を出て、ホテルに戻って一泊しました。でも朝になったら、どうしてもあのレコードがほしい。朝一番、急いでそのレコード屋に行って、「分かった。いいよ、60ドルで買うから」と言いました。親父は「ありがとう」と初めてにっこりして、売ってくれました。
結局60ドル払ってこのレコードを買ったわけだけど、そういうプロセスというか、コミュニケーションってなかなか良いんです。
ネットオークションとかインターネット配信では、そういう人間的な思い出ってまず生まれないですよね。
* * *
村上さんは曲の解説の合間に、リスナーから寄せられた「恋愛相談」に答えました。
<村上春樹さんへの恋愛相談>
夫の事は大切で大好きなのですが、昔、一目惚れした人に会いたいと言われて迷っています。彼への一目惚れは本当に激しく、6年たった今でも忘れられません。正直、会いたいです。でも、結婚しているのに、食事をするだけでも不真面目だよなと思います。今まで真面目に生きてきたのに情けないです…。春樹さん、アドバイスをください。
村上:小説家としては、そうしないと物語が始まらないから、会いに行きますよね。リスクを恐れて会いにいかないと、なんにも始まらないし、小説にならない。だから、小説家としては「会いに行きなさい」と言うしかないわけです。でも、現実生活、彼女が彼に会うとリスクを引き受けなきゃいけない、責任を引き受けなきゃいけない。だから気軽にそうしなさいとは言えないんだけど……でもやっぱり僕としては、そんなに会いたければ、会いにいくのが普通じゃないかなと思いますね。もし混乱とか乱れが起こったとしても、それが人生だからしょうがないじゃない。
人生ってセックスと同じで、混乱もなく乱れもなくセックスが終えられたとしたら、それはやり方が間違っている。人生も同じで、混乱と乱れのない人生はやり方が間違ってます。
思い出を作るというのはすごく大事です。思い出というのは、人生の燃料になります。歳を取ってから、その燃料があるとないとでは人生のクオリティが違ってきます。だから思い切って会いにいきましょう。そうですよね、猫山さん?
猫山:うにゃあ。
村上:まあまあという感じですね。
* * *
<エンディング>
◆「Pet Sounds」(Freddie McCoy)
今日のお別れの曲は、フレディー・マッコイ。ジャズのヴァイブラフォン奏者が演奏するビーチボーイズの「ペット・サウンズ」。「ペット・サウンズ」の曲のカバーってかなり珍しいんですが、これ、けっこういいです。たぶんこれもCDでは出ていないと思います。
アナログ特集ということで、やはり古い音楽が中心になってしまいましたが、楽しんでいただけましたでしょうか。でも同じ音楽でもアナログで聴いていると、なんだか楽しいですね。音といい雰囲気といい、目でちゃんと見えるところが人間的っていうか、ほっとします。ラジオなのでそのへんのことをお見せできないのが残念ですけれど。
今日の最後の言葉。結構うろ覚えですが、かつてエルヴィス・プレスリーがこんなことを言っていました。
「歌手は、自分の心の穴を埋めるために歌を歌う。そのことが聴く人に伝わるとき、そこに共感が生まれるんだ」
それはきっと小説についても言えることです。結局のところ、僕らはみんな自分の心に開いた穴を埋めるために、音楽を聴いたり、小説を読んだりしているのかもしれません。あるいは歌を歌ったり、文章を書いたりしているのかもしれない。
でも、そういう空白を抱えることって、人にとって大切なことなんです。あまりそればかり意識すると疲れちゃいますけど、ときどきふと自分の中にある何かの欠落に気づくことで、人生は逆に少し豊かになったりします。
それでは今日はこれでおしまいです。またお会いしましょう。
(TOKYO FM「村上RADIO~今夜はアナログ・ナイト!~」より)
提供元:Yahooニュース